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Photoshopの生みの親が語る「DNG」のこれから

〜開発者トーマス・ノール氏に聞く

 米Adobe SystemsでPhotoshopを生み出したThomas Knoll氏が4月15日に来日し、同社が推進するRAWファイルフォーマットの「DNG」について、最新仕様のバージョン1.2および、次に登場するバージョン1.3を解説するとともに、そのメリットについて語った。


Photoshop生みの親が語るDNG

Thomas Knoll氏
 DNGフォーマットは、2004年9月に発表された。その数年前からPhotoshopのRAW対応に関する要望が寄せられており、当時カラーマネージメント機能の開発に携わっていたKnoll氏は、その要望に応じてRAW対応に取り組み始めたという。「(ニコンのデジタル一眼レフカメラ)D60を買ったばかりで、(PhotoshopをRAWに対応させる)強いインセンティブがあったからね」とKnoll氏は笑う。

 その後、新しいカメラが登場する度にRAW対応をアップデートしてきたKnoll氏は、「毎年25程度のRAW対応を行なっている」そうだが、ソフトが対応していないとRAW画像が開けないという状況を改善しようとして開発したのがDNGだ。

 JPEGはどんな画像処理ソフトでも開けるが、RAWはそうではない。その違いは「標準化されているかどうかにある」とKnoll氏。PhotoshopのRAW対応でいろいろなRAWファイルを扱ってきたことで、Knoll氏はRAWに必要なものがどんなものか分かってきたという。


DNG 1.2からDNG 1.3へ

 そして開発されたDNGは、2008年5月にバージョン1.2になり、その新機能の中でKnoll氏は3点に絞って解説する。カラーモデル、データ破損時の修復、より柔軟な組み込み型プレビューの3点だ。

 新しいDNGカラーモデルでは、マトリックスや多次元のルックアップテーブル、トーンカーブ、メタデータをサポート。DNGに複数のカメラプロファイルを保存することも可能となった。

 さらに新しいAdobe Standard Profileも作成。「特にユーザーが一番大きな変更と感じるのは暖色の色合い」だという。今までよりも色が深くなり、現実の色に近づいたのだそうだ。また、キヤノンとニコンに関しては、色のマッチングを行ったことで、キヤノンのピクチャースタイル、ニコンのピクチャーコントロールの結果とマッチさせるようにした。


改善された暖色の例

ACR 4.4プロファイルとの比較 キヤノンやニコンに搭載されているピクチャースタイル/ピクチャーコントロールによるカラーにマッチングしたカラーを表示することが目的

これはキヤノンのRAW現像ソフトで生成した画像(左)と、Camera RAWでの出力 こちらはニコンとの比較

 このプロファイルを自作できるDNG Profile Editorも用意し、Adobe Labsからダウンロードできるようにしている。これを使うことで、たとえばマクベスチャートに基づくプロファイルのカスタマイズが可能になり、「通常とは異なる光の状況で撮るのに便利」(Knoll氏、以下同)だ。


DNG Profile Editor さまざまな光源化で色を合わせるときに使うことができる

 画像破損への対策として、RAWのオプションにMD5のハッシュ値を含められるようになったのも新機能だ。Knoll氏によれば、画像の破損は通常、カメラからPCへの画像取り込み時に発生するということで、その時点でハッシュ値を埋め込み、Camera RAWプラグインではデータが破壊された場合に警告を表示することができる。Photoshop Lightroomでは「次のメジャーバージョンアップで警告機能を追加する」そうだ。また、「カメラの中でハッシュ値の計算を行うのが理想」だという。

 さらに「いくつかの制約事項を緩和した」として、埋め込みプレビューでsRGB、Adobe RGB、ProPhoto RGBが選択できるようになった。1チャンネル16bitのサポート、JPEGの圧縮/非圧縮の選択、複数のレンダリングのサポートといった機能が追加されている。

 さらに今後、DNG 1.3仕様が公開される予定だ。DNG 1.3は、Camera RAW 5.4/Lightroom 2.4で盛り込まれることになっている。

 もっとも大きな変更点は、Opcode機能を導入したことだ。Opcodeとは、「オペレーションのリストとそのオペレーションにおけるパラメーター」と説明される。これだけだと分かりづらいが、通常はカメラ内で行なわれていた作業をPC側で行なう機能だと考えれば良さそうだ。カメラの限られたプロセッサーパワーで行なうより、PCで行なった方が複雑な作業がより効果的であり、さらにレンズ補正も行なえる、という機能だという。

