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【インタビュー】
バッファローの高速CF「RCF-R」シリーズの秘密

〜速さを追求するバッファローの試み

 バッファローのCF「RCF-R」シリーズは、「連写に強い」、「世界最速クラス」をうたった商品だ。実際に使用してテストすると、その速さを最も実感できるのはデジタルカメラを使っての撮影中。PC上でテストを行なう以上に速さを感じる。この「速さ」の秘密はどこにあるのか。

 メモリカードの企画開発を担当するPCコンポーネント事業部の開発グループリーダーである荒川忠史氏に、製品開発における同社のこだわり、そして速さを実現する秘密を聞いた。


CFは淘汰されていくと思っていたけれど

バッファローの荒川忠史氏
−−そもそも、RCF-Rシリーズはどういうコンセプトを持った商品なんですか。

 製品開発が始まったのは2005年の1月頃です。デジタル一眼レフカメラがどんどん出てきて、連写のスピードをさらに上げる速さをもったメモリーカードが必要じゃないかという話が、社内から出てきたんです。

 実はそれより以前は、CFで速さを要求されるものがそんなにたくさん出てくるとは思いませんでした。CFは淘汰されていって、供給者責任だけ果たしておけばいいんじゃないかと思っていたんです。

 「供給者責任を果たすだけ」というのは、利用する部品が新しくなれば、古い物から切り替えるだけ。つまり、部品が新しくなって性能が上がっていけば、その分の性能向上は実現しますが、ベンダーとしての自主努力で速くするということは一切しないという状態です。

 しかし、それではいかん、CFで最高性能が出せる製品を作らなければいけない! ということになったのが2005年の1月頃です。そこからいろいろと試行錯誤はしたのですが、なかなかうまくいかなくて1年近くかかってしまいました。

−−「うまくいかない」というのはどんな部分が?

 いろいろやるといっても、我々自身でコントローラーを作っているわけではありません。コントローラーを作っているベンダーさんに、リクエストをあげるわけです。しかし、コントローラーを作っているベンダーさんも、CFのコントローラーだけを作っているわけではない。SDメモリーカードもあれば、USBもあるし、CF用コントローラーはどうしても後回しにされてしまう。

 それに、コントローラーがてきても、我々はそのまま使わないんですよ。テストしてみると、バグも見つけてしまう。直してくれ、とやり取りしていたら、時間がかかってしまって、結局、RCF-Rシリーズを発売できたのは2005年の10月。「出そう」と言ってから、9カ月かかってしまいました。

−−で、実際に製品を出してみて最初の反応はあまりよくなかったというわけですか?

 発売した時はもちろん、実は現在の反響にも満足していないんです。そもそも、デジカメ用のメモリカードを選ぶ人は、ブランドで選ぶ人、価格で選ぶ人に二極化されていると思います。ブランドで選ぶ人にとっては、残念ながらバッファロー製品というのは購入対象になっていないことが多い。

 それにはもっともなところもあるんです。バッファローのカタログを見ても、CFでは3製品が掲載されていますが、どんなユーザーがどの製品を選べばいいのか、きちんとしたアドバイスが掲載されているわけではない。アピール不足の部分はいなめません。

 バッファローとしては、大衆車の価格で高級車の性能が出るCFを提供したいと思っているんですが、それを上手く伝えるのがなかなか難しいというのも実情です。


4GBモデルがRシリーズにない理由

−−性能的には「高級車」といえるレベルまで到達したと見ていいんですか。

 性能は上限に近いところまで来たと思っています。もちろん、全く性能が上がらなくなるということはないです。ただ、劇的に性能が上がるというのは難しいんではないかと思います。

−−性能の上限に近づいているというのは、具体的にはどの部分ですか?

 フラッシュメモリの制約と、ファイルシステムの制約です。フラッシュメモリには「シングルレベルセル(SLC)」と「マルチレベルセル(MLC)」の2つがあります。SLCの方が速度は速く、倍近く違います。それから「スモールブロック」、「ラージブロック」と呼ばれる部分。

 今、お話ししたのはフラッシュメモリの基本部分です。この部分については、劇的に変化が起こるということはないでしょう。じゃ、速度を上げるためにはどうするか? その方法のひとつが、書き込み部分です。1度に1個の書き込みをするのではなく、1度に2個の書き込みをしてしまえば、その分速くなる。「RCF-R」は、1度に2個の書き込みをしているから速いんです。

