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【PMA09】史上最悪のPMAを生きる術(すべ)

会期:2009年3月3日〜3月5日(現地時間)
会場:米国ラスベガスコンベンションセンター


PMA09の会場となったラスベガスコンベンションセンター
 3月2日、PMAが主宰するプレス向けのsneak peek(出展商品の事前展示。ただし目玉商品は並ばない)に参加するため、入場バッジをピックアップしに受付へ行った時のことだ。

 ちょっとしたトラブルで登録が完全に終了しておらず、「あなたがプレスなのかどうか、確認できない。まずはどんな記事を書いているのか、Webで見せて欲しい」と言われて日本語のページを表示すると、「名前が出ていることは解るけど、どんな内容なの?」と訊かれた。

 「あまり前向きな話じゃないんだけど、景気のリセッションとデジカメ業界の話をコラムで書いた記事だよ」と言うと、どういう基準なのかは判らないが、うんうんと肯きながら入場バッジを作ってくれた。

 不景気の話は、誰にとっても面白いことではないが、日本でも米国でも、不景気こそが日常といった雰囲気になってきた。ここラスベガスも1月には、どのタクシー運転手も口を揃えるように「2割は客が減ったね」と話していたが、約2カ月が経過した今「35%減かな。新しいカジノもオープンしないって話だし、まいっているよ」と事態が進行していることを示している。

 おそらく、これほど重い空気の中でPMAが開催されたのは、過去、銀塩カメラが後退期を迎えた時にも無かっただろう。


“赤いポスターのない”会場

唯一キヤノンの広告が見られたのが1階のエントランス付近
 景気後退に対する明確な、そして徹底した姿勢で挑んでいたのは、なんといってもキヤノンだ。こうした展示会において、キヤノンは会場内の目立つ場所を買い取り、目立つ場所に”真っ赤”なところが生まれる。

 ところが今回、会場のビルボード(ソニーとパナソニックが大きな広告を入れていた)を見ても、入り口ホール(ここはニコンが独占)や通路脇の広告(パナソニックがほぼ独占)といった具合。キヤノンの赤い広告の露出がまったく見られない。

 実はメイン会場入り口を入った部分に、少しだけ広告は入っているのだが、例年に比べれば”ない”と言っても間違いとは言えないほどのものだ。

 景気後退期の今、可能な限り広告宣伝費を抑え、目減りした経営資源を次の成長期に向けた研究開発に向けているのだろうか。もともと、広告宣伝に対してはアグレッシブなキヤノンだけに、その徹底ぶりがなおさら目立つ印象だった。日本からの出張者は内田社長のみで、その内田社長もCIPA会合に参加するためだけに来たのだという。

 寂しいと言えば寂しいが、新しい一眼レフ製品の投入も予定していないキヤノンにしてみれば、当然の対応なのだろう。今年後半の北米における商談を行う場として設定されているPMAだが、コンシューマ向け展示会ではない。不要なところで見栄を張る必要はない。

 対北米向けの一眼レフ生産出荷台数がマイナス92.7%(出荷数は1万数千台しかなかった)という数字が強調しているように、今は厳冬の時代だ。これより寒い冬、氷河期が来れば、すべて絶滅するだろう、というほどに厳しい状況だが、それは今後、”暖かくしかなりようがない”ことの裏返しでもある。

 昨年の前半からの前兆を受けて9月から景気後退が鮮明になり、そして年末に向けて顕在化した中で、本格的に冬の準備を進めてきた企業は今、春に向けておとなしく体力を温存している。その象徴的な存在がキヤノンなのかもしれない。


意外に暗い顔を見せない各メーカー

 しかし、意外と思うかもしれないが、どのメーカーにも暗さは見えない。本格的な景気後退に購う手段など、誰も持ち合わせていないのだから、ジタバタしても始まらない。いつかはやってくるとわかっていた冬、ということだろうか。今より悪い時期はないだろうという諦めもあるのだろう。

 PMAと同時期に全米のディーラーに向けたオープンハウス(その年の主要商品を並べた商談会)を開催しているソニーは、もちろん、この景気後退の波を一番大きく受けている企業の一つだが、デジタルカメラ事業に関しては十分な準備をあらかじめ進めていたとの自信があるようだ。

「予想の範囲内。一眼レフカメラに関しては、もともとまだ足固めをしている段階。先のことを見据えて着々と目標に向けて開発を進めている」と落ち着いている。コンパクト機に関しては生産調整をあらかじめかけていたのだろう。加えて新機種のDSC-HX1では、以前からやりたかったことの一端を製品として組み込めた喜びや安堵もあってか、表情に暗さは見えない。

 数人のメーカーキーマンと各所で偶然に顔を合わせたが、焦りのようなものはない。真冬に派手に踊りまくって餓死するメーカーはいない。今回の景気後退は非常にインパクトも経営に対する影響も大きなものになったが、しかし、デジタルカメラ業界はエレクトロニクス製品の中でも、変調の予兆が一番早く現れた業界だっただけに、対応への時間が少しだけほかよりもあったのかもしれない。

 繰り返しになるが、今は新製品をたくさん投入して市場を盛り上げる時期ではない。次に向けた適切な準備を行う時だ。各メーカーごと、厳冬を超えるための術は少しづつ異なるだろう。誰がもっとも良い冬の過ごし方をしたかによって、春からの成長に大きな変化が出てくるに違いない。


業界の終わりには早すぎる

 冬ごもりの準備を終えたカメラ業界の様子を見て「なんという惨状だ」と判断した人からは、もう業界の終わりだ。もう何もこの先には残っていない。といった極端な言葉を聞くこともあった。

 しかし、きちんと準備ができたアリは、地上からは絶滅したように見えても、春になれば起きてくる。景気が回復すれば、それまでに溜め込んだ研究開発の成果も、一気に外に向けて吐き出すことができる。以前、コラムでも触れたように、景気後退はその過ごし方によっては、最終的にプラスへと転じることも可能だと思う。

 問題は次はもうないと見て、研究開発の投資を大幅に縮小してしまうことだ。デジタルイメージングの分野は、センサー技術、画像処理技術の両面で、まだまだ実現できていない技術がたくさんある。言い換えれば、まだ発展する余地が大きく残されているということだ。業界が終わりだと嘆くには、まだまだ早すぎる。

 だからこそ、厳しい冬にあっても、まだ前向きな明るい顔を出すことができるのだ。


関連記事
景気後退が促す原点回帰(2009/02/12)


URL
  PMA09関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/other/2009/03/04/10335.html


( 本田雅一 )
2009/03/04 13:32
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