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オリンパスによる女性のためのデジタル一眼講座レポート

~小型軽量で女心をつかめ! オリンパスのプロジェクトX「Photo Rouge」進行中

撮影実習で料理の写真を撮る参加者
 今年8月、オリンパスイメージングは写真講座「オリンパスデジタルカレッジ」をリニューアルした。そこでは基礎講座から応用編までステップアップしていけるように講座体系を整理して充実させた。その目玉のひとつとして新設したのが女性のための写真講座「Photo Rouge」(フォトルージュ)だ。

 女性のみの写真教室に同社は協力や協賛で関わったことはあるが、主催するのは意外にも初めて。「企画を出した時には、集客を危惧する声しか聞こえてこなかった」と営業本部の販売サポート東日本チーム・チームリーダーの菅野幸男さんは笑う。

 第1回の講座は募集開始から2週間で定員(20名)を上回る応募を集め、第2回(12月開講)もすでに定員に達した。今は「講座を増やせと言われています」ということで、来年1月にも第3回を行なうことが決まっている。

 写真に関心を持つ女性ユーザーが増えていることは数年来指摘されているが、そのニーズは確実に変わってきている。今はブログ、ホームページに使う写真を上手に撮りたいという女性が増えてきているのだ。第1回の「Photo Rouge」の模様と、オリンパスの取り組みについて紹介する。


参加者は10代から70代まで幅広く

 「Photo Rouge」はデジタル一眼レフ初心者を対象にしたコース。新宿の同社のセミナールームでの撮影基礎講義、表参道での撮影実習、セミナールームでの講評会と、全3回を3日に分けて行なった。

 撮影実習は、若い女性に関心の高い被写体として「料理写真」が上がっていることから、レストランでの料理写真実習をメインに据えた。表参道で街スナップを行なった後、青山のレストランでランチを撮るのだ。

 約2,000円ほどのランチコースを含めて、受講料は一般10,000円、ズイコークラブプレミア会員9,500円。講師は若手女性写真家の吉住志穂さんだ。

 参加者は25名。年齢は10代から70代までだが、メインは30~40代。オリンパスのデジタル一眼レフ所有者が約3割で、そのほかはほとんどがデジタルコンパクトユーザーだった。オリンパスのデジタル一眼レフを持っていない人には「E-330」の無料貸し出しを行なった。レンズは料理写真を撮ることから、ZUIKO DIGITAL 35mm F3.5 Macroか、同 ED 50mm F2.0 Macroが用意された。

 1回目の講義は、仕事帰りに立ち寄れることを考慮して平日の9月5日、18時半に始まった。視度調節から始まるカメラの基本操作、絞りとシャッタースピードによる表現の違い、ISO感度、ホワイトバランス、そしてレンズの違いをポイントに、その効果を作例で見せながら解説し、実際にカメラを操作した。


座学の会場は同社内のセミナールーム。飲み物つき
講師の吉住志穂さん。スクリーンに作例やカメラからの画像を投影しながらの講義

熱心にノートを取る姿も見られた
講師に質問する姿も

 「男性や年配のユーザーからは、カメラの使い方を求める声が強い。若い女性の場合は、撮り方を知りたいという方が多いんです」。たとえば子どもの可愛い撮り方や、花の幻想的な表現法など、感性から入って具体的なノウハウに移る教え方が求められているようだ。

 そこで今回は一例としてショーウインドウやビルのガラス窓への映り込みを使った作例を紹介したところ、講評会でさまざまなバリエーションの映り込みを撮った作品が提出されていた。この被写体は多くの女性の美的感覚をくすぐるとともに、逆光補正や光源の違いによるホワイトバランスの変更など、教わったカメラの操作法を実践するのに適していたのだろう。


初めての街スナップに撮る楽しさ実感

 撮影実習は9月16日、原宿駅を10時にスタートした。ランチをとる青山通りの店(リマプル南青山ラ・プラース店)に向けて、自由に撮影をしながら歩く。普通に歩けば10分強の距離だ。

 驚いたのは街スナップはほぼ全員が初めてにも関わらず、1人も撮影に戸惑う人はなく、思い思いの被写体に取り組み始めたこと。表参道にはブティック、カフェ、レストラン、雑貨店など、おしゃれなお店(=魅力的な被写体)が並んでいるから、参加者によってはなかなか前に進まない。


