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【インタビュー@Photokina 2006】
ビジネスも技術もまだまだ伸びるコンパクトデジカメ

~キヤノン イメージコミュニケーション事業本部DC事業部の真栄田雅也事業部長に聞く

 今回のPhotokina直前に発表された新しいIXY DIGITALシリーズとPowerShotシリーズは、高速な顔認識技術と顔重視の露出やストロボ制御、それに高ISO感度対応などの新機能を搭載。これまで保守的な印象が強かったキヤノンのコンパクトデジタルカメラだが、久々にハードウェアの中身で攻めてきたという印象だ。

 フロッピーカメラのQ-PIC、それに初代IXY DIGITALと、キヤノンのデジタルスチルカメラに関わり、現在はコンパクト機の責任者でもあるイメージコミュニケーション事業本部DC事業部事業部長の真栄田雅也氏に話を聞いた。


キヤノン イメージコミュニケーション事業本部DC事業部事業部長の真栄田雅也氏
-- 今年前半、平均単価下落や出荷数の伸び悩みなど、世間ではデジタルカメラ業界の先行きに不安感を感じるというレポートが多かった。ところが今年後半になると、嘘のように好調です。このペースは今後も継続するとお考えでしょうか?

 「デジタルのコンパクト機は、今後もまだまだ堅実にに伸びていきます。我々の予測では、2009から2010年には1億台を超えるだろうと見積もっています。理由は商品力が確実に向上していることがあるでしょう。ワールドワイドで新市場が拡がっていることもありますが、たとえば成熟しきったと言われる日本国内も、まだまだ伸びています。キヤノンの場合、昨年比で1割程度の販売増です。魅力が増した製品が手頃になったことから、従来の機種を買い換えるユーザーも多くなってきました」。

 「さらに市場の潜在力も、まだまだ残されています。たとえば北米でのPCの世帯普及率は60~70%に達していますが、デジタルカメラはまだ5割にしか達していません。加えてカメラは世帯単位で購入するものではなく、個人の道具として購入することが多い。個人普及率で考えれば、さらに普及が進む余地が残されています。そのほかの地域を見ても、確実に成長、あるいは新規市場の立ち上がりなどが見られており、着実に1億台市場へと歩んでいるのがわかります」。

-- キヤノンは高付加価値機の生産を大分工場で行なうことにこだわりをもっているようです。キヤノン製コンパクトデジタルカメラのうちどの程度が日本で生産されているのでしょう? 国内生産でのコスト競争力に、将来的な問題が出る可能性はありませんか?

 「全体の6割ですが、ご存知のように大分工場は現在さらに拡大させているところです。国内での生産量は今後も増やしていきます。現時点でも十分な競争力がありますが、まだまだコスト競争力は強化できます。今後も国内生産比率は変化させず、ワールドワイドの市場拡大に合わせて生産力の増強を継続していきます。国内生産を継続するもうひとつのポイントとして、やはり高付加価値路線があります。国内生産でしか実現できない品質やデザインなどを実現し、製品の付加価値を高めることができれば、相対的にコスト競争力を高めることができます」。

-- ではキヤノンならではのユニークな付加価値とは、どのようなところにあるとお考えでしょう?

 「やはりカメラですから、画質が一番ですね。それに加え、カメラを持つ歓びを感じさせるモノとしての価値を演出したい。最新の生産技術とデザイン、それに最新の画像処理技術や光学技術の集合体としての魅力がキヤノン製コンパクトデジタルカメラの魅力だと思います」。


-- 手ブレ補正機能の搭載が遅れ、高感度対応でも後を追う形で、薄型化も他社の方が先行していました。その中でキヤノン製品が世界的に売れてきたわけですが、しかし映像処理チップやその周辺ソリューションが整備されてきて、他社製品も全体に性能や画質が底上げされてきました。たとえば韓国メーカーが、デザインにこだわった製品を安価に提供し始めると状況は一変するかもしれません。そうした懸念は持っていませんか?

