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【インタビュー】E-410/510開発陣インタビュー(後編)

~E-510に搭載した“最強の手ブレ補正機構"

E-510
 前編ではE-410/E-510全般について話を聞いたが、後編ではE-510に搭載された手ブレ補正機能にフォーカスして、開発者へのインタビューをお届けしたい。

 オリンパスとして手ブレ補正機能に対し、どのようなポリシーを持っているのか。そして4段分の手ブレ補正効果があるという、超音波モーターを用いたボディ内手ブレ補正機能、Image Stabilization(IS)が他の方式と異なる点はどこなのか。

 自ら“最強の手ブレ補正”と宣言するE-510のISについて話を聞いた。前回に続いてプロダクトリーダーの石橋唆月氏に残っていただき、さらに手ブレ補正時の制御技術を開発した竹内寿氏、センサーをシフトさせるメカ部分の開発・設計を担当した岡村崇氏にインタビューに加わってもらった(文中敬称略)。


石橋氏
──前編のインタビューでは、レンズ交換式一眼レフデジタルカメラとして、E-410の次に軽量・コンパクトでありながら、手ブレ補正を内蔵していることを強調していました。

石橋 その通り、ボディ内手ブレ補正機能搭載で世界最小・最軽量の製品がE-510です。しかし軽いだけではありません。補正効果に関しても最高の性能を有しています。

──フォーサーズシステムには、パナソニックが手ブレ補正機能を持ったレンズを用意していますが、オリンパスはボディ内を採用した。今後もボディ内手ブレ補正を搭載する機種を増やしていく方向ですか? それともレンズ内蔵にも取り組むのでしょうか? オリンパスとして、ボディ内を選択した理由を教えてください。

石橋 ボディ内を選択した理由は、ボディ内で手ブレ補正を行なう方が、画質的にも機能的にも優れた製品が作れると判断したからです。

 性能面で優れていることに加えて、すべてのフォーサーズレンズで手ブレ補正が可能になります。このメリットをお客様に提供するために、今後もボディ内手振れ補正を搭載する機種を増やしていきます。


E-510の手ブレ補正ユニット
──キヤノンやニコンなどはレンズ側で行なう方が性能面では有利だと話しています。

石橋 レンズ内で手ブレ補正機能を入れようとすると、補正光学系をレンズに入れる必要がありますから、どうしてもレンズ構成に制限が出てきます。本来の理想的なレンズ構成を補正光学系によって変えなければならないため、光学的なバランスをさまざまな面で崩さなければなりません。ブレの防止だけならば、レンズごとに設計した方が、もしかすると多少はよい結果が出る可能性もあるのかもしれません。しかし、描画性能を含めたトータル性能で考えたとき、どちらが画質がよくなるかと言えば、それは余分な光学系がなく、最適な設計ができる方が有利です。だから、我々は最初からボディ内手ブレ補正にターゲットを絞って開発をしてきました。また、後ほど話させていただきますが、手ブレ補正の性能面でも、現在ある手ブレ補正機能よりも良い結果が出ています。

──レンズ内蔵の場合、単純なスペックだけでなく、フォーカスの位置によって画角が変化する場合など、実際の設計値に合わせて細かく手ブレ補正のチューニングができます。しかしボディ内で、将来発売される未知のレンズまで含めてとなると、レンズ内を超えるというのは難しいのではありませんか?

石橋 その通りなのですが、フォーサーズレンズは特性値をデータベースとして持っていて、ファームウェアで処理をしています。その値を参照して、各レンズごとの最適制御を行なうわけです。では未知のレンズ、他社の製品などはどうか? となるわけですが、実はフォーサーズシステムレンズには、データ通信の規定があり、すべてフォーカス位置による画角変化など、手ブレ補正を最適制御するために必要なデータを、マウントから通信で送る機能が入っています。このため、今後発売されるフォーサーズレンズに関しても、レンズ内蔵と同様の最適制御が可能になっています。

──開発にあたって目標とした性能などはあったのでしょうか?

石橋 初級者や暗い場所での撮影が多いユーザーだけでなく、手ブレ補正によって高画質と機動性を実現することです。ブレが少なくなれば、どんな場面でも画質を向上させることができるはずです。また手持ちで使える場面が増えれば、機動性も増します。プロのフォトグラファーにも、常にオンにして使っていただける、確実に利点を感じていただける手ブレ補正機能にすることが必須命題だと考えました。


竹内氏(左)と岡村氏
──目標を達成するために何から手を付けたのでしょう?

