新製品レビュー

キヤノン EOS R8

最新機能が魅力の小型機 フルサイズエントリー機はどう進化した?

4月14日に発売された「EOS R8」は、軽量・コンパクトボディのフルサイズミラーレスカメラ。ボディは、「スリムなグリップ」「上部にはモードダイヤル」「背面の十字キー」「底にあるバッテリーとSDカードの収納部」などEOS RP(2019年発売のエントリー機)を彷彿とさせる仕上がりだ。

サイズ感から見てもフルサイズミラーレスカメラのエントリー機とも見られる機種だが、トラッキングAFや約40コマの高速連写など上位機種同等の機能を搭載している。今回はEOS RPとの比較をしつつ新機能を紹介していく。

小型軽量なボディ

「EOS R8」の外形寸法は約132.5×86.1×70mm。重量は約461g(バッテリー、カードを含む)。それに対して、「EOS RP」は約132.5×85×70mm・約485gと、サイズはわずかながら大きくなっているものの重量は軽くなっている。

レンズキットに同梱されるRF24-50mm F4.5-6.3 IS STMは携帯しやすい沈胴式で、重量210g。EOS R8本体と組み合わせても671gと軽く、手のひらに収まるサイズ感

背面モニターにはバリアングル式の3.0型TFT式カラーモニターを採用。ハイアングル、ローアングルでの撮影が可能となり、自撮りにも使える。

背面部の十字キーなどはEOS RPと同様。EOS R6 Mark IIに付いているマルチコントローラーは搭載していない。

ボディ底にあるバッテリースロットはSDカードも一緒に入るタイプで、バッテリーは小型のLP-E17を同梱している。別売バッテリーグリップの用意はないが、ホールド性を高めるエクステンショングリップ「EG-E1(直販価格税込1万450円)」を用意している。

EOS RPとの大きな違いはボディ上部にある電源スイッチが左側から右側に移動したこと。カメラを右手で持ちながら操作できるのは使いやすい。左側には新たに静止画撮影/動画撮影切り換えスイッチが付いていて切り替えやすくなった。

シャッター方式は電子先幕(後幕メカ)と電子シャッターの2種類。電源をオフにしてもシャッターが閉じない。屋外でのレンズ交換はホコリ等の付着を防ぐために雨風の少ない場所で行いたい。ボディは防塵・防滴構造となっている。

ボディ側面の端子部分は、右上からHDMIマイクロ出力端子、USB Type-C端子、左上からリモートスイッチ端子、外部マイク入力端子、ヘッドホン端子となっている。

EOS RPとの違い

EOS RPとEOS R8のスペックを比較してみると、EOS RPの約2,620万画素に対して、EOS R8では約2,420万画素と200万画素減少。映像エンジンはDIGIC 8から最新のDIGIC Xになり、常用最高感度はISO 40000からISO 102400にアップ。連続撮影速度は電子先幕使用時に約5コマ/秒から約6コマ/秒にアップ、電子シャッターにおいては40コマ/秒の撮影が可能になった。

AF機能の測距エリアが横88%、縦100%から縦横100%に拡大、測距点も最大143分割から1053分割と細かくなっている。AF検出は瞳、顔に加えて人物、動物、乗り物にも対応となった。静止画測距輝度範囲は、EV-5~18からEV-6.5~21と幅が広がり、暗いシーンでのAF性能がアップした。

背面モニターの画面サイズは3.0型で同じだが、ドット数が約104万ドットから約162万ドットと精細になっている。動画撮影機能では4K/24pから4K/60pとフレームレートの向上が見られた。

高画質・高感度

約2,420万画素フルサイズCMOSセンサーと映像エンジンDIGIC Xが連携しシャープで美しい高画質な写真に仕上がる。競技場の建物も隅々のディテールまではっきりとわかるほどの高画質だ。

EOS R8/RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM/50mm/絞り優先AE(1/160秒・F11・±0EV)ISO 100

夕方の空を逆光で撮影した写真はハイライトからシャドーへのグラデーションも美しく写し出されている。スペシャルシーンモード(風景)で思い通りの写真が撮れた。

EOS R8/RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM/50mm/風景(1/3,200秒・F6.3・±0EV)ISO 100

