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【インタビュー】デジタル一眼レフにも「ソニーらしさ」を

~米ソニー・エレクトロニクス副社長 高橋洋氏インタビュー

会期:2月26日~3月1日
会場:米国フロリダ州オーランド Orange Country Convention Center


パーソナルイメージングディビジョン デジタルイメージングマーケティング担当副社長兼ジェネラルマネージャの高橋洋氏
 今年の夏、いよいよレンズ交換式一眼レフカメラの発売へと向かうソニー。家電業界でのライバルである松下電器が、製品の参考展示を行なったPMA 2006で、どのような展示を行なうのかが注目されていたが、残念ながらPMAでの披露は見送られている。

 一方、コンパクト機に関してはPMA 2006発表のISO1250対応のDSC-W100をはじめ、手ブレ補正付き望遠レンズを装備したDSC-H2、DSC-H5などの新機種で、堅実な画質のアップを果たしているという。

 米ソニーエレクトロニクス・パーソナルイメージングディビジョン デジタルイメージングマーケティング担当副社長兼ジェネラルマネージャの高橋洋氏に話を聞いた。


――ソニーはAV機器、デジタルガジェットの会社というイメージが強く、デジタルカメラもトラディショナルなカメラメーカーとは違った目で見られているように思います。“カメラメーカー”の看板、ブランドがないことや過去の資産がないことのマイナス面がある反面、プラスの面もあると思います。どのような点がソニーの優位性となりえるでしょうか。

「発想の自由度です。過去の製品でいえば、PシリーズやTシリーズも発想の自由さが生んだものでしたし、2インワンカメラのMシリーズもそうです。最近の機種では、N1のようなタッチスクリーン付き大画面というのもソニーらしい発想だと思います」

「カメラの液晶画面を、写真を楽しむための窓として活用するという発想は、AV機器ベンダーのソニーらしい点です。もしソニーがカメラメーカーだったなら、N1のような製品は生まれなかったでしょう」

「ただし、日本と同様に北米市場もユーザーニーズの多様化が進んできました。また、来年から再来年にかけて、北米でもコンパクトデジタルカメラの伸びが止まってくると思います。今後は実用的に毎日使う日用品にデジタルカメラが変化してきます」

――奇をてらった目新しさではなく、日常的に使う上での基本機能の確かさにニーズの中心軸が移るということでしょうか。

「カメラとしての基本をしっかりと押さえた上で、さらにその上に“ソニーらしさ”を付加価値として加えるという考え方です。そのために昨年から基本機能・性能の充実を図ってきました。今年の製品は手ブレ補正や高感度撮影対応を推し進め、実利用事の性能や画質を高めています」


ソニーが一眼レフ参入を選んだ背景

サイバーショットDSC-R1
 昨年、同じく高橋氏に話を伺った際には、レンズ交換式一眼レフ以外の手法でソニーらしい高付加価値カメラを模索すると話していた。しかしその後、コニカミノルタとの提携によるレンズ交換式カメラへの参入を発表。今年の夏には製品が投入される予定になっている。

――昨年はレンズ交換式カメラの検討を進めている段階でした。その後、実際に参入を果たしたわけですが、その背景について教えてください。

「昨年、レンズ交換式以外の手法でと話していたのは、当時開発が進められていたDSC-R1を念頭に置いたものでした。実際、R1はレンズ交換式とは異なるタイプのユーザーを獲得することに成功しています。しかしこれとは別に、レンズ交換式カメラをソニーとして持つことは重要と判断しました。手軽にその時々をスナップするだけがカメラではなく、やはりその上にはより良い写真を撮影したいというこだわりユーザーのハイアマチュア層や、プロフェッショナルの市場があります。そうしたユーザーに対して、短期間で素早くニーズを満たせる製品を出すため、どのようなアプローチが良いかを検討した結果が、コニカミノルタとの提携でした」

――ソニーはビジュアル機器などにおいて、ハイエンド製品やプロ向けの放送機材を大切に育ててきました。そうしたハイエンド、プロ向け製品で培った技術やイメージを下位の製品に少しづつ反映していくシャワー効果があったわけですが、レンズ交換式でも同様の効果を狙うということでしょうか? その場合、プロ向け製品も視野に入っていますか?

「現段階では決まってない面もあり、申し上げることはできません。プロ向け機材に関しては、将来の発展系として可能性はあるという立場です」

――名だたる歴史のある一眼レフメーカーが先行製品を販売している中、どのような点でソニーの独自性、付加価値を出せると考えていますか?

「それは(夏に発売する製品にもつながるため)答えることはできません。“ソニーらしさ”を出せるか? という点に関しては、できると考えています。夏にはその答えが出ることでしょう」

――コニカミノルタの撤退はソニーとして想定内だったのでしょうか。提携相手がいなくなったことで、αマウントの未来はソニーだけで作っていかなければなりません。その影響はありませんか?

