特別企画
スピードとパワーを兼ね備えたモノブロックストロボを試す!
本日発表 プロフォト「D2 AirTTL」の個性を徹底解説
2016年9月15日 18:00
写真撮影で用いるストロボ機材はフォトグラファーにとって相棒であり戦友だ。カメラやレンズと同程度に信頼の置けるものをしっかり選びたい。ここでは先日発売されたばかりのモノブロックストロボ、プロフォト「D2 AirTTL」について、ポートレートを題材にその特徴を紹介していく。
“スピード”の先端を行く
プロフォトはスウェーデン発祥のストロボメーカー。今回発売されたのは最大出力500Wsの「D2 500 AirTTL」と最大出力1000Wsの「D2 1000 AirTTL」の2機種だ。250Wsタイプはラインナップから外れている。
D2 AirTTLは最短1/63,000秒の閃光時間(D2 500 AirTTLの場合)、秒間20コマの連写を可能にする高速性能が大きな特徴で、適正露出が自動で得られるTTL調光機能や最速1/8,000秒のハイスピードシンクロ機能なども搭載されている。モノブロックタイプとしては世界最強クラスのスペックを備えるストロボ機材と言っても言い過ぎではないだろう。
注目のモノブロックストロボ
具体的な内容に入る前に、モノブロックストロボについて軽く触れておく。モノブロックストロボとは電源部と発光部が一体になったストロボ機材を指す。持ち運びしやすく、幅広くさまざまなシーンに対応し、使い勝手がいいのが特徴だ。
プロフォトはこれまでモノブロックストロボとして「D1」シリーズをリリースしている。
ちなみに、電源部と発光部が分かれたものをジェネレータータイプと言う。ジェネレータータイプは扱える光量が非常に大きいがその分重量もあり、主に移動の少ないスタジオ撮影などで使われることが多い。プロフォトではハイエンドモデルの「Pro-8a」や「D4」や、小型軽量モデルの「B2 250 AirTTL」がこれに該当する。
直感的な撮影を可能にする操作性
さて、新機種D2 AirTTLは2009年に発売されたモノブロックストロボD1シリーズの後継機に当たる。あらゆる面でその内容がブラッシュアップされているが、まずはその操作性を見てみよう。
操作する機会の多い出力(光量)調整は、背面中央下のダイヤルボタンで行う。
ダイヤルを右に回すと0.1段ずつ、押し込みながら右に回すと1段ずつ数値が大きくなる。数値は1から10の間で変化し(10 f-stops)、1段数値が大きくなると出力は2倍になる。D2 500 AirTTL であれば、1Wsから500Wsの間で出力は変化し、10で500Ws、9では250Ws……というように出力が推移する。なお、D1シリーズの出力数値の変化は4から10の間の7 f-stopsだった。
そして、驚くのはすべての機能設定がSETTINGSボタンとダイヤルボタンのふたつで完結できるところだ。SETTINGSボタンで機能画面を出し、ダイヤルで選択と設定を行う。D1シリーズやB1 500 AirTTLでは個々にボタンが独立していたが、この仕様によってよりシンプルで直感的な操作が可能になった。
1/63,000秒の閃光速度を試す
では、具体的に撮影に入っていく。まず本機の一番のウリはやはり閃光時間の速さだろう。D2 500 AirTTLで最短1/63,000秒(最長は1/2,600秒)、D2 1000 AirTTLで最短1/50,000秒(最長は1/1,600秒)の閃光時間が適用できる。いずれもモードをノーマルからフリーズモードに切り替え、出力を最小にすることで利用できる。
2枚の作例は閃光速度の違いで描写にどのような変化が生じるのか比較したものだ。上の作例はD2 500 AirTTLを使い、1/63,000秒の閃光時間で撮影したもの。撮影用のパウダースノーをモデルに向かって振り掛けたが、きちんと止まっていて、ドラマチックな仕上がりになった。
対して、下の作例はD1 Air 1000を使い、最長閃光時間である1/700秒で撮影したものだが、拡大して見るとパウダーがブレていて、やや散漫な印象だ。このように描写の微妙なところで閃光時間の違いは現れる。
