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本日発売!ソニーフルサイズEマウント用超広角レンズ、トキナー「FíRIN 20mm F2 FE AF」レビュー

高画質はそのままにAF化 街歩きスナップでその実力を見る

4月20日、株式会社ケンコー・トキナーから「FíRIN 20mm F2 FE AF」が発売された。35mmフルサイズ対応のソニーEマウントレンズで、画角は20mmという超広角。それでいて開放F2の明るさが特徴だ。

この「FíRIN 20mm F2 FE AF」は、2017年1月に発売された「FíRIN 20mm F2 FE MF」がオートフォーカスに対応したものだ。光学系、フィルター径62mm、最短撮影距離は0.28m、9枚の絞り羽根などの仕様はMF版と同じ。

当レンズは設定距離や絞りの情報をカメラ側に伝達する通信機能を有しており、ソニーEマウントカメラが持つ5軸手振れ補正やフォーカスアシストを活用することができる。さらに、周辺光量、倍率色収差、歪曲収差などのカメラボディによるレンズ補正にも対応している。

そもそも「FíRIN(フィリン)」とは、トキナーがミラーレス機用として開発設計した新しい交換レンズシリーズである。「フィリン」はアイルランド語で「真実」という意味を指す。真実を写し出すレンズを生み出そう、という気迫が感じられるネーミングだ。

昨年発売されたMF版は好印象であり、筆者は個人的に所有し今でも撮影で使用している。ただ、当時、周囲からは「AFに対応して欲しかった」という声を多く聞いた。

今回はその待ち望まれた「AF版」の登場となる。ソニーα7R IIIに装着し、春の街歩きスナップに持ち出してみた。

シンプルなデザインと操作性

鏡筒は黒く、高級感のあるデザインで、αシリーズのボディとの相性は抜群だ。金属製で、手触りはひんやりとしている。フォーカスリングの操作感は非常になめらか。手に取った感触はMF版とあまり変わらない。

MF版では独立した絞り環を装備していたが、AF版ではカメラ側からのコントロールが可能となった。ゆえに、鏡筒は、レンズ名以外の表記を一切排除した非常にシンプルな雰囲気に仕上がっている。ここはMF版との大きな違いだ。

最大径×全長は73.4×81.5mm、重量は464g。MF版は69×81.5mm、重量490gである。MF版と比べると全体の鏡胴の径が少しだけ大きくなっているが、逆に重量は軽くなっている。どちらにせよ、手の小さい筆者でも十分にホールドできて、長時間持ち歩いても疲れないコンパクトなサイズだ。

AF版は、逆さ付け可能な花形のレンズフードが同梱されている。MF版は角形のフードであったが、取り替えて使うこともできる。

速度・精度とも十分なAF

当レンズは、応答性が良く動作音の静かなリング型超音波モーターを採用。高精度磁気センサー(GMRセンサー)と合わせ、高速かつ高精度なフォーカスを実現している。

α7R III のAFモードを「シングル(AF-S)」に、フォーカスエリアを「ワイド」にして、街中に佇む鳩を撮影してみた。木漏れ日の中、鳩は落ち着きなく動き回っていたが、あとで写真を確認したところ真ん中の鳩にぴったりとピントが合っていた。フォーカス速度と精度は十分だ。一般的なEマウントAFレンズと遜色はない。

α7R III / FíRIN 20mm F2 FE AF / マニュアル露出(1/4,000秒・F2.5) / ISO 250

今度は、AFモードを「コンティニュアス(AF-C)」(動いている被写体にピントを合わせ続ける)にして、手すりの上を歩く鳥を撮影してみた。鳥はかなりの速度で歩いていたが、カメラの液晶モニター上では鳥の存在を検出し続けていた。撮影後に写真を確認すると、ピントも鳥にきちんときていた。開放F2で動く被写体を撮影するときも、このフォーカス精度であれば安心だ。

α7R III / FíRIN 20mm F2 FE AF / マニュアル露出(1/4,000秒・F2) / ISO 250

今度は、AFモードを「シングル(AF-S)」に、フォーカスエリアを「拡張フレキシブルスポット」(任意にピントを合わせる位置を指定できる)にして、船を撮影してみた。正直なところ、拡張フレキシブルスポットを選択すると、時々AFに若干迷いが生じることがあった。

α7R III / FíRIN 20mm F2 FE AF / マニュアル露出(1/250秒・F10) / ISO 250

AFでピントを合わせた後に、手動でのピントの微調整も可能だ。筆者は、AELボタンに「ピント拡大」を割り当てておき、ピントの微調整をしたい場合は、AF後にAELボタンを押し、ピントを拡大して微調整を行なった。より正確にピントを合わせたい場合も安心だ。

