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【インタビュー】2008年の戦略を訊く[ペンタックス編]

〜645 Digitalは絶対に開発を再開する

 PMA08、フォトイメージングエキスポ2008(PIE2008)では、各社から気合の入った新製品が発表された。秋にはPhotokinaも控える2008年だが、これを機に各社の戦略について本田雅一氏がインタビューした。シリーズでお届けする。

 昨年、HOYAとの合併交渉などが紆余曲折し、デジタルカメラ事業がどのように変わっていくのか不安視されていたペンタックス。一時はデジタルカメラ事業をたたむのではないか? との噂も出たが、その後、合併交渉もまとまり、ペンタックスはこの4月からはHOYAの事業部として活動を始める。

 ペンタックス取締役・上級執行役員でイメージングシステム事業本部長の鳥越興氏と、イメージングシステム事業部マーケティング統括部商品企画室マネージャーの畳家久志氏に、HOYAとの関係、そして今後の開発体制などについて話を伺った。


合併騒動でも下がらなかった士気

鳥越興氏(右)と畳家久志氏
−−ペンタックスというブランドの先行きという意味では、HOYA内部の事業部として、カメラ事業も含めて従来通りに残ることが決定。4月からは新しい体制となります。その経過において、さまざまな報道がされ、社内的にも不安が拡がったりといったことは無かったのでしょうか?

鳥越 その点は非常に幸いなことに、デジタルカメラを開発しているエンジニアは高いモチベーションを維持してくれたので、本当に助かりました。これはペンタックスのカメラ製品を取り囲むユーザーの暖かい声、声援が直接聞こえてきたからです。昨年はいろいろなことがありましたが、その中にあって開発現場の士気が落ちなかったのは、ペンタックスファンのおかげだと思います。

畳家 現場のモチベーションという意味では、合併に伴うゴタゴタの期間中、むしろ上がりました。合併話、事業の存続といった話は、我々の与り知らぬところで行われていることです。自分たちの立ち位置が不安定で、今後どうなるのか予測できない状況が、一番現場としては困ります。要は“どうなるのかハッキリしてくれ”というのが正直な気持ちでした。

 一生懸命に開発しても、それが世の中に出ないのであれば、集中できません。しかし、カメラ事業の方向性に関しては、すぐにどうするかキッチリ決まり、これまでとは何も変化しない環境で仕事ができると判りました。そのことを、早い時期にきちんと開発陣にメッセージを出してくれた。ならば、資本力などの地盤が強化されるのだから、これまでよりも踏み込める。だからモチベーションは、以前の不安な状況に比べてずっと上がりました。

 今回のPMA、PIEのタイミングでも、K200DとK20Dの両方を同時発表しています。我々程度の規模の会社で、2台の一眼レフデジタルカメラを発売できたのも、モチベーションが高かったからです。K20Dのモデルチェンジはデザインだけを見るとマイナーチェンジに見えるでしょうが、実際の中身はかなり大きな変化を遂げています。K200Dに関しては外装も含めて、完全なモデルチェンジです。これだけのパワーを発揮できるだけの“やる気”を見ていただければ、ペンタックス内に不安がなくなったことを理解していただけるのではないでしょうか。


K20D
K200D

短期的な収支で、PENTAXの将来は決まらない

鳥越興氏
−−HOYAの中でのペンタックスの立ち位置に関して、詳しくお話をいただけますか?

鳥越 ご存じのように、3月31日でペンタックスという会社はなくなり、HOYA株式会社PENTAXイメージング・システム事業部となります。アルファベットのPENTAXが正式な事業部名です。PENTAXイメージング・システム事業の中には、HOYAの事業と重なる部分もありますが、事業統合はせず、独立した事業体として運営されることになります。

−−ひとつの焦点として、HOYAがペンタックスの事業のどの部分に興味を持ち、どこを継続するのか? といった話題が昨年はありました。ペンタックスのデジタルカメラ事業に対するHOYAの評価はどのようなものだったのでしょう?

