新製品レビュー

ソニーα7 IV

α7 IIIと詳細比較 操作性&レスポンス向上がポイント

α7シリーズ、α9シリーズ、α1などなど、ソニーのフルサイズミラーレスカメラも随分と大所帯になりました。そんななか、最も現実的な価格でいて十分な撮影機能を備えている僕らの味方的な機種こそが、“ベーシック”に位置づけされるRもSもつかないシンプルな“α7無印シリーズ”などと呼ばれている機種たちです。その4代目となる最新モデルが、今回紹介する「α7 IV」です。

実はこの機種、筆者はかなり注目していました。理由は2021年3月に発売された、フラッグシップモデル「α1」より後に登場していること。上位モデルで培われた技術が、下位モデルに降りてくることって、良くあるんですよね。そうしたところを前モデルの「α7 III」と比べながら見ていきたいと思います。

“ベーシック”にして3,300万画素のフルサイズセンサー

α7 IVに搭載された撮像センサーは、有効約3,300万画素の新開発フルサイズ裏面照射型CMOSセンサーです。α7 IIIの撮像センサーは、有効約2,420万画素のフルサイズ裏面照射型CMOSセンサーでした。画素数で比べると約1.36倍です。

α7 IVで撮影(ISO 100)
参考:α7 IIIで撮影(ISO 100)

2,420万画素が3,300万画素になったといっても、PCモニターで画像全体を眺める限り、ハッキリいって、それほど明確な解像感の違いを見つけるのはなかなか難しいです。でも拡大してよく見れば確かに違う。「やっぱりα7 IVの方が良く解像してるぜ」と喜ぶことができます。でも具体的には、A2サイズ以上にプリントする場合や、トリミングを前提とした撮影を行う場合に、より高解像度であることに安心感を得られるメリットが大きいといえるでしょう。

α7 IVで撮影(ISO 6400)
参考:α7 IIIで撮影(ISO 6400)

同じような条件で、今度は高感度ISO 6400で撮影してみました。両機とも集光効率の高い裏面照射型センサーを採用しているので、高感度撮影には強みを感じます。とはいえ、α7 IVは、画素数が増えた分だけ画素サイズが狭くなるので、高感度はどうかな? と心配してしまいますが、同じ鑑賞サイズ(拡大率)で見る限りは、両者に明確な違いは感じませんでした。むしろα7 IIIよりα7 IVの方が、画素の粒が細かい分、空など階調が緩やかな部分では粗さが目立たず自然に見えます。つまりα7 IVの高感度撮影も安心して使えるレベルにあると言えます。

操作性は目に見えて向上しています

こちらは従来モデル「α7 III」。最初に出てきたα7 IVに比べると、随分スマートに見えやしませんか?

α7 IIIのサイズは、幅が約126.9mm、高さが約95.6mm、奥行きが73.7mmで、本体のみの質量は約565g。対するα7 IVのサイズは、幅が約131.3mm、高さが約96.4mm、奥行きが79.8mmで、本体のみの質量は約573gとなっています。

カメラを構えると、両機の持ち心地にはかなり異なる印象があり、姿かたちは似ていても明らかに別のカメラだと感じました。α7 IVは、太くてちょっと重い。ただし、メタボというわけではなく、ガッシリとしたマッスルボディになったイメージです。

α7 IV
α7 III

シャッターボタン周辺から見ていきましょう。モードダイヤルが高くかさ上げされていて、後ダイヤル(後ダイヤルL)の位置が微妙に変わり、露出補正ダイヤルは後ダイヤルRに生まれ変わり、さらにはロックボタンが搭載されました。

これがとても良い感じ。3つのダイヤルは指がかりが非常に良くなり、設定操作がしやすいです。後ダイヤルRにロックボタンが付いたおかげで、カメラバッグ内で勝手に不本意な露出補正をされてしまう心配が減りました。ちなみに、後ダイヤルRには、露出補正以外の機能を自由に割り当てることもできます。

α7 IV
α7 III

後ろからも見てみましょう。各ダイヤルが指でアクセスしやすそうに変更されていることが、伝わるでしょうか?

