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石川卓写真展「Animal Portraits 2009」
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写真展リアルタイムレポート
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撮り続けてきたことで、始めた頃には思い至らなかった環境問題にも関心が広がったという。このチーターも絶滅危惧種に入っているのだ。「チーター」(多摩動物園)
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※写真、記事、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は固くお断りします。
作者がこのシリーズで試みているのは、動物たちの肖像写真だ。「動物の肖像写真とは何ぞや」と疑問を持つ向きは、ぜひ会場に足を運ぶか、写真集『Animal Portraits』(文芸社刊、1,995円)を見てほしい。それらの写真からは普通の動物写真と違う面白さが立ち上ってくるはず。例えば、ある動物たちは実に思索深げで、それも哲学者風だったり、音楽家ぽかったりと、実に個性的なのだ。
それは野生の動物にはない魅力……そう、彼らはすべて動物園で撮影された動物たちなのだ。この写真展で、動物園写真という新たなジャンルを体験してみよう。
石川卓写真展「Animal Portraits 2009」はコニカミノルタプラザで開催。会期は2009年4月11日(土)~20日(月)。入場無料。開館時間は10時半~19時。最終日は15時まで。所在地は東京都新宿区新宿3-26-11 新宿高野ビル4F。問合せはTel.03-3225-5001。
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石川さんのメイン機種はキヤノンEOS 5D。フィルム時代から、ネガを使い自分でプリントしていたので、すべてがコントロールできるデジタルは自分にとって最高のツールだという
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作品の一部。動物の子どもたちはどう撮ってもかわいらしく見えてしまうのだ
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■ 社内研修の課題提出がきっかけ
石川さんが動物園の動物たちを撮り始めたのは、偶然だった。当時、結婚式場のスタッフカメラマンをしていて、月に1回、ライティングや構図を学ぶ社内研修があった。
「ある時、ポートレートを撮ってくる課題が出されました。仕事はかなり忙しくて疲れていたので、休日をつぶしてまでモデル撮影をしたくなかったのです」
住まいの近所に上野動物園があったので、「ゴリラのポートレートなら簡単に撮れるし、受けるんじゃないか」とひらめき、実行に移した。それが2004年のことだ。
その作品は講師に好評で、その後も撮影を続けることにした。
「仕事柄、平日は時間がとれたので、上野動物園の年間パスポートを買って、通い始めました」
年間パスポートは2,400円。場所は徒歩圏内。行けば1日存分に楽しめる。夢中になって、月に6~7回は通うようになった。
■ 最初、動物の名前はあまり知らなかった
その頃、石川さんは特に動物が大好きだったり、知識があったわけではない。2006年には、このシリーズでコニカミノルタのフォト・プレミオに応募して、個展を開いているが、その時でもまだ「撮った動物の名前を全部知っているわけではありませんでした」と笑う。
撮り続けられたのは、彼らが思った以上に表情が豊かなことに気づいたからなのと、数がまとまれば何とかなるかなという手ごたえがあったからだという。ただ、最初は70-200mmのズームレンズを使っていたので、なかなか寄った写真は撮れずに、背景も入れ込んだ写真が多かった。
「1年ほどしてシグマの120-300mm F2.8を購入しました。今は、それに2倍のテレコンをつけて撮ることが多いです」
一見して動物園であることが分からないように撮ろうと考えていたため、撮影できる動物はまずそこで限られた。柵が写り込まない檻であることと、背景にいかにも動物園であることを思わせる装飾がないことだ。
「結構、絵が描いてあったり、いかにも作り物っぽい木があったりするんですよね」
撮影に行くと園内を1日2周から3周は回る。光の状態を選び、よい動物たちの表情を捉えるためだ。
「何度も通っていると、それぞれの動物たちにあった表情が見えてきて、こうした時に撮ろうというイメージができてきます。繰り返し通って、そのチャンスを待ちます」
人間相手のポートレートと違い、ポーズをつけさせたり、声をかけて表情を引き出すことはできないのだから、狙った表情は待つしかない。
「もちろん、写真ですから予想外のショットが得られる醍醐味もある。それで、どんどんのめりこんでいきましたね」
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「ユキヒョウ」(多摩動物園)
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■ 動物園ならではの難しさ
撮影場所も上野動物園だけでなく、多摩動物園、よこはま動物園ズーラシア、横浜市立金沢動物園、静岡市立日本平動物園、浜松市動物園などに広がっていった。そこにしかいない動物(浜松市動物園のゴールデンライオンタマリンや、日本平動物園と浜松市動物園のマンドリルなど)を撮るためだったが、同じ種類の動物でも、園によって違う表情が撮れることも分かった。
「上野動物園のクマはいつも寝ているのですが、ほかの動物園では元気に活動しているんですよね。あと上野動物園は奥行きがなく、檻が太いため、撮影条件としては厳しかったことも分かりました」
当初、動物の名前は二の次で、表情が面白ければいいと思っていたが、今はそれがどんな動物なのか、調べるようになった。名前はもちろん、習性や特徴などもだ。
例えば、アメリカバイソンは「走る百貨店」との異名を持つ。それは800kgを越す巨体ながら、時速60kmの速さで走ることと、ネイティブアメリカンにとって、この動物は皮から骨まで、食料、衣料品などにすべて活用できるからだ。
「顔つきなどを見ると、体毛は強いイメージを抱いてしまいますが、これがウールのように柔らかい。そうやって知っていくことで、撮り方も変化していきまました」
ウンピョウというネコ科の動物は、胴長短足で長い尻尾を持つ。昼間はほとんど樹上で生活するため、このような形態になったと考えてられている。そして、今回展示した石川さんの写真は、獰猛な顔のアップだ。
「全身を入れてうまく表現したかったのですが、檻が狭くて、今回はこのカットになりました」
動物園写真はなかなかに奥が深いのだ。
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「アメリカバイソン」(日本平動物園)
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■ 1点ずつ完結した世界に
昨年10月に出版した写真集でもそうだが、展示されたプリントはカラーとモノクロ、セピアなどがさまざまな色調で出力されている。それぞれの動物に対して、石川さんが抱いたイメージを重視して再現した結果だ。
「撮った時の感触、感覚を大事にしたかったんです。写真集にする時も、統一感を重視して色調を揃えることは考えましたが、1点1点で完結した世界なので、この表現を選びました」
写真集では「肖像写真」というコンセプトを強調して、眼力(めぢから)のあるカットを選んで構成したという。それに対し、写真展では、動きのある瞬間と、子どものカットを加え、より楽しめる空間づくりを行なった。
「撮り始めて5年になりますが、今後もこの撮影は続けていきます。できれば今後、定期的にこの会場で個展が開ければいいですね」
野生動物とも、ペットとも違う彼らの表情には、本当に深い感情の痕跡が見て取れる。彼らは人間と共生をし始め、独自の進化を遂げているようにも想像してしまう。この空間は観る人によって、ずいぶんと違う見え方になりそうだ。
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ホッキョクグマ(上野動物園)
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■ URL
コニカミノルタプラザ
http://konicaminolta.jp/plaza/
写真展関連記事バックナンバー
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/exib_backnumber/
市井康延 (いちいやすのぶ)1963年東京生まれ。灯台下暗しを実感する今日この頃。なぜって、新宿のブランドショップBEAMS JAPANをご存知ですよね。この6階にギャラリーがあり、コンスタントに写真展を開いているのです。それもオープンは8年前。ということで情報のチェックは大切です。写真展めぐりの前には東京フォト散歩( http://photosanpo.hp.infoseek.co.jp/ )をご覧ください。開催情報もお気軽にお寄せください。 |
2009/04/16 00:30
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