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知っておきたい!NAS購入から活用までの疑問あれこれ

いろんな疑問にお答えします!!

大量の写真管理に欠かせない大容量ストレージとして最近注目されているのがNASです。NASは外付けHDDとは異なり非常に高機能なストレージのため、自分で使いこなせるかどうか心配な人も多いかと思います。そこで今回は初心者の多くが疑問を抱くNASの購入から活用までのポイントをFAQ形式で解説していきます。

これを読めばはじめの導入段階でつまずいてしまうことはなくなるかと思います。外付けHDDよりは使いこなすまでに覚える内容が多くなりますが、使えるようになればNASは写真管理になくてはならない存在になると思いますよ!

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購入前編

外付けHDDのようにパソコンとUSB接続ができる?

NASはCPUやメモリーなどを搭載しておりデータ管理専門のミニパソコンのように振る舞います。パソコン同士を普通のUSBケーブルで繋いだだけではデータのやりとりができないように、原則NASはUSBでPCと接続してデータのやりとりはできません。データの転送にはネットワーク(LAN)を使います。

USBで繋ぐ外付けHDDは手軽に使えるというメリットはありますが、PCとNASの一対一の関係でしか使うことができません。一方、LAN接続のNASならそのネットワークに属するすべての機器からアクセスが可能。パソコンやスマホから同一のデータにアクセスすることができデータの共有も楽です。

Synology NASの背面に付いているUSBポートはNASと外部機器を接続するためのポートです。ここに外付けHDDを接続してNASのバックアップ先にしたり、カードリーダーを接続して直接NASにデータを吸い出すといった使い方が可能です。

HDDは付いているの?

NASにはHDDは含まれていないため別途HDDの購入が必要です。一部のモデルを除き使用するHDDは3.5インチの内蔵HDDで自分の目的に合わせて好きな要領を選択することが可能。おすすめはNAS向けの高耐久モデルですが、一日の使用頻度が低いなら安価な一般HDDを使う事もできます。

Amazonなど一部小売店では信頼性の高い東芝製HDDとセットになったオールインワンパッケージでの販売も始まっています。自分でHDDを選ぶのが面倒だという場合はこのようなパッケージを購入するのもアリでしょう。

Synologyの4ベイNAS「DS918+」。多くのモデルが工具レスでドライブの取り付けを行うことができる。

購入するHDDはすべて同じ容量とするのが好ましいですが、後述するSHR構成にすれば異なる容量のHDDを使う事も可能。手元に余っている容量の異なるHDDを使う事もできます。

SynologyのWEBサイトではHDDの組み合わせをシミュレーションすることができるので、容量が異なるものを使う場合は調べてみると良いでしょう。

RAID 計算機|Synology Inc.

どのRAID方式を選べるの? HDDの組み合わせは?

SynologyのNASで選べるRAIDのタイプは一般的に使われるRAID1、RAID5のほかf、RAID0、RAID6、RAID10に対応しています(2ベイタイプはRAID1、RAID0のみ対応)。JBODにも対応しており通常の用途で不足する事はまず無いでしょう。

入門機など多くのモデルは初期設定時にデフォルトでSHRが選択されるようになっている

一般的なRAIDタイプの他に、Synology独自のRAIDであるSHR(Synology Hybrid Raid)を使えるのもポイントです。通常のRAIDはすべてのドライブが同じ容量(同一型番が望ましい)である必要があり、異なる容量のHDDが含まれるとすべてのドライブが最小容量として認識されてしまいます。例えば、4ベイのNASで4/4/2/1TB構成でRAID5を使うと4TB HDDは1TB HDDとして運用されてしまいます(有効容量3TB)。

一方、SHRでは容量やメーカーが異なったものを入れてもNAS側で自動的に最適化してくれ便利です。例えば、上記と同じ 4/4/2/1 TB 構成なら有効容量7TBとなりHDDを効率良く運用できます。予算の都合ですべてのHDDを大容量で用意できない時にも便利です。

