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【インタビュー】PaintShop Pro 9開発元に聞く

「コンシューマの気持ちを一番よく知るフォトレタッチソフトベンダーは我々だ」

 Windows黎明期から親しまれてきたシェアウェア「PaintShop Pro」が、当時はまだ珍しかった本格的な低価格フォトレタッチソフトとしてブレイクしたのは'98年頃のことだった。その後、'99年に現在の代理店であるピーアンドエー(P&A)が販売権を獲得すると、積極的な店頭PRも手伝ってベストセラーパッケージソフトとして販売チャートのトップ10常連となった。

 そのPaintShop Proに新バージョンのPaintShop Pro 9および、ライトなコンパクトデジタルカメラユーザーを対象にした新パッケージPaintShop Studioが加わった。

 新製品に関して開発元のJasc Software プロダクトマーケティング部ディレクターのマイケル・グリーンハル氏およびP&A社長のパトリック・オシュネー氏に話を伺った。(以下敬称略)


PaintShop Pro 9(左)と、今回から加わったPaintShop Studio

ユーザーフィードバックがPSPを変えてきた

左からP&A社長のパトリック・オシュネー氏、Jasc Software 国際販売マーケティング部ディレクターのジョン-エリック・G・メンティアス氏、Jasc Software プロダクトマーケティング部ディレクターのマイケル・グリーンハル氏
―PaintShop Pro(PSP)は、10年以上前、シェアウェアとして流通していた時代から日本で大変な人気があった。しかし、当初は簡単なペイントソフト(当時はまだフォトレタッチのニーズがコンシューマには無かった)に、簡単な画像処理フィルタを加えただけだったPSPだが、製品の目指す方向も大きく変化している。

グリーンハル「ユーザーニーズを上手に捉えなければ、良い製品を作ることはできません。我々の会社がPSPを開発した当初、まだデジタルカメラの市場はありませんでした。デジタル写真をPCに取り込むには、スキャナなどを利用する必要があったのです。デジタルカメラの普及が、我々の製品を変化させてきたとも言えます」。

―Jasc Softwareでは、どのようにしてユーザーが求める機能や製品としての方向性をリサーチしているのか?

グリーンハル「もちろん、市場変化に対して敏感ではあります。しかし、改良の中心はユーザーによるβプログラムからのフィードバックです。現行バージョンに対して上がってくる様々な意見を吟味し、それをプログラムとして実装。β版としてユーザーに使ってもらい、ユーザービリティ調査を行います。ユーザーが実際の環境で、どのように使っているかを研究する事が目的です。そのようなユーザーからのフィードバックが、PSPを変えてきたのです」。


―ユーザーからの意見を収斂させ、ひとつの製品にまとめ上げるのは大変な作業だろう。どのようなプロセスを経ているのか?

グリーンハル「以前は、要望の多い機能を全て実装していき、それに対する意見を集めながら製品にしていました。しかし、機能が増えすぎると製品としてかえってまとまりが無くなります。最近はどのように新しい機能を使いたいのかを研究し、必要と思われる機能を絞り込んでから実装するようにしています」。


日本は意見の吸い上げにおいても重要なマーケット

―ユーザーからのリクエストと言っても、デジタルイメージング製品の使われ方や捉え方、普及率などは国によって異なるのではないか? ユーザービリティテストはどこで行なっているのか?

グリーンハル「ユーザビリティテストは開発部隊のある米国で行なわれています。しかし、日本のユーザーからのフィードバックはP&Aから常に入ってきており、実際に意見が反映されているところもあります。たとえば、PSP9で追加された縦書きテキストの挿入機能は、日本からのリクエストでしたし、CCD RAWの現像機能も日本からの要望です」。

―日本はデジタルカメラの普及がもっとも早かった市場で、品質に対する要求もかなり高い。日本からのフィードバックに市場による特殊性などは見られるか?

グリーンハル「こうした議論をするとき、“日本人が言っているから日本人の機能だ”という人もいますが、日本人にとって便利な機能は、日本以外の色々な国で受け入れられています。日本のユーザーは、(他国よりも)より高機能、より高品質なものを望む傾向が強いというのはその通りだと思います。日本から上がってくる要求は、その時点ではワールドワイドで見ると“早すぎる”ものが多い。今回の製品で言えば、RAW現像機能がそれに相当するでしょう。しかし、将来それらはワールドワイドのニーズへと変化していくでしょうから、日本市場からの意見に耳を傾けることが無駄になるとは思っていません」。

―つまり、日本で声を上げれば製品にそれが反映される確率は高いという事か?

