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【インタビュー】PhotoshopとDNGの将来

〜Adobe Systemsのデジタルイメージング&ビデオ製品担当上席副社長に聞く

Bryan Lamkin氏
 先月、大幅なバージョンアップが施されたPhotoshop Elementsをはじめ、デジタルイメージングにおけるAdobe Photoshopシリーズの存在は非常に大きい。今後、Photoshopはどのように方向に向かうのか。Photoshop Elements 3.0発売に合わせて来日したAdobe Systemsデジタルイメージング&ビデオ製品担当上席副社長のBryan Lamkin氏に、Photoshopシリーズについて話を伺った。


“デジタル一眼専用Photoshop”は登場するのか?

−−初期のPhotoshopはDTPユーザーのための写真編集ツールとして進化したが、近年はデジタルイメージングデバイスの発展、ユーザー層の拡大とともにPhotoshopの使われ方やユーザー層も変化してきた。

[Lamkin] AdobeにとってPhotoshopはとても重要な製品です。元々はクリエイティブプロフェッショナル向けの製品でしたが、その製品としての魅力はプロ以外にも広がり、幅広い層のユーザーがPhotoshopを利用しています。デジタル一眼レフの普及で、アマチュア写真家もPhotoshopを使うようになってきていますから、対応するユーザー層の変化に合わせて適応範囲を広げるような進化をさせていきたいと思っています。そのひとつの回答が、エントリーユーザー向けのPhotoshop Elementsということになるでしょう。Elementsのコンセプトは明快で、趣味としてデジタルイメージを扱う人に対して、必要な道具を提供するというものです。

−−Adobeはデジタルカメラの登場やPCにおけるデジタルイメージングへの注目度の高まりに素早く対応し、かつてエントリーユーザー向けにPhoto Deluxeを提供した。しかし、決まったシナリオに従ってデジタル写真を修整、活用するPhoto Deluxeは少々窮屈で今ひとつユーザー受けは良くなかったように思う。その後の紆余曲折もあって、Photoshop Elementsへとたどり着き、バージョン3.0でやっとターゲットユーザーを補足したように見える。エントリーユーザー向けのPhotoshopというコンセプトは、今回のバージョンでかなり固まったと見ていいのか?

[Lamkin] Photo Deluxeではスナップ写真をPCで管理するユーザー向けに、家庭でデジタル写真を楽しめるような機能を提供しようとしました。対してPhotoshop Elementsでは、もっとアクティブに趣味として写真を撮影するユーザーにも使ってもらえる製品になっています。ただしマニアックな層、つまり先進的でより真剣に写真に対して取り組んでいるアマチュア写真家はには、Photoshopの方が適した製品だと思います。

−−PhotoshopにはDTPユーザー向けの機能も多く、デジタルカメラで得られるRGBデータを修整、管理し、デスクトッププリンタで印刷するといった用途以外にも多くのファンクションがある。おそらくデジタルカメラのためのPhotoshopを購入するユーザーの多くは、それらを使う機会がないはずだ。デジタル一眼レフカメラのユーザーが増加してきている中、“先進的でより真剣に写真に対して取り組んでいるアマチュア写真家”のための派生Photoshopは提供できないものだろうか?

[Lamkin] キーとなる顧客のセグメントとその動向については、常に注目しています。どのようなPhotoshopが適しているのか、進化していく方向を見定め、ニーズに合わせた機能の追加を考えています。しかし、現時点で新しいアプローチを行なう、といった発表ができる段階ではありません。

−−とはいえ、ユーザーがAdobeの製品でデジタル写真を扱いたいと思えば、PhotoshopかPhotoshop Elementsのどちらか一方を選ばなければならない。その価格差は小さなものではない。アマチュアのデジタル一眼レフカメラのユーザーには、どちらを使って欲しいと考えているか?


[Lamkin] 写真に対する情熱があって、高価なレンズやプリンタに投資している人にはPhotoshopを使って欲しいと思います。彼らの期待に応える事が可能な製品はPhotoshop Elementsではなく、Photoshopでしょう。カジュアルなユーザーにはPhotoshop Elementsが適していますが、そこで熱心にデジタルイメージングに取り組んでいる人は、すぐにPhotoshopにアップグレードするのではないでしょうか。

−−日本ではコンパクトデジタルカメラの成長が頭打ちになりつつあり、デジタル一眼レフカメラが伸びている。北米での状況はどうか?

[Lamkin] 北米でも日本と同じような傾向が見られます。2003年になってコンパクトデジタルカメラの成長は鈍化しています。携帯電話にカメラが組み込まれ始めた事も、大きな要素のひとつと言えるでしょう。また、デジタル一眼レフの価格破壊が始まってきていますから、北米でのこの市場が成長することは明白です。

−−そうした市場環境の変化はPhotoshopの戦略にも影響を与えているのか?

[Lamkin] 市場の変化に対応して、我々の投資すべきエリアも変化しています。デジタル一眼レフカメラユーザーのワークフローに対応してPhotoshopの機能を組み込み、意志決定をやりやすくするようにしています。カメラRAWファイルへの対応もそうした取り組みの一環です。また、Photoshopを用いてプリンタからの質の高い印刷ができるような工夫もしています。さらには、コニカミノルタやOphotoと協力し、オンラインサービスとの連携も強化していきます。アマチュアでも、プロでも、趣味でも、仕事でも、Photoshopですべてのユーザー層をカバー可能です。

−−ユーザーの多様化に対応するには、従来と異なるアプローチも必要だろう。たとえばDTPではカラープロファイルを用いた色特性情報の受け渡しは常識だが、一般ユーザーにとってカラープロファイルの概念は理解しづらく、理解していても扱い辛いものだ。デジタルカメラとデスクトッププリンタのユーザー向けに良い印刷ソリューションは提供できないものか?

