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【インタビュー】一眼レフと“ソニーらしさ”

〜AMC事業部 石塚副事業部長に聞く

α700
 今年2月の北米展示会「PMA 2007」で発表されていたふたつの新しいαシリーズボディのうち、当時からディテール部分の完成度が高い(即ち発売が近いと考えられる)ハイアマチュア機が「α700」として先日発表された。

 この機会に、デジタルイメージング事業本部AMC事業部の石塚啓一副事業部長に話を聞いた。製品の細かな使い勝手や評価は、今後、試用評価としてさまざまな記事が掲載されていくだろうが、ここでは主にα700開発の狙いと今後の展開について話を聞いてみた。


従来のαシステムユーザーを意識したα700

AMC事業部の石塚啓一副事業部長
──AMC事業部長の勝本氏にも、α事業立ち上げのプロセスについて自己評価していただいたことがあります。旧コニカミノルタから移籍し、勝本氏とともに事業部をまとめる立場として、同じことを最初に伺わせてください。

 何度か報道されているように、α100発売後の反響は非常に大きく、売り始めの頃は自分たちが想定していた数字を遙かに超える成果が出ました。市場で10%のシェアという目標を掲げてα事業を立ち上げたのですが、我々は1機種のみでのスタートですから、この数字はかなり“背伸び”した、大きな目標だったのです。発売後、しばらくすると当然、売り上げは落ちてきましたが、それでも現状、ワールドワイドトータルの数字として10%という目標はクリアできています。

──地域ごとのムラはどうでしょう?

 αシステムが特に強い地域が、欧州にいくつかあります。スイス、オランダ、フランスなど、元々ミノルタブランドの強い国では15〜20%のシェアを獲得しています。中にはポーランドのように、デジタルになってから急に伸びた国もあります。

 最大市場と言われる北米は、機種数が1つということもあり、シェアのアップダウンが非常に激しい。他の製品と同様、北米市場は超大型流通店舗のセールスプランに左右されやすいため、なかなかシェアが把握しづらい。日本は発売直後に大量に売れて、その後は急速に沈静化するという推移でした。日本以外の地域が、様子を見ながらソニーのαシステムを評価し、徐々に認知、浸透が進むにつれてシェアが安定してきたのとは対照的です。

──そこにハイアマチュア機のα700を年末商戦に向けて投入するわけですが、この製品を開発する上でターゲットとしたユーザー像を教えてください。

 主なターゲットは、旧コニカミノルタのαユーザーで、中級クラスのボディを使っていたユーザー。そしてα100からのステップアップユーザー。まずはαシステムユーザーに、高機能なハイエンドアマチュア機を提供することが目的でした。

──従来からαシステムにコミットしてくれているユーザーを大切にする必要は当然あるでしょうが、これからカメラを始める人、あるいは他社システムユーザーなどにもアピールする製品でなければ、市場を拡大していけないのではありませんか?

 ユーザー基盤として、αシステムユーザーをかなり意識しているという意味で、新規ユーザーを意識していないというわけではありません。従来からのαシステムユーザーに加え、新しい機能に対して積極的なユーザーにアピールできる製品作りをする必要はあります。


α700の“ソニーらしさ”

ブラビアプレミアムフォト(発表会のプレゼンテーションより)
──αシステムの発表当時は、今後はソニーらしいカメラを模索したいとのコメントもありました。あれから1年以上を経て、何か新しいアイディアは生まれてきているのでしょうか?

 斬新さの追求は常に課題としてあります。“ソニーらしさ”という意味では、今回、液晶テレビのブラビアと連携させることができました。

──HDMI端子を備えたことで、家庭にあるデジタルハイビジョンテレビとの手軽な接続が行なえるようになったことですね。しかし、これはHDMI端子を持つディスプレイならば、どの製品ともつながるのではありませんか?

