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E-400
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かつてのカートリッジ型小判フィルムの110フォーマットに近い小型センサーを用いたフォーサーズフォーマット。その構想発表時から、消費者の間では待ちこがれていた製品がある。35mm判フィルム用カメラを基礎にした製品では達成し得ない、小型軽量の一眼レフカメラシステムである。
オリンパスが欧州で発表したE-400は、従来のE-システムに比べボディ、レンズともに小型化を達成している。日本からの注目も熱いE-400だが、しかし欧州以外での発売予定がないという。
では日本ではどうなるのか? オリンパスイメージング 商品戦略部 商品グループ デジタル一眼レフ担当部長の渡辺章氏によると、来年のPMAにおいてE-システムの大変革があるという。どうやらE-400の改良モデルが、PMA 2007において発表されるようだ。
※編集部注:E-400は14日に欧州で発表されたE-システムの最新機種。有効1,000万画素CCD、2.5型液晶モニター、xD-ピクチャーカードとCFのダブルスロットなどの装備が129.5×53×91mm(幅×奥行き×高さ)、375gのボディに収められており、デジタル一眼レフとしては世界最小、最軽量である。850ユーロ程度で11月に欧州のみで発売される。
ちなみにインタビューに登場する「OM」シリーズは、1972年に発売された「OM-1」に端を発する同社の小型銀塩一眼レフカメラ。OM-1のサイズと重量は136×50×83mm、510g。
E-400のプレスリリース(英文)
http://www.olympus.co.uk/corporate/presscentre.cfm?artID=41256904004CCF439CDA830C0447C87D802571E80077DDBF
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映像システムカンパニー マーケティング本部 映像商品企画部 商品企画1グループの渡辺章 デジタル一眼レフ担当部長
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-- 小型システムが登場するとは聞いていましたが、実物を見るまでは、実はさほど期待していませんでした。ところが手にしてみると、小型レンズも相まって実にポータビリティが高い上、機能的にも充実している。小型のフォーサーズカメラは誰もが望んでいたはずですが、E-400の企画はいつ頃からスタートしていたのでしょう?
「企画という意味では、フォーサーズを始めた頃から、E-1のようなプロフェッショナルの方向とは別に、是非とも取り組みたい商品として話は挙がっていました。ただ、初期の段階ではデバイスやバッテリなどの兼ね合いもあり、目標とするサイズにまで縮小できるかどうか、確信を持つことができなかった。そうした中でフォーサーズのスタートアップでは、E-1の開発に集中することになったのです」。
「その後、軍艦部を廃したE-300の開発に取り組み、2年前から本格的に小型システムの開発を始めました」。
-- フォーサーズというフォーマットの特徴を考えれば、小型化はかなり強い声があがっていたのでしょうね。
「フォーマットサイズの小ささや、オリンパスの企業イメージもあって、ワールドワイドで小型化の声が強かったことは確かです。中でも日本からの声が大きかった」。
■ OMシリーズとほぼ同サイズのE-400、日本発売は……
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E-400
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-- 開発するにあたっては、具体的にサイズの目標を定めていたのでしょうか?
「デザインするにあたって目標としたのは、OMシリーズのボディサイズです。横にOMを並べて、それと同じようなサイズにするためには、どうするべきかをずっと考えながら開発を行ないました。結果的に、内蔵ストロボを除くとほぼOMと同じサイズになっています」。
-- どのような工夫を施して小型化を達成したのでしょう?
「具体的に、ボディの中にどのように機構部を組み込むかを検討したのはこの1年ぐらいのことです。もっとも気を遣い、また苦労したのは、ボディの目に付く部分を薄くすることですね。フォーサーズフォーマットはバックフォーカスが長いと言われますが、マウント部はレンズ部と連続するようにデザインすることで厚みを感じさせないことも可能です。しかしそれ以外のボディ部分は、デジタルカメラとは思えない薄さにしたい」。
「そのために、中身は全部作り直し、従来のE-システムカメラと共通するコンポーネントはありません。ミラーも、シャッターも、ファインダーも、あらゆる部分が変わりました。ダストリダクションのユニットも、従来よりひと回り小さいものを新開発しています。あらゆる部品を見直し、わずかづつでも小さくしました」。
-- フォーサーズはセンサーそのものが小さいという有利な面もありますね。しかし、従来はさほど小さいという印象はありませんでした。部品の再設計だけで達成できたのでしょうか?
「元々フォーマットが小さいというのは、たしかにその通りです。しかし、各コンポーネント、特に可動部の信頼性や性能を出すには、ある程度のサイズも必要です。今回はパーツを小さくし、さらにミラーボックスを中心に外に配置していたコンポーネントを、少しでも中心方向に食い込ませるよう、様々なコンポーネントの配置を入念に詰めました。自画自賛ではありませんが、今回の製品に関しては、自分たちでも、よくここまで小さくなったなと思うほどです」。
-- 製品の位置付けとしては、シリーズ中のどのあたりになるのでしょう?
「価格帯で言えば、E-500よりも若干上の価格になりますが、欧州向けにしか出荷予定がないため、日本での位置付けに関してはまだお話しできません」。
-- 年末商戦を控えたこの時期、日米での発売予定がないというのは、E-400そのものを発売する予定がないと捉えるべきなのでしょうか?
「日米に向け、年内にE-400が発売されることはありません」。
-- 先ほど、システムの小型化について日本市場からの声が大きいとお話ししていました。その話とやや矛盾する印象を受けるのですが?