 では「1度に4個分の書き込みをすれば、もっと速くなるんじゃないか?」と思われるかもしれませんが、それはそうならないんです。なぜなら、フラッシュはまとめて書く単位が決まっています。書きこむ単位はHDDでも同様に決まりがあります。フラッシュメモリについては、プログラムサイズと一致した2KBという単位が一番都合がいいんです。512MBのデータを書き込むためには、512MBのデータを転送し、その後、プログラミングという作業を行ないます。このプログラミング中には、他に何の作業もできないんです。これが結構長い。

 そうすると、同じ2KBのデータを書き込む場合でも、512MB分のデータを送って、プログラミングし、もう一度データを送ってプログラミングするという繰り返しをするよりも、最初にデータを転送できるだけして、プログラミングを一気に行なった方が効率がいいんです。プログラミングが1回で済みますから。

 これを2チップ同時アクセスで行なうとどうなるかというと、ちょうどいいサイズは4KBになります。そうなると、スピードがその分速くなりそうなものですが、実際にはカメラ側のOSやパソコン側のファイルシステムの方でうまくいかなくなってしまうんです。


−−それは2チップによって処理を高速化させることを、カメラ側のOSやファイルシステムが想定していないからですか?

 いや、動くことは動くんです。FAT16のファイルシステムや、FAT32のファイルシステムは本当によくできていて、いろいろと考えても、実はすでに実現されていることも多いんです。けれど、速さの上限はやっぱりあるんですよ。スピードの頭打ちが来てしまう。

 フラッシュの数をどんどん増やしていくと、容量も増えていってしまうんです。だから、Rシリーズの最低容量の製品は512MBで、実はこれよりも少ない容量の製品は作ることができないんですよ。

 逆に容量がどんどん増えればスピードが速くなるのかといえば、4GBのところで苦しくなってしまう。それはFAT16ではなく、FAT32のファイルシステムを利用することになるため、カメラ側がFAT32を利用するにはパワー不足になってくるからです。そうなるとカメラ側でスピードが落ちてしまうんですね。

 同じバッファローのCFで「RCF-Gシリーズ」には4GBモデルがあるのに、最上位のRシリーズには4GBモデルがありません。これは4GBモデルではファイルシステムとしてFAT16ではなくFAT32を利用するため、スピードを十分に出せないからなんです。

 つまり、Rシリーズの2GBタイプを利用する場合、FAT32で強制フォーマットをかけるとスピードが落ちてしまうんです。ですから、マニュアルやホームページで、「一番よく使うプログラムでフォーマットしてください」と呼びかけています。これは一番適したスピードで使っていただくために、そういうアピールをしているわけです。

−−それではRシリーズでは、4GBタイプは出さないんですか?

 いや、出します。すでに予定はしています。ただ、スピードでいえば、2GBモデルの方が速いです。これは当社だけのことではなく、他社製品も同様だと思います。


デジカメで実現可能なスペックしか表示しません

−−倍速の数字でいえば、Rシリーズの100倍速よりも大きな数字、例えば「120倍速」といったものもあります。

 PCでは、ウルトラDMA上で、リードオンリーであれば、150倍速、166倍速くらいは容易に実現できます。でもそれは、「ウルトラDMAで、PCに直付けしてリードをした場合にその数字が再現できますよ」ということなんです。デジカメ上で倍速が実現できるかといえば、決してそうではない。

 よりカメラ側でアクセスしやすいのはPIOモードのmode6まで。実際にはmode6で利用することは少ないんですけど、カメラで動くことを考えてPIOモード用にチューニングしているのがこの「RCF-R」なんです。だから、デジカメで使って、数字以上に速い。

−−要するに「RCF-R」の最大のセールスポイントは、デジカメで使われているPIOモードに合わせてチューニングすることによって、実際の撮影時に速さが出る点だと考えていいですか。

 そうです。もうひとつのこだわりは、実際に書き込みを行なうNANDフラッシュメモリについても、いろいろな世代、メーカーの製品がある中で、「これだ」と思えるものを選んで使っているということです。ある一定以上のレベルのものを必ず持ってくるということを心がけています。

−−他社から「フラッシュメモリ用のチップは、数を押さえるのが大変で、品質まで選ぶことができる状況ではない」という話を聞いたことがあるのですが。

 供給体制はかなり厳しい時期と、結構余裕がある時期が交互に来ます。だから、状況はその時で変わるというのが正しい回答ですが、そういう状況においても、常に一定量を購入していると、より高速に注力したモデルへの移行がしやすくなります。普段、全く取引がないのに、突然「高速のモデルを購入したい」と申し出るのと、普段から一定量の取引をしていて「高速のモデルを購入したい」と申し出るのでは、メーカー側の対応も違ってきます。そういう意味でいうと、メディアはCFだけでなく、SDメモリーカードもあり、USBフラッシュもあります。かなりの量を使っていますから、融通は利きやすくなります。


−−メモリチップについては、CFも、SDメモリーカードもUSBフラッシュも、同一のチップを使用しているのですか?

