デジカメ Watch
最新ニュース
【 2016/01/26 】
【 2016/01/25 】
【 2016/01/22 】
【 2016/01/21 】
【 2016/01/20 】

【インタビュー】写真で生活雑貨を作る写真展「写真生活」


会場の様子
 オリンパスギャラリーで22日から開催されている写真展「写真生活」は、一見写真展に見えない。写真展といえばギャラリーの壁にプリントが展示されているものだが、この写真展ではプリントはギャラリーの入口から死角になるところに展示されていて目立たない。

 入口を入ってすぐのところにあるのは、1.5m四方はあろうかという大画面に画像を投影する仕掛けで、その画像は前に立った人の動きを感知して、変化するようになっている。

 その奥には洋服やソファ、雑貨類が展示されている。写真展というよりも、セレクトショップのような雰囲気なのである。

 実はこれらの雑貨にはすべて、水中写真家の清水淳氏が撮影した写真がプリントされている。Tシャツへや布へのプリントはよく知られているが、携帯電話やデジタルカメラ、食器など、写真をプリントできるとはにわかには信じられないようなものまで並んでいる。

 なぜこのような写真展を開催したのか。清水氏と、雑貨類を制作したデザイン会社アトミックドロップ代表取締役の中川知則氏、デザイナーの白井鮎子氏、原田慎吾氏にお話を伺った。

 なお、「写真生活」は東京 神田小川町のオリンパスギャラリーで、12月5日まで開催されている。開場時間は10~18時(最終日は15時まで)。入場無料。

 また12月7日~19日には、神戸・元町アートギャラリーでも開催される。


左から中川氏、白井氏、清水氏、原田氏
──「写真生活」を開催するに至った経緯を教えてください。

清水 写真は、撮ったらプリントしたりデータで渡したりして鑑賞してもらうのが普通です。写真がほかの形で活用されるのはせいぜい年賀状くらいで、あまり活用されていません。でも、写真は本当はそういうものではなくて、身近なものに使ってもらうこともできます。そういうことをまずは伝えたかった。

 ただ、写真をいろいろなものに転換していくにはデザイナーとのコラボレーションが必要でしたから、旧知の中川さんと、10人のデザイナーの個性を活かして作っていただきました。清水の写真展というよりは、清水と10人のデザイナーの作品展というべきです。

中川 写真は、そのまま保存している人がほとんどです。写真の2次的な利用法を、「生活展」としてアピールしたかったのです。

──会場中央の、人の動きにつれて写真が変化する仕掛けは、どういう仕組みなのでしょう。

中川 ワンダービジョン」というもので、赤外線カメラで人間の動きを検出し、それに写真にかけるエフェクトを連動させています。写真を見るものから遊ぶものへ発想を変えてみました。


ワンダービジョン
スクリーンの前の人の動きに合わせて画像が変化する

赤やオレンジが印象的な展示作品
──展示作品に使われた写真は、このために撮り下ろしたものですか?

清水 最初はありもので行くつもりだったので、候補を提出したらデザイナーからダメが出ました。なので、このための撮り下ろしです。この7月、8月は、お金も時間も今回の撮影に使いました。

──デザイナー側から「こんな写真がほしい」という要求があったのでしょうか。

清水 ええ、色も指定されました。赤や橙、緑など、水中写真では無理難題に思える注文もありました。でもこのおかげで、僕も「水の中にこんなのもいたんだ」と発見がありましたし、写真もうまくなった。また、ほかの水中写真とは違う趣の写真が並んだので、感謝しています。

──水中写真というと、海の青を連想しますが、この写真展では青以外の赤やオレンジがとても印象的です。

中川 海の中は実はカラフルです。自然でないと表現できないような色、これをみんなに知ってもらおうと、色を選びました。

──撮影はどのように行なわれましたか?