高感度は上位機種のEOS R6 Mark II同様に常用感度がISO 102400まで上げられる。ISO 102400で撮影した画像を見ると少しノイズは出ているものの常用感度として耐えられる画質になっている。

中央建物の電気がついているところ以外は暗くて肉眼ではよくわからなかったが、露出を明るめに設定しファインダーを通して見ると昼間のような明るさで撮影することができた。これも測距可能な輝度範囲が広がった恩恵だろう。

EOS R8/RF24-240mm F4-6.3 IS USM/94mm/マニュアル(1/200秒・F6.3・±0EV)ISO 102400

ボディ内手ブレ補正はなし

EOS R8にはボディ内手ブレ補正が付いていない。だが、レンズにIS(レンズ内手ブレ補正)が付いていれば、十分な手ブレ補正の効果を得ることができる。

夜桜のライトアップシーンをシャッタースピード1/13秒で撮影してみた。今回使用したRF24-240mm F4-6.3 IS USMの場合、約5段分の手ブレ補正機能があるので、暗いシーンでも手持ちで撮影できた。

EOS R8/RF24-240mm F4-6.3 IS USM/76mm/プログラムAE(1/13秒・F5.6・±0EV)ISO 4000

AF&トラッキング

被写体検出は人物で瞳(右目優先、左目優先の選択可)、顔、頭部、胴体まで検出、動物は犬、猫、鳥、馬の瞳、顔、全身を検出、乗り物はモータースポーツの車とバイク、鉄道、飛行機が検出可能となった。

乗り物検出においては、スポット検出にすると、モータースポーツの車とバイクの場合は運転手のヘルメットを検出、新幹線の場合は運転席、飛行機の場合はコクピットを検出する。

被写体を検出すると、サーボAFとトラッキングの組み合わせで、動く被写体を追い続けてくれる。人物、動物、乗り物を同時に自動検出する設定も可能なので、すべてをカメラに任せて、構図とタイミングに集中することもできる。

飛行機はスポット検出でコクピット付近を検出しトラッキング。思い通りの構図で撮影できた。

EOS R8/RF24-240mm F4-6.3 IS USM/76mm/マニュアル(1/400秒・F8・+0.33EV)ISO 100

検出する被写体を動物優先に設定。AFはカメラに任せる。しっかり鳥の顔を検出してトラッキングしているのを確認し、シャッターチャンスを待って撮影した。

EOS R8/RF24-240mm F4-6.3 IS USM/198mm/シャッター速度優先AE(1/8,000秒・F6.3・±0EV)ISO 1600

秒間40コマの高速連写

電子先幕では最高約6コマ/秒の連写だが、電子シャッターにすることで最高約40コマ/秒の連続撮影が可能。決定的瞬間を狙う頼もしい味方になる。

シャッタースピードは、電子先幕で最高1/4,000秒、電子シャッターでは1/16,000秒まで上げられる。そのほか電子シャッターのコマ速は最高約40コマ/秒だが、約20コマ/秒、約5コマ/秒に設定出来るので、撮影する被写体に合わせて切り替えたい。

この写真は着陸する飛行機の真下で待ち構え、飛行機の動きに合わせてのけぞるように撮影した。カメラが軽量コンパクトだからこそ撮れたカットになる。また電子シャッターの約40コマ/秒のおかげで画面内にきっちり収めることもできた。

EOS R8/RF24-240mm F4-6.3 IS USM/24mm/シャッター速度優先AE(1/16,000秒・F5.0・+1EV)ISO 2500
EOS R8/RF24-240mm F4-6.3 IS USM/24mm/シャッター速度優先AE(1/8,000秒・F5.0・+0.33EV)ISO 640

構図を固定して新幹線を撮影してみたところ、向かってくるシーンを撮影した時は電子シャッターでもローリングシャッター歪みはほとんど感じられなかった。真横から撮影した時には、若干の歪みが感じられた。

EOS R8/RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM/24mm/マニュアル(1/16,000秒・F8.0・±0EV)ISO 2500

また新幹線の先頭部を追いながらレンズを振って撮影した場合は架線柱が歪むところもあったが、かなり歪みは抑えられていると感じた。

電子シャッター
EOS R8/RF24-240mm F4-6.3 IS USM/240mm/マニュアル(1/1,600秒・F7.1・±0EV)ISO 800
電子先幕
EOS R8/RF24-240mm F4-6.3 IS USM/240mm/マニュアル(1/1,600秒・F6.3・±0EV)ISO 800