撮影実習の前に原宿駅隣の明治神宮入口の前で記念撮影
基本操作を復習してから、撮影スタート

 参加者の1人である長澤さんは、スキーと雪山の美しさを人に伝えたくて約6年前に写真を撮り始めたそうだ。スキーヤーの滑降シーンが撮りたくなったのだが、コンパクトカメラでは限界がある。そこで一眼レフを購入したが、操作法がわからず悩んでいたところ、この講座が目に留まったという。

 「普段はあまり見ないで通り過ぎてしまう街も、じっくり観察すると新しい発見がありますね。1人では街を撮るなんてできないから、とても楽しい。まだ教わったことを実際に試して、理解しようとしている最中なんですけどね」。

 もう1人、岡崎さんは仕事で一眼レフを使うが、プログラムAE以外のモードダイヤルの意味がわからず、使ったことがないという。旅先での料理を撮ることが好きだったので、この講座に飛びついた。初回の講座を受けた翌日、海外旅行でアンコールワットに行った。

 「早速、教わった知識が役に立ち、これまで思ったように撮れなかった夕陽がきれいに撮れました」と、Photo Rougeの効験はあらたかだった。

 街スナップに熱中し、レストランに全員が集合したのは予定の11時をはるかに超えたころ。それでもメイン、デザートそれぞれを撮影し、食事を楽しみ、気のあった相手同士、会話を存分に満喫。この日の散会は13時を回った。


「原宿には思ったより花が多かった」と参加者の1人が話していたが、都会はよく見ると花がたくさん咲いているのだ
撮影していくうちに、どんどん構え方が大胆に。男性が多い写真教室では見られない光景だ

料理を撮影させてくれるレストランは少なく、担当の菅野さんも「撮影を許可してくれる会場を探すのが一番大変だった」と話す
講師の吉住さんが各テーブルを回って、1人1人に的確なアドバイスを与えていく

講評会には各自2点をプリントして提出

 講評会は9月26日、やはり18時半から始まった。撮影実習の日に撮った作品から2点を選んでプリントしてくるのがお約束。貸出機を使った人は、カメラを自宅に持ち帰れないので、事務局が後日、撮影データをCDにコピーして自宅に郵送している。ちなみに当日、提出されたプリントは銀塩方式が6割で、インクジェットは4割。

 冒頭、事務局側から、2点のうちで吉住さんが1点を選び、後日、ミニ写真集を制作して参加者全員にプレゼントする案を伝えると、参加者からは大拍手。講評は実物投影機能付きのプロジェクターを使い、プリントをスクリーンに投影して行なった。


2枚選んだ作品にタイトルを付けて提出
プリントをプロジェクターで投影して講評

3点を選ぶためにプリントを真剣にチェックする吉住講師
参加者が提出したプリントの一部

 作品はメインとなった料理写真を提出した人は4割弱。レストランはオレンジ色の光源が強く、テーブルによっても撮影環境がまちまちだったが、提出された作品はすべて白い皿が白く写され「ホワイトバランスをうまく選んで撮っている」と吉住さんは指摘したうえで、わざとホワイトバランスを変えて、色を楽しむ撮り方もあると教えていた。

 また「料理写真でもスナップでも、被写体の切り取り方が大胆でうまい」と吉住さんは言う。主役を斜めに捉え、なおかつ片側を大胆に画面から外す。女性ならではの感性と、撮影画像が液晶モニターで確認できるデジタルカメラの良さが相まってのことだろう。

 松重江里子さんはフィルムカメラを2年ぐらい習ってきたが、「何枚でも思ったイメージが撮れるまで撮り直しができるので、前より写真が楽しくなった」という。そして講評会に出て「同じ場所に同じ日に行って、これだけ違う写真が撮れることに感動しました。すごく勉強になりました」と感想を話していた。

 最後に、講師の作例を見ながら、改めて撮影のポイントを復習。そのあと、この日の作品から吉住さんが銅賞、銀賞、金賞の3点を選び、表彰。賞品(3,000円~5,000円の図書券)を手渡した。今回、吉住さんが選んだポイントは、人と違う視点で撮った作品にあったようだ。次回、参加する人は頭の片隅においておこう。


金賞受賞作。選評は「このカフェを撮った人はいても、このカットを撮った人はいなかった。その視点と、モノクロモードで撮った感性が良かった」ということでした
受賞者の野村美智子さん。修了後、受講者とメルアドを交換し、楽しそうに帰っていかれました

フォーサーズのメリットは女性ユーザーにこそ生きる。一眼レフ市場でOM以来の復権目指す

 女性向け教室を常設で展開しているのは現在、ニコンのニコン塾と、キヤノンのEOS学園のみ。ペンタックスや富士フイルムも早くから試みてきたが、継続した展開はしていない。この企画を発案した菅野さんは、今年4月に仙台営業所から異動になってきた。その仙台時代に、市の依頼で市民センターを会場に女性写真教室を行なっている。