鳥越 当初、HOYAはカメラ事業に興味がないと報道されたこともありましたが、実際には評価していない段階でした。HOYAはコンシューマ向けのカメラ事業に関して、ビジネスモデルや、カメラ業界におけるペンタックスブランドの位置付けなどについて、ほとんど情報を持っていませんでした。

 そこで私は、マーケティング、商品企画、製品開発の各部署に対して、“自分たちの特徴はどんなものなのか。将来に向けて強みを発揮できる要素は何か”をレポートするよう指示しました。そのレポートをまとめ、HOYAに対してカメラ事業とはどんなものかを知ってもらうことにしたのです。この社内での動きの中でさまざまなアイディアが生まれ、一眼レフカメラを軸足に、豊富でユニークな交換レンズを開発、ラインナップすることで独自の立ち位置を示すという方向を打ち出し、そこにHOYA経営陣も理解を示してくれました。

畳家 我々の方には一眼レフ事業で、今後、どのような独自性を出せるのか? 何がしたいのか? という問いかけがありました。デジタル一眼レフカメラを、誰が、どのように使っているのかを調べてみると、ほとんどの方が旅行のために使っているんです。コンパクトデジタルカメラにない、美しい色や高い解像度、交換レンズ式ならではの創意工夫を施しながら、風景を撮影している人が多い。特にペンタックスブランドをお使いの皆さんに、その傾向が強い。もちろん、あらゆる面で高性能化、高機能化を突き詰めていくのですが、特に風景撮影を重視して画質や絵作り、機能などを作り込むことにしました。

−−少々俗っぽい言い方になりますが、HOYAはしばらくの間、ペンタックスブランドを見守るパトロンになってくれたということなのでしょうか? それとも今後の有望な事業として、積極的に投資していくのでしょうか?

鳥越 パトロンではありません。我々の事業部としての独立性は非常に高いものです。事業責任をきちんと果たしていく必要があります。たとえば、財務や経理、人事といった部署もHOYAに統合されず、PENTAXイメージングシステム事業部の中にあります。すべての事業部責任を、この組織の中で負うというスタンスです。HOYAとしても、ブランド戦略の中で、コンシューマと直接接するブランドとして継続的な投資を行なう意向です。短期的な収支で、PENTAX事業部の将来が決まるわけではありません。


K20Dは風景の画質で差別化

K20Dは74カ所にシーリングを施す
−−発表した2つの新製品ですが、どのようなコンセプトで企画した製品なのか、概要をお話ください

畳家 これまでの一眼レフカメラは、まずどのような性能を発揮させるのか、スペック優先での設計でした。スペックが決まれば、いくらで売ることができるのか値段が決まる。しかし、ユーザー目線で見れば、これはあまり意味のないことでしょう。製品の価格はユーザーが製品を使ったときに、どのぐらいの価値を感じるかで決められるべきです。

 そのように考え方のスタイルを変えて開発した最初の製品が、K20DとK200Dです。ユーザーが利用した時に感じる価値を最大化しようというコンセプトを、商品企画、開発、営業、マーケティングなどが、それぞれの立場で同じ方向を向いて生み出した製品です。以前、K10D、K100Dの時に、開発陣が一丸となって同じ方向を向いて開発したことで、良い製品を生み出せたということをお話しましたが、今回はその枠が事業部全体に拡がったことで、さらに良い製品になったと自負しています。

 もうすこし掘り下げますと、K200Dは誰もが簡単にシャッターを押すだけで良い写真が撮影できるカメラを目指しています。一方、K20Dが目指したのは、もっとカメラが好きな個人のための最強カメラということです。特に風景撮影の多い方に、最適な画質を発揮できるように配慮しています。もちろん、人物の描写も重視していますが、一番力を入れて他社との差別化を図ったのは風景の画質です。

−−風景に向いた画質とは、具体的にどのようなことでしょうか?

畳家 具体的には細かなディテールまで描ききる解像力と、緑領域の表現力です。この2つに拘って画質をチューニングしました。また、ボディの面では防塵、防滴という点も、風景撮影を重視した結果ですし、撮影時の風景モードもそうです。K10Dの時はSamsung Techwinの販売する製品と同じ画質設定でしたが、今回は制御など基幹部分こそ共通で、ペンタックス側でクローズドの開発をしていますが、その上に乗せるアプリケーション部分のファームウェアは、それぞれが独立して開発しているので、画質や機能、ユーザーインターフェイスはかなり異なったものになっています。

−−この2製品は2007年のPMAで、昨年中に発売すると話されていた製品ですよね?