HDD構成 / 有効容量RAID5SHR(RAID1)
4TB/4TB(2ベイ)非対応4TB(RAID1)
4TB/2TB(2ベイ)非対応2TB(RAID1)
4TB/4TB/4TB/4TB(4ベイ)12TB12TB
4TB/4TB/4TB/2TB(4ベイ)6TB10TB
4TB/4TB/2TB/1TB(4ベイ)3TB7TB

SHRは2ベイではRAID1と同等になりますが、容量の異なる3本以上の構成だとSHRの方がディスク効率が高くなります。2ベイの場合も将来4本以上にアップグレードする予定があるならはじめからSHRを選んでおきましょう。

使用するRAIDによっては途中でデータを維持したままRAIDタイプを変更することも可能です。例えばRAID1→RAID5、RAID5→RAID6などはOK。ただし、RAID5→RAID1やRAID5→SHRに変更することはできません(ドライブを初期化すればできます)。SHRを使いたい場合は最初に設定しておく必要があります。

変更できるRAIDタイプの詳細は公式サイトの情報をチェックしてみてください。

ストレージ プールの RAID タイプの変更 - Synology DSM ヘルプ|Synology Inc.

HDDを途中で入れ替えられる?

RAID1やRAID5など通常のRAIDタイプでHDDを入れ替える場合はすべてのHDDを同容量で揃えなければいけませんが、SHRならはじめは4TB/4TB/4TB/4TB構成で後から6TB/6TB/4TB/4TB構成とすることも可能です。

例えば、私は5ベイの「DS1517+」というモデルでSHR(SHR-1)を使っており、4TB/4TB/4TB/4TB/4TB(有効16TB)構成で使い始め、途中6TB HDDの入れ替えを行い現在は 6TB/6TB/6TB/4TB/4TB(有効20TB)で運用中。今後HDDの単価が下がったら6TB/6TB/6TB/8TB/8TB(有効24TB)構成にしようと計画しています。SHRのデメリットとしてはメーカー独自のRAIDタイプであるため、万が一RAID崩壊という最悪な事態が起きたときに他のRAIDタイプよりも復旧が難しくなることがあります。ただし、適切なバックアップをしていればまず心配することは無いかと思います。

ストレージ容量を拡張するために Drive を交換する|Synology Inc.

設定編

繋がらないんだけど……

NASが繋がらない場合はLANケーブルがきちんと接続されているか(おかしな所に刺さっていないか)、電源がきちんと入っているかを確認しましょう。SynologyのNASにはWiFi機能はないためLANケーブルを接続しないと認識されません。その後、同じネットワーク内で繋がっているパソコンのブラウザで「find.synology.com」を打ち込めば繋がるはずです。パソコンによってはファイアウォールやアンチウイルスソフトが接続を阻害している可能性があるため一時的にオフにして試してみましょう。

ほとんどの場合「find.synology.com」だけで繋がるのだが・・・

それでも繋がらなければSynologyのWEBサイトから「Synology Assistant」をダウンロードしてパソコンにインストール。Synology Assistantを起動すると同一ネットワーク内のSynolosy NASが検出されるはずです。「find.synology.com」でNASが見つからない場合も「Synology Assistant」なら高い確率でNASを検出してくれるのであらかじめインストールしておくことがおすすめです。

普段私が使っている2台のNASのほか、検証用にお借りした2台のNASがしっかり検出されている。SynologyのWi-Fiルーターもここで検出される。

また、外部からインターネット経由でアクセスする場合はあらかじめ外部アクセスを許可し設定しておく必要があります。初期設定の際「QuickConnect」の有効化をしておけば外部からもセキュアな接続が可能です。

これもダメな場合はNASを電源に繋いだ状態で本体裏のリセットボタンを4秒間押してソフトリセットしてみましょう(管理者パスワードやネットワーク設定が初期化されますがデータは消えません)。

以上の対策をしても繋がらない場合はHDDやNAS本体の故障の可能性があるため一度カスタマーサポートに連絡してみるのが良いです。Synologyは台湾の会社ですがカスタマーサポートは日本国内にあるためすべて日本語でやりとりが可能です。

NASの接続で問題が生じた場合は下記の公式ヘルプも参考になります。

NAS の接続で問題が発生した場合は、どのように対処すれば良いのですか?