 従来のDNGでは、RAW画像の生成で固定化された処理しか行なえず、DNGタグによってステップがコントロールされ、決まったフローになるため「柔軟性は低い」という。Opcodeでは、画像の読み込み直後に最初のOpcodeが実行され、デモザイク処理の前後で2つのOpcode処理を行なう。最初の2つのOpcodeではカメラ内で行われる処理を肩代わりし、最後の処理は「基本的にはレンズ補正」を行なうという流れだ。


DNG 1.0でのRAW現像処理は、固定化された作業を行うだけ DNG 1.3では、Opcodeでさまざまな処理を追加できるようになった

 3番目のレンズ補正では、「ワープパースペクティブ」として樽型/糸巻き型の歪曲補正に対応。色収差の補正も可能で、陣笠型のようなより複雑な歪曲の補正には、計算式で4次多項式を使う。異なる数式を使うことで魚眼レンズに最適化した補正も可能だという。こうした補正機能は、「PhotoshopプラグインのPTLensやLensFixに(効果が)似ている」とのことで、これらのツールを使うことでどういった補正ができるかは理解できるそうだ。

 ほかにも、口径食、欠陥ピクセルの補正機能も装備。複雑な口径食の補正も可能で、ティルト/シフトレンズで起こる色かぶりの補正といった機能も備えているという。

 また、レンズ補正機能では、サードパーティがユーティリティプログラムを作成し、レンズ補正のタグをDNGに付与できるようになるそうだ。

 メーカー側が、レンズ補正の情報をOpcodeで指定することで、画像を読み込んだ時点で補正を適用することも可能。最近は、カメラ内でレンズ補正を行なう例も多いが、これをDNG読み込み時に適用することで、カメラ内の処理を減らすこともできる。

 現時点で、「最低でも1社がレンズ補正の情報を提供してくれる」ことが決まっているそうだ。「キヤノンでもニコンでもない」メーカーだというが、詳細は明らかにされなかった。

 DNG 1.3の登場時期に関しては、「それほど遠い将来ではない」ということだ。


DNGフォーマット標準化の必要性

Camera Raw 5.3
 さて、DNGは各社・各カメラごとに対応が必要なRAWの現状を改善するために生まれたフォーマットだ。しかしKnoll氏自身、「メーカー側は標準化されたRAWにメリットが感じられない」と指摘する。ユーザー側に関しては、新しいカメラが出る度に画像処理ソフトをアップデートする作業が必要で、ソフトメーカー側もアップデートのために「人的資源が大きな無駄になっている」という。

 現状では、DNGをサポートしたカメラはそれほど多くはない。ペンタックスが独自RAWとDNGの選択を可能にしているが、それは例外として、既存のRAWフォーマットを持つカメラメーカーがDNGに移行しているわけではない。

 「今の(既存の)RAWフォーマットに目新しいものは何もない。毎回、異なる対処をしなければならない理由は何もない」とKnoll氏。Knoll氏が話すように、「JPEGを各メーカーがカメラごとに変えていったらどうなるか」ということで、RAWの標準化という意義を訴える。

 とはいえ、Adobeにとっては「DNGへ変換してもしなくても気にしていない」のが正直なところだろう。ただKnoll氏は、メーカー独自RAWは特にPC間でのデータ交換で「ワークフロー上のデメリットが生まれている」点を指摘。この点でDNGはメタデータを活用できるなどのメリットがあるという。

 「ファイル交換をしないなら、(DNGには)大きなメリットはない」とKnoll氏はいうが、それでもやはり「理想は、カメラがDNGで撮ること」だ。Adobeでは、ISOのコミュニティにDNGを提案し、国際標準化も進めている。1年ほど前から情報を提出しているというが、「動きが遅い」ため、なかなか標準化は進んでいないようだ。

 いずれにしても、DNGが標準化されることで、フォーマットが統一されるメリットが出てくる。毎回、新カメラのためにソフトをアップデートする必要がなくなる可能性が出てくる点を、Knoll氏はメリットとして挙げる。

 また、DNG 1.3では、従来はカメラ内で行なっていたレンズ補正機能を行なうことができるようになった。これは、レンズの収差補正などの結果、大きくなってしまったレンズを簡素化し、結果としてレンズが小さくできる、ということも可能になるとしている。

 DNGの今後の方向性に関しては明らかにされなかったが、Camera RAWについて、Knoll氏は「他社に追いついていない部分がある」と認め、特に高ISO感度時のノイズ低減に関して「よく聞く苦情」との認識を示す。「カメラメーカーのソフトと比べて(ノイズ低減の)アルゴリズムが強くない」ため、こうした点は改善していきたい考え。

 Adobeでは、「写真家が最も多く使うような重要な作業を追い求めていく。写真家が便利な機能を追加していく」ことを引き続き目指していく意向だ。



URL
  アドビシステムズ
  http://www.adobe.com/jp/


( 小山 安博 )
2009/05/07 12:44
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