「私の方からはお答えできません」


高感度と手ブレ補正……次なる付加機能とは

――ユニバーサルスタジオで行なわれた発表会で貸し出されたDSC-H5を使ってみましたが、ISO1000まで設定可能な上、ISO1000でも“そこそこ”使えることに驚きました。昨年のDSC-T9では高感度対応もISO640まででしたが、それとほぼ同等の画質でISO1000まで伸びている。CCDからの信号を処理するアナログフロントエンドが改善されたためのようですが、こうした高感度対応がソニー製カメラの基本になっていくのでしょうか?

「M5は1/2.5型CCD採用機で、これはISO1000対応になります。M5だけでなく、新製品はすべてローエンドも含めてISO1000対応です。また1/1.8型CCDを用いたW100ではISO1250となります。DSC-W100は北米向けコンパクト機のトップエンドモデルで、800万画素のISO1250対応で高級感も重視しています。北米ではTシリーズのようなスリム機は16%程度のシェアしかなく、むしろWシリーズのようなカメラらしいフォルムの製品が大部分を占めますから、そこに最も力を入れて開発したモデルを持ってきました」


サイバーショットDSC-H5 サイバーショットDSC-H2

サイバーショットDSC-W100 サイバーショットDSC-W70

――昨年、高橋さん自身が話していたように、カメラの付加価値を高める手法はレンズ交換式だけではないでしょう。ソニーとしては、どんな方向にカメラの付加価値を高めていく可能性があると考えていますか?

「基本的なコンセプトは“お客さんがデジタルフォトライフを営む上で、最高の経験をさせてあげたい”というものです。しかし顧客のニーズは多用です。はじめてデジタルカメラを買う人もいれば、単に家族の記録のために使う人もいて、趣味で芸術的な写真をほしいという人もいれば、Blog用に手軽にカメラ内で画像加工してアップロードできるカメラがほしいという人もいる。どんな使い方をする上でも、ソニーの製品を選べばかならず望む製品が選べるようにしたいのです。出荷量でも品質、画質でも、またかゆいところに手が届くこまやかな機能でも一番良いと思うものを作り、世界で一番のカメラメーカーになりたい」

――きちんとユーザーシナリオを分析し、細かく対応した製品をということでしょうか。

「たとえば手ブレ補正機能や高感度撮影機能にしてもそうですが、ユーザーが製品を購入し、使ってみてガッカリしたという経験をなくすことが目標です」

――ユーザーシナリオに沿って、あらゆるユーザーのライフスタイルにフィットする製品となると、ニーズが多様化している中、ラインナップが増加して在庫リスクなどを多く抱えることにはなりませんか?

「ユーザーシナリオに沿った製品を開発することが、すなわち多品種につながるとは思いません。もちろん、多品種の製品を効率的に開発し、フレキシブルに生産する仕組みや、多品種を効率的に流通させるため、販売パートナーとの連携をさらに密にしていくといったことには取り組みます。しかしラインナップを増やすだけでなく、ニーズに関してきちんとコアのサブカテゴリを見つけて、カテゴリごとにしっかりと製品を開発していけば、ニーズごと個別に製品を用意する必要はありません。また、カメラ自身の機能としてだけではなく、デジタルカメラの画像を印刷やパソコンディスプレイで楽しむだけでなく、もっと多様な楽しみ方をすることも考えていかなければなりません」

「それはたとえば、HDTVの普及を背景にしたHDワールドの構築などとも関連してきます。カメラが家庭内のさまざまな機器とつながることによって、撮影後の写真を活用する手段を数多く提供していきたい。オンラインプリントサービスや、HDTV上で写真を楽しむ製品、ネット上で写真を共有するサービスなどを提供し、より包括的にデジタルフォトの体験レベルを向上させるようにしていきます」


――カメラ単体だけでなく、カメラの機能とネットサービス、AV機器などのデジタル家電と連携していくことにソニー独自の価値を生み出せるということでしょうか?

「通常、マーケットへのアプローチとして販売会社は、顧客を性別や年齢、年収などによって分類し、分析していました。しかしデジタルカメラの世界では、そうした分類よりも個々のユーザーのデジタルイメージング技術へのかかわり方、生活の中におけるデジタル写真の位置付け、距離感などによって、ニーズが分類されると思います」

「我々ができることは、日々刻々と変化する市場の動向に敏感になることです。たとえばBlogの流行やマグカップなどデジタル写真を用いたアイテム製作ビジネスなどの動向と、ユーザーニーズの変化は密接に関係しています。世の中の変化を素早く捉え、製品に素早く反映していける柔軟性を持つことが、我々にとって大切なのだと思います」

「今年、ISO1000~1250に対応し、手ブレ補正機能を組み込んだ新しいプラットフォームで、カメラとしての基本部分を充実させることができました。そのプラットフォームの上に、いかに求められる機能を付加していくかが勝負になります」



URL
  ソニー
  http://www.sony.co.jp/
  PMA 2006関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/static/link/pma2006.htm
  ニュースリリース(英文)
  http://news.sel.sony.com/pma06/


( 本田 雅一 )
2006/02/28 14:20
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