α7R III / FíRIN 20mm F2 FE AF / マニュアル露出(1/8,000秒・F2) / ISO 250

様々な絵づくりに挑戦したくなる

太陽を画面に入れて撮影した。強い光源が画面に入ると、光源から対角線上に小さいゴーストが発生する。撮影アングルによってはもっと強くゴーストが入ることもあるし、まったく入らないこともある。絵作りにあたり、どの程度ゴーストを生かすかは好みなので、液晶モニターで確認しながら撮影を進めると良いと思う。

α7R III / FíRIN 20mm F2 FE AF / マニュアル露出(1/5,000秒・F8) / ISO 200

逆光下で、ピンク色の花に思いっきり近づいて撮影をした。超広角レンズというと、隅々までピントがあった、硬めな雰囲気の絵がよくイメージされるが、当レンズは、前ボケを生かしたこういった柔らかい雰囲気の写真を撮ることもできる。ゴーストは演出として効果的なのでそのまま採用している。

α7R III / FíRIN 20mm F2 FE AF / マニュアル露出(1/2,500秒・F2) / ISO 200

道に落ちている松ぼっくりがしっとりとしていて良い空気感だったのでシャッターを切った。最短撮影距離は0.28m。超広角レンズなので、絞り開放で、最短撮影距離まで寄ったとしても被写体だけが浮き立つような絵は撮れないが、当レンズは大口径レンズならではの心地よいボケ具合を楽しむことができる。前ボケも後ろボケも変な癖がなく、画面全体が自然な雰囲気でまとまる。

α7R III / FíRIN 20mm F2 FE AF / マニュアル露出(1/1,250秒・F2) / ISO 200

ネモフィラの花と、背景に抜けている青空を撮影した。レンズの色乗りは非常によく、花と空の青が鮮やかで気持ちが良い。色のあるものをたくさん撮りたくなる衝動にかられる。

α7R III / FíRIN 20mm F2 FE AF / マニュアル露出(1/5,000秒・F4) / ISO 200

20mmという超広角レンズは、下から煽っても、上から俯瞰で撮影しても、肉眼で見たものよりも広い範囲が写るので、新鮮な絵になる。絵作りにマンネリ化を感じている人にはぜひ当レンズを使ってみて欲しい。

α7R III / FíRIN 20mm F2 FE AF / マニュアル露出(1/6,400秒・F2) / ISO 200
α7R III / FíRIN 20mm F2 FE AF / マニュアル露出(1/1,250秒・F4) / ISO 200

陸橋の間から見えるスカイツリーを含む光景を撮影した。黒い部分の隙間から見える景色が面白いと感じてシャッターを切ったのだが、まず、写真全体に歪みがないことに驚いた。20mmという超広角レンズとは思えぬ雰囲気だ。

α7R III / FíRIN 20mm F2 FE AF / マニュアル露出(1/640秒・F11) / ISO 400

ちなみに、ボディ側のレンズ補正だが、歪曲収差はオフ(デフォルト)の状態にしていた。MF版でもその歪みのなさに驚いたが、AF版でも見事な低歪曲ぶりはそのまま。これなら、直線の多い絵のときも安心して使える。

頭上を鳥の大群が飛んでいたので、とっさにシャッターを切った。これはMF版で撮りづらかった絵である。精度の高いAFのおかげで、ばっちりと鳥たちにピントが合った。

α7R III / FíRIN 20mm F2 FE AF / マニュアル露出(1/640秒・F9) / ISO 400

沈んでいく夕陽と街並みを撮影した。絞ったときのキッレキレの描写が気持ち良い。景色を撮るとき、やたら絞って使いたくなる。

α7R III / FíRIN 20mm F2 FE AF / マニュアル露出(1/640秒・F16) / ISO 200

まとめ:高画質はそのままにAF化 スナップが楽しくなる1本

MF版のときに好印象であったポイントはすべてそのままに、さらにAF機能が備わり、結果として優秀な超広角レンズに仕上がっている。

20mmという超広角レンズでありながらそれを感じさせない低歪曲ぶり、高い解像感、色乗りの良さは特に評価に値する。これ1本だけを持ち出して作品撮りに使いたい、と思える素晴らしいレンズだ。

純正にはない画角と、純正ズームレンズと一緒に持ち出しても苦にならないコンパクトなサイズ感も魅力だ。カバンにいつも1本忍ばせておきたくなる。

久しぶりに超広角レンズだけで街スナップをしたが、視野よりも広い画角がどんなシーンでも新しい世界を見せてくれた。おかげで凝り固まった頭の中のイメージが一掃され、写真に対する瑞々しい気持ちを思い出すことができた。

制作・協力:株式会社ケンコー・トキナー

大村祐里子

1983年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒。有限会社ハーベストタイム所属。雑誌・書籍での執筆やアーティスト写真の撮影など、さまざまなジャンルで活動。