交換レンズレビュー

FE 85mm F1.8

α7にぴったりの小型軽量ポートレートレンズ

ソニーから、Eマウントの小型軽量な85mmレンズが発売となった。

ソニー製Eマウントレンズで35mmフルサイズ対応の85mmレンズは、G MasterシリーズのFE 85mm F1.4 GMが発売されているのみ。ソニーユーザーが純正のEマウントレンズを使うとなれば、このFE 85mm F1.4 GMを選択する他はなかった。

FE 85mm F1.4 GMはG Masterと謳うだけあり、抜群の写りを提供してくれるのだが、フルサイズでコンパクトさが特徴でもあるα7シリーズに対しては、ややヘビーサイズと感じるユーザーもいたはず。現に私もα7R IIユーザーだが、そう思っていた1人。今回のFE 85mmF1.8の発売は、α7シリーズのボディサイズとバランスの取れた「待ち望んていた中望遠レンズ」なのだ。

発売日:2017年3月24日
実勢価格:税込6万4,000円前後
マウント:ソニーE
最短撮影距離:0.8m
フィルター径:67mm
外形寸法:78×82mm
重量:約371g

デザインと操作性

単純に比較するとFE 85mm F1.4 GMの重量は820gに対し、FE 85mm F1.8は371gと半分以下という軽量さ。フィルターサイズはFE 85mm F1.4 GMの77mmに対し67mm。軽快な撮影を好むのなら、レンズは小型軽量の方が有利だ。実際にレンズを装着した時のバランスはすこぶるいい。α7R IIにまさにジャストフィットといった感じで、手のひらに心地よく収まる。

カメラはα7R II(以下同)

私自身、縦位置グリップをつけることで、カメラが大きくなることが好きではない。グリップなしでバランスよく撮影できるレンズは、α7系のコンパクトさを損なうことなく撮影できて、それがとてもありがたいと思う。

レンズ構成はED(特殊低分散)レンズ1枚を含む8群9枚とシンプル。絞り羽根は9枚。鏡筒にはカメラ側で各種機能を割り当てられるフォーカスホールドボタンを装備。またAF/MFを切り替えるフォーカスモードスイッチも備えられていて、操作のしやすさを確保している。

同梱のフードを装着したところ

作品

撮影当日は寒の戻りで非常に寒く、風も強かったので、諸処で髪が顔にかかっていること、カットによっては鳥肌がたってしまっていることなど、ご容赦願いたい。それも描写を見るポイントとしていただけると幸いだ。

まずはレンズ全体の画質を見て見ることにする。絞りをF3.2に絞って撮影。ニットなどの中央部のピントが合っている部分のキレは素晴らしい。ギスギスした感じはなく、繊細なシャープ感に好感が持てる。画面隅の葉や服も綺麗に解像していて、このレンズのポテンシャルの高さを早くも伺うことができる。

α7R II / 1/250秒 / F3.2 / +0.7EV / ISO320 / 絞り優先AE / 85mm

大口径F1.8というさすがの大きなボケに、モデルがぐっと浮かび上がる。ボケの質は全くクセがなく、すっきりとしたもの。ピントはモデルの右目(向かって左側の目)。程よいシャープさがあり、絞り開放でこれだけの描写を見せてくれる。是非拡大してご覧いただきたい。

α7R II / 1/80秒 / F1.8 / +0.3EV / ISO160 / 絞り優先AE / 85mm

奥行きのある場所で、葉のボケ具合を見ながらの撮影。絞りは開放。ピントはモデルの左目(向かって右側の目)に合わせている。手前の葉で前ボケを作る。前ボケも後ろのボケ同様、クセのないなめらかなボケ味だ。

α7R II / 1/200秒 / F1.8 / +1EV / ISO200 / 絞り優先AE / 85mm

アップの撮影を、と最短撮影距離で撮影。このレンズの最短撮影距離は0.8m。85mmレンズとしては標準的だが、もう5cm寄れたらなあ、というのが正直な感想。カメラもレンズもコンパクトな分、そう感じてしまうのかもしれないが、もちろん実用では十分だ。ピント面はモデルの左目(向かって右側の目)の瞳。最短撮影距離での描写も文句なし。またアウトフォーカスしていく周辺もボケ味はなだらかで、自然とピント面である瞳が浮き上がってくるかのよう。ピントの合った髪にもギスギス感は見られない。

α7R II / 1/160秒 / F1.8 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 85mm

続いて全身カットを撮影。85mmで全身を入れる撮影は、実は意外としやすい。ボケも適度に得られるので、状況説明を行いながらの画を作りやすいからだ。このカットはF2.8で撮影した。モデル全体にピントが合いながらも、モデルを浮き上がらせて見せるだけのボケは十分に確保できる。

α7R II / 1/80秒 / F2.8 / +0.7EV / ISO50 / 絞り優先AE / 85mm

ポートレートで撮影したくなる「絞り開放+逆光」で撮影してみる。斜め上から光が差し込む意地悪なシーンだが、フレアやゴーストの類は見られずクリアな描写となった。安心して逆光シーンにトライできる。

α7R II / 1/160秒 / F1.8 / +0.3EV / ISO64 / 絞り優先AE / 85mm

ポートレートではよく背景に用いる、点光源による玉ボケを狙う。開放F1.8での玉ボケを見ると、画面周辺部は口径食によるレモン形が顕著だが、特別このレンズだからその傾向が大きいという感じは受けない。私自身はあまり気にしないタイプ(というか、レモン形になるのは当たり前という感覚)なので、当然の結果と受け止めている。

α7R II / 1/160秒 / F1.8 / +0.3EV / ISO80 / 絞り優先AE / 85mm

一方、F2.5に絞って撮影したカットの玉ボケは、丸がやや角張りが見られるものの、気になるほどではない。

α7R II / 1/100秒 / F2.5 / +0.3EV / ISO50 / 絞り優先AE / 85mm

寄り気味のカットなので、モデルの顔がボケすぎないよう、F2.8で撮影。F2.8に絞っていながらもこれだけのなめらかで大きなボケに感心する。

α7R II / 1/125秒 / F2.8 / +0.3EV / ISO160 / 絞り優先AE / 85mm

まとめ

描写はとてもクリアで、クセを感じさせないボケ味がとても良い。私が仕事で使用するとすれば、機動性を重んじるところもあるので、ロケならこのレンズをチョイスする。

とにかくコンパクトでなので、せっかく小型軽量でシステム化できるα7シリーズからすれば、開放絞りがF1.8であってもこのレンズの存在価値は非常に高い。

AFも速くて静かだし、ポートレートやスナップ撮影では十分だ。解像感も4,240万画素のα7R IIでも問題なし。動き回りながらライトに撮影したい派にはもってこいのレンズだ。

モデル:斉藤明日美

萩原和幸

(はぎわらかずゆき)1969年静岡出身。静岡大学人文学部法学科及び東京工芸大学写真技術科卒業。写真家・故今井友一氏師事後、独立。ポートレートを中心に、広告・雑誌等で活動中。(公社)日本写真家協会会員。静岡デザイン専門学校講師。