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アドビ、Lightroom β4 日本語版の説明会を開催

~「Photoshopを補完するプロ写真家向けソフト」

 アドビシステムズは19日、同日公開された「Adobe Photoshop Lightroom パブリックβ4 日本語版」(以下、Lightroom β4)の報道関係者向け説明会を都内で開催した。ここでは説明会とともに、説明会後に行ったインタビューの内容も掲載する。

 なおLightroom β4 日本語版は19日11時にアドビシステムズのサイト公開され、無償でダウンロードが可能。すでに英語版をインストールしている場合でも、英語版をアンインストールする必要はなく、ライブラリなども引き継がれる。β4には2007年4月30日までの試用期限が設けられている。

 ダウンロードページには日本語によるLightroomの操作説明が用意されるほか、β4への意見や要望、バグレポートを日本語で送るフォームも用意される。

 なお説明会では、英語版の正式版発売時期を2006年後半としていたが、2007年前半に延期したことが明らかにされた。その理由は「パブリックβに寄せられた多数のフィードバックを製品に反映させるため」としている。日本語版の発売時期は未定。


日本語でフィードバックを送ることができる
英語版の発売は2007年に延期

LightroomはPhotoshopを補完するソフト

アドビシステムズの栃谷宗央氏
 Lightroom β4の概要を説明したのは、同社マーケティング本部 プリント&パブリッシング部 フィールドマーケティングマネージャーの栃谷宗央氏。同氏はLightroomを「写真家の仕事を1本でまかなえるソフト」と紹介。写真家のワークフローをWindowsとMacintoshのクロスプラットフォームでサポートする。

 また、β4英語版で名称が「Lightroom」から「Photoshop Lightroom」へと改められたことをあげ、「LightroomはPhotoshopファミリーの一員」とした。さらにPhotoshopファミリー内では、「プロ向けのPhotshop CS2、ハイアマ向けのPhotoshop ElementsとPhotoshop Album」という構造があるが、Lightroomはこのヒエラルキーに組み込まれず、「Photoshopを補完する写真家向けのソフト」として位置づけられるという。

 現在Lightroomにはフォトレタッチなどの機能が搭載されていないが、β4はファイナルスペックではなく、今後ユーザーの要望で機能が追加されていくとした。

 気になる正式発売時の価格だが、最終的な機能やスペックで変わるために未定だが、米Adobe Systemsは「Elementsより少し高くなるが、CS2よりは安い」程度と述べているという。


Lightroomが満たす写真家のニーズ
LightroomはPhotoshopファミリーの一員に

RawShooterから移植された機能も

 続いて栃谷氏は、Lightroom β4の新機能や特徴を説明した。

 まずβ4では、β3にあったWindows版とMacintosh版の機能の差をほぼ解消し、両プラットフォームでほぼすべての機能が使えるようになった。ただし、画像の読み込み時にMacintosh版ではサブフォルダ内の画像も取り込むが、Windows版では読み込まない。また、スライドショーに撮影者名などをオーバーレイ表示する「IDプレート」機能が、Windows版では適用できない。

 ユーザーインターフェイスは基本的にβ3と同様。「ライブラリ」、「現像」、「スライドショー」、「プリント」、「Web」のモジュール構成は同様だが、ナビゲータパネルが左側に移動し、中央の画像エリアをはさんで左が基本的な機能設定、右が詳細な機能設定となった。

 ライブラリでのβ4の新機能は「写真バインダ」。複数の写真を選択するとと、それらの写真の現像パラメータなどを記録したファイル「サイドカーファイル」とともにひとつの「バインダ」を作成し、他のLightroomへの画像の受け渡しが簡単になる機能。バインダはCD-Rなどに書き出すことができる。


読み込み時にプレビューを作成しないことにより、速度を上げることができる
 また、ライブラリへの読み込み時に時間がかかるとの意見を反映し、読み込み時に独自のサムネールを作成しないオプションを新設。サムネールが作成されない場合は、画像に埋め込まれたプレビューやサイドカーファイルのプレビューを表示するため、読み込みが速くなる。


トーンカーブを直接操作すると、どのパラメータが変更されるかが表示される(写真では「ダーク」)
 現像では、各々のパラメータのスライダーをいじらずに、ヒストグラムやトーンカーブを直接ドラッグすることで画質を調整する機能が設けられた。また、ヒストグラムやトーンカーブの操作したい部分にマウスカーソルを置くと、「ハイライトの白トビ軽減」、「露光量」、「シャドウ」など、その部分を操作すると何を調整できるのかが表示されるなど、パラメータの操作方法がわかりやすくなっている。

 さらに人肌の再現などを自然にする「バイブランス」機能を搭載。6月に買収したPixmantecのRAW現像ソフト「RawShooter」で人気の高かった機能を移植したものという。

 このほかパラメーター調整の履歴がサイドカーファイル内に保存されるため、Lightroomを起動しなおしても履歴が消えないなどの機能が説明された。


アドビと一緒にこの製品を作り上げていただきたい

 インタビューでは、栃谷氏と、同社プリント&パブリッシング部アソシエイトプロダクトマネージャーの宮川富美子氏にお話を伺った。

--Lightroomの日本語版に、英語版との機能差はあるのでしょうか?

宮川 ありません。2バイトコード(日本語など文字数の多い言語をコンピュータで扱うためのコード)の問題で、環境によってはメタデータのキーワード機能が不安定になることがあるかもしれませんが、現状でも問題にならない程度ですし、今後改善されます。

--日本語でのフィードバック受け付けが始まりましたが、英語版の段階でも日本からのフィードバックはあったのでしょうか? また日本からはどのような要望があったのでしょうか?

