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安田幸弘写真展「星空の散歩道」

写真展リアルタイムレポート

「富士と星空」
※写真、記事、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は固くお断りします。





作者の安田さんは電機メーカーの技術開発者
 星景写真というジャンルをご存知だろうか。月や星などの天体と、地上の風景を1枚の写真に写し取った写真だ。以前から天体写真の一つとしてあり、20年ほど前からこの名前で呼ばれるようになった。

 長時間露光で焼き付けられたその光景は、現実のものでありながら、当然、肉眼では見られない。星や月、街が発する光と、その微かな光を受けて形を現すモノたちの姿がレンズを通し、フィルムに写し出されているのだ。そのせいか、この写真を眼にすると、どこか違う世界を見たような神秘的な思いに捉われてしまう。星景写真は、そんな写真的な醍醐味に溢れた世界なのだ。

 安田幸弘写真展「星空の散歩道」はフォトエントランス日比谷で開催。会期は2009年3月19日(木)〜31日(火)。水曜日休館。入場無料。開館時間は11時〜19時。所在地は東京都千代田区有楽町1-1-2 日比谷三井ビルディング1F。問合せはTel.03-3500-5957。


ギャラリーは宝塚劇場の隣にある日比谷三井ビル1階にある カメラはペンタックス67。レンズは地上の風景と星座をどれだけ入れるかで選ぶ。使うのは、45mm、55mm、75mm

夜だから見える世界

 星景写真の魅力を紹介するために、まず2つの安田さんの作品をとり上げる。


「月夜の神秘」

 この『月夜の神秘』を見て、第一印象はどう思っただろうか。海面を白い靄のようなものが覆っていて、どこか穏やかさを感じる人が多いと思う。

 しかし、実はこの光景は台風の日に撮影したもので、白い靄は荒れた波頭が描いた光景なのだ。安田さんは吹き荒れる強風の中、いつも通り、カメラを三脚に装着し、長時間露光でこの光景を収めた。


「月夜の湖畔にて」

 もう1枚、『月夜の湖畔にて』はどうだろう。初めて星景写真を見る人からは「なぜ、昼間なのに星が出ているんですか」と尋ねられるという。

 満ちた月の光は予想以上に明るく、数分の露光で撮影ができてしまうくらいだ。だが、夜の光に照らされた光景は、独特の深い色合いに彩られ、どこか現実感が希薄で、すべてが美しく思える。

「汚いものでも、不思議と汚くは写らないんです」

 夜だから見える世界がここにはあるのだ。


星景写真歴は10年強

 安田さんは小さい頃から星が好きだったという。大学時代、少し天体写真を撮っていたが、就職を機に中断。それが1996年の百武彗星、97年のヘールボップ彗星の接近で、天体写真熱が再燃した。

「その光景を残しておきたい、写したい一心でしたね」

 それが星座、星雲そのものを写すことから、星景写真に興味が移っていった。

「風景と星空の組み合わせは、同じ場所で撮っていても、撮影者によってまったく違う写真になります。すごく個性が出るんですね。そこに気づいたら、一気にのめりこみました」

 当時、『星景写真の撮り方』なんていう本があるわけではなく、最初は天文雑誌に載っていた何点かの写真を参考にして撮影していった。

「うまく撮れれば、それが自分のデータになるのですが、最初は失敗ばかりでした」

 光源は星や月だけでなく、近くにある街灯や遠くの街明かりにも影響される。

「山梨や栃木で撮影していても、100km以上離れた東京の街明かりに影響を受けます」

 そんな街の光で、木にシルエットが浮かび、そんな絵づくりも狙ってしているというのだ。雲が出ていれば、街の光はそこに反射して、いつもより露光が早く進むし、空の透明度にも関係してくる。

 ただし、露出時間は正解の幅が広く、実際、撮影者によって設定にかなり違いがあるという。ここにも1人1人の写真に、個性が現れるポイントがあるのだろう。


「月と枯れ木」

撮影は週1回ペースで

 星景写真の場合、月明かりで撮るのを嫌う人が多いという。満月の場合、月が明るすぎて、空の明るさに星の軌跡が埋もれてしまうかららしい。

「僕自身は月明かりで撮る面白さ、神秘的な部分を知って、撮影に出かける回数がぐんと増えました」

 以前は月1回程度しか出かけていなかったのが、今は毎週でも撮りに行くようになった。撮影枚数も月明かりがないと一晩で10枚程度(ワンカットしか撮れない日もあるらしい)だったのが、20〜30枚も撮れてしまう。

「同じ場所にいても、数十分の違いでまったく違う風景になることがあるし、撮影のタイミングが限られるケースも少なくない。だから撮るたびに、次はこう撮ろうという課題が自分の中でできていきます」

 乗鞍高原や富士山は、安田さんの好きな場所で何度も通っている。

「乗鞍は1週間で花の景色が変わり、別の表情を見せてくれます。ワンシーズンに7〜8回は撮りに行ってしまいますね」


「花咲く月夜」

「小屋と雪景色」

星に操られて……

 撮影場所を考える時、常に方角を意識するという。地上のモチーフとなる風景と、天体の位置関係が重要だからだ。

「だから撮影に行くと、偶然、現地で仲間に会うことがあります。例えば富士山とある特定の星を撮ろうと思うと、撮影ポイントは限られてくるんですよね。撮影の途中、仲間に連絡をとったら、ほんのすぐ近くで撮影していたなんてこともありました。暗い場所の場合は、近くに人がいても分かりませんから」

 撮影場所は暗く、ファインダーで被写体の確認ができないくらいなのだ。星景写真家たちはその暗闇の中、カメラとともに静寂な時を過ごす。写真に神秘的な雰囲気が写り込むのも当然かもしれない。

 ロケハンは昼間する場合と、夜、車で移動中に見つけることもある。主な撮影地は関東甲信越地区が中心だが、梅雨の時期などは東北へ撮りに出かけることもある。

「気をつけなければいけないのは飛行機。千葉はもちろんですが、長野の方にも航路があって出くわすときがあります。ただこればっかりは防ぎようがないんですよね」

 撮り続けてきて、今の新しい課題は「もう少し星から自由になること」。星への憧れが強くあるため、どうしても星を中心に撮ろうとしてしまう。

「普通の人にはわからないマニアックなこだわりがあるんですよ。そこから自由になれれば、もっと表現に広がりが生まれると思います」と笑う。

 天体写真の枠を超えて発展しつつある星景写真があなたの眼にはどう写るのか。かなり見ごたえのあるジャンルだと思います。


「Northern Lights」。最近EOS 50Dを購入し、オーロラはデジタルで撮影したという


URL
  フォトエントランス日比谷
  http://www.fujifilm.co.jp/photoent/
  安田幸弘
  http://hp1.cyberstation.ne.jp/y-yasuda/
  日本星景写真協会
  http://aspj.halfmoon.jp/
  写真展関連記事バックナンバー
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/exib_backnumber/



市井康延
(いちいやすのぶ)1963年東京生まれ。灯台下暗しを実感する今日この頃。なぜって、新宿のブランドショップBEAMS JAPANをご存知ですよね。この6階にギャラリーがあり、コンスタントに写真展を開いているのです。それもオープンは8年前。ということで情報のチェックは大切です。写真展めぐりの前には東京フォト散歩( http://photosanpo.hp.infoseek.co.jp/ )をご覧ください。開催情報もお気軽にお寄せください。

2009/03/25 00:29
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