ミニレポート
「クラシックネガ」を自分好みにカスタム(FUJIFILM X-E4)
これから挑戦したい人向けに、各パラメーターを解説
2021年12月8日 09:00
夏過ぎ、富士フイルムのカメラを手に入れた。小型軽量の「FUJIFILM X-E4」だ。レンズは「XF35mm F2 R WR」。これまで富士フイルムXシリーズは、カメラ雑誌の新機種テストのために何度も借りたことはあったが、購入したのは初めて。そこで、まずはフィルムシミュレーションの機能を自由に楽しんでみることにした。今回は私なりに設定方法を紹介するので、まだこの機能をあまり使い込んでいない方や、同じく富士フイルムのカメラを買ったばかりの方の参考になれば幸いだ。
私の場合、カラーネガの雰囲気を持ちながら、現代的な仕上がりも欲しかったので、試行錯誤の結果以下のような設定に辿り着いた。その過程は後半で解説する。
・グレイン・エフェクト:弱・小
・カラークローム・エフェクト:強
・カラークローム・ブルー:通常オフ、青を強調したいときだけ強
・トーンカーブ:ハイライト+0.5、シャドウ+0.5
・カラー:+1
・シャープネス:0
・明瞭度:0
思えば今回X-E4を購入するまでは、フィルムシミュレーションを活用したことはほとんどなかった。多くはレビュー記事でカメラの性能を見るためのテスト撮影だったので、基本はスタンダードのPROVIAに固定。あとは機種ごとに新搭載されたフィルムシミュレーションや機能をいくつか試す程度。しかも設定もデフォルトのままで、トーンカーブ等のパラメーターをいじることもなかった。
今回選んだのは、X-Pro3以降の機種に備わっている「クラシックネガ」だ。X-Trans CMOS 4とX-Processor 4を搭載したX-E4では、白黒のACROSやモノクロのフィルター効果も含めて18種類ものフィルムシミュレーションが選択できる。
クラシックネガを選んだ理由は、フィルムシミュレーションの中で新しいということもあるが、若い人を中心に人気のフィルムカメラは、カラーネガフィルムを使用する人が多いので、カラーネガ好きの人たちの参考にもなればと思ったからだ。私自身は「クラシッククローム」が最も好みなのだが、あえてクラシックネガを試すことで、異なる表現も見つけたいという意図もある。
——各パラメーターの使い方を解説
クラシックネガの特徴は、彩度は抑えながらコントラストは高め。カラーネガで撮影された古い写真を見ているような、ノスタルジックな雰囲気の仕上がりになる。それは1960〜70年代にアメリカで広まったカラーによる表現、「ニューカラー(アメリカン・ニューカラー)」をイメージさせる。ウィリアム・エグルストンやジョエル・マイロウィッツなど、ニューカラーの作品が好きな人にとっても、クラシックネガの風合いは注目だ。
テストでは、色温度で色味が変わらないようにWBを太陽マークの晴れに固定。また自然光では時間帯や雲の状態で光や色温度が変わってしまうため、屋内でストロボを使用している。露出も固定だ。ISOはベース感度のISO 160だ。
カラーでも使える「グレイン・エフェクト」
メニュー画面を下にスクロールしていくと、まず現れるパラメーターがグレイン・エフェクトだ。グレイン・エフェクトはフィルムのような粒状効果を加える。リコー、パナソニック、オリンパス(現OM SYSTEM)にも粒状機能を持った機種はあるが、それらはモノクロのみ。カラーでも粒状効果を備えているのは富士フイルムだけだ。
粒状効果は、フィルムっぽさを出すのに向いているのはもちろんだが、不思議なことに粒状感がゼロだと、どこか人工的でいかにもデジタルな印象(いわゆるデジタル臭さ)を受けやすい。そこでさり気なく粒状を加えると、そのデジタルな印象が和らぐように感じる。また私自身の印象だが、粒状を加えた方がハイライトの階調の繋がりが自然に見える。グレイン・エフェクトは強度が弱と強の2種類、粒度が小と大の2種類が選べる。
色飽和を抑える「カラークローム・エフェクト」
続いてカラークローム・エフェクトだ。鮮やかな被写体を撮影すると、陰影の少ないのっぺりした仕上がりになりやすい。そこで色飽和をさせずに深みと立体感を出すのがこの機能だ。設定は弱と強。比べてみると、赤や黄色などビビッドな色の被写体の陰影が強くなっているのがわかる。
空や海の青を強調できる「カラークローム・ブルー」
カラークローム・ブルーは、青色だけコントロールする機能だ。こちらもカラークローム・エフェクトと同じく効果は弱と強。オフと比べると、スニーカーやペンの軸の青のみが濃くなり、深みが増していく。快晴の空や海など青を強調させたい場合に適している。
ハイライト/シャドウの調子を操る「トーンカーブ」
トーンカーブはパソコンでレタッチやRAW現像をしている人にはお馴染みの機能だろう。ラインを上げれば明るく、下げれば暗くなる。富士フイルムのパラメーターでは、ハイライトもシャドウも0.5刻みで-2〜+4まで設定できる。
ここで紛らわしいのが、ハイライトはプラスにするとラインが上がり、マイナスは下がるのだが、シャドウは反対に、プラスはラインが下がり、マイナスは上がる。シャドウもハイライトと同じくマイナスで下がる方が感覚的に掴みやすいように感じるのだが、なぜこの仕様にしたのか不思議だ。なお作例では、0.5刻みだと細かすぎるため、1段ずつで撮影した。
被写体の輪郭を強調する「シャープネス」
シャープネスは被写体の輪郭を強調、あるいは弱めるのに使うパラメーター。設定範囲はカラーと同じ±4段階。シャープネスは強くするとキリッとした仕上がりになるものの、強すぎるとガチガチで不自然さを感じてしまう。柔らかい描写のレンズではプラス側、解像力の高いレンズはマイナス側、と使い分けても良さそうだ。
シャープネスとは似て非なる「明瞭度」
明瞭度はシャープネスと似ているが、被写体の質感再現の強弱に使用する。設定範囲は±5段階。プラスが強いほど被写体の質感が強調され、力強い印象だ。マイナスにすると被写体をきちんと解像しつつ、柔らかさも持つ仕上がりが得られる。
以上、クラシックネガをベースに、7つのパラメーターを試してみた。ここから自分の好みの設定をしていく。
好みの設定を探しているときは、まるで車やバイクのレーシングマシンをセッティングしているようだ。何度も設定を変えては試し撮りをして、自分に合った写りを探していく。迷ったら一度デフォルトに戻して、パラメーターをメニュー画面の順番に設定するのが確実だ。好みの設定にできたら、カスタム登録しておこう。
実は私自身も、他社のカメラも含めてここまで詳細にパラメーターを試したことはあまりなかった。理由としては、これまでレビュー記事用以外にはRAWで撮影し、現像時にパソコンで調整することが多かったからだ。しかし富士フイルムのカメラにはせっかくのフィルムシミュレーションがあるので、有効に生かしたいと考えた。フィルムシミュレーションを選ぶだけでなく、パラメーターも活用することで、自分らしい個性を持った仕上がりが楽しめる。