鳥越 その通り、この2台が昨年中に発売すると話していた製品で、それがいくつかの理由で遅れたものです。


K200DはAPS-Cサイズの1,020万画素CCDを搭載
−−以前、鳥越さんは、“どこが変化したのか判らないような簡単なマイナーチェンジだけの製品は出さない”と話していましたが、今回はK100D Superが間に挟まりました。確かにist* DLとDL2のような関係ではありませんが……

鳥越 実はK100Dが予想以上に売れてしまい、調達していた部材をすべて使い切ってしまったんです。そこで新しく部材(具体的にはセンサー)を調達してK100D Superを作ることになりました。とはいえ、名前だけを変えて新機種とするわけにはいかないため、超音波モーター対応やゴミ落とし機能などを追加しました。

畳家 昨年初め頃の市場の動きを見ると、エントリークラスの製品が1,000万画素に移行していっていたので、600万画素の市場はなくなると予想したのです。ところが、ニコンD40も含め、600万画素のカメラが予想以上に売れて、600万画素市場というのが死ななかった。この予測が外れたために急遽、開発しました。

−−K200D、K20Dは本気で昨年中に出すつもりだったのでしょうか?

畳家 本当に出すつもりでした。遅れた理由は開発スケジュールの遅れというよりも、一部部材の調達の関係なのですが、結果から言えば遅れた分だけ、開発に時間をかけて煮詰めることができたので、決して悪いばかりの結果とは思っていません。また、製品として発売できる完成度は昨年のうちにあったのですが、きちんと数を作り溜めてから発表にしないと、K10Dの時と同じように流通やお客様に迷惑をかけてしまいます。

鳥越 日本だけでなく、欧州でも米国でも、K10Dの時のように売るチャンスがあるのに、製品がないという状況だけは避けて欲しいと言われていました。そこで今回は部材調達のスケジュールといった主因もありますが、きちんと作り溜めて一気に出荷できる体制を整えてから発表しようとなり、この春の発売になりました。

−−今後も1年に1回はモデルチェンジしていくという方針に変化はないのでしょうか?

鳥越 1年に1度のフルモデルチェンジは、他社に負けないラインナップを作ることを目的に行なおうとした戦略です。今回、一通りの製品が揃いましたから、完全な製品の入れ替えではなく、毎年、新しい技術を盛り込んで熟成させた製品を出していくという形になると思います。


素性のよいSamsung製センサー

K20Dのセンサー
−−K20DはSamsung Techwin製のCMOSセンサーを採用したことも話題です。このCMOSセンサーは他社との差異化に貢献するキーパーツとなるでしょうか?

畳家 我々がサムスンに要望していたセンサーの仕様は、もう少し良いものでした。要望通りの理想100%ではありませんが、しかし、現在こうして俯瞰してみると、同じ時期のライバルに対しては勝っていると思います。センサーから出てくる信号の素性は非常に良いものです。

−−K20DはSamsungのセンサーを用いることを前提で開発していたのでしょうか?それとも他社のセンサーも並行して評価していましたか?

畳家 今回採用したセンサーは共同開発なので、もちろん商品化が前提です。しかし、どのタイミングで製品に搭載するか?といったことまで決めていたわけではありませんから、K20Dには搭載しない可能性もありました。K20Dに搭載するセンサーは他社製も含めて評価を行ない、結論としてSamsung製の方が優れているということで搭載を決めました。

−−優れているというのは、どのような点でしょう。高画素化で問題となりやすいS/N比などの点で優れているのでしょうか?

畳家 センサーの性能といっても、さまざまな切り口の性能があります。単純にS/N比だけで言えば、同クラスの製品と比べるとかなり良い仕上がりになっています。ただ、センサーの単価は、実は他社製よりも高いんです。それでも価格が高い分だけの性能差があるため、K20DにはSamsung製CMOSセンサーを使いました。


645 Digitalは35mmフルサイズより優先順位が高い

PIE2007で展示された645 Digital
−−K2桁とK3桁のラインナップが定着しましたが、デジタル一眼レフのラインナップに、何か別の製品が加わることはありそうですか? 先日、645 Digitalの開発凍結を発表しましたが、その代わりに35mm判のセンサー搭載機を作るなどの考えは?