α7 IVの背面

モードダイヤルがかさ上げされているのは、ダイヤル下部に「静止画/動画/S&Q切り換えダイヤル」が新設されたからです。この静止画/動画/S&Q切り換えダイヤル(長いですね)は、その名の通り、静止画撮影と動画撮影とS&Q(スロー・アンド・クイック)撮影を簡単に切り替えられるというもの。操作がシンプルな上に、撮影モードダイヤルと同軸上にあって分かりやすい。

「静止画と動画の切り換えなんか滅多にしないよ」という人もいるかと思いますが、このダイヤルにもロックボタンが備えられているので、不用意に切り換わることがなく安心です。静止画を撮ろうとしたのにRECスタートではガッカリしてしまいますものね。

α7 IV
α7 III

カメラ背面のボタン類配置には、それほど大きな変更がありません。「MOVIE(動画)ボタン」と「C1」ボタンが入れ替わったことぐらい。ただ、各ボタンはよりハッキリと突出しているので、ファインダーを覗いたまま手探りでの操作がやりやすくなりました。使用頻度の高い「AF-ON」ボタンが大きくなったことも高評価です。

グリップの違いを見るために並べてみました。左がα7 IV、右がα7 III。α7 IVの方が大幅に張り出しが大きく、思い切った形状になっているのが分かると思います
α7 IVのグリップ部

望遠レンズなど大きなレンズを装着したときの安定感は大したもので、この辺にはベーシックモデルだけど本格的な撮影にもドンドン使えますよ、使ってください、といったソニーのメッセージが感じられます。構えた感じが“マッチョ”と感じた大きな理由のひとつがここにあります。

α7 IVはバリアングル式モニター。装着レンズは「FE 40mm F2.5 G」

背面モニターはα7 IIIまでのチルト式からバリアングル式に変更されました。α7S III、α7Cと、つづけてバリアングルモニターを採用していたので、自然な流れだと思います。静止画と動画のハイブリッドをアピールする機種ですから、動画配信などの自撮り系にも便利なバリアングル式の採用は自然なことでしょう。

参考:α7 IIIはチルト式モニターだった

とはいえ横位置で写真撮影をする機会が圧倒的に多い筆者としては、ボディが厚くならずモニターの引き出し操作も容易なチルト式、けっこう好きだったんですけどね。

あらゆるレスポンスの向上が嬉しい

α7 IVに搭載された画像処理エンジンは、α7S IIIやα1と同じBIONZ XRです。前モデルα7 IIIの画像処理エンジンはBIONZ Xで、なんでも従来比にして約8倍の高速処理が可能だとか。

画像処理エンジンの進化だけが理由ではないと思いますが、実際にα7 IVを使ってみると、その向上した操作レスポンスの良さをしみじみと実感することができます。

例えば、電源を入れてから撮影可能になるまでの時間。α7 IIIでは一呼吸置いたくらい、時間にすると2秒ちょっとかかっていたかな? という印象ですが、それがα7 IVでは1秒弱くらいになっています。なるべく早くチャンスに臨みたい撮影者として、これは嬉しい改善点
やたら時間がかかり、正直イライラするしかなかったメモリーカードのフォーマットも、大きく改善されています。手持ちのSDカード(UHS-II)でフォーマット完了までの時間を測ってみたところ、α7 IIIだと9秒ちょっとかかていた時間が、α7 IVなら実測で3秒かかりませんでした。CFexpress(Type A)カードならさらに速く、2秒強です。おお!

そうです、α7 IVはCFexpress(Type A)が使えるようになったのもトピックです。ダブルスロットの仕様は同じですが、α7 IVは、スロット1がSD(UHS-I/II対応)カードとCFexpress(Type A)カードのマルチスロットで、スロット2がSD(UHS-I/II対応)カードという仕様。

α7 IVの記録メディアスロット
スロット1はCFexpress Type-AとSDのコンパチ仕様
CFexpress Type-Aカード

対するα7 IIIは、スロット1がメモリースティックPROデュオとSD(UHS-I /II対応)カードのマルチスロットで、スロット2がSD(UHS-I対応)カードという仕様でした。ご存知の通り、メモリースティックは、ほぼ同社の独自規格のメモリーカードでありまして、永らく同社製デジタルカメラにも採用されてきました。しかし、いよいよここに来て採用を見送り(見限り?)、α7S IIIやα1と同じく新世代のCFexpressカードへと舵を切ったわけです。英断ですね。これもα7 IVの操作レスポンス向上の大きな理由のひとつになっているのかもしれません。

