航空写真家・チャーリィ古庄さんに聞く NAS使いこなし術

速度は? 操作性は? 最新の5ベイモデル「DS1517+」の感想を聞いてみた

1回の撮影につき大量の写真を撮る航空写真家という立場から、比較的早い段階よりNASを活用しているチャーリィ古庄さん。そのチャーリィ古庄さんに、NASにまつわる話を聞いたのが前回のインタビューだった。

今回はSynologyのDS1517+を使っていただき、その使用感を語っていただいた。

DS1517+

DS1517+は、ドライブベイを5つ搭載し、本体だけで最大で50TBの容量を確保できるNAS。

聞けば、チャーリィ古庄さんのこれまでの環境は4TBの使用可能容量を持つNASが2台、都合8TBとのこと。前回のお話ではそろそろ拡張を考えていたタイミングだったようで、かなり興味を刺激されたようだ。

チャーリィ古庄

写真家・冒険写真家・フォトジャーナリスト。ロサンゼルスの航空アカデミーに留学、航空機操縦資格を取得。航空マネージメントを学び、ロサンゼルスベースの米系航空会社にて運航業務全般、航空機売買などを手掛ける。

日本帰国後は国内航空会社、米系航空会社に勤務した後、航空写真家として独立。以降、雑誌各誌に自ら撮り歩いた世界100以上の国や地域の航空、観光写真を発表、国内外の航空会社、空港会社、旅行社などの宣伝、広報制作、映画制作、などにも携わり、TV・ラジオ出演も行う。

過去に乗った航空会社の数は200社以上、訪れた空港の数は約500ヶ所、という経験を活かして、「日本退役機追跡紀行」「デザインで選んだ世界のエアライン100」「航空会社の選びかた」「格安航空会社の選びかた」「ジャンボジェットの時代」「世界おもしろヒコーキ旅」「世界ヒコーキ紀行」「世界のビックリ空港探訪記」「エアライン年鑑」「World Jet Tour(写真集)」「世界の旅客機補獲標本」「ビックリ飛行機でゆく世界紀行」など、著書も多数あり。

世界で最も多くの航空会社に乗った人としてギネス記録を持つ。

Charlie Furushoより引用

インタビューはチャーリィ古庄さんのご自宅で行った。旅客機にまつわる品々が並ぶ、ヒコーキ好きにはたまらない空間。成田市さくらの山公園にあるチャーリィ古庄さん運営の店「Charlie's FLIHGT SHOP」にも、様々な飛行グッズが溢れているそうだ。

セットアップは驚くほど簡単

チャーリィ古庄:前回のインタビューの後に2週間ばかりヨーロッパを転々として、たっぷりと撮影してきたので、いよいよもって容量問題は深刻になってきました(笑)

--ちなみにカット数にしてどれくらいでしょう?

チャーリィ古庄:だいたい1万カットくらいですね。

--前回のお話しでは通常の月で6,000〜1万カットくらいと仰ってましたが、2週間でそれだけの量ですか。随分と濃密な時間を過ごされたんですねえ。

チャーリィ古庄:そうなんです。このシーズンは毎年行ってるのですが、日照時間が長いんですね。早朝から夜10時くらいまで撮れるんですよ。それを毎日繰り返していると、帰るころにはだいたい1万〜1万5,000カットくらいになってしまいますね。

--いくら容量があっても足りなくなりそうですが、DS1517+はいかがでした?

チャーリィ古庄:いやもう、真剣に導入を考えてます。容量だけでも凄く魅力ですよね。あと、思っていた以上に手軽でした。試用が短期間なので、セットアップして少し運用した程度ですが、それだけでも好印象でしたね。

--お仕事場のNASは最初からHDDとセットになっているタイプのようですが、DS1517+はユーザがHDDを組み込んでセットアップするようになっています。何か気になった点はありましたか?

チャーリィ古庄:私は実のところIT関係ってそれほど詳しくは無いんですね。もちろん、レタッチなど仕事に関わる部分は学んでいますが、写真に直接関わらない部分はあまり得意ではない。なので少々不安はあったのですが、実際に作業したら拍子抜けするほど簡単でした。

HDDの装填はドライバーさえ使わずにできますし、セットアップは何回かクリックするだけで、いつの間にか使えるようになったので、気になった点と言われても困りますね(笑)

--なるほど(笑) 確かにセットアップを含めてNASとして使用するなら、数クリックだけで構築ができますからね。

ドライバーを使うことなくHDDを入れ替えることができる。最初のセットアップはもちろん、容量増を狙ったHDD交換も容易だ。

圧倒的な高速性能

--デザインについてはどうでしょうか?

チャーリィ古庄:デザインというか、見た目はさほど気にしませんね。ただ、現在は2台のNASで運用しているため嵩張っていましたが、これ1台に集約できるなら設置スペースの点でメリットがありますね。

--5年くらい前の製品ですと、ファンノイズが大きな物もあると思いますが。現在ご使用の製品はどうですか?

チャーリィ古庄:ファンの音はそれほど気になったことはありませんね。NASはボディに触れることはほとんど無いので、ディスプレイの裏のデッドスペースに設置しているせいもあるのかもしれません。ただ、DS1517+は傍らで使用していても静かですね。

--USBポートを前後(前1、後3)に振り分けるなどデスクサイドに据え置くことを想定している節があるので、ファン音には気を配っているのかもしれません。

チャーリィ古庄:そのUSBポートもありがたいですね。これまでは撮影をNASに転送するのがLAN経由でしたから、今では古いNASということもあってか、データを移すだけでもかなりの時間がかかっていました。転送の操作をして、ひと風呂浴びて戻ってもまだ終わっておらず作業にかかれないということも間々あったのですが、DS1517+ではUSBポートがあることでかなり早く転送が完了します。

--レスポンスについてはどうでしょうか?これまでと比べて速くなりましたか?