ベイの多いNASへの引っ越しは?

最も簡単なのはHDDを入れ替える方法(HDD移行)です。はじめ2ベイのモデルを使用して、後から4ベイモデルにステップアップするような場合の引越しも簡単(Synology NAS同士である必要がある)。やることは2ベイNASで使用していたHDDを4ベイNASに入れ替えるだけ。注意するのはHDDのスロット番号を揃えるくらいです。2ベイNASのSlot1に使われていたHDDは4ベイNASでもSlot1に挿入します。

その後、電源を入れブラウザで「find.synology.com」にアクセスすると対象のNASのステータスが「移行可能」となっています。このまま「接続」を選択し画面に従ってマイグレート作業を行えばOKです。

ステータスが「移行可能」となっている

ただし、この方法(HDD移行)を使う場合は複製元のNASや移行先のターゲットNASに一部制限があるため、事前に下記公式ヘルプで確認しておきましょう。

HDD移行が使えない場合、Migration AssistantやHyper Backupを使った移行をすることができます。詳しくは公式ヘルプを参照してみてください。

Synology NAS (DSM 6.0 以降) 間で移行する方法

ファイルをエクスプローラーやfinderで見たり、ドラッグアンドドロップで扱いたい

NASをパソコンに繋いだだけの場合、すべての操作はブラウザ経由で行うことになりエクスプローラーやFinderでNASの中身を見ることができませんが、「マウント」という操作をすればエクスプローラーやFinderでもNASを見ることができ、例えばLightroomやPhotoshopの保存先にNASを指定することも可能です。

まず事前の準備として、PCにマウントする親フォルダ(共有フォルダ)を作成します。ブラウザからNASにアクセスし、コントロールパネル > 共有フォルダ > [作成] で好きな名前でフォルダを作成します。

ここに表示されているフォルダがマウントできる。エクスプローラーやFinderではこのフォルダが1つのドライブのように認識される。

Lightroom用やプライベート写真用など好きなフォルダを好きなだけ作れます。ここで作成したフォルダがマウント対象になります。モデルによりはじめから「Photo」や「Movie」などの共有フォルダが存在していることも。

Windowsの場合、最も簡単なのは「Synology Assistant」をインストールして「マウント」を選択すること。これで通常ドライブと同じような操作ができるようになります。

macOSの場合はNASのコントロールパネル > 共有フォルダ > ファイルサービス > SMB で表示されたアドレスを、Finder > 移動 > サーバへ接続(Command + Kが便利)に打ち込んで接続をするのが簡単です。

いま持っている外付けHDDのデータはどうしたらいい?

いまある外付けHDDの中身をNASに移行する方法は大きく2通り。1つは今まで通りパソコンに外付けHDDを繋げ、パソコン経由でNASにデータコピーをする方法。直感的に扱えるので操作で迷うことはないと思います。パソコンにNASをマウントし、エクスプローラーやFinderでNASが見える状態にしておくと便利です。

もう一つはNASの背面USBポートに直接繋げる方法です。外付けHDDはSynology NASのFile Stationから参照することができるため、ここから直接NASへデータコピーが可能です。ネットワークを経由せずに直接データを吸い出せるためより高速なデータ移行が期待できます(exFATフォーマットのHDDは事前に有料パッケージを適用しないと認識しないことに注意)。

2ベイのDS218+。背面にUSB3.0ポートを2つ備える。

HDDのほかカードリーダーに繋いだSDカードを直接繋げることも可能です。SDカードの読み出しには「USB Copy」という便利なパッケージ(アプリ)も用意されています。

閲覧編

保存した写真を見る良い方法は?

