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【インタビュー】コンパクトLUMIXユーザーにも違和感のないL10

~パナソニックDSCビジネスユニット 房忍氏に聞く

LUMIX DMC-L10
 パナソニックが発売したデジタル一眼レフカメラ「LUMIX DMC-L10」は、どこかレトロなデザインを採用したDMC-L1から一転、“普通の”一眼レフカメラと同様の風貌が与えられている。センサーとミラーボックスを共有するオリンパスE-410/510の兄弟機にも見えるが、実際に手に取ってみると、明らかにパナソニックオリジナルの商品に仕上がっていることがわかる。

 背面液晶モニターに映像を映しながらのコントラストAFやインテリジェントISOコントロールなど、同社のコンパクト機ではおなじみの機能をレンズ交換式カメラにフィーチャーしたのも大きな特徴。見た目は普通。しかし、その中身はどの会社の一眼レフカメラとも異なる。

 そんなL10について、パナソニックAVCネットワークス社DSCビジネスユニット企画グループマネージャーの房忍氏に話を聞いた。


房忍氏
──昨年、パナソニックはL1で一眼レフ業界にデビューしたわけですが、その後の手応えについて、まずはうかがえますか。

 我々は第1号機のL1では、「(メインストリーム市場ではなく)ニッチ市場を狙います」と話していました。新参者ですから、伝統的なカメラメーカーと真っ向勝負するとは考えず、“パナソニックのオリジナル一眼レフ”をどれだけ表現できるかにこだわりました。そして、そのオリジナリティを、カメラファンの方に認めていただけるだろうか? という意味合いもありました。

──そうした挑戦の結果に対する自己評価をお願いします。

 おおよそ、事業を始める前から考えていた成果は出ています。ほぼ、イメージ通りです。我々が一眼市場に置かれている位置付けも、顧客の評価、売り上げといった面でも、想定した通りの結果と言えます。カメラユーザーの中でも、非常にコアなカメラファンの方々に、L1というカメラを気に入って使っていただいている方々が生まれています。

 いろいろな部分でマニュアル操作ができるようにしたことを評価していただき、ダイヤル操作などを多用したインターフェイスは、パッと見た目で設定状況が把握でき、操作する楽しみがあるということで評価していただきました。

 一方、反省点としては操作性の面でもう少し工夫が必要だとわかりました。高機能の一眼レフカメラともなると、GUIで操作しなければならない要素も多く、高年齢層の方々からは、もう少しシンプルな構成にしてほしかったという意見がありました。


コンパクト機が持っている機能はすべて盛り込んだ

L10(左)とL1
──そのL1に続くL10は、どのような位置付け、ユーザー層を想定して企画・開発したのでしょう。

 L1は“個性とオリジナル”を主軸にコアなお客様を想定して開発しましたから、あえて他社とは違う部分にこだわりましたが、L10ではもうすこし幅広いユーザー層をイメージして開発しています。

 デザイン面で言うと、L1はレンジファインダーカメラを想起するデザインからもわかるように、カメラを操り、写真を楽しまれるお客様をターゲットとしています。しかし、L10ではもう少し幅広いお客様を想定して、典型的な一眼レフカメラのスタイルを踏襲し、その上でオリジナリティを出そうと考えました。

 価格帯も異なる製品ですし、コンセプトの面でもL1の後継ではなく、よりコンシューマー寄りのモデルとして開発しました。

──では、スタイル以外のどの部分に、LUMIXならではのオリジナリティを求めたのでしょう?

 もちろん“ライブビュー”です。フィルムカメラの時代、コンパクト機でも一眼レフでも、記録するメディアは同じ。フィルムです。レンズという要素を除くと、画質はフィルムとその処理で決まっていました。ではどこでコンパクト機と一眼レフの差別化が図られていたのかと言えば、レンズ交換やボディ性能によって一眼レフカメラは撮影領域を拡大し、ユーザーの撮影欲求を満たしたわけです。

 ところがデジタルになると、今度はコンパクト機が“化けた”と我々は捉えています。センサーサイズは用途ごとに使いわけられますし、画質も用途に合わせてさまざま。レンズに関しても、焦点距離も大きさも重さもコンセプトに合わせて作り込めるようになりました。その結果、小型で携帯性の高い超高倍率ズームレンズ搭載のコンパクト機や、ポケットに入る超コンパクト機が生まれるなど、ニーズに合わせて多様な製品が生まれています。


 ところが一眼レフカメラは? というと、基本的には撮像センサーや記録メディアなど、記録システム以外の変化は何も起きていません。フィルムカメラの場合、コンパクト機を高機能、高性能にした製品としてヒエラルキーの一番上に一眼レフカメラがありましたが、デジタルカメラの場合は、コンパクト機の厳密な意味で言う上級機ではありません。

 そこで、デジタル時代のコンパクト機を発展させ、それらのヒエラルキーのトップに位置する、すなわちコンパクトデジタルカメラとつながる一眼レフカメラとは何かということを考えました。それがL10のオリジナリティで、その象徴と言えるのがライブビューです。

