デジカメ Watch
最新ニュース
【 2016/05/27 】
【 2016/05/26 】
【 2016/05/25 】
【 2016/05/24 】
【 2016/05/23 】

【インタビュー@Photokina 2006】
歴史と伝統を大事にしたうえでソニーらしさを

〜ソニー AMC事業部長の勝本徹氏に聞く

Photokina 2006
会場:独 ケルン ケルンメッセ
会期:9月26日〜10月1日



 様々な議論を呼んだデジタル一眼レフカメラ業界への参入表明、提携先であったコニカミノルタの撤退、単独での市場参入と、2年前、デジカメWatchの開始とほぼ同じくして開催された前回のPhotokina以降、これほど市場でのポジションが変化したベンダーもないだろう。2年前は想像もしなかったが、しかし今やソニーのαは確実に市場での存在感を増してきている。

 ソニー デジタルイメージング事業本部AMC事業部長の勝本徹氏に、Photokina会場でα事業の現況と将来について話を聞いた。


ソニー デジタルイメージング事業本部AMC事業部長の勝本徹氏
−− デジタル一眼レフ市場への参入宣言とともに、勝本氏もメディアへの露出が増えていましたが、そもそものカメラ事業の関わりを教えていただけますか?

 「元々は大学で物理を専攻していた時に、趣味というよりも必要に迫られて写真を始めました。フィルムの現像から印画紙への焼き付けなども一通り、そこで憶えたんです。その後、プライベートでも風景などを撮影していました」。

 「ソニーに入社後は主にビデオカメラ、当初は8mmビデオカムコーダの開発を行ない、その後、テレビ事業を経て3〜4年前にデジタルスチルカメラの事業を担当するようになりました。サイバーショットMシリーズなど、ちょっと変わった新しい分野を開拓する製品などを作ってきました。そして昨年、参入宣言とともに一眼レフカメラに取り組んでいます」。

−− α100の発売直後は、ポーンと急激にシェアが跳ね上がりました。最近は他社製品も登場し、やや販売台数も落ち着いてきたようですが、予想以上のスタートだったのではないでしょうか。現在のビジネス状況をどのように自己分析していますか?

 「最初に一眼レフ事業に関して発表した時、我々は1年目で10%ぐらいのシェアがひとつの目標になると考えていました。そして、それを基礎にしていつの日か20%ぐらいの市場を持つことができればと考えていたのです」。

 「ところが実際に事業を始めてみると、他社の新製品、たとえばD80やEOS Kiss Digital Xなどが揃った後も、10%強ぐらいのシェアを維持できています。我々が期待していたよりも、ずっといいペースで認知を得ていると思います」。

−− 日本以外の地域ではいかがでしょう?

 「欧州でも権威ある賞をもらったりと、ソニーのαという製品がかなり浸透してきているとは思います。各国ともシェアは同じぐらいで、おおよそ10%ぐらいの市場シェアを維持できています」。


−− 好調の原因は何でしょう?

 「我々のカメラ事業はまだ始めたばかり。たとえるなら“見習い”の域を出ていません。一方で一眼レフカメラ市場は伝統や歴史が重んじられる市場であると感じています。そうしたことを認識した上で、中身はハイテクを満載しているけれど、しかし伝統的で、なおかつ新しさを感じるデザインを施し、営業面でも既存のαユーザーに対する誠意を尽くしたつもりです。こうした、写真文化に対して真摯な姿勢で臨む姿勢を、お客様がある程度受け入れていただけたのではと思います。安心感や重厚さを求めるユーザーに対しても、きちんと訴求できる製品になったと考えています」。

−− 初期のユーザー層は想定していたものでしたか?

 「発売直後に購入していただいたユーザーは、既存のαマウントレンズを持っている層です。ボディだけを購入するユーザーの比率が非常に高かったことから、これがわかります。発売後、1〜2カ月はそういう傾向がどの国でもありました。しかし、時間が経過するとダブルズームキットの割合が急伸し、初めて一眼レフカメラを購入するユーザー層にも認知が拡がってきました」。


一眼レフに見えないような製品は作らない

α Sweet Digital(右)とα100
−− 正直に感想を言えば、α100は各種のシンボリックな機能は搭載しているものの、しかしもう少しここが良くなっていれば……と思うところも少なくありませんでした。次期モデルはどのように進化させていきますか?

 「今回、やや高めの価格設定ながらエントリークラスの製品としてスタートしました。もくろみ通り、コンパクトデジタルカメラからステップアップするユーザーと、昔からのαユーザーの両方に満足いただける製品になったと思います。この先をどうするのか、実は次の展開をどのようにするか、迷っているところはあります」。

 「ひとつはユーザーが次のステップに進めるよう、上位モデルを発売すること。もうひとつは市場全体の8割を占めるエントリークラスの製品を強化すること。開発としては、もちろん両方を並行して進めていますが、商品をどのようにまとめ、どのような位置づけで販売していくかなどはまた別の判断になります」。

−− α100は、まだ“ソニーのカメラ”という雰囲気の製品ではないように感じました。では、ソニーのカメラとはどんなカメラなのか。ご自身の考えをお聞かせ願えますか?

 「“ソニーらしさ”というのは、常に掲げられるテーマですが、その点でも今後の舵取りを悩んでいるところはあります。というのも、電子回路の設計やデバイス、ソフトウェアの一部などはソニーの技術に置き換えられていますし、内製の1,000万画素センサー、手ぶれ補正制御のソフトウェアなど、実は細部にまでソニーの技術がα100には詰め込まれているんです。他にも、背面液晶ディスプレイやバッテリ技術、省電力技術などもソニーのノウハウが反映され、製品が改善されました」。

 「一方で外見だけを見て、さらにカメラのメカ部分や光学部分を評価して、コニカミノルタと変わらないと言われることもあります。また操作性やGUIの“こうあるべき”といった考え方もあえて変えていません。先ほども申し上げたように、一眼レフカメラには伝統と歴史があります。我々の技術はふんだんに盛り込まれているのですが、外見からはそれが見えにくいということはあると思います」。


−− 80年代から90年代前半にかけてのソニーの強みは、アナログ信号処理でした。デジタルドメインにおいて、ここでの強みがあるとお考えですか?