竹内 まずは手ブレ傾向の解析です。既存の機種をさまざまな属性の方々に使ってもらい、どのような場合に手ブレを起こしやすいのか。そのブレはどのような特徴を持ったものなのかなどを細かくデータ収集したのです。たとえば縦位置撮影と横位置撮影でのブレの違い。使用レンズとブレの関係。ブレの方向やタイプ(ヨー方向かピッチ方向か)の違いなどを分析しました。

 さらにブレの周波数と振幅の関係も多くのデータを収集しています。たとえば「周波数が低いゆっくりとしたブレは、当然ながら振幅も大きい」などです。手ブレといってもさまざまなブレ方があるため、補正を行なう際の制御を特定のブレだけでなく、多様なタイプに合わせていくことで、補正性能を上げられるだろうと考えたのです。

──つまりブレの検出を行なうセンサーと、検出結果を評価して正しい補正を加えるための制御を行なうソフトウェアが重要と言うことですね。とはいえ、最新の手ブレ補正レンズでは、4段分の補正をうたっているものもありますよね。

竹内 E-510の4段分補正というスペックは、他社の製品を研究した結果、設定された目標でした。600mm相当の画角で他社製品の評価を行ないましたが、2.5段から3段ぐらいの手ブレ補正効果というのが、我々が設定したテストにおける結果でした。これらよりも確実に良いと実感してもらえる性能を実現できたと考えています。加えて、手ブレ補正を行なうために必要な電力も最小限にしています。

 また、手ブレ補正が効くブレの範囲という意味でも、大きく進歩しています。我々の手ブレ補正システムは、0Hzからの幅広い振動を検出します。つまり補正の幅もそれだけ広く、ほとんど止まって感じるようなゆっくりとした振動に対しても、あるいはブルブルと手が震えるような比較的周波数の高い振動に対しても確実に作用するのです。実証実験での補正効果だけでなく、幅広く高い効果を発揮できるボディ内手ブレ補正になりました。

──そうした高性能化には、超音波モーターも寄与しているのですか?

岡村 超音波モーター以外にも、ボイスコイルを用いた手法やDCモーターを用いる手法も検討しましたが、超音波モーターは出力の大きさに対して質量が小さく、応答性や追従性が高いという特徴があります。加えて消費電力も少ないという利点もあります。

──応答性、追従性が高いというのは、動き出しの推力が強い、つまり瞬発力があるという意味でとらえればいいのでしょうか?

岡村 推力が強く、また到達できる速度も速い。目的の速度に達するまでの時間は、他方式の数倍というオーダーで優れています。意図通りの速度まで瞬間的に加速できます。あまりに出力が大きいために出力を抑えながら使っているほどで、ダストリダクション機能を含むセンサー部全体を、理想的に動かすことができるようになりました。


──幅広い周波数のブレを補正できるということは、一般に手ブレ補正はオフにした方がよいと言われている三脚を用いた場合のブレにも有効ということでしょうか。

竹内 三脚に付けた場合は低周波数のブレはなくなりますが、かわりに高周波数のブレが出てきます。応答性などの問題から、高周波数のブレには通常の手ブレ補正機能は対応できません。しかし、我々の手ブレ補正機能は、常にオンにしたまま撮影した場合でも、高周波数のブレに対して補正を行ないます。ただ、電池を節約する、取扱説明書ではオフとしています。

──消費電力を抑えているとの発言もありましたが、具体的な数値はありますか?

岡村 超音波モーターは少ない電力で大きなパワーを取り出せます。また、常時通電でなく、シャッターが開いているときだけ瞬間的に通電するので、ほかの方式より消費電力を抑えることができます。E-510の場合、CIPA標準テストで約650枚が撮影できますが、手ブレ補正を常にオンにして撮影した場合でも、500枚近くは撮影できるはずです。

──OMマウントのレンズをアダプタ経由で利用する場合、手ブレ補正機能を利用することができません。しかしレンズの焦点距離を入力することで手ブレ補正を簡易的に行なうなどの逃げ道があっても良いのでは?

石橋 焦点距離の入力だけでは、レンズごとの細かな特性に合わせる制御ができません。このため、補正精度は若干落ちるかもしれませんが、対応は検討してたいと考えております。きちんとテストを行ない、十分にメリットを感じさせるぐらいの性能が出るようならば、メニューから焦点距離を入力して手ブレ補正機能をOMレンズでも利用可能にしたいという気持ちはあります。

──手ブレ補正機能というのは、なかなか定量的なテストを行ないにくい。それぞれ揺れの周波数が異なる場合もあり、また許容できるブレの大きさに対する感覚は人それぞれですよね。全く同じ条件で、人の生み出すブレを作り出して比較テストするのも難しい。そうした評価基準が曖昧な中で、手ブレ補正の優秀性をアピールできるでしょうか?

石橋 一般のユーザー様が定量的に評価するのは難しいと思います。しかしながら、私たちが定量的かつ膨大なデータを評価した結果では、E-510に搭載したのは“最強の手ブレ補正”と断言できます。当社のテストでは、すべての焦点距離において、当社の手ブレ補正が劣るというデータは出ていません。私たちは、どんな条件でテストしていただいても他社に比較して高い効果が出るという自信があります。あらゆる周波数のブレ、あらゆる画角でE-510が優位にあると考えています。他社の全製品、全条件を比較テストしているとは言い切れませんので、いくつかはE-510が劣るデータが出てくるかもしれません。しかし、トータルの性能では圧倒的に勝てる自信があります。



URL
  オリンパス
  http://www.olympus.co.jp/
  オリンパス E-510関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2007/03/12/5812.html
  オリンパス E-410 関連記事リンク集
  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/dslr/2007/03/12/5811.html


( 本田雅一 )
2007/07/25 00:06
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