撮影はいずれもフロントトップからの1灯ライティング。撮影現場をお見せするために室内を明るくしているが、実際にはモデリングライトのみを点灯しピントを合わせ、環境光が入らないよう全暗にして撮影している。
D2 500 AirTTLを使ったカットでは最短閃光時間を確保するため、まずフリーズモードを設定し出力を最小に。被写体への光量不足を補うため、ここでは出力が1段分強められるマグナムリフレクターを使用。ISO感度も上げた。なお、ちょっとややこしいがD1シリーズは出力が小さいほど閃光時間が長くなる。そのためこちらも出力を最小にし、1/700秒の閃光速度を適用した。
リサイクルチャージの速さを生かして撮る
もうひとつD2 AirTTLの大きな特徴と言えるのが、リサイクルチャージタイムの速さだ。D2 500 AirTTLで0.03秒〜0.6秒、D2 1000 AirTTLでは0.03秒〜1.2秒でチャージできる。いずれも最高秒間20回の高速連写が可能。つまり、現行のデジタル一眼レフにおけるハイブリット機を持ってしても、まだ余裕を残す勘定だ。
今回の撮影では連写性能が約6コマ/秒の5D Mark IIIを使っているため、余裕のチャージで撮影が行えた。下の作例ではD2 500 AirTTLを2灯、D2 1000 AirTTLを1灯、計3灯を組み合わせ、モデルがジャンプしたところを連写で切り取った。安定的に発光できるためシャッターチャンスを逃すことなく決定的瞬間が捕捉できた。何度もジャンプしてもらう必要もなく、撮影がスムーズに進められたのも大きい。
メインライトはモデル右手前からD2 1000 AirTTLにアンブレラディープシルバーL(直径130cm)を付けてモデルの全身に照射。左からD2 500 AirTTL 2灯にグリッドを付け、スポット光でモデルの左側面と背後のトランクを明るく照らした。ジャンプをした位置できれいに光が当たるように、ストロボの角度は個々に微調整している。陰影を付けながら立体感のある描写を狙った。
1灯ごとの照射イメージは以下の通り。ジャンプはしてないが、ジャンプをした位置に合わせてストロボを組んでいる。
なお、D2 AirTTLでは露出や色温度の精度をきちんと同じに保ちながら高速連写できることも大きなポイントだろう。単にチャージが速いだけでなく、こうした描写の安定性もストロボ機材にとっては非常に重要な要素だ。下の作例はD2 500 AirTTLを使い、出力を7(62.5Ws)まで引き上げ連写したものだが、色みや明るさにブレがなく、安定している。
メインライトは左上からソフトライトリフレクターホワイト(通称オパライト)にグリッドを付けて照射。ソフトライトリフレクターは独特のヌメリ感が演出できるのが魅力だ。右後方からストリップ型のソフトボックス(30×90cm)を補助光として配置。メインライトに対し、ふた絞り分光量を抑えている。いずれもグリッドを付け、照射範囲を狭めながらメリハリのある仕上がりを目指した。
TTLモードで撮影効率を上げる
TTLモードはB1 500 AirTTLやB2 250 AirTTLに搭載されて人気を博した機能だ。前述のようにキヤノンとニコンのカメラに対応する。利用するにはAir Remote TTL-CもしくはAir Remote TTL-Nが必要だ。
TTLモードは露出計なしで、最適な光量を割り出し撮影できる機能だ。動く被写体にストロボを当てる際などにも重宝する。このTTLモードでは、調光補正ができたり、複数灯でライトバランスを変えて撮るなど、さまざまな出力調整ができる。マニュアルに切り替えることもでき、TTLモードで大まかに露出を決め、個別に出力をマニュアルで微調整するといった使い方も可能だ。
下の作例はD2 AirTTLを3灯組み、TTLモードを使って撮影した。ライティングは手前左からメインライトとしてアンブレラディープシルバーL(直径130cm)を照射。顔を明るくする目的で、手前右下からストリップ型のソフトボックス(30×90cm)を入れた。さらに、モデル後方の壁めがけて、赤いフィルターを付けたストロボを上から照射し、非現実的な雰囲気を演出してみた。最終的にはマニュアル調光に切り替え、3灯の出力のバランスを個別に微調整した。