 「サイバーショットやハンディカムでの研究開発成果を生かせると考えています。それらを単にソフトウェアとして実装するのではなく、自社で開発するデバイスに直接実装するといったことを進めています。加えてソニーの広色再現域のテレビモニター上で、美しく写真を鑑賞できるようにするなど、他のソニー製品と組み合わせた場合の体験レベルを高めることも重要でしょう。様々なチャレンジを行なえる可能性があると思います」。

 「しかし伝統と歴史を重んじるユーザーの期待を裏切らないよう、とんでもなく斬新で、とてもデジタル一眼レフカメラには見えないような製品は作りません」。

−− ソニーだから前衛的デザインの斬新なエレクトロニクス製品でなければならない、といったわけでもないでしょう。元々のソニーの強みは、製品の強さであってデザインの強さではなかったはずです。

 「基幹部品をすべて内製できる点は、商品の力として現れてくるはずです。イメージセンサーのスペックを指定し、最適と思われる仕様のセンサーを調達できます。背面液晶もサイズ、解像度、コストのバランスを自分で決めることが可能です。現在はコニカミノルタの光学技術もあり、一眼レフカメラに必要なすべてを社内調達できる点は、今後の開発を有利に進められるところです」。


歴史と伝統を大事にしたうえでソニーらしさを

−− α100の競争力を高めているアンチシェイク技術に加え、レンズ側でも対処するといった2面対策は行なう予定はありませんか? ソニーは光学手ブレ補正機能を持ったレンズを、ビデオカメラなどでも持っていました。

 「過去のレンズを全て活かすためにも、ボディ内手ブレ補正機能にこだわりたいと思います。手ブレ対策は現在の手法を、さらに改善するための開発努力をしていきたい。おそらくレンズ側での防振対策は、今後もずっとやらないでしょう。余計な補正光学機構を入れない方が、画質面でも有利ではないかと考えています」。

−− エントリークラスの製品に最初に1,000万画素センサーを持ち込みました。実際、購買時に重視する要素として、いまだに画素数は大きなウェイトを占めていますし、画素数が少ないと価格も安くせざるを得ない。今後、画質の維持とセンサーの開発トレンドなどを睨みながら、どのように推移していくと予測していますか?

 「毎年これで十分と言われながら、しかし実際にはユーザーがより高画素なカメラへとシフトしていく傾向は止まりそうにありません。ユーザーが望んでいる限りは、高画素化という価値を追求し、最新の製品を届けていくことになります。ただし、ソニーとしてあえて高画素化を先導していこうとは思いません。画質と画素数のちょうどいいバランスを見極めながら判断していきます」。

−− 勝本さんはビデオカメラの出身とのことですが、ソニーが長年シェア首位をキープしてきているビデオカメラの技術やノウハウのうち、αシステムに活かせそうなところはありますか?

 「ビデオと静止画は本質的には異なるものですから、ノウハウの一部は活用できると思いますが、一眼レフカメラで動画撮影など機能面での統合は、本当にその方向が正しいのかな? という疑問はあります。技術的にはビデオカメラと一眼レフカメラの融合は可能ですが、そこにニーズがあるかどうかは研究の余地がありますね。本当にそれがユーザーにとって楽しいことなのかどうか? 現時点では判断できません」。

−− ビデオカメラという分野では、ソニーは王様であり続けていました。そのためか、独自の技術で突っ走ることも少なくありません。ある意味、ソニーらしいビジネスが一番色濃く残っているのがビデオカメラという印象です。しかし、現時点のαは、既存のコニカミノルタユーザーに対する配慮を前面に押し出していますね。どちらかといえば保守的なイメージもありますが、ビデオカメラと同じように、一眼レフカメラでも“突き進む”ようになるのでしょうか?

 「どこかの時点で、ソニーらしく独自の技術やアイデアを基礎に突き進むことはありますよ。しかし、その前にα100の系列で、きちんとカメラメーカーとしての基礎を築いていかなければなりません。歴史と伝統を大事にしたうえで、別のところで独自性を出し、積極的に市場に提案をしていきたいですね」。


エントリーモデルにはさまざまな切り口の製品を投入

−− 今後のボディラインナップをどのように作っていく考えでしょう? ローエンドとハイアマチュア向けに2つの開発が進んでいるとのことですが。

 「ハイアマチュア向けの製品クラスは、特定メーカーへの思い入れがもの凄く強い傾向があります。ですから、ハイアマチュア受けの製品は、αのファンに向けて作り込んでいきます。このクラスは、おそらく他社製品ユーザーからの移入が多くはないでしょう」。

 「一方、コンパクト機ユーザーがステップアップするための入り口は、1機種だけでなくさまざまな異なる切り口の製品を投入することで増やしていきたい。私はPhotokinaの参加は今回が初めてのことです。他社の提案などを注意深く観察しながら、どのような可能性があるのかを見極めていこうと思います」。



URL
  ソニー
  http://www.sony.co.jp/
  ソニー α100 関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2006/06/07/3950.html
  Photokina 2006
  http://www.koelnmesse.jp/photokina/


( 本田 雅一 )
2006/09/27 11:48
デジカメ Watch ホームページ
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。

Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.