 “ブラビアプレミアムフォト”というキーワードで、ディスプレイとカメラを一緒に開発しています。通常のテレビは動画に最適化されていますが、新しいブラビアは写真表示に適した映像モードを備えています。これは我々とテレビの開発部隊が互いのノウハウを交換して生まれたものです。動画は動画向けに輪郭をはっきりと見せるなどの処理が行なわれますが、写真は細かいディテールや透明感、髪の毛一つ一つを表現できる精細感が重要です。また、テレビ側は接続相手がαであることを認識し、最適なカラーと設定で表示を行います。


──ソニーのオーディオ事業部とも協業し、シャッター音をチューニングしたとのことでした。実際に製品を触ってみると、ミラーの動作音そのものは変化していませんが、ミラーの音量を下げ、シャッターチャージの音がやや大きめかつシャープに聞こえるようになっていたように思います。

 コニカミノルタのカメラがソニーで開発、生産されるようになったことの利点は、何よりもLSIやイメージセンサーの技術が社内にあることです。社内にある技術を組み合わせることで、製品のほとんどを構成でき、社内の技術開発で性能や機能を改善できる。そしてブラビアとの連携にあるように、ソニーが持つ多様なデジタル機器との密な連携を行なえます。

 そこがスタートで、ほかにもいろいろな部署との連携ができるのではないか? と考えていた中に、オーディオ事業部との協業がありました。

 一番最初に彼ら(オーディオ事業部)が行なったのは、顧客のタイプを分類し、それぞれのタイプに属する人たちが、カメラのシャッター音をどのようなイメージで感じるかを、徹底して調べていきました。そこで、人が気持ちよいと感じる音の傾向を調べ、シャッター音チューニングの目標値を設定してくれたのです。

 実際に立ち会って驚いたのですが、音声波形の解析を行なうと、波形の中のどの部分を気分良く感じ、どこと悪い感じるのかがわかってきます。そこで部材の材料を変更し、不快な周波数の音を取り除くなどの変更を行なって、設計側で対応させました。


──ソニーらしさというキーワードで話を進めると、参入前から“ソニーはライブビュー化を狙っているのではないか”という意見が多かった。ところが、α100はともかく、α700にもライブビューは搭載されていません。なぜでしょう?

 ソニーとしては、“一眼レフカメラのライブビューがどうあるべきか”について、きちんとビジョンを持って開発を進めています。しかし、この機種にまとめ上げていく上で、700gを切る軽量ボディに中級機に求められる機能を詰め込む際、今回は搭載しないという判断をしました。

──現在のライブビューは、まだ光学ファインダーの一時的な代用という形でしか実装されていません。一部ではコントラスト検出方式でのAFを実現するなどしていますが、しかし常にどんな場面でも積極的に使うというよりも、特定の場面に威力を発揮する機能です。ソニーのライブビューに対するビジョンは、デジタルで映像をキャプチャしながら、リアルタイムに分析してインフォメーションを伝えるなどの、より積極的でラディカルなライブビューになるのでしょうか?それとも従来的なものですか?

 もっと積極的にライブビューを使いこなしていくには、イメージセンサーと映像処理エンジンの両方に、“仕込み”をしておかなければなりません。しかし、きちんと実装すれば、評価してもらえるものになると考えていますし、そのためにもライブビューに関して“創造的な機能”を作り込んでいきたいと思っています。これはある日突然できるものではなく、常に研究開発が必要な機能ですから、その過程に乗って進めていきます。


ノイズ低減と画質にこだわった

──α700で、もっとも重視した、こだわった要素は何でしょう?

 今のデジタル一眼レフカメラは、まず画質ありきだと思います。そこで最新のCMOSセンサーを採用し、S/N比を向上させて高感度まで撮影領域を広げることができました。もうひとつは、αシリーズの特徴である手ブレ補正です。ボディ内手ブレ補正を望んでαシリーズを選ぶお客様も多いですから、きちんと性能を上げています。数値的には従来が2.5段分の補正だったのに対し、4段分まで向上しています。その上で、センサーの感度もISO3200まで広げていますから、手持ち撮影が可能な領域が二つの軸で広がりました。