宮川 日本からのフィードバックは以前からもありましたが、ワールドワイドで集計しており、特に日本からのフィードバックという切り分けはしていません。日本語のフィードバックも英語に翻訳して集計することになります。また、トーンカーブの直接操作など、世界中でほぼ同じ機能が要望されています。

--LightroomはPhotoshopを補完するソフトということですが、具体的な機能の住み分けはどのようになるのでしょう?

栃谷 Lightroomでは、「ライブラリ」で写真を選び、「現像」で画像を補正します。その後の処理、つまりセレクト後の写真をレタッチし、最終的な仕上げを行なうのがPhotoshopです。Photoshopは1枚の写真のレタッチに特化したソフトで、Lightroomは大量の画像を一括処理するのに便利なソフトともいえます。

--PhotoshopのBridgeも多数の画像を扱うことができるソフトですが、Lightroomとの違いはどこにあるのでしょう?

栃谷 Lightroomはあくまでフォトグラファー向けで、読み込めるフォーマットはPSD、JPEG、TIFF、RAWに限られています。Bridgeはデザイナーやクリエイター向けのソフトですから、Illustratorのファイルや動画系のファイルなども扱えます。

--ユーザーの要望でLightroomに機能を取り入れていくということですが、デジタル時代の写真家はデザイナーやクリエイターの仕事もやらなければならないこともあります。こうした要望を聞き入れているうちにLightroomが肥大化して、Photoshopと同じ大きなソフトになってしまう可能性はないでしょうか? どのような方向性で機能を取り入れていくのでしょうか。また、Lightroomには絶対入らない機能はあるのでしょうか。

栃谷 繰り返しになりますがLightroomの根幹のコンセプトはフォトグラファー向けのソフトです。また、フォトグラファーとレタッチャーという分業体制ができていることもあります。現状ではLightroomでフォトグラファーの仕事をまかなえると考えています。


--写真家向けソフトにはほかにアップルコンピュータのApertureがありますが、Lightroomのアドバンテージはどんなところでしょう?

栃谷 LightroomにはWindows版がありますし、Macintosh版はPowerPC G4搭載機でも動作します。またLightroomは直感的なインターフェイスを備えているので、必要な機能がどこにあるのかが明確で、操作の煩わしさがありません。さらに、RAW対応機種も豊富です。いろいろな製品が出てくることで改良が進み、機能面でも価格面でも選択肢が増えることは、お客様にとってのメリットと捉えています。

--Lightroomの動作速度、とくに大量の画像を読み込んだ時の処理速度に不満を持つユーザーが多いようです。

宮川 パフォーマンスに関しては、ほかの機能の要望が多いこともあり、機能を増やすとパフォーマンスが落ちるというところもありますし、どちらをとるかという問題になります。あるいはパフォーマンスと機能の両立がどこまでできるかは弊社の挑戦でもあります。

栃谷 Lightroomに限らずどんなソフトウェアでも、多数の機能を載せることと動作速度にはトレードオフになってきます。さまざまな機能の要望が多数寄せられているので、パフォーマンスとどう釣り合いを取るのかを検討しています。

--PixmantecのRawShooterはバックグラウンドでRAW現像しながら、フォアグラウンドでの作業も快適に行なえるところが好評ですが、こういった点がLightroomに取り込まれる可能性はあるのでしょうか。

栃谷 Pixmantecの開発者がAdobe Systemsに入社したのはLightroomのパブリックβが始まった後ですし、Lightroomも2、3年前から開発しています。今からコードを1から作り直すことはないでしょうから、バックグラウンド処理のようなソフトウェアの根幹に関わる部分の修正は困難です。その他のRawShooterの機能については順次取り入れていく可能性があります。


--RawShooterといえば「バイブランス」という機能がLightroomに取り込まれました。人肌の色調整に向くとのことですが、バイブランスは「人肌色調整機能」と捉えてよいのでしょうか?

栃谷 バイブランスは赤系統の色味を滑らかにする機能で、赤系統ですから人肌の調整に便利です。が、花などの色調整にも使えますから、人肌限定の機能と捉えられないよう、バイブランスという用語をそのまま入れています。

宮川 英語では「ナチュラルトーン」という言葉が使われています。翻訳者やエンジニアでいろいろ相談したのですが、一言でバイブランスの機能を表現する言葉がまだ見つかっていません。バイブランスの訳については、皆さんからもアイデアをいただきたいと思います。

--最後にLightroomのよさをアピールしてください。

栃谷 機材を含めて、デジタル環境での写真を撮る楽しみは格段に皆さん満足されていると思います。しかし写真は、最終的にフィニッシングして提供されるもので、銀塩時代は撮った後の暗室作業も大変重要でした。Lightroomは暗室作業を含めた、撮った後の楽しみを提供するソフトです。

 今回、日本語版をご提供できたことで、「興味があったけど日本語じゃないと使いづらい」という方にもお使いいただけるようになりました。これを機会にまず使っていただいて、アドビシステムズと一緒にこの製品を作り上げていただけたらと思います。



URL
  アドビシステムズ
  http://www.adobe.com/jp/
  ダウンロードページ
  http://www.adobe.com/jp/products/photoshop/pscs2new/lightroom.html

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( 本誌:田中 真一郎 )
2006/10/19 19:36
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