交換レンズレビュー
Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZA
小形軽量のフルサイズ対応カールツァイスレンズ
Reported by 大浦タケシ(2014/7/15 10:00)
「FEレンズ」は、α7シリーズとともに登場した35mmフルサイズフォーマット対応のEマウントレンズである。本稿執筆時点で同レンズシリーズには5本がライナップされており、本レンズはその1本となる。
携行性に優れた軽量コンパクトな鏡筒と扱いやすい画角、カールツァイスとしては比較的リーズナブルといえる価格設定でα7シリーズのスタンダードレンズともいえる存在だ。レンズ構成は5群7枚。そのうち3枚を非球面レンズとする。最短撮影距離は0.35m。
デザインと操作性
35mmフルサイズ対応であるが、光学設計上バックフォーカスを短くできるため、同等の一眼レフ用にくらべコンパクトに仕上がる。
アルミニウム素材の鏡筒はローレットを除けば凹凸のないシンプルなもの。付属するレンズフードを装着すればレンズ全体の見た目はよりすっきりとしたものとなり、α7シリーズとよく似合う。
唯一、青いカールツァイスのロゴマークが誇らしげに主張するが、嫌みを感じさせるようなものではなく、同ブランドが好きな写真愛好家にとってはたまらない部分となるだろう。全長36.5mm、最大径61.5mm、質量は120g。
AFの駆動には高速で静寂性の高いリニアモーターを採用。α7Rとの組み合わせではストレスのないフォーカシングが楽しめる。MFの際のフォーカスリングの操作感については、もたつくようなことがなく手の動きにリニアに反応する。
惜しむべくは、手ブレ補正機構が省略されていることだろう。光学設計上難しかったのかもしれないが、開放F値を考えると欲しく思える。
遠景の描写は?
開放F2.8と控えめなこともあるのだろうが、画面の四隅を除けば絞り開放からキレはよく、コントラストも良好。エッジの色つきも皆無だ。
作例を撮影したときの天候は曇天、大気中の水蒸気もどちらかといえば多めであることを考えれば、文句ない描写といえる。四隅の描写に関しては、絞り開放からF5.6あたりまでは甘さがわずかに残る。総合的に見ると描写のピークは絞りF8といってよい。それ以上絞り込むと、いうまでもなく回折現象がはじまる。
ディストーションおよび周辺減光に関しては、前者は弱いタル型とする。水平線あるいは垂直線が画面周辺部にないかぎり気になるようなレベルはでないだろう。後者についても描写に大きく影響するようなものではなく、開放絞りから1段ほど絞ればほぼ解消する。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
【中央部】
【周辺部】
※共通設定:α7R / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE / 35mm
ボケ味は?
同じ焦点距離の開放F1.4クラスの大口径レンズとは異なり、大きなボケをつくるのは難しいものの、ボケ味自体はクセが無く柔らかい。
二線ボケの発生は見受けられず、ボケのエッジが濁るようなことも皆無だ。さらに前ボケも乱れたようなところは無く、総じて美しいボケ味といえよう。
開放F値がもう少し明るかったらもっと美しいボケ味が楽しめたかも知れないとつい想像してしまうが、鏡筒の大型化や価格のアップは避けられないので、これはこれで納得できるものである。ちなみに絞り羽根は7枚だ。
逆光は?
まずは太陽が画面内に入る作例をチェックしたが、ゴーストの発生は見当たらず、フレアもわずか。内面反射をよく抑えている。
画面に太陽の入らない作例については、ゴーストおよびフレアのいずれの発生も見受けられない。今回の結果はなかなかのもので、カールツァイスの誇るT*コーティングのスゴさを見せつけられるものである。
もちろん、撮影条件によってはゴーストやフレアが発生することもあるかとは思うが、逆光や強い点光源の入る夜景撮影などでの安心感は高い。
まとめ
α7は所有しながらも、Eマウントレンズを1本も所有してない筆者にとって、本レンズはとても気になる存在であった。画角といい、大きさといい、何よりプライスといい……。
α7に装着しておけば、汎用的にも使えるように思えたからだ。そのため、今回のレビューは個人的も興味あるものであったが、結果についてはいうまでもない。只今のところ原資の都合をつけている最中である。
現在、フルサイズフォーマットのEマウントカメラはα7/α7R/α7sの3モデル。ロードマップを見ると今年中にあと数本のFEレンズが登場する予定だが、それでもライナップはちょっと淋しい。
α7シリーズは2013年11月登場なので致し方ないところもあるが、このシリーズを盤石なものにするには本レンズのような魅力あるレンズの充実が必要だろう。今後のFEシリーズの展開に期待したい。