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ATP工場見学記(2)

〜SDメモリーカードの冷凍テストなどを公開

ATP製メモリカードを製造するOSEの工場
 それではいよいよATP製メモリーカードの製造工程を見ていこう。ただし、同社製メモリカードの重要な差別化ポイントであるSIP(System In Package)の根幹を成す、コーティング工程はさすがに公開されない。これについては公開された写真などを見ていただくということでご了承いただきたい。

 ATP工場見学記(1)でも触れたとおり、実際の製造は、台湾南部の高雄にあるOrient Semiconductor Electronics(OSE)の工場で行なっている。

 OSEは台湾第3位の半導体パッケージング企業で、ATPの筆頭株主でもある。高雄のほか、台湾に9つの工場を持ち、フラッシュメモリ以外にもDRAMモジュールの組み立てなども行なっている。

 高雄にはハイテク製品の工場特区「楠梓加工区」があり、OSEもここに工場を構える。楠梓加工区は保税地区となっているほか、良質で安価な労働力を確保できるという。ここには7人のATP社員が常駐し、製品管理に勤めている。

 (1)で記述したとおり、メモリの元となる「ウェハ」は韓国のSamsungから購入している。全工程を大まかに言えば、このウェハを研磨して、メモリカードに搭載できるくらい薄くし、基板に装着し、SIP技術で密閉し、カバーをとりつけ、ラベルなどを貼り、テストして梱包し、出荷する、ということになる。


ATP製メモリカードの構造

 実際の製造工程は写真を中心にレポートするが、その前にここでATP製メモリカードの構造をおさらいしておこう。

 右の図はATP製SDメモリーカードの断面だ。基板(BT substrate)にチップ(Die)がエポキシ(Epoxy)で接着され、金ワイヤ(Gold wire)で基板に配線されている。基板にはチップのほかにキャパシタやコントローラなども載っている。この基板を特殊なコーティング剤(Molding compound)で基板ごと密閉し、さらにケース(Protective Lid)で覆う。これにより、基板やチップ類を塵や水、衝撃から守っている。これをカードキャップに入れると、最終的な製品となる。この構造はMMC、miniSD、microSD、CFなどでも同様だ。

 なお、この図では表現されていないが、チップは複数枚が積み重ねられ、やはりエポキシで接着されている。こうすることで1枚のカードに積むチップの数を増やし、容量を増やしている。枚数はカードの種類によって違うが、SDメモリーカードでは4枚が積層されている。また、MMCmicroのような超小型カードでは、メモリチップの上にコントローラチップなど違う種類のチップを接着して積層するといったことも行なわれている。


SDメモリーカードの内部。カードキャップ(右)をはずすと、モールディングされた基板が出てくる こちらはCFの内部。やはり基板はモールディングされている

基板の製造

 ではいよいよメモリカードの製造室に入ろう。この階では購入したウェハを加工し、基板に装着するまでの作業が行なわれている。


メモリカードの製造に塵は禁物。取材者も入室前に防塵服を着用し、クリーンルームで塵を飛ばさなければならない メモリカードの製造室内 製造室内は空気が常に天井から床に流れ、床の穴から塵が吸い取られるようになっている

メモリカードの製造工程 Samsungから購入したウェハ。ウェハは直径200mmのシリコンの板で、表面にフラッシュメモリの回路が形成されている。表面に四角い模様が見えるが、この1つ1つがフラッシュメモリチップとなる まず、ウェハの回路が形成されていない面を研磨する。チップの厚みを8mil(約0.2mm)まで削り、カードに搭載しやすくする

ウェハのチップ1つ1つを切り離す「ソーイング」工程。ウェハの裁断には工業ダイヤモンドナイフが用いられる チップを選別し、エポキシで基板にチップを接着、硬化させる「ダイバンディング」工程。 ダイバンディング工程を違う角度から見たところ。奥にウェハが縦にセットされ、画面右に見えるアームが良品チップを取り、手前の基板に載せる

接着されたチップと基板の回路の間に金のワイヤを配線する「ワイヤーボンディング」工程 ボンディングマシンの内部。画面中央のアームがミシンの針のように動き、チップと基板を配線する ボンディングマシンのコントロール画面。右上に配線パターンが見える

ずらりと並ぶボンディングマシン。台数は非公開 基板の検査。すべて目視で行なう 製造中のSDメモリーカード基板のサンプル。上段がチップを装着されていない基板。中段はメモリチップやコントローラチップが装着された基板。ここまでの工程がこれまで行なわれた。下段はコーティングが施された基板。この後の工程でコーティングされ、基板から1枚1枚切り離される

モールディングを経て、製品に

コーティング以降の工程が行なわれるフロアは厳重に監視され、みだりに撮影できない
 この後、基板をコーティングして製品に仕上げるのだが、これこそがATP製品を特徴付けるところであり、それだけに製造工程は非公開とされている。コーティング以降の工程は、これまでの工程とは違うフロアで行なわれていて、監視も厳重である。この工程については公開された写真をご覧いただきたい。


モールディング工程(左)では、基板ごと特殊コーティングを行なう。この段階では基板はまだメモリカード複数枚(SDメモリーカードでは6枚)が1つにつながったままである シンギュレーション工程(左)でつながった基板を切り離し、カードキャップに入れて製品とする(右) 完成したメモリカードの機能と外観を検査して出荷する。この検査は全数行なわれるという

 工場の一角ではメモリカードの環境テストが行なわれている。高熱や低温、高温多湿などの環境でのメモリカードの動作を検証するもの。このうち、マイナス40度の冷凍庫に保存したSDメモリーカードが動作するところが公開された。


冷凍庫内のSDメモリーカードとカードリーダー PCに接続すると、認識され、動作しているのがわかる。ファイルのコピーなども可能だった

 以上でATPの工場見学記は終わりだ。今や日本の市場には数多のベンダーによるメモリカードが流通している。これらの中で信頼性や性能の点で評価されるブランドはごくわずかであり、多くのベンダーは信頼性や性能よりも低価格であることをアピールして、シェアを確保しているのが現状だろう。

 昨年になって日本市場に参入したATPは、価格よりも性能と信頼性をアピールする戦略をとった。性能はともかく、信頼性は新規参入メーカーにはアピールしにくい要素だ。自社製品への自信と、それを支える技術があるからこそ、そんな困難な道をあえて選んだのだと感じられた工場見学だった。



URL
  ATP
  http://www.atpinc.com/
  OSE
  http://www.ose.com.tw/
  製品情報
  http://www.kenko-tokina.co.jp/ATP/index1.html

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ATP工場見学記(1)(2006/01/31)


( 本誌:田中 真一郎 )
2006/02/01 02:34
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