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HPが中国で新製品を一斉に発表

~Photosmart Pro B9180は全面改良で発売へ

タッチパネルを採用したD7300。イージー操作で簡単に写真印刷を楽しめる
 米Hewlett-Packard(HP)は中国 北京近郊にて、アジア太平洋地区向けのHP製コンシューマ関連新製品を一同に集めた発表会を行なった。日本ヒューレット・パッカードはこれとは別に発表会を催すとのことで、ここで登場した製品すべてが日本で発売されるわけではないが、プリンタに関しては主要な機種が日本でも投入されると思われる。

 今年の同社製カラーイメージング製品のトレンドを追いながら、いくつかの特徴的な製品を紹介していきたい。


自宅プリントをより手軽に美しく

 HPの今年のテーマは、より手軽に美しく、しかも安価に写真を出力してもらうことのようだ。各製品に組み込まれた様々な機能を集約すると、イージーさを前面に押し出した製品が目立つ。画質もいくつかの点で改良されているようだが、もっとも手を加えているのは、よりシンプルな操作性にすることである。

 たとえば画像の自動補正機能は、従来は作用ごとに名前が付けられ(スマートフォーカスなど)個別に設定していたが、「PhotoFix」という名前で統一され、ひとつの機能として適用可能になった。プリンタ内蔵のダイレクトプリント機能では最適値で、PC用ドライバ内では最適値と最大作用値で切り替えることができる。

 PhotoFixの動作そのものも改良されているようで、従来はシャープネスが強く効き過ぎて遠近感が圧縮されたような絵になっていたのが、適度なシャープネスになっている。また赤目補正の精度が改善され、ほとんどの赤目を自動的に補正する。

 加えて液晶パネル搭載のダイレクトプリント機はユーザーインターフェイスを見直すとともに、機能追加も行なわれている。たとえば画像の一部を拡大してプリントするといったことも可能だ。一部機種にはタッチセンサーも搭載され、画面上をタッチするだけで操作できる点も従来より進化したポイントだろう。

 また昨年、インクと用紙のセット商品を提供し、用紙とインクを合わせたランニングコストで1枚あたり19円(国内向けL版用紙のセット)という安価なソリューションを、新エンジンのスケーラブルプリンティングテクノロジ(SPT)搭載機で提案したHPだが、今年はローエンドのカートリッジ一体型モデルでも同様のパックを売り出す。加えて、用紙があまりにも薄くて透けると不評だったアドバンスフォト用紙が改善され、光沢感が増すと共に台紙がより厚くしっかりしたものに変更されている。

 実際の出力を見ても、新型のアドバンスフォト用紙は従来よりも発色の素直さ(色飛びの少なさ)や暗部の表現力が増しているように見える。


従来エンジンながらカラーマップ見直しで画質改善

 表現力の向上は、主にアドバンスフォト用紙での色再現に見直しをかけたためだ。以前のHPは、膨潤型と言われる他社が採用していない特殊な用紙(プレミアムフォトプラス用紙。現在でも最高級用紙として販売されている)に特化した設計を行なっていたが、今回は一般的な多孔式のアドバンスフォト用紙への最適化を図ったのである。

 これにより、従来機のアドバンスフォト用紙印刷時に目立っていた暗部の黒い粒(黒インクの利用が多く、黒インクのドロップサイズが大きいために発生)を抑え、滑らかな暗部階調を実現した。これは従来機のユーザーが見れば、スグに判別できるほどの差がある。加えて他の色域でも細かな改善が図られたようだ。

 用紙の厚みと光沢感が向上したことも合わせ、総合的な出力写真の質感は大きく向上している。従来は「コストは安いけれども、質感も今ひとつ」という印象だったHPのフォトパックだが、今回の品質ならばエプソンの写真用紙やキヤノンのスーパーフォトペーパー並と言っても良いだろう。


Photosmart Pro B9180。ハードウェアに変更はないが、インク、ドライバなどあらゆる面でファインチューンが進み、発売前にして世代代わりしたほどの進化を遂げたという
 一方、PMA 2005で発表されながら、発売が秋へと延期されていたプロ、ハイアマチュア向けフォトプリンタ「Photosmart Pro B9180」も、いよいよ製品発売が近づいいてきたようだ。

 B9180はPMAでの発表後、プロ写真家などからの意見収集や社内テストを通じて、画質の再チューニングを行なったという。その際、開発に着手した3年前ではなく、現時点で入手可能な最新のインク材料に変更。それに伴い、カラーマップ(色再現を行うためのドット打ち込みのパターンマップ)を変更、再チューニングした。さらにバンディングを徹底的に減らすため、印刷パスのシーケンスにも変更を加えたという。

