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米Microsoftの新画像フォーマット「Windows Media Photo」とは

~高圧縮・高再現性を確保したデジカメ向きの画像形式

WMPの概要
 米シアトルで開催されていたハードウェア開発者向け会議「WinHEC 2006」で、米Microsoftは主にデジタル写真の高品質・高効率圧縮を目的にした新フォーマット「Windows Media Photo(WMP)」を発表した。

 WMPは、JPEGなど他の主な自然画圧縮技術と共通の「離散コサイン変換(DCT)」を基礎にした圧縮を行なうが、Microsoftはウェーブレット変換を行なうJPEG2000と同程度の圧縮能力を持つとしている。輝度情報の切り捨てを行なう必要がないため、写真が本来的に持っているはずのディテールを失わない点でも、JPEGなど従来の画像フォーマットに比べて有利だという。

 実はこのセッションと重なる形で、プレス向けのWindows Vistaラウンドテーブル会議が開かれたため、日本の報道関係者はこのセッションを見ることができなかった。このため、以下は技術セッションでの発表後、Microsoft関係者やパートナーからの話を元にWMPとは何か? を探った。


高圧縮、高効率のデジカメ向きなフォーマット

WMPはJPEG200(ピンクの線)とJPEG(黄色の線)より、高圧縮でも高画質を維持できる
 Microsoftによれば、WMPは自然画を1/25という非常に高い圧縮率で保存しても、劣化を感じることが少ないという。このときの画質はJPEGにおける1/12圧縮に相当する。つまり圧縮効率で2倍もの性能があることになる。

 ただし圧縮効率に関しては「1/25まで圧縮すると品質がかなり落ちる」というデベロッパーの声もある。実際の映像で検証する必要はあるが、過度の期待は禁物かもしれない。しかしWMPには圧縮率以外にも、デジタルカメラへの応用に向いた特徴がいくつかある。

 処理に必要なハードウェア資源が少なくなるよう設計されているため、PC以外の機器でのサポートを容易にしている点も、デジタルカメラでの活用をしやすい。映像を短冊状に分割して圧縮を行なうためで、専用ハードウェアに実装する際、内部バッファの量が少なくなるように工夫している。

 また圧縮が可能なフォーマットや色空間も幅広く、通常のRGB空間はもちろん、浮動小数点あるいは12~16bit、32bitの階調を持つ画像も、そのまま無変換で圧縮できる。もちろん、YUV、YCC、CMYKなどRGB以外のデータにも対応可能だ。メタデータの付加に関しても柔軟性を持たせており、TIFFと互換性のあるコンテナ形式として保存するため、既存アプリケーション側でのサポートが容易になっている。


広色域を表現できるscRGBをサポート

 加えてデジタルカメラユーザーに有益と思えるのは、scRGBのサポートだろう。scRGBは浮動小数点で階調情報を持ち、露出範囲の輝度レンジだけでなく、カメラのセンサーが捕らえたすべての輝度情報を保存できる。つまり、HDR(High Dynamic Range)データとして階調情報を切り取ることなく、すべて表現できるのである。scRGBで保存したデータに対して露出補正をかけると、それまでに見えていなかった部分のディテールも浮き上がってくる。

 scRGBはCIE可視色域より遙かに広い範囲を細かく表現できるため、輝度だけでなく色情報に関しても、後々の修正で彩度が飽和して情報が失われたりといったことがない。グンと彩度を引き上げて見た目には飽和しているように見えても、彩度を下げればディテールが見えてくる。


scRGBでは、カメラのセンサーが捕らえたすべての輝度情報を保存できる
sRGB画像とscRGB画像を露出補正したときの比較。scRGBでは見えなかったディテールが浮き出てくる

 ユーザーはこれまで、JPEGに保存してRAWの情報を完全に失うか、まだRGBにもなっていない巨大なRAWデータを扱うか二者択一を迫られていたが、scRGBの圧縮をサポートするWMPであれば、RAWデータが本来持っていた情報をほとんど失わずに、ソフトウェアで扱いやすいRGBデータとすることが可能になる。

 加えて興味深い機能に「Compressed Domain Operations」がある。これは圧縮されているデータに対して、直接画像処理を加えることを可能にする機能だ。可能になる操作は回転や向きの転換、切り抜き、低い解像度への変換、周波数分布の再構成(レベル調整)で、これらはタグとしてファイルに記録され、再生時に処理時間を犠牲にすることなくデコードされる。デコードして再エンコードするといったロスがないため、簡単な写真の調整だえけであれば高速で高品質な処理を行なえる。


カメラメーカーも開発に協力

Windows Imaging ComponentによりアプリケーションがWMPを利用できる
 さて、問題はこのフォーマットが本当にカメラの中に入ってくるのか?だろう。

 PCでのハンドリングに関しては、Windows VistaがネイティブサポートするほかWindows XPでも扱えるようになる。すでにWMPを用いたアプリケーションを開発するためのSDKもあり、ライセンス基準についても検討が進んでいるため、ソフトウェアへの実装は容易とのことだ。XPS(Windows Vistaで使われる印刷イメージファイルの形式。PDFのように文書フォーマットとしても利用できる)でも標準サポートとなる。Windows VistaではWindows Imaging Componentという仕組みが導入され、コーデックそのものがAPIとしてアプリケーションに提供可能なため、Vistaネイティブアプリケーションにはあっという間にWMPが普及するだろう。

 しかし、ハードウェアでのサポートはすぐには難しいかもしれない。XPSを処理する必要があるプリンタなどには入るだろうが、デジタルカメラへの実装となると障害もある。WMPの実装に必要な特許が完全にクリアであること(後々の訴訟リスクがないかどうか)の確認も必要だ。すでに開発者にはソースコードも公開されているので、いずれはクリアされるだろうが、やや時間はかかるかもしれない。

 当面はRAW現像後にWMPで保存しておくといった使い方が主になる可能性が高いだろう。しかし、WMPの開発時には日本のカメラメーカーも積極的に意見を出していたようで、特許などがすでにクリアな状態なのであれば、比較的早期にWMP対応カメラが登場する可能性もある。



URL
  Microsoft(英文)
  http://www.microsoft.com/
  Windows Media Photo
  http://www.microsoft.com/japan/whdc/xps/WMPhoto.mspx

関連記事
米Microsoft、新画像フォーマット「Windows Media Photo」発表(2006/05/26)


( 本田 雅一 )
2006/05/29 00:00
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