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シグマがデジタル対応レンズで先行した理由

~次期SDシリーズはAPS-Cセンサー搭 載か!?

取締役副社長
山木和人氏
 早期からデジタルカメラ対応設計への移行を始め、焦点域もAPS-Cサイズセンサー採用一眼レフカメラに適した製品ラインナップを整備してきたシグマ。その存在感はデジタル一眼レフの時代になって、急速に高まってきている。

 シグマ取締役副社長の山木和人氏に、シグマのレンズそしてカメラについてドイツ・ケルンで開催中のPhotokina 2004会場で話を伺った。


最後発だからこそデジタル向け製品に挑戦できた

 シグマはデジタル対応設計を、もっとも早い時期から打ち出してきたレンズメーカーだ。さらにはAPS-Cサイズセンサーカメラ向けに考慮された焦点距離を持つレンズの新設計を進め、専用レンズのDCシリーズをレンズメーカーとしていち早く投入した。

 近年のシグマが存在感を増してきた理由も、他社が持っていなかった焦点距離1.5~1.6倍のカメラで使いやすいレンズをタイムリーに提供したことが大きな理由であろう。しかし、一方で従来の35mmフィルム向けでは中途半端な焦点域のレンズに開発資源を投入することは、企業にとって大きなリスクとも言える。

「我々の会社が他社と異なる点は、売り上げのほとんどを店頭販売される一眼レフ用交換レンズが占めていることです。ですから、市場の変化に柔軟に対応し、追随できなければ会社として生き残っていくことができません。将来、一眼レフカメラがデジタル化していくことは明らかでしたから、新しい市場でより使いやすい製品を作っていこうと考えたのです」

―とは言っても、35mmフィルム用レンズが主要商品となっている中で、デジタルカメラ向けに新たに別の焦点域のレンズを持ってくると、製品数が急激に増えて間接費が増えてくる。レンズメーカーの中で、シグマだけが素早く対応できた理由はどこにあるのか?

「確かに製品数を少数に抑え、各社のマウントに対応させることで同じレンズを量産し、それによってコストを下げて販売するというのが、カメラボディを持たないレンズメーカーの典型的な経営手法です。しかし今、一眼レフデジタルカメラが欲しいという方々は、実に幅広い層に渡っています。その分、さまざまなニーズが存在していますから、それら細かなニーズの違いに対応していかなければならないと考えました。全体のラインナップ数を抑えて効率化を図ろうとし、品種拡大を躊躇していると、(デジタル一眼レフカメラの世界で)我々のブランド認知度は高くなりません。ですから、躊躇無くニーズのあると思われる焦点域のレンズを投入し、ラインナップも増やしてきたのです」


―その結果、シグマのラインナップはかつて無いほどに膨れ上がった。それでも結果を残してきた秘密のようなものはあるのか?

「シグマという会社は、レンズメーカーとしてはもっとも後発で'61年の創業です。創業時には強力なライバルがすでに多数存在しました。その中で競争に勝つためには、他社ができないことに挑戦しなければならない。そうした挑戦者としてのスピリットが会社に根付いているんです」

「しかし、そうした挑戦を支えられる理由もあります。我々は工場を国内にしか持っていません。福島にある工場でレンズ加工から組み立てまで一貫生産を行います。そのため、多品種・少量の製品を柔軟に生産することが可能で、新製品開発のスピードも上げていくことができます。そうしたバックボーンがあるからこそ、デジタル一眼レフに特化したレンズ開発が可能だったのです」


自社開発カメラがデジタルカメラ対応レンズの品質を引き上げた

―かつて、レンズメーカーの製品と言えば“安かろう悪かろう”の代表的な例と言えた。明らかに描写に劣るが、その分、価格は安いというのが“いつものパターン”である。ところが、近年はシグマも含めて描写性能が格段に向上してきている。そこには何か理由があるのだろうか?

「我々は後発メーカーとして、他社に比べスペック上で何かユニークなところを持たなければなりませんでした。しかし、ユニークなスペックを実現させるためには、正攻法ではない設計が必要になります。それは決して画質に良い影響を与えません。しかし、ブランドの認知が広がり、ライバルがいないユニークな焦点域の製品で勝負するようになったため、スタンダードな設計手法で製品作りを行えるようになりました。それが描写が向上した理由でしょう。もちろん、工場に継続的な投資を続け生産改革を進めてきたことも大きな理由です」

「さらに自社でデジタルカメラの開発を行なったことも、大きな転機となりました。デジタルカメラで像がどのように作られるのか。その全てを知っていなければ、デジタルカメラ向けに最適なレンズを作ることはできません。デジタルカメラを自社開発したことで、デジタル化に起因するレンズ設計の問題点を学ぶことができたのです。そこからのフィードバックがあって、デジタルカメラ向けレンズはどうあるべきかを知り、製品開発へと活かすことができました」

―実は先日、あるカメラマンに勧められ、シグマの55-200mm F4-5.6 DCを試してみたところ、暗いF値はともかく非常に高いレベルの描写に驚いた。その成果が、デジタルカメラを手がけた成果と捉えていいのか?