[Lamkin] 色の管理はとても難しい問題ですね。現在、Adobe RGBをサポートするカメラが増加してきています。Adobe RGBモードのカメラが存在することで、色再現域の問題はかなり改善されてきました。もっとも、色に関する技術的な知識を持たないユーザーにとっては、それでも複雑すぎる事は認識しています。

【お詫びと訂正】記事初出時、「Adobe RGBがExifの標準色空間である」と記述しましたが、「Adobe RGBはDCFのオプション色空間」の誤りとご指摘をいただきました。ご指摘に感謝するとともに、お詫びして訂正させていただきます。

−−カラーマネージメントはMicrosoftがLonghornにおいて、ICCプロファイルとは別のアプローチでの実装を行なうとアナウンスしている。しかしLonghornのリリースはあまりにも遠い。この問題をOSプラットフォームではなく、アプリケーション側の対処で対応できると思うか?


[Lamkin] 根本的にはプラットフォーム側で対応するべきでしょう。またプリンタドライバで改善できる部分もあります。それでも無理な部分は、アプリケーション側で対応することになります。モニタキャリブレーションの手順を正しく行なえるような工夫をしていく事も効果的でしょうね。


DNGのサポートは絶対にやめない

−−Photokina期間中に発表されたDNGフォーマットに関しても、少し話を伺いたい。AdobeはDNGフォーマットをどのような目的で開発し、今後、どのような形でユーザーの間に根付かせたいと考えているのか?

[Lamkin] DNGは(Adobeの)顧客ニーズに対応するための解決策です。多くのユーザーはJPEGやTIFで撮影データを保存しています。しかし、プロフェッショナルユーザーや一部の上級アマチュアはRAWデータで撮影します。ところがご存じのようにRAWデータはカメラごとに内容が異なりますから、ワークフローの問題が出てきています。共通ファイルで何十年にも渡ってデータを保存し、再利用したいといった時、RAWデータ形式があまりに多いと混乱をきたすでしょう。

−−つまり撮像素子の生データを共通フォーマット化し、プロフェッショナルな現場におけるワークフローで使われる標準として根付かせたいということか?

[Lamkin] DNGに関してはやや誤解もあると思っています。たとえばニコンやキヤノンのカメラが作るRAWファイルに含まれる付加情報は汎用データ形式のDNGよりも多く、完全に各カメラ固有のRAWデータを駆逐するものではありません。しかし、撮像素子から得られるデータを記録するベースラインの機能はDNGによって提供したいと考えています。今後、何十年も保存し続ける共通フォーマットとして、我々がDNGのサポートをやめることは絶対にありません。最終的な目標はDNGをデジタルイメージングのワークフローにおけるオープン標準とすることです。

 もうひとつ付け加えたいのですが、個々のカメラが異なるRAWデータを作る現状では、カメラが増えるごとに新しいモジュールを提供しなければなりません。現像処理に関しても、各社の現像技術が磨かれより良い絵を作るためにカラーサイエンスの研究開発に時間を費やす事ができるからです。

−−現時点でDNGにネイティブ対応するカメラは存在しないが、DNGのサポータは今後現れるのか?

[Lamkin] DNGは全く新しいフォーマットで、成功したかどうかを測るためには数年を要するでしょう。たとえばPDFは普及するまでに10年かかりました。我々はデジタルイメージングソフトウェアのリーダーとして、情熱を持って長期的にDNGをサポートしていきます。ハードウェアを提供する企業のサポートを受けるには何年もかかるでしょうが、我々はサポートを決して止めません。実際に顧客であるユーザーが、撮像素子の生データの扱いで困っているのですから、それに気付いて頂ければサポートを受けられるものと思っています。

 もっとも、実際にサポートが始まるのはソフトウェアベンダーからでしょう。現時点でもBreezeBrowserやCaptureOneといったRAWデータを扱うソフトウェアベンダーからの支持を受けています。


Photoshopも“ワンストップ化”に向かう

−−今後のPhotoshopの進化について、その方向を聞かせて欲しい。

[Lamkin] Photoshopは非常にユニークな製品です。ユーザーの使い方次第で大きく変化しますし、様々なワークフローの中で、重要な位置を占めている製品です。我々はデジタルイメージをユーザーがどのように扱うのか。ワークフローの負担を軽減する方向でカスタマイズしていきます。またコア技術となっているフォトレタッチ機能やカラーマネジメント機能などにも今後とも投資を続けていきます。しかし、10年前に現時点の状況を予測できなかったように、今後の10年もまた予測は難しいですから、長期的にどうなるかは私にもわかりません。

−−ワークフローを重視した進化という意味では、Photoshop Elements 3.0でPhotoshop Albumの機能が統合された。これはアマチュアユーザー向けの機能だが、これをプロフェッショナル、あるいは上級のアマチュアユーザー向けにカスタマイズする予定はあるのか? つまり、画像管理からレタッチ、印刷までワンストップのソリューションを提供する用意は?

[Lamkin] プロとアマチュアの違いは、アマチュアは自分のイメージを扱い、プロはクライアントや組織のイメージを扱うという点でしょう。アマチュアは経験や体験を大切にし、プロは製品や信頼性を要求します。それらの違いはありますが、画像管理の機能は重要になっていくと思います。Photoshopもワンストップ化に向かうと思います。また、オンラインサービスもPhotoshopのユーザーに使えるようにするべきだと考えています。


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( 本田 雅一 )
2004/12/08 00:07
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