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HABU写真展「幸福のかけら」
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写真展リアルタイムレポート
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シドニー2001
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世界各地の空、雲をモチーフに作品制作を行なう写真家のHABUさんが、初めてスナップ写真による個展を開く。彼が会社員を辞めて、約1年間、オーストラリアを放浪していた1988年から、2006年までに撮りためた中から選んだ。
「およそ20年の間に撮ったスナップから、作品として発表できるのは40点。だから僕にとってこのテーマでの写真展は、最初で最後だと思います」とHABUさんは笑う。発表を意図して撮影した写真ではないが、そこにはHABUさんの空や雲の作品と同じ世界観が封じ込められている。会期中、作者も在廊予定なので、ぜひこの機会にHABUさんの『雲の下で見ていた日常』を見てみよう。
HABU写真展「幸福のかけら」はフォトエントランス日比谷で開催。会期は2009年4月16日(木)~28日(火)。入場無料。開館時間は11時~19時。水曜休館。所在地は東京都千代田区有楽町1-1-2 日比谷三井ビルディング1F。問合せはTel.03-3500-5957。
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HABUさんは「写真集が売れる」数少ない写真家の一人だ。今年も近々、写真集、エッセイ集の出版が予定されている
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会場には杉真理さん、ロバート・ハリスさんら、HABUさんの友人も登場
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■ 約2年をかけスナップを整理
HABUさんのスナップ写真は、作品撮りの合間に収められたものが多い。1本のフィルムに数カットずつがためられ、結果、20年間で膨大な枚数が残された。
メインで使うカメラはニコンF3。撮りたいと思った瞬間にシャッターを切りたいので、マニュアルフォーカスのこのカメラが手放せないのだ。故にスナップもF3で撮ることが多い。
ただ、HABUさん自身、これまでそれが作品になるとは思っていなかった。それを見返してみようと考えたのは、『PHOTO IS』などのフォトイベントに審査員として参加してからだ。
「僕にとってのPHOTO Isは『想像力を刺激してくれる扉』です。1万人の写真展で人を撮ったたくさんの写真を見て、とても新鮮だった。そこで自分のスナップの中にも、僕の雲や空の写真と同じ世界観で成立する写真があるかもしれないと気づきました」
写真を整理し始め、今回発表するまでに約2年がかかっている。
■ 頭を通さずに感じること
写真のセレクト基準は、いいバイブレーションを出していて、見ただけでハッピーな気分になるもの、くすっと笑ってしまう一瞬だ。
「シャッターを切る時は何かを感じた瞬間なのだけど、それを感知するのはトレーニングが必要だと思う」
HABUさんは大学卒業後、10年間、会社勤めをして、仕事で訪れたオーストラリアに魅せられた。忙しく日々を送りながらも、どこか物足りない日常に対して、オーストラリアは広大で、豊かに生きる喜びが感じられた。
それからオーストラリアは毎年、訪れているほか、国内外の島へ1ヵ月ほど旅をする。
「日本にいると、情報の波の中で暮らしているのが分かる。2週間ほど向こうで暮らすと、そこから解き放たれる。最初は戸惑ったりもするけどね」
そうなると素の自分が現れ、ものの見方、感覚が変わるのだ。
「日常を引きずっていると、どこかで見た情報の延長で目の前の光景を見て、撮ってしまう。それが取り払われると、それまで見過ごしていた一瞬に感じるようになり、観る人の心を動かせるイメージが捉えられるようになります」
そうした感覚は経験を重ねることで、ある程度、習得可能であるようだ。
「自分の作品撮りで行った時には、撮りたくなるまで撮りませんが、取材で行くと、そうは言っていられないので、最初からターボ全開で撮影します」
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シドニー2001
ここ5~6年、オーストラリアを旅する時は家族3人で出かけるという。寝泊りはテントで、1日中、自然のリズムの中で生活するのだ
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シドニー1996
シドニーのエリザベスカラーは、ダンボール製。かなり抵抗した跡も見られる
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■ ポジフィルムの良さを引き出す
HABUさんの写真は、発色がシャープでありながら、全体的にはやわらかい印象がある。その秘密は、使用フィルムと印画紙にあるのだ。
「使うのはポジフィルム。それをネガ用の印画紙に焼いています」という。
ポジを使うのは、さまざまな白のグラデーションでできている雲が美しく表現できるからだ。
「ネガだと、プリントの段階でいくらでも調子が変えられてしまう。そうなると自分の中の記憶色に近づけようとしてしまい、逆効果なんですよね。デジタルカメラを使わないのも、それが理由の一つにあります」
リバーサル用の印画紙では、表現にメリハリがつきすぎてしまう。そこで見つけたのがネガ用の印画紙だった。その感じの違いは、オリジナルプリントでこそ、より伝わるので、用紙にこだわる向きはぜひ、その目で確認してほしいと思う。
■ 普遍的な物語をすくいとるために
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バリ島1992
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今回の展示の流れは、被写体が何かをじっと見つめている瞬間と、撮影者を意識して撮られているもの、そして意識せずに撮られたスナップで構成している。こうしてスナップを見返してみて「写真の基本はこういうところにあるのかもしれない」と改めて思ったという。
上のバリ島での1枚は、HABUさんが撮影中、ふと振り向いた時に見た友人の姿を撮ったものだ。
「遠浅の海で、空に火の鳥のような幻想的な夕焼け雲が現れていた。夢中になって撮っていて、振り向いたら友人が火の鳥に向かって祈っていたんです」
写真は余分な情報をそぎ落として、四角いフレームの中で起こった光景をとどめる。
「写真は言葉とは違う。そのイメージから観る人が何を想像するか。その世界へ引きずり込むエネルギーのある写真を選び抜く。そのふるいをかける目のあらさに、プロとアマチュアの違いがあるのだと思います」
誰かの人生に起きていた一瞬の出来事、それが普遍的な物語として、共有される。ここは、そんな幸せのかけらが詰まった空間なのだ。
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狛江 1992
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■ URL
HABU(羽部恒雄)
http://habusora.com/
フォトエントランス日比谷
http://www.fujifilm.co.jp/photoent/index.html
写真展関連記事バックナンバー
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/exib_backnumber/
市井康延 (いちいやすのぶ)1963年東京生まれ。4月某日、4回目になるギャラリーツアーを開催。老若男女の写真ファンと写真展を巡り、作品を鑑賞しつつ作家さんやキュレーターさんのお話を聞く会です。始めた頃、見慣れぬアート系の作品に戸惑っていた参加者も、今は自分の鑑賞眼をもって空間を楽しむようになりました。その進歩の程は驚嘆すべきものがあります。写真展めぐりの前には東京フォト散歩をご覧ください。開催情報もお気軽にどうぞ。 |
2009/04/23 14:24
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