さようなら、大切に使いつづけてきた僕のメモリースティックPRO-HGデュオ……

動体撮影能力の進化を喜びたい

CFexpressカードの採用は、もちろん連写を行う際にも大きなメリットがあります。

ソニーα7 IV FE 70-300mm F4.5-5.6 G OSS(300mm・F11・1/1,600秒)ISO 800

α7 IVの連写速度は、AF・AE追従で最高約10コマ/秒と、これ自体はα7 IIIと同じなのですが、CFexpressカードを使うことで連写時の連続撮影枚数が劇的に増えます。どういうことかというと、連写中にカメラが撮影データを処理しきれず連写速度が落ちてしまう、ストップしてしまう、といったことがほとんどなくなるということです。

CFexpressカードを使うと、ファイル形式をRAW+JPEG、画質と記録サイズを最大にしたとしても、淀むことなく連写をつづけることができました。どのくらいまで行けるか試してみましたが、連写が1,000枚を超えてもまったく衰えることがないので、テストを打ち切ったほどです。

これがSDカード(UHS-II対応)だと、20枚前後で連写速度が急激に低下してしまいました。20枚撮って連写速度が落ちたところでシャッターチャンスが来たら……と思うと、ちょっとゾッとします。

というわけで、α7 IVがCFexpressカードを採用したのはとっても良いこと。α7 IVを買うなら、がんばって同時にCFexpressカードとカードリーダーも買うべきだと思います。もう、連写後にモニターに表示される「連写残量表示」の回復を待つ切ない時間とはサヨナラです。

また、撮像センサーの位相差測距点が、前モデルの693点から759点へと増加したことも、動体撮影に対する嬉しい進化点です。コントラストAF枠は425点と変わらないものの、AFセンサーの高密度化と、画像処理エンジンの高速化によって、AFの精度や被写体追従性は向上しています。

試してみたところ、α7 IIIでたまにあった、被写体に追従しきれず、背景など別のところにピントが行ってしまうといった残念な事故は少なかったです。被写体が小さかったり、被写体を判別しづらいようなゴチャゴチャした条件だと、わりとよく起きる事故で困っていたんですよね。

さすがに、スピード性能を追求したα9シリーズや、フラッグシップモデルのα1には及びませんが、シリーズ中でも「ベーシック」に位置づけされるモデルの性能としては、非常に優れた動体撮影能力といって差し支えないと思います。たいていの動きモノなら、これでぜんぜん問題がないでしょう。

他にも良いとこたくさんなα7 IVなのです

電子ビューファインダー(EVF)は、α7 IIIの約236万ドットから約368万ドットになりました。これは、解像度が約1.6倍になり、より高精細になったということ。α7R IVの576万ドット、α7S IIIやα1の約944万ドットには遠く及びませんが、α9 IIとほぼ同じであります。

EVFの光学系が密閉構造となり防塵防滴性が向上し、ファインダー内の結露もなく快適に撮影できるそうです

カメラ側面のインターフェースは、microUSB端子、USB Type-C端子、ヘッドホン端子、マイク端子、HDMI端子と、α7 IIIと大きな違いはありません。が、HDMI端子は、マイクロHDMIのタイプDから、より安定性が高く標準的なタイプAに変更されました。頻繁に外部モニターやテレビに接続する機会が多い場合に安心感が高いですね。

USB端子はいずれもカメラ内のバッテリーを充電でき、モバイルバッテリーなどを利用した給電しながらの撮影もできます。

また、α7 IIIからα7 IVに至るまでの時代の変化に対応しているな、と感じさせてくれるのが、標準で「USBストリーミング」機能(UVC/UAC)に対応しているところ。PCなどにカメラをUSB接続してモードを選択するだけで、α7 IVが高画質なWebカメラになります。

いくつかの条件はありますが、4K映像(3,840×2,160)の出力や、本体内同時記録にも対応しています。リモートでの会議やライブ配信の需要が高い今ですから、この機能は嬉しいところ。美肌効果も適用できますよ。

もうひとつ、α7 IVの良いとことしてぜひ紹介しておきたいのが、「電源OFF時にシャッターを閉じる」機能が搭載されたこと。これはレンズ交換時にホコリやゴミが撮像センサーに付着するのを防いでくれる優れものです。

