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キヤノン「EOS R8」「EOS R50」
新エントリーモデルは“デジカメ新規ユーザー”の裾野を広げられるか
2023年2月9日 12:27
キヤノンは2月8日、同社ミラーレスカメラ「EOS R」シリーズに新機種を投入すると発表。それに合わせて、都内でプレス向けの製品発表会を開催した。
新たに登場するのは、フルサイズミラーレスカメラ「EOS R8」と、APS-Cミラーレスカメラ「EOS R50」の2モデル。センサーサイズの異なる2モデルだが、各機種がシリーズ内においてどのような立ち位置となるかを整理していきたい。なお、本稿に掲載するカメラの外観写真は、発売前の試作機を撮影したものとなる。
はじめてのフルサイズ「EOS R8」
EOSで初となる「8」を冠したフルサイズミラーレスカメラ。発売は4月下旬。キヤノンオンラインショップでの価格(税込)は、ボディ単体が26万4,000円、RF24-50mm F4.5-6.3 IS STMレンズキットが29万3,700円。
EOS R6 Mark IIの高性能を多く引き継いだモデルと謳っており、約2,420万画素イメージセンサーと画像処理エンジンDIGIC Xを同機から踏襲している。
被写体検出は人物(瞳/胴体/頭)、動物(犬/猫/鳥/馬)、乗り物(車/バイク/鉄道/飛行機)に対応。4K60p記録(6Kオーバーサンプリング)の動画撮影に対応するなど、主要な撮影機能については当サイトのニュース記事を参照されたい。
- APS-Cカメラからフルサイズカメラへのステップアップ層(以下、ステップアップ層)
- Vlogなどライトな動画撮影層(以下、動画層)
キヤノンがメインターゲットに据えるのは、主に以下の2つのユーザー層だ。
ステップアップ層は、一眼レフカメラのEOS Kissシリーズや、ミラーレスカメラEOS Kiss Mシリーズを所有している人を想定。家族写真やスナップ、旅行の記録、ペットなどを撮影したい人に向けて、フルサイズセンサーならでは画質やボケ、高感度撮影が可能になると訴求する。
動画層は、PowerShot G7 Xシリーズなどのコンパクトなカメラを使用している人を想定。Vlogの配信用動画や短尺作品、個人PVなどを撮影する人に向けて、フルサイズセンサーによる高画質な動画が撮影可能になると訴求。また、動画電子ISを用いた協調制御やプレ記録など多様な機能で撮影をサポートするとアピールしている。
このほかメインターゲットからは外れるものの、ミラーレスカメラの新規購入層(普段はスマートフォンやコンパクトデジタルカメラを主に使用)、中級フルサイズカメラユーザーの買い替え&買い増し層(EOS RP、EOS Rなどのユーザー)など、幅広い層をターゲットに据える。フルサイズ機としては小型・軽量なことで、“サクサク撮れてシャッターチャンスを逃さない「誰にでもカメラ」”だと同社は言い表している。
外観
EOS R8の外形寸法は約132.5×86.1×70.0mm。重量は約461g(バッテリー、SD含む)。
これまでEOSシリーズにおいて小型軽量フルサイズとして“カジュアルモデル”の立ち位置にいた「EOS RP」は、外形寸法が約132.5×85.0×70.0mm、重量が約485g(バッテリー、SD含む)。
両機を比較すると、サイズについてはEOS R8が若干大きくなるが、重量については軽量化されているのがわかる。
操作性についてはEOS RPをベースに、より幅広いユーザーに向けて使いやすさを向上させた。電源スイッチを上面右側に配置して、電源オン/オフまで主要な操作が右手で完結できるようになっている。マルチ電子ロックも電源スイッチ内に組み込まれた。
静止画/動画撮影切り替えは、上面左側に単独のスイッチを備えた。これにより、カメラの撮影状態を確認しやすくなるという。このほか、起動時間やEVF、モニター表示のレスポンスが向上している。EOS RPで約0.82秒だった起動時間は、約0.4秒に短縮された。
EVFは0.39型236万ドット。撮影結果に近い明るさと被写界深度を確認できる「表示Simulation」と、光学ファインダーで見たような自然な映像を確認できる「OVFビューアシスト」に対応する。背面モニターは3.0型162万ドットのバリアングル式。
外部インターフェースは、USB Type-C端子(充電/給電に対応)、HDMI Type A端子、外部マイク入力端子(3.5mm)、ヘッドフォン端子(3.5mm)、リモコン端子。記録メディアはSDシングルスロット。バッテリーはEOS RPやEOS R10と同じ「LP-E17」。
マルチアクセサリーシューを搭載。音声のデジタル入力や、スマートフォンを介してのネットワーク接続などの拡張性に配慮した。取り付け脚の部分に防塵・防滴アダプターを備えた従来アクセサリーを使用するときは、マルチアクセサリーシューアダプター「AD-E1」が必要。
EOS RP用の「エクステンショングリップEG-E1」も装着可能。
RFマウントの新たなエントリーモデル「EOS R50」
EOS Rシリーズのエントリークラスモデルを謳うAPS-Cミラーレスカメラ。発売は3月下旬。キヤノンオンラインショップでの価格(税込)は、ボディ単体が11万1,100円、18-45mmレンズキットが12万6,500円、レンズキットに「RF-S55-210mm F5-7.1 IS STM」を加えたダブルズームキットが15万6,200円。