グリーンハル「日本市場はPSPの売り上げの中で、20〜25%を占めています。これはワールドワイドで2番目の市場です。それだけ大切なマーケットですから、強い要望があれば可能な限り実装するようにしています」。


レタッチだけでなく“ペイント”機能も使って欲しい

―PSP9にはCCDノイズ除去や色収差補正など、デジタルカメラに特化したフィルタが追加されている一方、アートメディア機能などペイント機能の増強も目立っている。実際にペイント機能はどの程度ユーザーに使われているのか。

オシュネー「実はペイント機能を使っている人はかなり多く、多くの要望が寄せられています。フォトレタッチ機能の充実は30代を中心とするコアのデジタルカメラユーザーが多いのですが、子供やお年寄りはペイント機能を好む傾向が強いと言えます。特に子供たちは、PCを用いた“お絵かき”を好みますね」。

「また学校ではPCの授業で、絵を描く事から始めるところも多く教育現場で使われるケースも多く見られます。今回、登録したアートワークをブラシとして使ったり、油彩ブラシ/油彩ナイフ/クレヨン/パステル/チョーク/マーカー/色鉛筆などの画材をシミュレートするアートメディア機能を加えましたが、βテストでは予想以上のポジティブなフィードバックを頂いて驚きました」。

―トレースオプションという機能を使えば、写真など既存のデジタルイメージを下書きに、アートメディア機能を用いて簡単に、絵画のような仕上がりにする機能も追加された。こうした機能はこれまで、高価なデザイナー向けソフトにしか無かった。

オシュネー「デジタルカメラが普及し、確かに写真を撮影する人は大幅に増加しました。しかし、撮影した画像をどのように楽しむのか想像できず、結局はそのまま保存しておくだけというケースも多くなってきています。アートメディア機能でトレースオプションをオンにすれば、写真をベースに簡単にアートワークを作成できます。今は1万円ぐらいで十分な性能のタブレットを購入できる時代です。PSP9を入手したならば、フォトレタッチだけでなく、是非ともアートメディア機能などペイント系の機能も使って欲しいですね」。


今後は処理の“品質のさらなる向上”を目指す

―フォトレタッチ機能に話を戻すと、PSP9の世代では標準添付のフィルタが品質向上を果たしているという。具体的には、どのフィルタがどのように改良されたのか?

グリーンハル「いくつか処理の品質に問題のあるフィルタが存在しました。Jasc Softwareで把握しているものに関しては、それらすべてを書き直しています。セピアフィルタや単色効果はその代表的な例です。これらのフィルタをかけると、以前は本来の写真が持っていた立体感がなくなり、平板的な描写になってしまいました。他にも様々なフィルタに変更が加えられていますから、是非確認してみてください」。

―Exif 2.21では標準の色空間として、sRGBに加えてAdobe RGBが採用された。しかし、PSPの作業用色空間はsRGBのまま変化していない。今後、Exif 2.21対応カメラが増えてくると問題にはならないか?

グリーンハル「我々の製品は、今のところICMには対応していない。これはICMのワークフローが我々の対象としているユーザー層には複雑すぎるからです。しかし、おっしゃるようなデジタルカメラ側の変化もあるため、その必要性を検討しながら要望次第では対応していきたい。もっとも、次のバージョンでは異なる色空間やディスプレイとのマッチングなどにも対応していこうと考えています」。

「実はそのためのリクルーティングも行なっており、業界では名の通ったカラーサイエンティストが入社し、より良い色管理の実装を研究しているところです。彼は前述のセピアや単色効果フィルタの問題点を指摘し、実際に改良を行なった人物です。彼の仕事は、これからPSPの様々な部分に活かされていくでしょう」。


PSP 9からはRAW現像機能が搭載された
―新製品の目玉機能のひとつであるRAW現像機能だが、露出補正とプリセットのホワイトバランス選択ぐらいしかオプションが用意されていない。RAW現像を積極的に行うユーザー層に対しては、少々、パラメータの選択肢が少ないのでは?

グリーンハル「その点に関しては、βテストの段階で様々なフィードバックが入ってきました。プロやハイアマチュアのユーザーの中には、おっしゃるような意見を言う方も多いのは事実です。しかし、我々はデジタルイメージングや写真の現像プロセスを知らないユーザーでも使える機能しか入れたくはないと考え、現在の仕様になりました」。


PaintShop Studioはエントリーユーザーにフォーカスされている
―最後に、今後のPSPをどのような方向で進化させたいと考えているのか?

グリーンハル「PSPはよくPhotoshopと比較されます。しかしPhotoshopのメンターゲットは、デジタルイメージングを楽しむユーザーではなく、デジタルイメージングで仕事をする人たちです。しかし、PSPのユーザーはPSPでデジタルイメージングを楽しんでいる人たちばかりです。コンシューマをターゲットとした、楽しさを演出するツールとしての方向は今後も堅持していきたいですね」。

「しかし、そうした意味ではPaintShop Proは世界で一番のソフトにはなれないかもしれません。プロ向け製品のテイストを低価格に提供はできますが、本当のプロ向け製品にはコスト面から見ても勝てない部分はあるでしょう。しかし、PaintShop Studioに関しては一番使いやすい、理想的なデジタルカメラのパートナーになれると考えています。初級者を含めた、コンシューマの気持ちが一番分かるベンダーは我々だと思いますから」。



URL
  ピーアンドエーのホームページ
  http://www.panda.co.jp/
  製品情報
  http://paintshoppro.jp/
  【9月15日】ピーアンドエー、デジカメ関連機能を強化した「Paint Shop Pro 9」(PC Watch)
  http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0915/panda.htm


( 伊藤 大地 )
2004/09/27 00:05
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