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【PIE2005】「デジタル時代のオールドレンズ」セミナーレポート


 フォトイメージングエキスポ2005の会期中、会場では関係者向けに各種有料セミナーが行なわれている。そのうち、2日目に実施されたパネルディスカッション「デジタル時代のオールドレンズ」をレポートする。

 レンズ交換式デジタルカメラが普及し、デジタルの世界でも交換レンズを用いた楽しみが広がっている。古いレンズを装着した場合、レンズの味がそのまま生かされるのか? それとも意外な発見があるのか? といった切り口のディスカッション。

 司会は写真学会幹事の豊田堅二氏。パネリストは月刊写真工業編集長の市川泰憲氏、セイコーエプソン株式会社IJP規格推進部長の枝常伊佐央氏、株式会社ニコン映像カンパニーの佐藤治夫氏。枝常氏はライカM/Lレンズが装着可能なレンジファインダーデジタルカメラ「R-D1」の開発指揮を執った人物で、佐藤氏はニコンのレンズ設計担当者。ニッコールクラブ会報の「ニッコール千夜一夜物語」(Web版もあり)の著者としても知られる。


司会の豊田堅二氏 左からセイコーエプソンの枝常氏、ニコンの佐藤氏、写真工業の市川編集長

オールドレンズは十分使える

 ディスカッションはまず、市川氏と根本泰人氏による作例の紹介から始まった。写真工業の誌面でオールドレンズを頻繁に取り上げることもあり、市川氏はR-D1でオールドレンズを試す作業を日常的にこなしているという。作例に対し、佐藤氏がレンズ面、枝常氏がR-D1のハード面から解説するという流れ。

 市川氏は、ヘクトール2.8cm F6.3、スーパーアンギュロン21mm F4、ズマール5cm F2、Wニッコール35mm F2.5、DRズミクロン50mm F2などとR-D1を組み合わせた例や、マウント変換アダプタなどを駆使し、フォールディングポケットコダック(No.3A)のレンズ(ボシュロムのラピッドレクチリニア)をEOS Kiss Digitalで使用した例を示した。


ヘクトール2.8cm F6.3を装着したR-D1 Kiss Digital Nに約100年前のレンズを装着 露出計をあきらめればスーパーアンギュロンも(エプソンではサポートしていません。自己責任で試してください)

 ヘクトール2.8cm F6.3について市川氏は、「フィルムで十分実用になることは知っていたが、R-D1で使ってびっくりした。かなり良い解像力を持っている」と褒めた。また、後玉の飛び出しが大きく、本来R-D1での使用が推奨されていないスーパーアンギュロン21mm F4の場合は、「露出計が働かないが十分使える」(市川氏)とのこと。

 市川氏は、総じて「どのオールドレンズもR-D1で基本的に良く写る」と印象を述べた。そこで、「あまりにもきれいに写り過ぎるので試した」というのが、メンテナンスしてなかった1933年製のズマール5cm F2。使ってみると、ボケがグルグルと渦巻くなど、最近のレンズでは見られない描写が得られたという。それでも、使い物にならないかというとそうでもなく、絞れば十分良い写りになると説明した。

 さらに古いのが1903〜1908年に製造されたというラピッドレクチリニア。5×7インチをカバーする2群4枚のシンプルなレンズで、それをキヤノンセレナー用L39中間リング→L39ヘリコイド中間リング→L39/M42変換アダプタ→M42ヘリコイド中間リング→M42中間リング×3→M42/EOSアダプタでKiss Digitalと接続、焦点距離約170mmで無限遠が出るようにしたという。

 5×7とAPS-Cサイズ相当では撮像面積が大きく違うこともあり、その描写は「撮影を選ぶとうまくいく、場合によっては使える」とのこと。しかし、液晶プロジェクターで示された作例は100年前のレンズとは思えない、まともなカラー写真だった。なお、市川氏が「一番すごい」と評したのは、Wニッコール35mm F2.5だった。

 市川氏によると、写真工業誌面では最近マウントアダプターの記事に人気があり、その現象はデジタル一眼レフの登場とほぼ同じ時期からだという。デジタルとオールドレンズの組み合わせについて同氏は、「いずれにしても良く写る。デジタル専用の風潮もあるが、使いようによってはデジタルでも使えるのがオールドレンズ」とまとめた。