 関係者によると「元々発売されるはずだった製品のフィードバックを受け、インク材料から改良した。ハードウェアの変更はないが、画質面では熟成を重ねた第2世代とも言える製品になっている」と自身を見せた。最新版ドライバでの印刷サンプルは会場では見ることができなかったが、製品版は9月中旬にも評価が可能になるという。

 高容量インクタンク採用でランニングコストも安くなると見られるB9180だけに、素直な階調と発色のプロ向けフォトプリンタを物色するユーザーには注目の製品となるはずだ。


CD/DVDラベル直接印刷が可能な機種も登場

 さて、コンシューマ機の話に戻そう。多数の機種が展示されたため、一部の特徴的なモデルを紹介する。

 まず、従来からHP製プリンタの弱点と言われた、CD/DVDラベルの直接印刷が可能な機種が登場した。「HP Photosmart D5160」がそれ。カラー液晶パネルを備えないダイレクトプリント機能付きの単機能プリンタ(スキャナ機能なし)で、印刷システムもSPTではなくヘッド一体型カートリッジを使用する。価格は99ドル前後の見込み。残念なのは、CD/DVDラベルの直接印刷機能が利用可能なのは、このモデルだけということだ。

 冒頭でも紹介したタッチパネル液晶搭載モデルは「HP Photosmart D7360」。こちらも複合機ではなく、他モデルにはタッチパネル機能を搭載するモデルが用意されていない。ユーザーインターフェイス改善のテストモデルとも言えそうな機種だが、さすがにタッチパネルでの操作性はわかりやすい。印刷エンジンにはSPTを利用しているため、コストも安く写真の印刷速度も速い。価格は199ドル。


Photosmart D5160はHP製プリンタとして初めてCDラベルプリント機能を搭載。濃度の高い色も良く出ており、なかなか美しい仕上がりだった
D7360のタッチパネル液晶

 一方、複合機の注目機種は「HP Photosmart C4180」だ。低価格機向けのヘッド一体型カートリッジにコンパクトなCISスキャナを組み合わせたバリューモデルだが、2.4型と小さいながらもカラー液晶パネルを搭載し、1,000万画素クラスでも快適にプレビューできるダイレクトプリント機能を搭載しながら149ドル。フォト用紙用カートリッジを側面に入れておくポケットが付いているのも使いやすそうだ。


Photosmart C4180 。100ドルを切るコンパクトな複合機ながら、高速なダイレクトプリントなど機能は充実している C4180の操作画面。写真をワンボタンで修正するPhotoFixなどが並ぶ 写真用紙専用の給紙カートリッジを収納できる構造を持つC4180

ミドルレンジながらネットワーク機能や自動原稿送りトレイなどを装備。Photosmart C6180
 中上位機種では「HP Photosmart C6180」に注目した。OfficejetではなくPhotosmartのラインでありながら、無線LAN、FAX、自動原稿送りトレイを備える。液晶パネルサイズが2.4型と小さめなことを除けば、SPT採用のプリントエンジンやダイレクトプリント機能のパフォーマンスなど、上位機種との遜色はない。ネットワーク機能も標準装備で、有線・無線(IEEE802.11b/g)のネットワークインターフェイスを内蔵し価格は299ドルとなっている。


“なんでも1台”から“なんにでも使える”に

 新製品を一覧して強く感じたのは、HPの印刷システムの万能性だ。従来、HPは黒文字の品質や用紙ハンドリングなどの実用性には優れるが、写真印刷は不得手というのが定評だった。

 しかしSPTは、アドバンスフォト用紙での画質改善もあり、写真画質が日本のユーザーにも(よほどのマニアではない限り)十分に満足できるレベルまで向上している。加えて濃度が高く滲みの少ない染料黒インクが、以前の顔料系黒インクに近い普通紙画質も実現した。コントラストが高くシャープな普通紙印刷は、依然として得意分野である。

 近年の複合機へのシフトというトレンドは、なんでもカラーイメージング関連の機能を1台に集約しようという流れだったが、しかし製品による得手不得手は大きい。もちろんそれはプリンタだけではなく、スキャナの性能や機能にも依存しているが、印刷システムとしては万能性が高まり、日常的な普通紙印刷やFAX受信から写真印刷までを、得手・不得手なくこなせる製品がやっと登場したという印象である。

 これまで「写真印刷は、まぁできればいいかな」程度に思っていた消費者に対して、価格面でも万能性という意味でもアピールできる製品に仕上がっているように見える。近日行なわれるだろう日本での発表会に注目したい。



URL
  日本HP
  http://www.hp.com/country/jp/ja/


( 本田 雅一 )
2006/08/31 00:00
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