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【インタビュー】リコー GR DIGITAL開発者に聞く

〜「携帯性があってかつ高画質」なのがGR

 21日に発売されるリコー GR DIGITALは、昨年9月の開発表明以来、多くのユーザーに待ち望まれ、かつさまざまな憶測を呼んできた。デジタル一眼レフ全盛の昨今、コンパクト機でここまで話題になる製品は珍しい。

 その理由のひとつには、伝説の銀塩カメラ「GRシリーズ」の名称と精神を継承する製品であるとアナウンスされたことがあるだろう。開発者はどのような思いをGR DIGITALに込めたのか。リコー パーソナルマルチメディアカンパニー ISC事業部の次の皆さんにお話を伺った。

 事業統括室 商品企画G 野口智弘氏
 設計室 設計1G 吉田彰宏氏
 同   設計2G 牧隆史氏
 同   設計3G 山野透氏

 本稿は、9月26日に行なわれたインタビューを、編集部で再構成したものである(文中敬称略)。


左から吉田彰宏氏、牧隆史氏、野口智弘氏、山野透氏
−−2004年のフォトキナで開発表明されたわけですが、あの時にはもう開発はスタートしていたのですか?

野口 商品のテーマとして、スタートすることは決まっていました。また、レンズや画像処理技術など、利用する要素もある程度は決まっていました。

−−ターゲットユーザーもその頃から決まっていましたか?

野口 GR1と同様に、プロカメラマンやジャーナリスト、ハイアマチュアの皆さんを想定しました。

−−銀塩のGRシリーズの定価はだいたい10万円くらいでしたが、GR DIGITALの価格帯もこのあたりということで決まっていたのでしょうか。

野口 具体的な価格は決まっていませんでしたが、10万円を切ろうという狙いはありました。

−−銀塩GRシリーズを企画開発したメンバーも、GR DIGITALに加わっているのでしょうか?

野口 はい、企画にも開発にも加わっています。例えば銀塩GRシリーズの開発リーダーが、開発部長としてGR DIGITALにかかわっています。

 GR DIGITALのファームウェア担当者の中には、銀塩GRの開発を経験した人もいます。


25mmは使い勝手と画質を両立させる厚み

−−銀塩GRの25mmという厚みが、35mm判フィルムのパトローネを収容できるギリギリの大きさとして決まったというのは有名な話です。デジタルカメラにはもっと薄い機種もありますが、GR DIGITALも銀塩GRシリーズと同じ厚みとしたのはなぜでしょう。

野口 画質を犠牲にしてまで数mmのサイズにこだわる考えはありませんでしたが、GRを名のるには携帯性も重要なポイントになりますので、GR1よりも大きくしないということをサイズの目標としました。中でも厚さは携帯性に大きくかかわるところですので、重視しました。

−−デジタルカメラで銀塩GRのコンセプトを実現するには、まったく違う形にするということも考えられたと思いますが、GR DIGITALの外観は銀塩GRにたいへんよく似ています。この形に決まった経緯を教えてください。

野口 GR DIGITALはデジタルの時代に登場するGRシリーズの後継機ともいえるもので、デザイン的にも銀塩GRのイメージを継承させました。


GR DIGITAL(手前)とGR1
奥がGR1。手前のGR DIGITALのほうが若干小さい
右がGR1

−−厚みは25mmと同じですが、縦横の大きさは銀塩GRよりも小さくなっていますね。

野口 性能や操作性を犠牲にしない範囲で小型化を検討した結果が、このサイズとなりました。

−−もう少し大きくして光学ファインダーを内蔵させたたり、操作系に余裕を持たせたほうがよかった、という意見もあります。

野口 GR1程度の大きさに光学ファインダーを搭載すると、とてもチープで、光学ファインダーを欲しがるような人が満足できないようなものしか付けられなかったので、高性能な外付けオプションファインダーを用意しました。

 操作系に関しては、操作部材が増えているのでせせこましい印象を持たれるかもしれませんが、実際に持ってみると、グリップするための親指を置くスペースなどがちゃんと確保されているといったところがおわかりいただけると思います。

−−単焦点機なのに、ズームスイッチが付いています。こうしたコンセプトのデジカメのユーザーは、デジタルズームはあまり使わないように思うのですが。

野口 たしかにターゲットユーザーにおいてデジタルズームの使用率は低いです。が、画像の再生時に拡大してピントを確認するような作業は頻繁に行なわれるので、その際にズームスイッチがあると便利なので付けました。撮影時には、ズーム以外の機能(露出補正など)を割り当てることができますので、ズームスイッチというよりは汎用のスイッチといえます。


APS-Cではカメラが大きくなりすぎる

−−発表会でも回答されていましたが、やはり多くのユーザーが関心のあることなので、再度確認させてください。CCDが1/1.8インチの800万画素になったのはなぜですか。

野口 CCDの選定当初は2/3インチやAPS-Cサイズも候補にあがりましたが、仮に2/3インチを選択した場合でもカメラサイズが極端に大きくなってしまうことがわかり、同時に2/3インチと1/1.8インチでは、ノイズ低減も遜色のないレベルで実現できる見込みであるとの検証結果があったことから、このCCDを選択しました。


 画素数については、ターゲットとするユーザー層から、A3ノビまでのプリントに耐える解像力を要求されていたので、800万画素と決めました。

−−ユーザーの間では、ノイズや画質で余裕のある、APS-Cなどの大きなサイズの撮像素子を期待する声も多かったようです。

吉田 画像処理はリコーのオリジナルで、Caplio GX8のバージョンアップ版となっています。GRでは新しい補間処理を採用しています。被写体のパターンに応じて最適な補間処理をすることで、解像感の向上とノイズ除去を行なっています。直線性のある被写体の解像感が改善されていると思います。

