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【インタビュー】2008年の戦略を訊く[オリンパス編]

~2桁型番への期待は承知している

 PMA08、フォトイメージングエキスポ2008(PIE2008)では、各社から気合の入った新製品が発表された。秋にはPhotokinaも控える2008年だが、これを機に各社の戦略について本田雅一氏がインタビューした。シリーズでお届けする。

 2007年は「Eシステム第2章」として、3機種の新しい一眼レフカメラを発表、プロ機からエントリー機までのラインナップを整備して存在感を増したオリンパス。今年もすでにE-410の後継機「E-420」を発表し、さらにPIE2008にはE-510の後継機と思われるボディも展示された。

 一眼レフカメラ全体の企画責任者である渡辺章氏に、PIE2008の会場でお話を伺った。


日本市場は8倍に、全世界ではもう少し伸ばしたい

渡辺章氏
--昨年、Eシステムのボディラインナップを整備しなおし、再スタートとなった一眼レフカメラ事業ですが、目論見通りの成果を挙げることはできましたか?

 成果という言葉にはふたつの意味があると思います。ひとつは質、そしてもうひとつは量です。

 質においては100点満点。特にE-3に関しては狙い通りの性能と機能を実現できました。多くのカメラ賞をいただき、実際に購入したユーザーの方からの満足度が高いという結果を得ることができました。自分たち自身の達成感、満足度が高いだけでなく、そうした第三者からの評価が高かったことで、新しいEシステムを待っていただいた方にも満足できたのではないかと考えています。少なくとも、E-3の開発陣が投げたメッセージは受け取っていただけたと思います。

 一方、量の面ではもう少し伸ばしたいと思っています。


E-3
--量が思ったほどでなかったのは、上下のラインナップに隙間が大きかったのが原因でしょうか? それともユーザーを受け止める製品の幅が狭かったのが原因でしょうか?

 ユーザーの幅を拡げるという点は、当初考えていた狙い通りに出せました。E-510は初めてデジタル一眼レフカメラを使うという人が、コンパクトで高性能、手ブレ補正機能のあるカメラとして欲しがってくれました。E-410も初めて一眼レフカメラに触れるユーザーの方が多かったのですが、中でも特に若年層、そして女性の比率が高く、E-510とは異なる顧客層から選んでもらうことができました。いずれも今まで我々の製品を使っていただいていなかった方々に、自ら欲しいと選んでもらえましたし、幅広いユーザー層をカバーできました。E-3には従来からのオリンパスファンに満足いただいていますし、新しいお客様にも選んでいただけました。

--ではユーザーの幅は拡がったけれど、量そのものは目標に至らなかったということでしょうか。しかし少なくとも日本では、存在感が比べものにならないほど大きくなりました。

 一昨年から比べると、昨年の実績はワールドワイドでは倍増で、大きな成長を遂げています。国内に関しては8倍以上も売り上げが伸びました。しかし、私としてはワールドワイドでもっと成長を期待していたので、もう少し伸ばしたいと考えています。日本に限れば、世界の中でも最も大きな伸びを示した市場ですし、満足しています。また目標に届かなかったとはいえ、全体的には良いリスタートを切れたと思います。


E-410
E-510

既存ラインナップをグレードアップ

--第2章スタート後の今年は、どのように製品の開発を進めていくのでしょう。

 すでに評価をいただいているラインナップがありますから、それらの製品に対して安定して製品のグレードアップを施していきます。E-420がその最初の製品となります。

--現在はE-3というトップエンドの機種があり、エントリークラスに2つのテイストが異なるE-420とE-510があります。E-510は近くE-520になるのでしょうが、この2層レイヤでユーザーを受け止めることができるとお考えですか? それとも2桁型番の機種が必要でしょうか?

 Eシリーズには以前から2桁が欠番になっています。ひとつの理由として、レンズ付きのE-10、E-20が存在したからです。これまで番号を1桁と3桁だけで揃えてきたので、その間に2桁型番の機種を期待されているのは承知しています。

--今年はE-3のフルモデルチェンジはないでしょう。となれば、今年の年末向けには2桁が入ってくるのでしょうか?