清水 フルフレーム型CCDが好きなので、ほぼE-400で撮影しています。E-3も一部使用しています。レンズはシグマの150mm Macroで、1.4倍テレコンとクローズアップのNo.10を2枚つけています。これで手持ちで直径2mmのサンゴの触手の先端を狙ったので、難しい撮影でした。顕微鏡を手持ちで撮るような撮影を強いられたわけですから。

 パネルでプリントを展示している作品は、ZUIKO DIGITALの8mm Fisheyeを使っています。8mm Fisheyeは、水中で使えるように要求してきたレンズです。

 Fisheyeは被写体にべったりくっついて撮るレンズですから、防水ポートをつけたときにワーキングディスタンスが0になるよう、設計さrています。また、どっちにしろ絞るので明るい必要はありませんが、小さくて、周辺まで歪まないレンズになっています。

 デジタルで銀塩のような色を出せるよう、研究しているのですが、フィルムの青が出せました。ブルーの抜けのよさや、太陽などの光源を撮ったときのきれいさは、オリンパスじゃないと出ませんね。


写真を生活に活かす

クッション、ランプシェード、ぬいぐるみ、絵画風パネルなど、すべて写真がプリントされている
──洋服、靴、家具、携帯電話、デジタルカメラ、文具など、さまざまなものに写真がプリントされていますが、これらの品目はどのように決まったのでしょう。

白井 デザイナー自身が使ってみたいと思うものを選んでいます。

中川 そこで、写真をどんなものにプリントできるかを調べる必要がありました。印刷会社の協力も大きかったです。たとえばTシャツなどは、ただ四角い写真を布地にプリントするだけでしたが、現在では、型紙にそのままデザインができるのでシャツ全面に印刷することができます。また携帯電話にいたっては製品にそのまま印刷できる技術がありました。

原田 調べてみて、こんなものにプリントできるんだと驚きました。しかも、ほとんどは一般の人にも手が届く価格でした。

中川 一般のお客様に、こんなものにプリントできるということををアピールしたかったので、まずはなるべく身近なもの、普通の人でも印刷が可能なものからはじめました。Tシャツや靴、ぬいぐるみ、スカーフはネットでも1枚からオーダーできるものを選んでいます。

──水中写真を生活用品にプリントするにあたって、デザイン上で苦労したことはありますか?

白井 実際に使うものですから、お皿やノートにそのまま写真を印刷するとリアルすぎてしまいます。模様に見えるようにしたりして、生活の中で自然に使えるように作るのに苦労しました。そのために色も加工しましたし、サンゴを切り抜いて花のようにしたり、試行錯誤を繰り返しました。


壁にかかっているのがタイル、手前がフォトアルバム
Tシャツと靴、壁にはスカーフ

電卓やデジカメ、携帯電話にもプリントされている
食器やランチョンマット、ノートも

──みなさんが気に入っている作品、自信のある作品を教えてください。

清水 タイルが気に入っています。あのタイルを床に敷いて、壁を白くして写真をかざって、ショールームを作りたいと思っています。


白井 携帯電話ですね。自分のにもやってみたい。けっこうかっこよくできたと思います。

原田 ほかの作品がカラフルなので、男性用Tシャツのデザインはシックな感じを狙ってみたのですが、意外とインパクトがありました。あと、帽子は2日かけて僕が縫ったので、愛着があります(笑)


──来場するみなさんに見てほしいところ、伝えたいことがあれば教えてください。

中川 アトミックドロップはデザインの会社ですが、Webサイトのデザインやグラフィックを主にやっていて、生活に絡む製品のデザインは今回が初めてでした。だからうまくいくか心配でしたが、試行錯誤でなんとかなりました。

 一般の人でも同じだと思います。ペットの写真などで、オリジナルのバックやTシャツを作ることができるし、こういうものを作りたいという気持ちがあればなんとかなる。それが伝わるといいと思います。

白井 展示されているものを、使ってみたいと思っていただけたらいちばんうれしいですね。

原田 写真でこういうことができるというのを見てほしいですね。自分でもしたいと思っていただければうれしいです。



URL
  オリンパス
  http://www.olympus.co.jp/
  写真生活
  http://olympus-imaging.jp/plaza/gallery/2007/gallery071122.html


( 本誌:田中 真一郎 )
2007/11/27 13:22
デジカメ Watch ホームページ
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。

Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.