「E-400は予定よりも開発日程が延び、作り溜めをする期間を設けることができませんでした。このため、年末商戦に向けてワールドワイドに出荷するには数が足りないという事情があります。国内投入しない理由は、純粋に数量の問題だけです」。
■ E-400は新世代E-システムの定番シリーズに
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E-1後継機のモックアップ
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-- ではE-400の日本市場投入は来年になるということでしょうか?
「来年になれば、来年の製品があります。PMAの時に、来年のE-システムについてお話します。PMAでの発表は、皆さんに満足していただけるものになると断言できます」。
-- つまりE-400よりも、もっともっと楽しみな製品が登場するということでしょうか?
「その通りです。今回、モックアップとして展示しているE-1後継機を含む、新しいE-システムのラインナップが発表されることになります。ただ、そのためには今しばらく、PMAまではお待ち下さいというのが、日本国内に向けてのメッセージです」。
-- これまでのE-システムは、上から下までユーザー層に合わせたラインナップではなく、ボディの設計思想が異なる複数の商品の集まりで、ややわかりにくいという印象がありました。PMAでの発表は、これを整理したものになると考えていいでしょうか?
「ターゲットのユーザーが明確な製品のラインナップを揃えます。いくつとは言えませんが、きちんと製品の系譜がわかる、予想できるような整理されたものです」。
-- E-400を国内でも発売して欲しいと期待する消費者に応えるようなシリーズもあるのでしょうか?
「もちろん、E-400に注目する方々の気持ちを裏切るようなことはしません。来年まで我慢していただくからには、その借りを“耳を揃えて返す”だけのものを用意しています。トップエンドにはE-1後継機があり、残りのいくつかのラインの中にE-400とその後継機というラインも含まれます。E-1ユーザーには、次のモデルを待たせすぎだと厳しい声をいただいていますが、来年発表予定の新E-システムのボディに関しては、“さほどお待たせせずに”お手元に届けることができます」。
-- E-400はボディだけでなくレンズの小型化も同時に行なうことで、システムトータルのコンパクトさも引き出しました。しかしダブルズームだけで終わりでは寂しい。薄型単焦点や他のズームバリエーションなど、小型軽量レンズを別途シリーズ化する予定はありませんか?
「E-システムを始めた当初、E-1に似合うプロフェッショナル向けレンズを揃えていったように、E-400とその後継機に似合うレンズも必要ということはきちんと理解しています。前述したようにE-400は、新世代のE-システムの中で定番化していくシリーズですから、当然、それに似合うレンズも揃えていきます。薄型レンズなども、当然、視野には入ってきます」。
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E-400とセットの標準ズーム「ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6」。サイズは65.5×61mm、重量は190g。最短撮影距離は25cm
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E-400とセットの望遠ズーム「ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0-5.6」。サイズは65.5×72mm、重量は250g。最短撮影距離は90cm
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-- センサーは今回、1,000万画素になりましたが、高画素化による悪影響などはありませんか?
「システムトータルでE-500と同レベルを維持しました。センサーはCCDですが、従来とは異なる構造になったことで特性が改善しています」。
-- 来年、大きく変わるというE-システムのセンサーも、やはり同様のセンサーが採用されるのでしょうか?
「その点も含め、次期E-システムの詳細はPMAまでお待ち下さい。いろいろと話題を提供できると思います」。
■ 防振機構も“さほどお待たせせずに”
-- これまでE-システムには、防振対策機能がレンズ側にもボディ側にもありませんでした。今後、防振対策をどのようなアプローチで進めるのでしょう。
「我々はすでにCAMEDIA μ750で、センサー移動式の手ブレ補正機能を完成させています。オリンパス内部では技術としては確立しており、評価も進んでいます」。
-- 特許など知的所有権の問題はないのでしょうか? また、μ750で採用したシステムは一眼レフにも応用可能なものなのですか?
「μ750を発売する時点で、すでに知的所有権の問題はクリアしています。加えて、同じシステムは一眼レフカメラにも応用が可能で、研究開発は進めています」。
-- 次期E-システムボディのラインナップと同様、ボディ内防振機能も“さほどお待たせせずに”提供していただけるのですか?
「そうですね。ボディ内手ブレ補正機能搭載で、さほどお待たせすることはありません」。
-- ますます楽しみなのですが、期待できそうという印象と、どんなものになるのか雲をつかむような印象が入り交じった複雑な心境です。もう少し具体的に次期E-システムを想像できるような話はありませんか?
「まず、繰り返しになりますが、次期E-システムの中でE-400のラインは定番化されます。しかし、日本の皆様にはPMAまではお待ち下さい。“これまで新製品がなかなか出てこなかったのに、いったいオリンパスの何が変わったんだ?”と思われるぐらい、いろいろな製品が出てきます。PMAでは“これぞフォーサーズだ!”と、誰が見ても納得できるものになります。すべての製品が、フォーサーズの特徴を活かした、捨て駒のない納得できるラインナップです」。
「開発体制に関しても、製品の提供速度、モデルチェンジサイクルなどに関して厳しい声を数多くいただいています。しかし、フォーサーズの第二章に向けて、“モデルチェンジで待たせることが2度とない”体制が整いました。開発リソースの強化も行なっています。是非、来年のPMAに期待してください」。
■ URL
Photokina 2006
http://www.koelnmesse.jp/photokina/
( 本田 雅一 )
2006/09/28 21:32
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