 隣あう画素のパターンを見て、補間のために周囲のどの画素を使うかを変えています。

−−スミアの発生なども改善されているのでしょうか。

吉田 CCDのスミア性能が向上したことと、フレームレートを速くできる読み出し方式に変更したことで、スミアが低減されています。


−−撮像素子の換装サービスを検討しているとの報道がありましたが。

野口 カスタマイズサービスの1つのメニューとして、撮像素子の交換もやりたいと構想している段階で、まだ具体的な計画はありません。工場でしかできなかった部品の載せ換えを、サービスセンターレベルでできるようにしたいという考えはあります。

−−撮像素子を載せ換えやすく設計されているとのことですが。

 CCDを変えると画像処理回路などにも影響が及ぶので、CCDだけの換装は難しいです。CCD基板のほか、メイン基板などを交換する必要があるでしょう。レンズとボディ、スイッチ部材以外の中身を交換するような形になると思うのですが、具体的な検討が進んでいるわけではありません。基板の交換は、修理対応などのためにサービスセンターレベルでできるような設計になっています。


過剰なほどのスペックでも、自信の持てるレンズを

−−レンズは5群6枚となっていますが、非球面レンズなども使用してるのでしょうか。

山野 非球面レンズは2枚使用していて、1枚が片面非球面、もう1枚が両面非球面となっています。また、球面レンズのうち1枚に特殊低分散ガラスを使用しています。

−−最近の製造技術のおかげでズームレンズの性能も向上しましたが、あえて単焦点レンズとしたのはなぜでしょう。

野口初期にはズームレンズも検討しましたが、技術的な条件を全て同じにすれば、性能はやはり単焦点レンズのほうがよくなります。過剰なほどのスペックでも、自信の持てるレンズを作りたいと思いました。何らかの条件を緩めればズームレンズにすることもできましたが。

山野 ズームではどうしても周辺(の光量と画質)が落ちてしまいます。周辺まで解像感を出すというコンセプトでしたから、単焦点を選択しました。


ワイドコンバーターを装着したGR DIGITAL
−−28mmという画角も銀塩GRと同じですが、なぜGR DIGITALにも継承されたのでしょう。

野口 広角のニーズが多く、28mmという画角に慣れているユーザーが多かったからです。また、デジタルは広角に弱い、という側面があります。デジタル一眼レフのサブ機として使うとき、一眼には望遠レンズをつけておいて、GR DIGITALはワイド側専用として使ってもらえれば、と考えました。

−−35mmや50mmなど、標準よりの画角のバリエーションはどうでしょう。また、レンズを交換式にするという選択肢はなかったのでしょうか。

野口 画角のバリエーション展開については今後検討していきたいと思います。レンズ交換式は問題も多く、今回は検討していません。

−−沈胴させるために、収納時にレンズの一部を鏡胴外に逃がす「リトラクティングシステム」が採用されていますが、これはCaplio Rシリーズのリトラクティングシステムと同じものですか? 複雑な機構でトラブルが起きないか心配になるのですが。

山野 リトラクティング機構はRシリーズと同じものです。ただ、RシリーズとGR DIGITALではストロボの位置が違うので、レンズが退避する位置を変えて、レンズの動きをスムースにしています。Rシリーズと違って単焦点ですから、レンズの動きが少なくてすむので、画質の問題はないと考えています。

−−銀塩GRはレンズの「味」が評価されて、レンズのみスクリューマウントで発売されたりもしました。GR DIGITALのレンズでは、どのようなチューニングがされていますか。

山野 ボケをきれいにするのに苦労しました。丸いものが丸くボケるように、収差を極力減らし、絞り羽根を7枚にして、丸く絞るようにしました。


−−NDフィルターで絞りを調節しているのは、回折の影響を避けるためですか。

 そうです。ただし、フルオートモード(モードダイヤルのカメラマークの位置)でのみ、F7.1より小さい絞りでNDフィルターを使用します。例えばF8では絞り羽根をF4にし、NDフィルターをかけることでF8と同等とします。

 プログラムAE/絞り優先AE/シャッタースピード優先AE/マニュアル露出モードでは、最小絞りをF9として、NDフィルターは使用しません。NDフィルターを併用するとF9では絞り羽根がF4.5になっており、NDフィルターを併用しないF9とでは絞りの効果が変わります。フルオート以外のモードでは、作画意図を優先させるために、NDフィルターを使用しない仕様としました。

 NDフィルターを手動でON/OFFさせたいという要望もあります。操作方法を煩雑にせずに実現できるよう、今後、検討していきたいと思います。

−−各種収差の除去は、画像処理で行なうという考え方もあると思うのですが、どうでしょう。

 カメラ内で画像処理を行なうのは時間がかかります。ソフトウェア的な補正をしたいときはRAWで撮影し、PC上で現像時に補正する、ということにしました。

−−RAW形式にDNGを採用されたのはなぜでしょう。

 フリーのものを含めて、複数の現像ソフトが対応しており、一般的と判断しました。また、このカメラのターゲットユーザーなら、結構な割合の方がPhotoshopなどをお持ちだろうと想定しました。

−−お忙しいところありがとうございました。


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( 本誌:田中 真一郎 )
2005/10/13 00:37
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