 「それは常に危機感を持っています。我々としては、あらゆるユーザー層にアピールできる総合的なラインナップを作り、製品の性格を明確に分けられるように企画を進めています。加えて、さらに良い画質での撮影、コンパクトさ、撮像領域の拡大、ズーム倍率とISO感度の向上など、改善していかなければならないところは、まだまだたくさんあります。つまり、ライバルよりもさらに前へ、前へと進む余地が多く残されているということです」。


DIGIC IIIと顔認識機能を搭載したPowerShot G7
-- 確かにDIGIC IIIに搭載された顔認識機能は、今回、富士フイルムが発表したものと並んで使い勝手がいいですね。機能的にも性能的にも、初期の顔認識とは隔世の感があります。

 「実は顔を認識する要素技術はさほど重要ではありません。その先、顔を認識することでストロボ光量の調整や露出制御に活用し、人間を中心にした撮影を可能にします。より良い写真の撮影に活用することが重要なのです。性能面でも高速での認識が可能なため、デフォルトで顔認識がオンになっています」。

-- DIGIC IIIに搭載した顔認識機能や高ISO処理は、他社が先行していたものですが、すぐに追いついてきました。こうした要素技術には、どの程度の蓄積があるのでしょう?

 「非常に大きなバックボーンが背後にはあります。現在の処理チップでは処理しきれない、製品には搭載できない画像処理アルゴリズムを、社内にはたくさん持っています。数多くの処理手法の中から、その時点で十分に高速性を実現できるアルゴリズムを選んで、DIGICとともに製品に実装しています。現在の1,000~10,000倍ぐらいの処理能力にならなければ搭載できない技術もありますから、まだまだDIGICの進化とともに新しい画像処理機能や高ISO対応ができるようになります」。

-- 要素技術を多数保有していることは間違いないでしょう。しかし、実際に製品レベルへの機能実装となると、やや遅れ気味。他社が製品を出してから後を追うように対応するという印象があります。

 「これでも、いつも完成ギリギリのところまで引っ張って、可能な限り新しい技術を投入しようとしています。もちろん、もっと早く他社に先駆けて投入したいとは思っているのですが、本当に良さを実感できるところまで熟成させてから搭載しなければ、お客様のメリットにもなりませんし、そもそも実際には使い物にならない機能になってしまいます。十分な実用性を確保してから搭載という方針です」。


-- シグマがDP1というAPS-Cサイズセンサーを搭載したコンパクトデジタルカメラを発表しました。より高画質を実現できる大型センサー搭載のコンパクトデジタルカメラに、キヤノンは興味を持っていますか?

 「技術、市場性両面で可能ならば取り組みたいテーマです。キヤノン内部では、以前から同様のアイデアはありました。しかし、デジタルカメラとしては新しいタイプの製品ですが、別の視点では従来の銀塩コンパクトカメラの受光部をセンサーに置き換えたものとも言えます。市場ニーズや部材コスト、どの程度の性能・画質を引き出せるか。そして適正な価格はといった点を慎重に検討したい。新規分野の開拓は、一度失敗すると市場が壊れてしまう可能性があり、失敗は許されません。消費者にきちんと受け入れられる商品性を持つものになれば、様々な形で製品化ができるでしょう」。

-- 最後に今回のPhotokinaについて。カメラ単体よりもフォトソリューションの提案といった展示が多かった。これは今後のキヤノンの戦略と結びついたものなのでしょうか?

 「写真が電子化され、写真事業全体が電子事業に変化しました。我々は電子化された写真業界に取り組む事業基盤として、圧倒的に優れたデジタルカメラとコンパクトフォトプリンタの開発を進めてきました。これらを入り口から出口に至るまで、トータルでのフォトソリューションを提供する大きな軸にしようとしています」。

 「2010年にはワールドワイドで年間1,000億枚、稼働カメラ1台あたり月間十数枚のデジタル映像がプリントされるようになると予想しています。そのうち半分は自宅で出力されるでしょう。リビングルームで写真を手軽に印刷する文化が定着すると見ています。熱昇華型プリンタのエンジン部を自社開発し、インクと用紙を一体カートリッジにすることで撮影した写真をストレスなく印刷まで進めるように工夫したのも、そうした将来のトレンドを睨んでのことです。今後も、写真の撮影とその印刷を手軽に、誰もが迷うことなく楽しめるように開発を進めていきます」。


【お詫びと訂正】記事初出時、キヤノン製コンパクトカメラの国内生産比率を1割と記載しましたが、正しくは6割です。お詫びして訂正いたします。



URL
  キヤノン
  http://canon.jp/
  Photokina 2006
  http://www.koelnmesse.jp/photokina/

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( 本田 雅一 )
2006/10/01 00:28
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