「簡単・きれい・コンパクト」という従来のEOS Kissシリーズのコンセプトを踏襲。それをより高画質なEOS Rシステムで実現したエントリーモデルと位置づけている。主要な撮影機能については当サイトのニュース記事を参照されたい。
主な想定ターゲットは、現在スマートフォンのカメラ機能をメインに利用している、“これからカメラをはじめたい”という新規層。家族および単身者向けに、旅行や日常などで「簡単にきれいな写真が撮れる」として訴求する。
同じくEOS RシリーズのAPS-C機「EOS R10」とも基本性能は似ているが、EOS R50の方がよりエントリー向けとなっている。両モデル間の棲み分けとして、EOS R10はもう少し本格的な撮影を“手頃に楽しみたい”ユーザー向けとしており、小型・軽量・高性能とコストパフォーマスを求めるハイアマチュアユーザーをターゲットとしている。
外観・操作性の面では、EOS R10に搭載されていたマルチコントローラーが非搭載となっていたり、グリップの深さが異なるなどの差別化が図られている。
同じくエントリーモデルとして展開されてきた“Kiss”が製品名についていないことについて、同社は「時代の変遷とともに、カメラへのニーズのあり方も多様化し、従来のKissシリーズの枠を超えた商品価値をお客様に提供するため」と説明。
また、EOS R50は「EOS Kiss M2」の後継機という位置づけにはなっておらず、Kissシリーズも引き続き併売される。
KissシリーズよりもEOS R50の方が若干価格が上がるが、その分性能にも優位性があるという。人物(瞳/顔/頭部/胴体)、動物(犬/猫/鳥)、乗り物(車/バイク)の認識に対応する被写体検出などAF機能をはじめ(デュアルピクセルCMOS AF II搭載)、EOS Rシリーズの高画質など、より撮影者をサポートする機能が充実するとアピールしている。
外観
外形寸法は約116.3×85.5×68.8mm。重量はブラックが約375g、ホワイトが約376g(バッテリー、SD含む)。ちなみにEOS Kiss M2の外形寸法は約116.3×88.1×58.7mm。重量はブラックが約387g、ホワイトが約388g(いずれもバッテリー、SD含む)。
両機を比較すると、EOS R50の方が若干サイズが大きくなる。ボディサイズの違いはぱっと見ではあまりわからないレベルだが、両機を並べるとマウント径の違いが顕著になるのが見て取れて面白い。ホワイトカラーの具合も、白色度の印象が変わっている。
EOS R50の方が見た目としては少し丸みがかったデザインとなっており、そのため手へのおさまり具合がより向上する印象だ。グリップ部もより深さのある形状となっている。
EOS Kiss M2でシャッターボタンと同軸に配置されていた電子ダイヤルは、単独で搭載(R10と同じ)。操作性の向上が期待される。
外部インターフェースは、USB Type-C端子(充電/給電に対応)、HDMI Type D端子、外部マイク入力端子(3.5mm)。記録メディアはSDシングルスロット。バッテリーは「LP-E17」。
手動のポップアップ式内蔵ストロボを搭載。ホットシューはマルチアクセサリーシューに対応。マルチアクセサリーシュー搭載以外のアクセサリーを使うときには、アダプターAD-E1が必要。X接点は非搭載。
背面モニターはバリアングル式の3.0型・約162万ドット。EVFは0.39型・約236万ドット。
撮影機能では、初心者向けのオート撮影モード「シーンインテリジェントオート」に、従来からある「クリエイティブアシスト」に加えて、新たに「アドバンスA+」「クリエイティブブラケット」が追加された。
アドバンスA+は、明暗差の大きいシーンや逆光でのポートレート、夜景撮影、マクロ撮影時など、複数枚を連続撮影してカメラ内で自動合成処理をする機能。クリエイティブブラケットは、1回の撮影で、カメラが自動で明るさや色合いを変えた複数の画像を記録するというもの。
カメラ導入の選択肢を広げるラインアップ拡充
同社は「EOS R8」と「EOS R50」の操作性に関して、共通して“わかりやすさ”をアピールしている。
そのひとつがUIの刷新。各撮影モードや機能にガイド表示をつけたり、スマートフォンとの接続に際して操作手順をカメラの画面上で追えるようになっているなど、新規ユーザー参入への配慮がうかがえる。
さらに、スマートフォンとはUSB接続による有線での連携に対応。有線ならではの安定して確実なデータ通信が可能としている。2.4GHzの無線LAN、Bluetooth接続にももちろん対応する。
昨今の、各社ハイエンドモデルの競争は非常に見応えのあるものとなっているが、一方でライトユーザー層の置いてけぼり感も否めない。こうしたカメラユーザーの裾野を広げ得る選択肢が提供されることはおおいに歓迎したい。
EOS Kissシリーズ誕生30周年(1993年9月に誕生)を迎えたキヤノンは、その名を使わぬが、しかしその理念を確実に受け継ぐ新たなエントリーモデルを投入した。たとえばスマートフォンユーザーが、「カメラも使ってみたい」といったような購入意欲につながるようなモデルが今後も登場するのか、楽しみに待ちたいと思う。