 (かなり間をあけて悩みながら)それに関しては、現時点では何も言えません。


コントラストAFはパナソニックと互換

E-420(ダブルズームキット)
--昨年後半からライブビューが流行しましたが、最初に一眼レフカメラでライブビューを搭載したのはオリンパスでした。しかし昨年のモデルはライブビューこそできますが、そこから発展した機能にまで結びついていません。E-420になって、コントラスト検出式のハイスピードイメージャAFを搭載しましたが、多少時間がかかりました。

 センサーからの映像でフォーカスを合わせるのがハイスピードイメージャAFですが、このAFは速度を上げるのが非常に難しいのです。実用的なAF速度を実現するため、開発に時間をかけて熟成を進めました。アイデアとしては以前からもあるものですから、継続的に研究・開発はしてきました。現在あるコントラスト検出式のAFでは、もっとも高速にピントが合うものになっていると思います。

--ハイスピードイメージャAFは対応レンズと非対応レンズで動作が違うようですが、どのように違うのでしょう?

 対応レンズはハイスピードイメージャAF後、ミラーダウンして測光を行ない、その後、ミラーアップしてレリーズされます。非対応レンズの場合は測光と同時に内蔵の位相差検出AFセンサーを用いて微調整し、その後、ミラーアップでシャッターが切れます。非対応レンズでもコントラスト検出式のAFを行ないますが、厳密なピント合わせまではせず、最後の微調整を位相差検出AFセンサーで行なうわけです。とはいえ、ほぼ近いところまではピントを合わせてから位相差検出AFセンサーでピントを合わせるめ、その分のタイムラグはわずかです。ユーザーの方々が(AF微調整のタイムラグを)意識することは少ないと思います。

--ハイスピードイメージャAFは、同じフォーサーズの松下製コントラストAFと互換性があるのでしょうか? パナソニック製のコントラストAF対応レンズは、レンズ内にコントラストAFを高速化するための情報が入っているとのことでした。

 オリンパスとパナソニックさんは、それぞれ別々にハイスピードイメージャAF(コントラストAF)を開発していますが、レンズの互換性は取るようにしています。現時点でフォーサーズフォーラムで標準化するという話にまでは至っていませんが、オリンパスとパナソニックさんに関しては相互に利用可能です。


E-420(透視図)
--ハイスピードイメージャAF対応レンズやコントラストAF対応レンズに収められている情報というのは、どんなものなのでしょう?

 詳しくは話せませんが、各レンズ固有の情報が入っています。この技術はレンズ特性とボディのAFアルゴリズムとのマッチングが重要なため、相互の互換性検証が必要で、簡単にすべてのレンズを対応に……というわけにはいきません。そこでE-420では非対応レンズでも、ライブビュー中にほぼピントを合わせ、最後に位相差AFセンサーで微調整をするという方法を取っています。これによりすべてのレンズでAFライブビューを楽しむことができます。

--今後オリンパスが発売していくレンズは、どれもハイスピードイメージャAF対応になっていくのでしょうか?

 ハイスピードイメージャAF対応は増やしていく予定ですが、すべてのレンズとは明言できません。前述したように、レンズごとに制御を細かく調整しないと高速AFが行なえないため、優先度を決めて対応したいと思いますが、可能な限り多くのレンズを対応させていきたいとは考えています。

--センサー側の機能と映像処理LSIが対応可能ならば、E-3でもハイスピードイメージャAFが可能だと思いますが、実際のE-3の設計はハイスピードイメージャAF対応になっているのでしょうか?

 今のところ予定はありません。全く不可能ではないと思いますが、大変に難しいと思います。

--今後発売するボディにはハイスピードイメージャAFを搭載していくのですか?

 できる限り付けていけるよう検討したいと思います。


E-420のセンサーはE-3と同等の性能

PIE2008に参考出品されたデジタル一眼レフ
--PIE2008の会場にはE-510の発展型と見られる製品が参考展示されていましたが、E-510に対してライブビューなどを強化した、ある程度予想できる製品になるのでしょうか?

