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【Photokina 2004】
感材メーカー3社が提案するアーカイブフォーマット「PASS」


 先週、独・ケルンで開催されたPhotokina 2004。コニカミノルタの発表会で紹介されたのがPASS(Picture Archive and Storage System)である。同時発表されたDYNAX 7 DIGITAL(日本名:α-7 DIGITAL)の影に隠れ、あまり話題に上らなかったが、コニカミノルタ曰く“新しいスタンダード”を目指すフォーマットだという。PASSとはとは何なのだろうか?


メディアに依存しない論理フォーマットの標準

 PASSはイーストマンコダック、富士写真フイルムと共同で開発した、デジタルデータを保存するための規格である。デジタルカメラで撮影した画像はもちろん、音声や動画のデータも統合的に管理することが可能になる。PASSはオープンなフォーマットとして賛同社を募り、対応再生デバイスを将来的に提供していくという。実際に再生できる機器が、来年の春ごろには提供できる見込みのようだ。

 特徴は“Archive and Storage”と名付けられている事からもわかるとおり、メディアデータの記録ではなく保存用に特化していることだ。保存先はCD、DVD、メモリカードなどだが、コニカミノルタフォトイメージング取締役SBプロジェクト推進室長の飯島俊文氏は「PASSで定義されるのは、どのようにメディアデータを保存するのか。論理的なフォーマットのみ」と話す。

 つまり、各メディアはどのようなフォルダ構造のどの位置に置くのか、サムネイル情報の扱い、各メディアを探すためのメタ情報の構造や置き方、サポートするメディアのファイルフォーマットなどの規格であり、物理的にどのようなメディアに書き込むかには依存しない。

 たとえばDVDに限定するならば、DVDの新しいアプリケーションフォーマットとして、DVDスライドショー(DVDビデオ規格で作成可能な静止画スライド)との互換性を持たせながら、メディア保存に適した論理フォーマットをDVD Forumに提案しても良いのでは? と質問したところ、PASSの開発を担当しているコニカミノルタフォトイメージングSBプロジェクト推進室システム開発部課長の上田豊氏は「ユーザーは各々が好みの、あるいはもっとも便利だと思うメディアにアーカイブしたい。そこで、DVDなど特定の物理フォーマットに依存しない論理フォーマットとした」と話す。

 高画素化が進むデジタルカメラにあって、CDやDVDにアーカイブしたデータから必要なメディアデータを探すには大変だ。データサイズが大きく、処理も重いため、PC以外の機器ではなかなか思ったようなパフォーマンスが得られない。PASSは必要な情報をデータベース化してアーカイブするため、高機能かつ高パフォーマンスな閲覧を実現できる。

 また、標準化を行なうことでPASSで保存されたメディアをユーザー同士が簡単にイメージデータの交換を行なうことが可能になる。コンセプトは(目的こそ違うが)マイクロソフトのHighMATとよく似ている。

 よく言われているように、デジタル時代になって撮影した写真のほとんどはプリントされず、データとしてハードディスクや光ディスクの中に保存され、再利用されないままだ。PASSはそうした“埋もれてしまいがちなメディアデータ”を、再利用しやすい業界標準のアルバムデータとしてアーカイブすることで、印刷や電子デバイスによるテレビ、プロジェクターなどを用いた閲覧を行ないやすくするのが目的と言えよう。


感材メーカーが軒並み参加

 PASSの特徴は、なんと言っても提案しているベンダーがすべて感材メーカーという点だ。コニカミノルタ、コダック、富士写真フイルム。コニカミノルタはともかく、残りの2社はフィルムや印画紙に売上の多くを依存している。

 2000年以降、デジタルカメラの画像がどのように扱われてきたかを調査したあるデータによると、全ショット数と全印刷枚数の比率は5:1~6:1で安定しているそうだ。各社とも“簡単印刷”機能で印刷率を上げようと努力しているにもかかわらず、印刷枚数の比率は上がっていない。現像すれば同時プリントで全コマが紙焼きになっていた時代とは大きな隔たりがある。

 では印刷されないデータはどうなっているのか? たまにPCで見たり、失敗写真を消去する場合もあるが割合は知れている。そのほとんどは、どこかの記憶媒体の中に埋もれ、再利用されることもなく容量だけが増えていく。HDD上ならば見返すこともあるだろうが、CDやDVDにアーカイブしてしまうと、面倒であまり見なくなるという人も多いはずだ。

 これは担当者自身が明言しているわけではない推測だが、将来、さまざまな工夫を凝らしたとしても印刷の割合はなかなか増えないと、感材メーカーたちは半ば諦めているのかもしれない。しかし、より便利で再利用しやすいアーカイブ形式の標準ができ、たとえば液晶プロジェクターやテレビ、PCなどにメディアを挿入するだけで写真のスライドショーが行なえ、簡単にプリンタやネットを通じたプリントサービスと繋げていけたなら……。

 ビットの海の中に埋もれている限り、それらは印刷する事も、閲覧することも叶わないが、簡単で手軽でパフォーマンスよく再利用できれば、そこからプリントのチャンスも生まれてくる。コニカミノルタによると、PASSではネット経由のプリントやWebベースの写真シェアサービスと連動する機能も含まれるという。

 各社とも「PASSは生まれたばかり。これから何をやるか決めていく段階。対応製品が登場するのは来年になる」と控えめに話す。しかし今後の盛り上がり次第では、PASSの記録・再生に対応したハイブリッドレコーダーなども登場するかもしれない。ハイビジョン対応フラットパネルテレビで、高解像の映像が楽しめればデジタルカメラ画像の新しい楽しみ方に発展するかもしれない。

 しかし、賛同を広く得られずカメラ業界だけのローカル規格になってしまえば、ポジフィルムのスライドプロジェクターと同様の運命をたどる可能性がある。家電業界やPC業界のコミットを得られるかどうかが、PASSの今後を占う上での注目点となるだろう。


コニカミノルタのホームページ
http://konicaminolta.jp/



( 本田 雅一 )
2004/10/04 14:48
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