RAWバースト

RAW画像を高速で連続撮影できる機能。撮影データは一つのRAWバーストファイルにまとめて記録される。

プリ撮影をするに設定すると、シャッターを半押ししてから全押しした時の最大0.5秒前まで記録される機能をもっている。この機能を使えば鳥が飛び立つ瞬間なども逃さず撮影できる。撮影後はカメラ内でRAWバーストファイルを再生して、切り出したいコマを選択してRAWやJPEGまたはHEIFに書き出せる。

飛び立つ瞬間を待って、シャッターを全押したところ。すでに足が離れてしまっている。
EOS R8/RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM/27mm/シャッター速度優先AE(1/8,000秒・F5.0・+0.33EV)ISO 800
プリ撮影を「する」にして記録された3つ前のコマ
EOS R8/RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM/27mm/シャッター速度優先AE(1/8,000秒・F5.0・+0.33EV)ISO 800
9つ前のコマ
EOS R8/RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM/27mm/シャッター速度優先AE(1/8,000秒・F5.0・+0.33EV)ISO 800

デジタルテレコン

デジタルテレコン機能を使うとレンズ焦点距離の2倍相当、または4倍相当の画角で撮影できる。1.6倍クロップ状態でデジタルテレコンを使うと、それぞれ3.2倍相当、6.4倍相当となる。

デジタル的に中央部を拡大して記録画素数をキープしているため、解像感が落ちる点は注意が必要だ。AFは中央固定でJEPGのみに設定される。手持ちのレンズで焦点距離が足りない時に使ってみるのも良いだろう。

デジタルテレコンOFF
EOS R8/RF24-240mm F4-6.3 IS USM/240mm/シャッター速度優先AE(1/250秒・F10・+0.33EV)ISO 100
デジタルテレコン2倍(480mm相当)
EOS R8/RF24-240mm F4-6.3 IS USM/240mm/シャッター速度優先AE(1/2,000秒・F7.1・+0.33EV)ISO 250

初心者にやさしい撮影モードも

かんたん撮影ゾーンのモードダイヤルを使えば、カメラ任せで好ましい写真を撮影できる。

また、ダイヤルを回したり、機能を選択すると撮影イメージ画像と簡単な解説文が表示されるので、カメラ機能に詳しくない人でも簡単に設定が変えられる。「シーンインテリジェントオート」はシーンに合わせてカメラが全自動設定してくれるモードである。そこから「クリエイティブアシスト」を使えば、背景ぼかし、明るさ、鮮やかさなどアレンジが可能。

EOS R8/RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM/50mm/シーンインテリジェントオート(VIVID)(1/250秒・F10・+0.33EV)ISO 100

竹林の中から空を見上げるように撮影。木の隙間から太陽光が差し込んでいたので露出補正を明るめにしてみた。その結果、竹が長く伸びている様子と新緑の葉が強調され、自然の豊かさを感じる写真に仕上がった。

EOS R8/RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM/24mm/シーンインテリジェントオート(1/100秒・F5.6・+1.77EV)ISO 100
EOS R8/RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM/24mm/シーンインテリジェントオート(1/100秒・F7.1・±0EV)ISO 1000/モノクロ(コントラスト強め)

「スペシャルシーンモード」は被写体に合わせてモードを選ぶだけでカメラが最適な設定にしてくれる機能だ。

撮影モードにはポートレート、クローズアップ、集合写真、料理、風景、夜景ポートレート、パノラマショット、手持ち夜景、スポーツ、HDR逆光補正、キッズ、サイレントシャッター、流し撮りがある。

手持ち夜景モードは三脚なしで簡単にきれいな夜景が撮影できる。1回の撮影で4枚連続撮影し、手ブレを抑えた画像が1枚出来上がる。私はこのモードが気に入ってしまい夜景撮影をだいぶ楽しんでしまった。

EOS R8/RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM/24mm/手持ち夜景(1/20秒・F4.5・±0.7EV)ISO 1000