──そのライブビューですが、ニコンがコントラストAFを可能にしていますが、合焦時間が長い。そのほかはビューファインダー代わりに使うことが前提なのに比べ、L10はかなり積極的に多様な機能を盛り込んでいますね。

 ライブビューとコントラストAFによって得られる機能は、どれも便利なものです。液晶ディスプレイ上でホワイトバランスを確認、変更できますし、フィルムモードでの絵の違いも確認できます。顔検出やヒストグラム表示も可能です。コントラストAFのよさをきちんと訴求できるよう、顔検出AFからスポットAFまで、多彩なAFを選択できるようにしました。


コントラストAFの速度にこだわった

コントラストAF対応の14-50mm F3.8-5.6(左)と14-150mm F3.5-5.6
──確かにL10のコントラストAFは“使える”印象ですが、利用できるレンズは限られていますね。今回、同時発表された2つのレンズでしかコントラストAFは行なえない。この理由は何でしょう。コントラストAFを高速に実行するための、特別な機能が入っているのでしょうか?

 L10のヴィーナスエンジンがレンズ内のマイコンと通信して、レンズ側の状況を確認する仕組みを持たせています。また、レンズ側にはコントラストAFが必要とするより細かく正確な位置情報を、リアルタイムでボディ側に返す仕組みを入れています。

──その改良は速度を向上させるとのことですが、AF精度にも影響を与えますか?

 精度とスピード、両面において向上します。

──なぜその機能を搭載していないレンズではコントラストAFを行なえないのでしょう。原理的にはどのレンズでも動作するはずですよね。速度と精度が多少落ちても使いたい人もいるのではないでしょうか?

 より精度の高い距離情報、最短および無限遠の外側までフォーカスリングを動かすなど、コントラストAFに必要不可欠な仕組みがレンズに入っています。この仕組みがないと、コントラストAFではピントの山を瞬時に見出すことができません。これまで発売されているレンズは、コントラストAFが必要とする精度の情報は持っていません。したがって、既存のレンズでコントラストAFを行なうと、最適なピントの位置を探して、ゆっくりとフォーカスが行ったり、来たりを繰り返す状態が起こり得ます。

 既発売レンズでコントラストAFが使えないとアナウンスさせていただいているのは、今、ご説明しました理由によります。なお、今後パナソニックで開発するレンズはすべてコントラストAF対応にして参ります。

──フォーサーズの規格の中で、コントラストAF技術がどのように位置づけられていくのでしょうか?

 フォーサーズユーザーの皆さんがコントラストAFのメリットを享受できるように、今後パナソニックで開発するレンズはすべてコントラストAF対応としていきます。また、これはフォーサーズの各社の方針に関ることですので、私が断定することはできませんが、少なくともコントラストAF対応レンズが発売されることに対して制限を加えることはありません。


レンズは本数よりも質を重視

──そのレンズですが、これまで発売してきたレンズも含め、価格的には高級路線ですね。14-50mmなどは買いやすくはなっていますが、もう少し手軽にパナソニック製一眼レフカメラの世界に入れるレンズも必要ではありませんか?

 確かに値段は高いものが多いとは思いますが、今までのライカレンズに比べて努力はしているつもりです。“ライカD”の描写基準を満たす高いクオリティーのレンズとなると、どうしても価格は高くなってしまいます。

──高性能なレンズを揃えることは大切ですが、一方で今回の製品にも似合う軽量・コンパクトなシリーズも欲しいところです。今後、レンズのラインナップはどのように整備していくのでしょう。

 レンズのロードマップはオープンにしていますから、そのロードマップを守るべく一生懸命やっていきます。

 確かにレンズのラインナップの充実と小型軽量レンズというご要望に対しては真摯に検討させていただきますが、我々は、まず優先すべきはクオリティーではないかと考えています。いたずらに本数を増やすよりも、きっちりと良いレンズを作っていこうというのが我々の考えです。

 幸い、フォーサーズシステムのレンズは、当社、オリンパス、シグマから発売予定も含めると31本のラインアップと充実していますので、これらも含めてご検討いただきたいと思います。

──これでボディが2種類になりましたが、今後も他社とは異なるユニークな製品企画を行なっていくことに変わりはないと考えていいのでしょうか?

 まだL10を発売したばかりですが、もちろん、これからもLUMIXらしさを持った商品を開発していきます。ただ急いでラインナップを作るのではなく、地道にひとつづつ実現していきたいと思っております。いろいろとアイディアはありますので、楽しみにしていただきたいと思います。

 コンパクト機と一眼レフカメラでは見た目の形は異なりますし、明確に別系統の製品ではありますが、基本的には、今後もコンパクトカメラのLUMIXシリーズを持つユーザーが、使ってみると、ちゃんとコンパクトのLUMIXと血の繋がった兄貴分と認識できる開発の基本の考え方は踏襲したいと思っています。



URL
  パナソニック
  http://panasonic.jp/
  製品情報
  http://panasonic.jp/dc/l10/
  パナソニックLUMIX DMC-L10関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2007/09/26/7096.html


( 本田 雅一 )
2007/12/18 00:05
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