 「市民センターから、勤労者向けの写真講座をやりたいと相談されたので、それではと女性向けの企画を提案しました。結果は30~40代の女性が20人集まり、好評でした」。

 同社の調査でも、ブログやホームページを開設する女性に、上手に写真が撮りたいというニーズがあることはわかっていた。それと女性の間に起こっているここ数年のレトロカメラのブームだ。

 「最初はファッション感覚でも、持っていれば撮り方にも関心が向かうはず。それらの判断から、Photo Rougeを立ち上げました」。

 第1回は応募開始から2週間で募集を締め切り、12月5日開講の第2回も10月早々に定員を超えた。さらに1回目は30代以上が40%だったが、2回目は30代以下が80%を占めているという。ちなみにズイコーアカデミーの受講者は50代以上が中心で、男性がほぼ7割を占める。

 「写真に詳しい男性が参加者にいると、初心者の女性は気兼ねしてしまって、聞きたいことも聞けないようなんです。だからその年代の参加者が少ないんでしょうね」。

 今回、参加者から寄せられた一眼レフへのニーズでもっとも強かったのが「本体の小型軽量化」だ。メーカーとしてはコンパクト化を進めた「E-330」でも、一部の女性にはまだ重く、大きい。片手で長い時間、操作していても手が疲れないカメラが望みなのだ。「レンズを含めて、小型軽量が図れるフォーサーズはそんな女性ユーザーにぴったりなカメラなんです」と菅野さんは強調する。


 これまでオリンパスは、他社を凌ぐコンパクトなボディを実現した機種で市場を席捲してきた。たとえばハーフサイズの「ペン」であり、一眼レフ「OM-1」、コンパクトカメラの「μ」シリーズだ。「デジタル時代になって、これまで以上に女性が写真、カメラを楽しまれるようになった。そのマーケットにおいて、フォーサーズシステムと、オリンパスの開発力は優位性があると自負しています」

 また、初心者の中でレンズの最短撮影距離を理解している人が何人いるだろうか。今回、料理写真がメインの被写体だったため、マクロレンズを使って講義を進めたが、撮影実習中も被写体に近づきすぎていることを気づかずに「ピントがあわない」と講師に質問する人が何人かいた。

 「AFの精度が上がり、ピンボケは少なくなりました。最近のピンボケ写真の原因は寄りすぎ、近づきすぎのケースがほとんどです。そうした現状から標準レンズにこそマクロが必要だと考え、開発にも伝えてきました。その要望に応えてくれたのが、先のPhotokinaで発表したE-400の標準レンズです」。

 E-400の標準レンズであるZUIKO DIGITAL ED 14-42mmF3.5-5.6は、最短撮影距離が25cmとなっている。E-330の標準レンズである14-45mm F3.5-5.6が38cmだから、かなりの進化だ。PhotokinaではE-400への注目もさることながら、同時に発表したこの2本のレンズのコンパクトさに驚いた人が多かったという。

【お詫びと訂正】記事初出時、両レンズの最短撮影距離を誤って表記しておりました。お詫びして訂正させていただきます。

 「フォーサーズシステム、オリンパスEシリーズの魅力を女性ユーザーに理解していただくため、Photo Rougeを中心に積極的に啓蒙していきます」。製品がいつ出てきてもいいように、先に潜在ユーザーを作っておく。それが今の販売サポートの役割だとも菅野さんは言う。

 今後の課題はPhoto Rougeの参加者の中で、コミュニティを作り上げること。ブログ、ウェブを楽しむ女性ユーザーを中心にオリンパスファンを広げていければという青写真を描く。さらにはPhoto Rougeのシニア版も構想中とか。

 次回の開催は12月5日(火)、9日(土)、21日(木)。撮影実習での料理写真は継続して行なうが、街スナップが好評だったため、候補地を改めて選定しなおしている。1月の第3回開催の日程は後日、同社ホームページで発表される。

 女性のハートを捉え、一眼レフ市場でOM以来の復権がなるか。



URL
  Photo Rouge
  http://www.olympus-zuiko.com/school/real/acad_women/
  オリンパスデジタルカレッジ
  http://www.olympus-zuiko.com/school/real/index.html

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オリンパス、女性向けのデジタル一眼レフ講座(2006/08/08)


( 市井康延 )
2006/10/13 18:39
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