クローズアップモードで花を撮影してみた。最短撮影距離がこのレンズの場合0.35mのためこれ以上近づくとピントが合わなかった。しかし狙った花をもう少し大きく撮影したかったので1.6倍のクロップ機能を使って撮影したらちょうどよい大きさで撮影できた。

クロップなし
EOS R8/RF50mm F1.8 STM/50mm/クローズアップ(1/320秒・F8.0・±0EV)ISO 100
1.6倍クロップ
EOS R8/RF50mm F1.8 STM/50mm/クローズアップ(1/320秒・F8.0・±0EV)ISO 100

「クリエイティブフィルターモード」は特殊な撮影効果を付けたい時に便利。このモードにはラフモノクロ、ソフトフォーカス、魚眼風、水彩風、トイカメラ風、ジオラマ風、HDR絵画標準、HDRグラフィック調、HDR油彩調、HDRビンテージ調がある。

この写真は魚眼風を使い魚眼レンズで撮影したような写真に仕上げた。

EOS R8/RF24-50mm F4.5-6.3 IS STM/24mm/クリエイティブフィルター(魚眼風)(1/250秒・F9.0・±0EV)ISO 100

フォーカスBKT撮影

1回のレリーズでカメラが自動的にピント位置を変えながら連続撮影してくれるフォーカスブラケティング機能。EOS RPではカメラ内での深度合成ができなかったが、EOS R8ではカメラ内で合成出力が出来るようになり、その場で撮影結果が確認できるようになった。

小物や模型など前から後ろまでピントを合わせた写真を撮りたい時におすすめ。

プラレールを撮影した時は撮影枚数30枚、ピントを動かすステップ幅を「3」にセットして一番手前の車両にピントを合わせて手持ちで撮影した。数秒後には手前から奥まできっちりピントが合っている写真が仕上がった。

フォーカスブラケティング機能
EOS R8/RF50mm F1.8 STM/50mm/マニュアル(1/60秒・F7.1・±0EV)ISO 2000

高画質な動画撮影

4K/60pやタイムプラス、180pスローモーションなど最新の動画機能で撮影が楽しめる。

動画撮影時にはカメラ内の「動画電子IS機能」が使えるので、安定した撮影と移動しながらでもブレの少ない撮影ができる。

なお、カメラ内での4K動画から静止画切り出すことや動画の前後余分な部分をカットする機能は入っていない。

撮影を終えて

当初は本機をEOS RPと比較していたが、撮影を進めるうちに、上位機のEOS R6 Mark IIとの共通性を感じるところが多くあった。

それは、約2,420万画素センサーの高画質・低ノイズ、最新の被写体検出&トラッキング、最高40コマ/秒の電子シャッター撮影、動画撮影機能など、EOS R6 Mark IIに搭載されている機能がほぼ同じように使えたからだ。

気になった点はバッテリーの減りが早いこと。EOS R8用のLP-E17はEOS R6 Mark II等に使われているLP-E6NHよりも小さいので減りが早い。スペック表では撮影可能枚数が約220枚となっているが、今回撮影した感じでは、撮影条件にもよるがその倍は撮影可能だった。が、旅先では予備バッテリーを準備するか、給電可能なモバイルバッテリーがあると便利。モバイルバッテリーとEOS R8をUSB Type-Cケーブルでつなぎ、給電しながら撮影ができるし、電源OFF時には充電をすることもできる。

EOS R8はEOS RPの小型軽量を受け継ぎつつ、最新世代の高画質・高機能を得られるカメラだと実感した。撮りたいシーンが迷わず撮れるモードも気に入ったし、スナップ撮影から鉄道、飛行機の撮影もこなせることがわかり、私もぜひ手に入れたいカメラとなった。

高橋学

1975年、福島県福島市生まれ。父が新聞社のカメラマンをしていた影響で物心付いたころからカメラが好きになり、父と鉄道などを撮り始めた。高校卒業後は専門学校東京ビジュアルアーツ写真学科でスポーツフォトを専攻。1996年より有限会社ジャパンスポーツでスポーツカメラマンの仕事に就き、実績を重ねてフリーランスへ。現在はフィギュアスケート、フットサル、サッカー、陸上などの様々なスポーツ取材をしている。また、小さいころから好きな鉄道や飛行機なども撮影を続けている。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員