デジタル時代、良いレンズは無限にある

 続いて佐藤氏がマイクを握り、市川氏と根本氏の作例について、レンズの面から解説した。

 ラピッドレクチリニアを「ごく真ん中だけを使っているので鮮鋭度が少し足らない」と解説。しかし、「レンズの鮮鋭度とは、最終的にどういった出力にするかで判断が変わる。面積、鑑賞距離、ペーパーの種類など。しかしキャビネサイズ程度なら、たいていのレンズがシャープに見える」と実用性を評価した。

 また、「描写特性、いわゆるレンズの味を生かせば、そのレンズでしか得られない作品が撮れる」と説明。例えば、トリプレットタイプのヘクトール2.8cm F6.3を、「もともと収差も少なく色も正確なレンズ。Fナンバーの暗さによるもので、ピーカンで撮ればこういうオールドレンズも生きてくる」とし、「要は自分の使いこなし方次第」と補足した。

 戦前のズマール5cm F2については、「収差が大きく、ボケにブリットが。さらにビネッティングが出ている。ラグビーボールが渦を巻いたようなボケだが、真ん中に主題を置いて背景をグルグルまわすような写真になるのは、このレンズしかできないこと。理解して使うと幸せになれる(笑)」と説明した。

 そのほか、DRズミクロン50mm F2は「銀塩のモノクロでもフレアの量がちょうど良いレンズ。3号や2.5号の印画紙でストレート焼きできるくらい」、ガウスタイプのWニッコールについては「作例を見て感心した。ちょっと絞ると非常にシャープになる設計で、まあ当時はそれを狙ったというより、そうせざるを得なかったという事情もあった」と語った。また、Wニッコール25mm F4を「トポゴンタイプにしてはシャープ」と評した。

 なお、ニコンSP復刻版と共に復刻されたWニッコールF1.8は、現代の硝材に変えたが設計はそのままで、収差ももとのまま残したという。ただし「ゴースト、フレアについてはすべて取る」という方向でコーティングを施したという。

 デジタルとレンズの関係については、「デジタルのガンマは銀塩より寝ているので、銀塩で階調表現がいまいちだったレンズが、デジタルで再評価されるケースがある」と主張。ガンマカーブを変えられるデジタルではコントラストを変えることができる。これは銀塩では不可能なこと。フレアも弱められる。実は良いレンズが無限に出てくる」と示唆した。


R-D1のマイクロレンズはずれている?

 枝常氏はR-D1の開発において「レンズの味を生かすよう心がけた」という。その例として、周辺減光への取り組みに触れた。

 デジタルカメラの場合、撮像面に入射する光の直進性(テレセントリック性)が良く問題になる。一眼レフに比べてバックフォーカスの短いレンジファインダー機の場合、入射光はさらに斜めに導かれ、CCD周辺部ほど光がセンサーに入らないことになる。その結果、急激な周辺光量落ちが生じるという。

 枝常氏は「企画はニコンD1の頃からあったが、これが難関だった」と振り返る。しかもライカレンズには、後玉が撮像面ギリギリに迫るスーパーアンギュロンのようなレンズも存在する。35mmフルサイズのCCDを採用すると、さらに光は斜めになる。対象型はさらに撮像面ギリギリまで後玉が出っ張るため、佐藤氏によると「フルサイズでは光が周辺に届かないレンズが出る可能性がある」という。

 その問題に対しR-D1では、APS-Cサイズ相当のCCDを採用し、CCD表面の集光用マイクロレンズの位置を、セルから微妙にずらすことで対応したという。


通常のCCD R-D1で使用しているCCD R-D1のマイクロレンズ

50mmレンズでのR-D1とフィルムカメラの周辺光量落ち こちらは35mmレンズの結果

 会場からはカメラ店関係者から、「デジタル時代にレンズをどうすすめたらよいか」との質問も出た。佐藤氏は「DXレンズじゃないとデジタルでは写らないの? と私も良く聞かれるが、キャビネ、四つ切程度ならどのレンズでも良く写る。サービスサイズなら(デジタル非対応でも)そうそう不満はないでしょう」と回答。さらに「あとはコーティングをどう考えるか。デジタル対応レンズはゴースト、フレアに強い。逆光や夕日をとるなら最近のレンズをお奨めし、あるいはまずは今持っているレンズでのお試しを奨めては」と続けた。



URL
  フォトイメージングエキスポ2005
  http://www.pie2005.jp/


( 折本 幸治 )
2005/03/19 10:43
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