 現在検討中の製品ですから、細かなお話は何もできません。しかし、皆さんの想像、期待を裏切らない製品にしたいと思います。(日本での発売時期を訊かれ)申し訳ありませんが、公表できるときまでお待ちください。

--E-420では画素数こそ変化していませんが、センサーが新しくなったと聞いています。E-410/510のセンサーとどのような点が異なるのでしょう?

 E-420に搭載されたセンサーは、まったくの新規設計で作られたものです。ダイナミックレンジが拡がり、E-3に採用されたものと同等の性能になっています。特にハイライト側が大きく向上しました。


E-420の4/3型LiveMOSセンサー
--白トビとともに、ホワイトバランスに関しても不満の声がユーザーから上がっていましたが、これに関しても改善されたのでしょうか?

 ホワイトバランスの安定度は大幅に改善されました。少なくともライバル製品と比べ、負けない性能にはなっています。これまでのホワイトバランスの安定性がやや悪かったことは認識しており、改善に力を入れたところです。

 さらに絵作りの面ではSAT(シャドウ・アジャストメント・テクノロジ)が顔認識と連動したことも大きな進歩です。たとえば逆光時などにおいて、顔はしっかりとした階調で描きながら、背景も飛ばさずに階調を残すといったトーンカーブが自動で適用されます。コントラストを下げて輝度範囲を拡げているわけでなく、被写体を認識しながら、それぞれのパートの明るさを調整している。そこにライブビューならではの被写体認識が加わったことで進化しました。

--E-3と比べ、絵作りは変化しているのですか?

 人間の目をシミュレートして、どのようなトーンカーブを作るかは、メーカーごとのノウハウです。そうした面での作り方や色再現などは、E-3とほぼ同じにしました。E-410の世代からは多少変化しています。

--E-410/510はAFセンサーの性能に不満がありました。この点は改善されているのでしょうか?

 AFのアルゴリズムには工夫を凝らしているため、改善しています。しかし、小型化を最優先しており、AFセンサー自体の設計は従来から変わっていません。


ロードマップにないレンズも

ZUIKO DIGITAL 25mm F2.8を装着したE-420
--パンケーキレンズ「ZUIKO DIGITAL 25mm F2.8」が発売になりましたが、思い返せば前々回のPhotokina(2004年秋)に渡辺さん自身から話をいただいていた企画でしたね。ずいぶん時間がかかったという印象です。

 2004年秋の段階では、まだ構想段階でしたが、ご存じのようにレンズの設計には時間がかかるものです。薄型レンズのリクエストはユーザーからも多くありました。E-410/420のボディとの組み合わせなら、誰もが欲しがる構成でしょう。我々自身も欲しかったレンズですから、発売できて良かった。

--レンズ内モーターのAF薄型レンズは、おそらくこの製品が初めてだと思いますが、メカ設計などで困難なところはあったのでしょうか?

 大きさ、明るさ。焦点距離など、いろいろなスペックの薄型レンズを検討し、その中からどれを選ぶかについては、かなり議論をしました。モーター内蔵は苦労しましたが、開発担当者が頑張ってくれました。

--25mmパンケーキレンズは、レンズ開発ロードマップには無かった製品ですが、今後はロードマップに存在しないレンズも増えてくるのでしょうか?

 ロードマップで案を提示している製品で発売されていないものはあと1~2本ですから、もちろん、開発・発売を検討しているレンズはロードマップ外にいろいろあります。

 昨年、Eシステム第2章をスタートさせ、一通りの製品ラインナップが揃ったところで各ボディの完成度をグッと引き上げていきます。今後もさらにボディ、レンズともに、システムとしての完成度を高めていきますので、楽しみにしておいてください。



URL
  オリンパス
  http://www.olympus.co.jp/
  オリンパスE-420関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2008/03/14/8123.html
  オリンパスE-3関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2007/10/18/7222.html


( 本田 雅一 )
2008/04/07 00:00
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