チャーリィ古庄:これは凄い変わりましたね。今まではNASのデータをサムネイルで一覧表示するのは時間がかかり過ぎるので避け、USBの外付けHDDから参照していたんですよ。リモート経由ではなくLAN経由の接続でも時間がかかってましたから。でも、ローカルストレージと変わらない速度で表示されるなら、積極的にNASを使っていきたいですね。

使いやすいインターフェイス

--Disk Station Manager(Synology NASのOS、以下DSM)の操作性はいかがでしたか?

チャーリィ古庄:私の場合はデータストレージとしての用途が主体なので、そこまで詳細な設定はしていないのですが、インターフェースがグラフィカルで取っ付きやすいですね。DSM全般がそうですが、ファイラーのFile StationもWindowsのエクスプローラに似ていて迷いなく操作できました。

--先ほど、サムネイル一覧でも表示が速いと仰ってましたが、となるとPhotoStationパッケージなども有用になるでしょうか?

チャーリィ古庄:先に言ったような理由から、今までは内容を把握しやすいファイルネームを付けてファイラーから検索してたんですね。このやり方をずっと続けてきたわけですが、今すぐにとはいわないものの、考え直してみたいですね。目標とするイメージが固まっていない場合や、クライアントとの打ち合わせではサムネイルがざっと並んでる中から選ぶ方が手っ取り早いです。そうした際にPhotoStationは役に立ってくれるでしょうね。あとはタグ付けもできるので、これまでのデータも設定してしまえば検索も楽になりますね。

写真の表示と管理に特化したパッケージがPhotoStation。撮影データの表示やタグ付けなども可能だ。

--QuickConnect(ネットワーク外部からNASへ簡単にアクセスする機能)にはいたく感動されていたようですが?

チャーリィ古庄:普通は、NASに外部からアクセスするための設定って色々と面倒じゃないですか。それこそ、マニュアルと首っ引きで時間をかけて設定しないといけない。ヨーロッパに行く前はバタバタしていたもので「試すいい機会なんだけどそんな時間は割けないなー」と手を出さなかったんですね。それで、日本に戻ってからやってみたら、凄く短時間で済んでしまって、何で設定していかなかったんだと(笑)惜しいことをしましたね。

--実際にNASを使ったことのある人ほど手軽さに驚きますね。しかも、Quickconnect経由でも、LANからのアクセスであると確認されれば自動的にLANでのアクセスに切り替わります。リモートとLANのIDを別々に用意して使い分ける必要はありません。

QuickConnectを使い、画像データをPhotoStationで閲覧。今回はご自宅から試していただいたが、「表示も素早く、クライアントと一緒に作品を選ぶときなど便利そう」との感想。

--先ほど少し話の出たUSBでのデータ転送ですが、USB Copy機能を使用することで、わざわざファイラーで転送の操作をせずとも、USBデバイスをポートに繋ぐだけでデータを転送してくれます。あと、外付けHDDへの定期バックアップも自動化できますよ。

チャーリィ古庄:データを移すときは、大抵が撮影で疲れているので省力化できるのはありがたいですね。今までは整理したデータをPCからUSB HDD、そしてPCからNASと保存してきました。これがUSB HDDからNASに保存できるので、ネットワーク帯域を気にせず、すぐにPCが使えるのはありがたいです。バックアップの方は、あまり機械的に自動化すると、後難を背負いこむかもしれませんので、徐々に慎重にやっていきたいですね。

前面のUSB端子とポータブルHDDを接続。ポータブルHDD内の画像ファイルを簡単に取り込める。

まとめ:大量の画像を頭を悩ますことなく管理

--それでは、最後にDS1517+全体の感想をお願いできますか?

チャーリィ古庄:ストックフォトの業務の中で一番気を使わなければならないのは、データの保存場所と管理だと思っています。これまでNASの役割はあくまでも前者のデータの保存場所と捉えていたのですが、DS1517+だと数々のパッケージのおかげで管理も楽に行えますね。導入の際に頭を悩ませずに済むのも非常に良い。

実のところフィルム資産でデジタル化してるものって全体の1%程度なんですよ。以前から棚いっぱいにあるフィルムをデジタル化したいという気持ちはあるのですが、業務的にはさほど引きが無く、保存容量も厳しいので後回しになっています。まとまった時間と容量があればぜひ作業したいんですけどね。で、DS1517+を導入すれば、容量確保と同時に作業が省力化できて時間も作れるかな? とかなり心が揺れ動いています。

チャーリィ古庄×Synology×Seagate! 連動セミナーやります!

きたる8月9日、チャーリィ古庄さんを招いての本連載連動セミナーを実施します。

当日、チャーリィ古庄さんからはNASに関するご自身のワークフローや新モデルのインプレッションなどが披露される予定。さらにSynologyおよびHDDメーカーSeagateの講師も来場し、皆様のNASに対する疑問にお答えします。

また、事前に自分の写真データを当社のNASにアプロードすることで(インターネット接続済み)、写真を会場でチャーリィ古庄さんに講評してもらう企画も準備しています。NASやHDDが当たるプレゼントも用意しました。

詳しくはこちらのページでご確認ください。

イベント告知:チャーリィ古庄×Synology×Seagate デジカメ Watch記事連動セミナー 写真家向けNAS使いこなし術

榊信康