NASに保存した写真は様々な方法で閲覧することができます。大きく分けて「File Station」「Photo Station」「Moments」の3つの方法が使えます。

File StationはパソコンのエクスプローラーやFinderと同じ仕組みで、写真をファイル単位で見ていくことが可能。RAWファイルのサムネイルもキチンと表示されます。スマホやタブレットで見る場合は専用アプリ「DS File」を使用します。

File Station

Photo Stationは写真をアルバムとして管理できます。NAS内の「Photo」フォルダに写真を入れるとフォルダ毎にWEBアルバムが自動作成され、ブラウザでスムーズに閲覧が可能。インターネットを使ったアルバム共有もできるほか、カメラ名や撮影日、キーワード別にフィルタをかけて高度な写真管理をすることもできます。

Photo Station。フォルダごとに自動でアルバムが作成される。

「Photo Station」に相当するモバイル端末版アプリは「DS Photo」です。DS Photoを使えばスマホの写真の自動バックアップも可能です。

Momentsも写真をアルバムとして管理しますが、Photo Stationがフォルダベースの管理であったのに対し、Momentsはフォルダに関係なく、画像認識により人や場所、テーマなどでグループを作成します。写真をアップロードしてしまえばあとは自動で管理してくれるため手軽ですが、撮影者の意図に100%応じたグループ分けは不得意な点に注意しておきましょう。モバイル端末版アプリは「Moments」です。Photo Stationと同じくアルバム共有やスマホ写真のバックアップにも対応しています。

画像認識により自動でグループが作成されるMoments 。デフォルトでは時系列ごとに表示される。

「Photo Station」「Moments」の違いは設定の自由度と考えておけばOK。少し手間は掛かるが自分の思い通りの設定でアルバムを作りたい場合は「Photo Station」がおすすめです。私も「Photo Station」を使用しています。

Photo StationとMomentsの違いは下記リンクが詳しいです

Photo Station と Moments の比較

使用したカメラやレンズごとに写真を表示したい

Photo StationではNASがアップロードされた写真をカメラや使用したレンズ、撮影時のF値やISO感度といったパラメータでフィルタリングして自動でアルバムを作る「スマートアルバム」という機能が使えます。かなり細かな条件を組み合わせてアルバムを作れるため初心者から上級者まで幅広く使えます。

Photo Stationでスマートアルバムを作成。例えば、EOS 5D MarkIVかつレンズにEF 24-70mm F2.8L II USM / EF 16-35mm F2.8L III USMを使った時の写真を自動で集めてアルバム化できる。今後撮影する写真もこの条件に当てはまれば自動で追加される。

Momentsにはこのような高度なフィルタリング機能はありませんが、画像認識を使った自動振り分け機能が使えます。写真を放り込むだけで手間なくグループ分けしたい人はこちらが便利です。

Momentsでは「人々」「場所」など自動でグループ分けされる。

撮影した写真を共有したい

写真を友人などと共有したいときも「File Station」「Photo Station」「Moments」のいずれかを使って行えます。

Photo Station、Momentsはいずれも写真をWEBアルバムとして共有することができ、オリジナル画像のダウンロードを許可することも可能。写真をだれかに見てもらいたい場合はこの共有方法が良いでしょう。

Photo Stationは共有オプションにパスワードを加えたり、公開期限を定めるなどより高度な共有設定が可能です。

Photo Stationの共有オプション。

File Stationでは写真を選び 右クリック > 共有 から行えます。こちらもパスワードや公開期限を定めることが可能。単純にデータだけを送りたい場合はこの方が便利です。重いRAWや動画データもURLを送るだけで良いため、出先で急にファイルの受け渡しが必要になったときでも安心です。

ただし、これらの機能は外部からのインターネット接続を許可する必要があるため、事前にQuickConnectの設定を忘れずにやっておきましょう。

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こちらもNASの基礎から導入までを解説した記事です。困った時・悩んだ時は参考にしてみてください。

提供:Synology Japan株式会社

中原一雄

1982年北海道生まれ。化学メーカー勤務を経て写真の道へ。バンタンデザイン研究所フォトグラフィ専攻卒業。広告写真撮影の傍ら写真ワーク ショップやセミナー講師として活動。写真情報サイトstudio9を主催 。