 基本的には同じです。ただ、このメーカーのこの型番のチップは、高速のメモリカードには使えないというのはあります。だから、このチップは低速、中速に使い分けるといった配分をしているわけです。

【お詫びと訂正】記事初出時、MLCをラインナップしていないとの記述がありましたが、一部MLCを使用している製品がありました。お詫びして訂正させていただきます。

−−高速モデルの販売比率はどれくらいまで上昇しているのですか?

 まだまだ少ないです。直近のデータですが、SDの場合スタンダードモデルの割合が9割で、高速モデルは1割程度にしかなっていません。CFの場合、2割が高速モデルです。

−−CFは一眼レフタイプで採用されているので、高速の割合が高いんですね。

 ただし、バッファローの場合、他社さんとは違う販売特性が出ていると思うんです。他社さんの場合、「このレベルものは、もう販売しません」と販売を辞めてしまうケースも多い。「ハイエンドだけに絞り込みます」とか、逆に「ローエンドに絞り込みます」とか。バッファローの場合、上から下までフルラインナップを揃えています。

 実はいまだにWindows 95の動作検証をきちんとやっているんですよ。Windows 95の時代には、CFを採用しているデジカメが多かったこともあって、モデルがある以上、サポートを辞めることはできないんです。これはメモリのモジュールでも同じなんですが、昔の製品を継続して使っているユーザーさんも必ずいると考えて、そういうサポートをしていくというのが企業としての方針になってしまっているんですね。


「ここまでやる」もの作りへのこだわり

 メーカーとしてのこだわりをもう少し強調させてもらうと、「タイプR」を出荷する時には、初回ロットだけでしたが、熱衝撃試験をかけたんです。「熱トラブルがあるとまずいぞ」、「じゃあ、どうする?」、「そうだ、熱衝撃試験をかけよう!」ということになりまて。

−−1ロット全て試験したんですか? 抜き出し検査ではなく?

 全部やりました。担当者は出荷する時には、自信満々でしたが。まあ、非通電での熱衝撃試験ですから、それほど手間がかかったわけではないですが。

 今度、RCF-RでもWindows 95をサポートします。実は出荷の際のテストで問題を見つけてしまって、「Windows 95サポート」と言い切ることができなかったんです。その問題をなくすことができたので、Windows 95をサポートしていますと堂々といえるようになった。もっとも、改めて発表とかはさすがにしないですけどね。

−−もう、RCF-Rであれば、Windows 95はサポートしないと言い切ってしまうことも可能だと思うんですが。

 やっぱり問題を直す方法がわかっていたら、そこはきちんと直したいじゃないですか。日々、チューニングはしていきます。それはスピードアップにつながるチューニングではなく、フラッシュの世代が変わることによるチューニングであることが多いんですが、そうやってチューニングする際に、以前、問題となっていた部分はきちんと直していく。前に起きたトラブルは忘れてはいけないんです。それを直していくことがメーカーとしてのこだわりなんです。


問題がある製品にも学ぶべき部分はある

−−低価格を追求するのであれば、秋葉原にはノーブランドのフラッシュメモリもある。あれは思いっきり安いですよね。

 ノーブランドのフラッシュメモリのすごいところは、パッケージがノーブランドであるばかりか、記憶する部品そのものがノーブランドなんです。中国あたりではそういう商品がそのまま出回っているようです。どこで連絡先を聞いたんだか、当社にも売り込みがありますよ。中を開けてみると、リマーク品みたいな型番がついている。「こんな型番の製品はない!」という型番がですから、正規の品ではないなとすぐにわかるんですが。

−−フラッシュメモリの場合、「文房具感覚で手軽に使えます」と考えられている部分もある。「ノーブランド品を使っても、そんなにトラブルはないんじゃない?」と考えている人もいると思うのですが。