鳥越 ラインナップは増やします。645システムのデジタル化は、開発の“凍結”であって“中止”ではありません。新聞には中断、中止といった言葉で書かれてしまいましたが、ペンタックスとしては、一度も中断や中止といった言葉を使ったことはありません。

 凍結という言葉に拘ったのは、凍結ならばいつかは解除できるからです。645システムを活用したデジタル一眼レフカメラの開発凍結は、早い時期に間違いなく解除します。

 ただし、物事には順序があります。まずは地盤造りとして、メインストリームの2機種を盤石なものにして、その暁に中判デジタル機の開発凍結を解除して、すでに所有している645の資産を活かせるようにします。これは絶対に開発を再開させます。これまで3年間引っ張ってきたものではなく、そこでのノウハウを活かした新しい製品になります。従来、参考出展などを行なってきた製品は、すでに発売できるところまで開発が進んでいたものですから、それをこの先に出すのは古い。だから新しく作ります。

−−では35mm判でハイエンド機を作るという考えはないのでしょうか?

鳥越 コンセプトが明確にできれば、開発案としては存在できるとは思います。あり得ないとは言い切りません。将来的にはチャレンジしなければならないテーマでしょう。ビジネスモデルが確立できるなら、ぜひとも挑戦したい。

 しかし優先順位を付けるならば、ペンタックスとしては645 Digitalの方が優先度が高いのです。35mm判の研究開発は行なっていますし、今後も継続するでしょうが、ウチの能力からすれば両方をやることはできません。645 Digitalを発売して、その先には開発する可能性はあります。

−−35mmフルサイズを将来的に意識したレンズラインナップに変化するのでしょうか? それとも、そこまで意識するほど近い将来ではないと考えた方がいいでしょうか?

鳥越 まず、デジタル一眼レフにおけるシステムを完成させる必要があります。我々はこれまで、APS-Cサイズのセンサーでボディのラインナップを揃え、レンズも揃えてきました。現時点のテーマは、きっちりとDAレンズのシステム完成させることです。前述したように35mm判フルサイズのボディは研究開発を行なってはいますが、商品化となると話は違います。35mm判対応のFAレンズがあるじゃないかという意見もあるでしょうが、FAレンズが完全にフルフレームのセンサーに対応できるのか? というと、一部にはデジタルセンサーに対応できないものもあるでしょう。システムとしての完成度を考えれば、簡単に商品化はできません。


趣味の道具としての中判デジタルも必要

645 Digitalの3,000万画素CCD
−−近い将来に再開するという645 Digitalの企画は、業務用のハイエンド製品になるのでしょうか?

鳥越 風景を捉えきれる高画質の製品ということで、かなり高画素のカメラになるでしょう。645 Digitalは当初1,800万画素しかありませんでしたが、風景撮影を本格的にやるならば、もっと画素数が必要ということで3,000万画素に変更しました。

 再開する場合は、風景撮影に耐えられる高画素、高画質で、なおかつ業務用途で使えるトータルソリューションを揃えたものになるでしょう。広告用途、スタジオ常設、印刷用途などを考えると、入力機器として優秀なだけでなく、入力から保存・出力までをシステムソリューションとして提供できなければならない。すべての要素を自分たちで開発するわけではありませんが、提案材料として一貫したものがなければならない。

 しかし、一方で日本ではコンシューマにも中判ユーザーがいますから、彼らの期待に応えられる、アマチュアの趣味の道具としての中判デジタルも必要だと思います。

−−では中判デジタル機をプロ機とアマチュア機の2種類用意するのでしょうか?

鳥越 最初から複数のモデルは持てませんが、理想的には2つ必要ですね。以前、銀塩時代にハイエンドの高価な645一眼を開発していたんですが、このプロジェクトをぶっ潰したことがあります。そんなもの売れませんよ。そのときに必要だったのは、10万円で買える645一眼だったんです。それならば欲しいという人がたくさんいた。手頃なボディ価格で買ってもらうことができれば、645を使おうという方ですから、当然、レンズも揃えようとしてくれる。そうやって中判カメラの良さを知ってもらわなければ、市場は生まれません。

 そうした意味で、低価格の645判デジタル一眼というのも、将来的にはチャレンジしたいですね。仕事で使うのではなく、個人が趣味で使うカメラに大きなフォーマットのセンサーを求めるユーザーはいるはずです。2機種揃えるというのは夢ですが、応用範囲という意味では最初の1機種も幅広いユーザーに受け入れられる製品になりますよ。



URL
  ペンタックス
  http://www.pentax.co.jp/
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( 本田 雅一 )
2008/03/28 01:26
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