デジカメ Watch
最新ニュース
【 2016/01/26 】
【 2016/01/25 】
【 2016/01/22 】
【 2016/01/21 】
【 2016/01/20 】

エプソンと村田製作所、モバイル機器向け無接点充電システムで共同開発


発表会でデモを行なったワイヤレス急速充電システム。上がリチウムイオン充電池、下が充電器。充電器に置くだけで充電が行なえる
 セイコーエプソンと村田製作所は27日、ワイヤレス急速充電システムの共同開発について合意を結んだと発表した。デジタルカメラを含む携帯機器向けの技術で、3年以内の実用化を目指す。

 共同開発するのは、機器を置くだけで充電できる小型・薄型の無接点急速充電システム。シェーバーなどの充電で使われている従来の無接点電力伝送は、伝送効率が約30%と小さい。そのため、電池容量が大きく、急速充電が必要な機器への応用は現実的ではなかった。

 対してエプソンが所有する非接触の高効率電力伝送システム「Air Trans」は、コイルを使った電磁誘導式ながら、70%以上の伝送効率を実現。これに村田製作所の急速充電対応のリチウムイオン充電池を組み合わせることで、無接点での急速充電システムを構築する。従来1~2時間を必要としていた充電時間を10~15分ほどに短縮できるという。

 両社が提示する利用イメージは、テーブル上の充電器に対応機器を置くだけで、充電が行なえるというもの。急速充電、ワイヤレスといった特徴に加え、「機器ごとに分かれていた充電器を1つに共有できる」といった利点も挙げている。


デモンストレーションの風景
今回使用したリチウムイオン充電池

充電池を載せると充電が始まった 充電後に見た充電特性

 具体的な開発の分担は、村田製作所が急速充電バッテリーの開発、2次側(バッテリー)モジュールの開発、セラミック応用技術、電磁界および熱シミュレーション技術を担当。同社はリチウムイオン充電池の小型・薄型モジュールや、電源回路技術で実績を持っており、大電力の急速充電に対応する充電池を開発。エプソンでは、今回の共同開発が成立した背景として、村田製作所の急速充電池に負うところが大きいとしている。

 ただし現段階では、充電池の容量密度が一般的なものより低いレベルにとどまっている。また、電源系の温度上昇も問題になるという。その辺りの改善を今後の開発課題としている。

 一方エプソンは、ワイヤレス急速充電システム用ICの開発、高効率電力伝送コイル/デバイスの提供、システムの開発とサポート、1次側(充電器)モジュールの開発を担当する。エプソンのAir Transには、安全面で必須となる金属などの異物検知、ID認証などを含み、安全性に問題があると電流を遮断する。もちろん回路自身はコストアップするが、利便性を認めてもらえれば普及するとの考え。同社は4年前より非接触の充電システムを各種の展示会で披露していた。


 また、すでにエプソンは、20mAhまで対応するシステムとして「AT05」をサンプル出荷している。それに続く1,000mAh対応のAT25を2008年5月に量産、共同開発の対象となる急速充電タイプを2009年に量産するという。


利用イメージ
要素技術の関連図

村田製作所が開発するリチウムイオン充電池の特徴
エプソンの無接点充電システム「Air Trans」のロゴ

充電台と端末側の模式図

 発表会で村田製作所の執行役員、技術・事業開発本部の戸川一也統轄部長は、「互いの技術を持ってこれば、もっといいものができるのではと考えた。個別に技術を持っていたのでは無理がある。1次側(充電器)と2次側(充電池)のマッチングを考え、互いにここは一緒にやって行こう、というのが開発の背景」と語った。

 セイコーエプソンエプソン半導体事業部の武田浩副事業部長は、市場にあるモバイル機器の多くは、ACアダプターを介して電池がコネクタとつながっているのが現状。その間を無接点のコイルとコイルで接合する」とイメージを紹介。また、「インフラが整うまでが大変だが、利便性を考えると新しいコンセプトでモバイル機器を使えるのでは」との期待を込めた。

 通信キャリアやセットメーカーへの具体的な働きかけはまだ行なっていない。「利便性をわかってもらえれば、自然とインフラができて行くのでは。売上についても市場がまだない状態なので、事業計画ができるような段階にない」(エプソン)という。

 なお村田製作所は、同技術のデモを10月2日に開幕するイベント「CEATEC JAPAN 2007」に展示する予定。


村田製作所執行役員の技術・事業開発本部の戸川一也統轄部長 セイコーエプソン半導体事業部の武田浩副事業部長


URL
  エプソン
  http://www.epson.jp/
  ニュースリリース
  http://www.epson.jp/osirase/2007/070927.htm
  村田製作所
  http://www.murata.co.jp/
  ニュースリリース(PDF)
  http://www.murata.co.jp/news/2007/070927.pdf


( 本誌:折本 幸治 )
2007/09/27 19:19
デジカメ Watch ホームページ
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。

Copyright (c) 2007 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.