 デジカメで利用した場合、100枚撮影したうちの1枚だけきちんと記憶されていないといったことが起こっている可能性はあります。ただ、自分が撮影したもの全てを記憶しているわけではないから、どうしても撮りたいと思って撮ったはずのものが写っていないといった場合を除き、トラブルが起こっていることに気がついていないということもあるでしょうね。

 当社ではいいものを追求すると共に、悪いものをいろいろと研究しているんです。悪いものを研究して、その結果得ることができるものというのは大きいんです。「これはやってはいけない」ということがどういうことなのか、理解できるんですから。

 例えば、SDメモリーカードの転送速度で、我々は20MB/secと言っていますが、もっと高速な転送速度を謳うところもある。そういう製品を試してみると、1,000枚撮影してみたら4枚破損でした。

 理由もわかっています。高い転送速度を出すために、約2.5MB/sec分くらいNANDフラッシュに対しオーバースペックになっているんです。マージンがあるNANDフラッシュメーカーもあれば、マージンが全くないNANDフラッシュを出しているメーカーもある。そういうバラツキに目をつぶって、高速ですと言い切っても、1,000枚撮影したうちの4枚が写っていなくても、もしかしたら誤魔化し通すことができるかもしれない。でも、それはメーカーとしてやってはいけないことだと思うんです。

−−PCでもデータの重要性も大事ですが、写真の場合は、撮影した時の記憶が残っているので、「実は撮れていませんでした」というのはメーカーとして一番やってはいけないことだと思うんです。

 そういう人にはこだわってメモリカードも選んでもらいたいですね。製品に関わっているスタッフ全員に言っていることなんですけど、「こういうトラブルが起きたが、これは再現性が低いから、見逃しておこう」とは一切考えてはいけない。先ほど紹介した1,000枚撮影して、4枚撮れていなかったという体験も、偶然かもしれないけれど、そういうことが起こったのは事実なんですよ。「たまたま……」なんて言っているスタッフがいたら、「お前はそんな偶然を引き当てるくらい運がいいのか!」と怒鳴ります。


 メモリカードの互換性というと、規格を作ったメーカーさんの製品の信用度が高いわけですが、バッファローも互換性という点でも自信があるんです。徹底的に試験をしていますから。例えば、コントローラーについても、新しいものが出てくる度に試験をして、大丈夫だと確認がとれるまで発売はしません。

−−確認をとるまでの期間は平均どのくらいかかるんですか?

 マイナーチェンジの場合で平均3カ月、ニューモデルだと6カ月から9カ月ですね。

−−「RCF-R」の開発に9か月かかったという話がありましたが、それは試験にかかる時間だったわけですね。

 「このコントローラーを買えば、スペックがあがる」ということがわかっていても、トラブルがあるとわかっている間は絶対にそのコントローラーは買いません。それを直したバージョンが出てきたら買う。トラブルがあるとわかっているものは買えません。

−−実は、「RCF-R」を使うまでは、バッファローというメーカーがそこまでこだわって物作りをしているとは思っていなかったんです。素材を提供するメーカーを選別する程度なのかなと思っていました。

 いくつかのアッセンブリー工場を利用してはいますが、できあがった製品に関しては「同じもの」にしてお客さまに提供しています。中身を開けてもらえばわかりますが、異なるアッセンブリー工場で作ったものであっても、全く同じ配列の同じものに仕上がっていますよ。これはアッセンブリー工場任せではないという明らかな証だと思ってもらえばいいです。

 私が担当している製品は、1度出すと数年に渡って提供し続けるタイプのものが多いんです。そうすると、最初の段階で力を入れて開発しても、複数年販売し続けることによってペイラインにきちんと乗ってくるんです。だから、エンジニアには徹底的にこだわれと言っています。

 以前、あるPCメーカーさんが推奨製品を選ぶのに、USBフラッシュメモリの静電気試験をやったら、うちの製品がものすごくいい結果が出たことがあるんです。「どうやってこれを実現したんだ?」と聞かれましたが、実は特別なことは何もしていないんです。省略してはいけないものは省略せず、守るべきところを守り、試験をして基準に届いているかどうかをきちんとチェックしていくということをやっただけなんですよ。



URL
  バッファロー
  http://www.melcoinc.co.jp/
  製品情報
  http://buffalo.jp/products/catalog/item/r/rcf-r/

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( 三浦 優子 )
2006/06/13 01:53
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