 そしてもう一つ、中級機としてのスペックを満たしながら軽量化にもこだわりました。実際に手に取って見ると、本当に軽いことを実感していただけると思います。エントリー機からステップアップする際、機能や性能に惹かれて買い換えても、結局は重くて持ち運ばなくなってはユーザーのためにもなりません。中級機だから多少重くともかまわないというのではなく、中級機でもエントリー機から乗り換えて違和感のない軽さを実現したかった。

 最後に付け加えさせていただきたい点は、縦位置でも横位置と全く同じダイアル、ボタンなどの位置関係、握り心地を実現した縦位置グリップです。縦位置のグリップを横位置と完全に同一形状とするのは、コニカミノルタ時代からαシステムの伝統ですから、それをちゃんと踏襲しました。


α700のCMOSセンサー「Exmore」
ボディ内手ブレ補正機構の効果は4段分に

縦位置グリップ

──画質にもっともこだわったとのことですが、画質といってもさまざまな切り口があります。どのような部分で画質が上がったのでしょう。

 センサーの性能が大幅に向上し、さらに画像処理エンジンも高性能になったことで、ノイズが大幅に少なくなりました。特にセンサーに関しては、他社製を含めて内部評価を行なっていますが、APS-Cサイズセンサーではトップクラスの性能になっています。CMOSセンサーは処理速度、低消費電力、それに伴う発熱の少なさといった特徴があり、発熱に由来するノイズも少ない。このことが大きく画質に良い影響を与えています。

──Dレンジオプティマイザーも、今回は“使える”機能になったように思います。機能面以外に処理のアプローチなども変更しているのでしょうか?

 Dレンジオプティマイザーの原理そのものは変わっていません。しかし、5段階に作用する強さを選べる点と、ブラケティングで複数の効果を記録できるようになったことで、使いやすさが大きく拡がっています。輝度差の大きな被写体を撮影する際などに、この機能をONにしておけば、どれか1枚に気に入ったトーンの絵が出てくる感じです。イメージセンサーのS/N比が良くなったことで、暗部を持ち上げても弊害が少ないことも使いやすさを増している原因でしょう。


伝統と挑戦

PMA07で展示されたモックアップ。左がα700(ハイアマチュア向けモデル)。右はフルスペックモデル
──今年のPMAでは、さらに上位機種の開発も発表していますね。ペンタプリズムやボディの大きさを見て、フルサイズセンサー機という印象を持っている人が多いでしょう。こちらについてはアップデートはありませんか?

 我々はこれまで、最上位機についてフルサイズセンサー機とは言っていません。明らかにしているのは、来年度(2008年4月)以降に発売するということだけです。現時点では、今年のPMAで発表した以上のことは言えません。しかし、きっちりと時間をかけて作り込んでいます。これまでのαシステムに採用されてきた機能を全部組み込んだ上で、“ソニーブランドを表現するフラッグシップ”として開発しています。

 プロにも使ってもらえる性能を備えた、ハイエンドのアマチュア向けカメラになります。プロ向けのサービスネットワークを作ることはありませんが、機材の性能としてはプロ機に相当するものです。誰もが最高峰と言ってくれる製品を作っています。

──最後に、今後のαシステムについて、どのようなポリシー、ビジョンを持って開発していくのか、読者にメッセージをお願いします。

 “伝統と挑戦”がキーワードです。一眼レフカメラが持っている、基本的な愉しさを大切にカメラとしての基本部分をしっかりと作っていく。その上で、ソニーとしての新しさも順次、製品に組み込んで提供していきます。

 ソニーは多様な製品をこれまでにも開発し、それに伴い多様なノウハウを持っています。社内における研究開発のテーマも幅広い。そうしたソニーに内在する技術を、伝統的な一眼レフカメラの中に詰め込むことにチャレンジしていきます。“伝統と挑戦”の成果に期待してください。



URL
  ソニー
  http://www.sony.co.jp/
  製品情報
  http://www.sony.jp/products/Consumer/dslr/products/body/DSLR-A700/
  α700関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2007/09/07/6998.html


( 本田雅一 )
2007/09/22 14:44
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