「もちろん、そうした面も大きいですね。しかし、55-200mmに関しては、設計が理想的と言えるほど“ハマッた”のです。良い硝材、多数の非球面レンズなど、贅を尽くせば良いレンズを作る事は難しくありません。しかし、限られた硝材、限られた非球面レンズなど様々な制限の中で良いレンズを作れるかどうかは技術者の“腕”です。55-200mmに関しては、特殊な硝材や非球面レンズを一切使わずに性能を高めることができました」

―以前ならば、このクラスの暗い望遠ズームは、描写は二の次だった。買う側も描写は最初からある程度あきらめている。今後、DCシリーズでこのレベルの製品を連発できれば、シグマ製レンズの見方はさらに大きく変わるように思うが?

「デジタルカメラ専用レンズが高い描写性能を持つことができた理由の背景には、レンズメーカー製レンズに対する顧客ニーズが低価格一本槍から変化してきたからです。デジタルカメラ向けレンズは、精度や収差などの許容範囲が銀塩とは全く異なります。銀塩フィルムでは、せいぜい2L程度までのプリントでしか写真を見なかったユーザーも、デジタルカメラではモニタ上でピクセル等倍で画質をチェックします。高画素の一眼レフカメラで撮影し、ピクセル等倍で周辺部をチェックし、僅かに縁取りが出ると“色収差が出ている”という評価になってしまう。我々はデジタルカメラ対応レンズで、そうした使い方にも耐える製品を出していかなければなりません」


―シグマは今年、レンズメーカーとして初めて手ぶれ補正機能を搭載した。今後、手ぶれ補正機能を搭載した製品の計画は

「レンズ設計は、とても古典的な技術の組み合わせ、工夫で成り立っています。しかし、手ぶれ補正をはじめとする応用技術は、他社との差別化を行う上で重要な点になってきます。当然、手ぶれ補正機能を搭載したレンズは拡充していきたいと思います。10年以上先となれば、さらに感度特性が向上するなどして、手ぶれ補正機能は不要になっているかもしれませんが、中期的には継続的に強いニーズがあるでしょう」

 カメラメーカー純正のレンズと同様、まずは望遠レンズから手ぶれ補正が搭載され始めたが、高倍率の標準ズームにも大きなニーズが存在する。デジタル一眼レフカメラの裾野が広がり初級者が増えれば、標準域をカバーする標準ズームのニーズは今以上に高まってくるのは明白だろう。

「常用ズームの手ぶれ補正搭載モデルも出したいと考えています。実際に手ぶれ補正機能搭載のモデルはいくつかプロジェクトがスタートしていますが、それがどのような製品なのかは現時点では話すことができません」


次のFoveon一眼はどうなる?

―そのシグマ製デジタルカメラは、RGBすべての光を捉えるFoveon製のCMOSセンサーを用いている事が大きな特徴となっている。次世代のSDは、やはりFoveonセンサを使うのか?

「当然、次のSDも開発を行なっています。センサーにはFoveonのセンサーを使います。しかし、製品の具体的なスペックはここでは申し上げられません」

―たとえば、APS-Cよりもやや小さめのセンサーサイズやJPEGの直接生成ができないところ、メカ部分の性能や動作の気持ちよさなどは、改善を望んでいるファンも多いのでは?

「私がお話できるのは、SD-9、SD-10を使って頂いているお客様からのさまざまな声に、次のモデルで応えることができるだろう、ということです」

 先ほど、ピクセル等倍での鑑賞に耐えるようにレンズ性能向上を目指したと話していたが、カメラボディでもそれは同じだろう。たとえばオートフォーカス精度に対するユーザの見方は、銀塩の時よりもデジタル時代の方がずっと厳しい。

「実際に一眼レフデジタルカメラを開発してみて、AEとAFというカメラの基本的な部分の性能が、いかに重要なのかを再認識しました。カメラの基本的な部分を見直さなければ、いくらデジタル処理やセンサーを改善しても良い結果を得られません。たとえばAFに関しても、カメラ側のAFのアルゴリズムを見直す必要がありました。SDシリーズの基礎体力をきちんと底上げしていきますよ」

 “写り”への要求と同じぐらい、低価格へのニーズもまた強い。各社がこれだけ低価格製品を出してきた中で、低価格版のSD、あるいは次期SDの低価格化にも期待される。

「現行のSD-10は、確かにまだ高価だと思っています。より多くの顧客に使って頂けるよう、低価格化のトレンドにはきちんと追随していかなければなりませんね」



URL
  シグマのホームページ
  http://www.sigma-photo.co.jp/


( 本田 雅一 )
2004/09/29 23:24
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