電源OFF時にシャッターを閉じたところ

これはデジタル一眼レフ時代から一部に存在していた機能ですが、ミラーのある一眼レフと比べて「センサーが近くてむき出しで怖い」という印象を抱きがちなフルサイズミラーレス機に搭載されたことで近年注目され、さらにメカシャッターを完全に排除した「ニコン Z 9」が、わざわざシャッター幕のような「センサーシールド」として搭載したことで再び話題になりましたね。

ただ、この機能、初期設定ではOFFになっている上、設定しようとしてもメニューの深い部分にあるので、ここで簡単に設定方法を紹介しておきたいと思います。

まずメニューの「セットアップオプション」に入ります
次に「アンチダスト」を選択します。ゴミやホコリの付着を防ぐものだからアンチダストです
最後に「電源OFF時のシャッター」を「入」にすれば設定完了

この設定、知っていればすぐに分かることなのですけど、広いメニューの海の中を彷徨ってもなかなかたどり着けない謎があるんですよね。ということで、レンズ交換時にはなるべくカメラの電源をOFFにするようにしましょう。急ぐときは、電源を切らないようにすれば、従来通りシャッター幕が閉じることなくレンズ交換できます。

α7 IVで実写

では、以下に実写作例を掲載しつつ、補足説明していきます。

ソニーα7 IV FE 40mm F2.5 G(F2.5・1/125秒)ISO 800

ソニーは初めて動物瞳AFをデジタルカメラに搭載したメーカー。α7 IIIはファームウェアアップデートでの対応でしたが、α7 IVには最初から搭載されています。認識精度も向上していて、イヌやネコをよく撮る人にとっては、もはやなくてはならない機能になったと言えるのではないでしょうか。

ソニーα7 IV FE 70-300mm F4.5-5.6 G OSS(300mm・F7.1・1/2,000秒)ISO 800

さらに、リアルタイム瞳AFに「鳥」が追加されました。瞳が見える状態であれば、写真のように被写体が小さい場合でも、ちゃんと検出してくれるからスゴイ。αシリーズのカメラで鳥を選択できるのは、今のところ、α1とこのα7 IVの2機種だけです。

ソニーα7 IV FE 70-300mm F4.5-5.6 G OSS(300mm・F5.6・1/1,600秒)ISO 400

解像感を含めた画質は、やはり総合的にアップしているな、と実感させてくれた一枚。G Masterの登場以来、ソニーは交換レンズも全体的に性能向上が目覚ましいと感じていますが、本機なら、そうした優れた描写性能も余さず受けとめてくれます。

ソニーα7 IV FE 40mm F2.5 G(F5.6・1/160秒)ISO 100

仕上がり設定機能は「クリエイティブスタイル」から「クリエイティブルック」に変更。それぞれの仕上がり設定の名称が、「ST」とか「PT」のように記号っぽくなりましたが、ファインダーやモニターを見ながら変更すれば効果がすぐわかるので問題ありません。この作例は“明るく鮮やかな発色で明瞭度の高い”という「VV2」で撮ってみました。

ソニーα7 IV FE 70-300mm F4.5-5.6 G OSS(181mm・F5.6・1/160秒)ISO 100

低ISO感度でのダイナミックレンジは、15ストップと幅広い。といっても、これはα7 IIIと同じで、しかもRAWデータの話。ただし、そこから画像処理エンジンがイイ感じで画作りをしてくれているため、ハイライトの粘りが自然で好ましいです。初代α7から、α7 II、α7 IIIと使いつづけてきた筆者としては、大げさでなく羨ましさを覚えます。

まとめ

ソニーはこのα7 IVについて「ハイブリッド」という表現を多く使っています。なにをもってハイブリッドなのかと言えば、それは静止画撮影機能と動画撮影機能の融合です。両方を撮影するのに満足な性能があり、かつどちらの場合でも快適に操作できますよ、と言うことでしょう。ベーシックなカメラとして、今という時代のニーズを実に上手く捉えているではありませんか。

そうした進化は、初代α7から積み上げてきた進化の蓄積によるものだけでなく、フラッグシップ機であるα1の最新技術を無理なく継承したからこそ、なしえたものだと思います。

今回は1週間程度の試用となりましたが、その短い期間でも、単にα7 IIIからの正統進化というだけでは収まらない確かな完成度の高さを感じました。決して安い買い物ではありませんが、この内容のカメラが約33万円というのは、むしろお買い得とさえ思いました。

おまけ
ソニーα7 IV FE 40mm F2.5 G(F2.5・1/80秒)ISO 800
曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。