1灯ずつと環境光のみで撮ったカットは以下の通り。被写界深度をそろえて撮ったため、環境光下の作例はシャッター速度がだいぶ遅くなった。ノンストロボの作例も悪くないが、ストロボを使うことで表現の幅は無限に広がる。
ハイスピードシンクロを利用する
通常ストロボはシャッター速度が速くなるほど同調しにくくなる。一般的に1/200秒前後より速いシャッター速度ではストロボは利用できないことが多い。こうしたシャッター速度の限界に縛られず、ストロボを利用できるのがハイスピードシンクロだ。
この機能を有効にすると、1/8,000秒までストロボを同調できるようになる。ボケを生かした日中シンクロや被写体の動きを止めた描写などが気軽に行えるようになるのだ。こうした機能もD2 AirTTLで利用できる(カメラはキヤノンとニコンのみ)。以下の作例から効果を確認してみよう。
明るい屋外でもストロボを発光することで、肌質にメリハリが演出できる。ただし、1/200秒までしかシャッター速度が上げられないと、どうしても絞り値で自然光の光量を調整することになり、被写界深度が深くなる。ハイスピードシンクロならばこの問題が解消でき、ダイナミックな背景ボケを取り入れながら撮影が行えるわけだ。
上の作例もハイスピードシンクロで撮影した一枚だ。背景の露出を落としたこうした描写も、利用できるシャッター速度に幅があれば気軽に楽しめる。
ここでは60×90cmサイズのソフトボックスを1灯使用した。
なお、明るい屋外では最大出力1000WsのD2 1000 AirTTLが重宝しそうだ。ハイスピードシンクロはストロボに負荷が掛かるため、あまり明るい日中に使用すると出力が不足しやすい。D2 500 AirTTLでマグナムリフレクターを使い、出力を最大化する方法もあるが、どうしても利用できる光質は限定されてしまう。D2 1000 AirTTLであれば出力も十分に、さまざまなアクセサリーを使って日中シンクロが楽しめるだろう。
また、今回は屋外でハイスピードシンクロを実践したが、この機能は明るい室内などでも有効だ。例えば、シャッター速度で環境光をコントロールできれば、室内が明るくてもボケを生かしたストロボ撮影が容易に行えるようになる。
D2 AirTTLのパワーを確認する
ここまでD2 AirTTLの特徴をさまざまな角度から見てきたが、最後に出力のパワーに関して確認しておく。
下の作例は、モデルから約4m離れた位置からD2 500 AirTTLをフル発光し撮影したものだ。使ったアクセサリーは直径165cmのXLサイズのアンブレラホワイト。これにディフューザーを付けて照射した。アンブレラによるバウンスとディフューザーによる拡散で光量は落ちているはずだが、ISO100、1/200秒の設定でF11まで絞りを絞って標準露出が割り出せた。環境光の影響を考慮しても十分な光量だろう。これならば、大型のアクセサリーも十分活用できそうだし、ちょっとした集合写真なども1灯で対応できるだろう。
まとめ
今回D2 AirTTLを使ってみて、このモノブロックストロボの懐の広さに改めて驚嘆した。これだけのスペックをそろえていれば、大型の写真スタジオでも十分戦力になる。プロフォトがラインナップする120種類以上のアクセサリー(ライトシェーピングツール)が、表現意図に応じて利用できるのもうれしいところだ。今回の撮影でも、さまざまなアクセサリーを使用してライティングを行った。
B1 500 AirTTLやB2 250 AirTTLとはシームレスに使用できるのもポイントだろう。D2 AirTTLの登場で、さらに表現の幅が広がりそうだ。
D2 AirTTLは世界最速のモノライトを目指して設計されたアイテムということだが、一方でそこから生じるものは、単なるスペックという領域を超えて作品の質に直結するに違いない。その潜在能力は我々フォトグラファーの上昇志向ともリンクし、シンクロしていくだろう。とにかくワクワクするストロボ機材だ。ぜひ手に取ってその“スピード感”を体感してほしい。
モデル:井上智絵(MA-Spanky)
協力:プロフォト株式会社