新製品レビュー

FUJIFILM X-E3(外観・機能編)

“ミニマル”を追求した個性派のミラーレスカメラ

FUJIFILM Xシリーズにはふたつのラインがあって、ひとつはFUJIFILM X−T2をフラッグシップとしたセンターファインダーの一眼レフスタイル。こちらの普及機がFUJIFILM X-T20となる。

もうひとつのラインが、FUJIFILM X-Pro2をフラッグシップとしたレンジファインダースタイルで、こちらの普及機が今回のFUJIFILM X-E3というわけだ。

2012年11月にFUJIFILM X-E1、2013年11月にFUJIFILM X-E2が発売されたことを考えると、X-E3の登場までずいぶん長い時間が空いた。この4年間にXシリーズは大きな進化を遂げている。

ライバル

画素数と価格から考えれば、ソニーα6300やキヤノンEOS M6あたりがライバル機となるのだろうが、それらに相対するのはX-T20であって、X-Pro2にライバルがいないようにX-E3も独自路線を目指しているように見える。

製品のコンセプト

富士フイルムが独特なのは、先ほど挙げたX-T2、X-T20、X-Pro2そしてX-E3の4機種が、すべて同じイメージセンサーと同じプロセッサーを搭載していて、画質の点では差別化がなされていないところにある。

X-T20とX-E3は画質に対しての価格が低く抑えられていることになるわけで、ユーザーからすればありがたいだろう。

ブラックもラインナップされる

大きさ、重さ

数値を比較してもX-E2からの小型化の差は歴然だ。

X-E2は幅129mm、高さ74.9mm、奥行37.2mm、重量(バッテリー、メディア込み)350g。対してX-E3は幅121.3mm、幅73.9mm、奥行42.7mm、重量(同)337gとなっている。

横幅が約8mm短くなっていることと、13g軽くなっているのは、小型軽量を目標に掲げて徹底的に洗い直した結果だろう。

X-E2S(右)との比較
X-E2S(下)との比較

※X-E2Sは国内未発売だが、X-E2と外寸は同じ。

ボディデザイン

X-T20はX-T10の外観をほぼ完全に踏襲したが、X-E3のデザインはX-E2を流れを汲みながらも、新しさを感じるものとなっている。

操作性

X-E3の新機軸のひとつが十字キーがなくなったこと。

現在のデジタルカメラでスタンダードとなっている「十字キーで選択して、中央にあるOKボタンで決定」という操作スタイルではなく、8方向レバーによる選択が採用された。これにより十字キーのスペースが省かれ、背面がフラットでシンプルになった。

となると、十字キーに割り振っていたファンクションがなくなってしまうわけだが、タッチパネルの液晶モニターをフリック(指で弾くように動かす)すると、上下左右に割り振った機能が呼び出されるようになっている。

タッチパネルはAF測距点のセレクトとシャッターにも対応。もちろんOFFにもできる。

フリックしてメニューを呼び出したところ

撮像素子と画像処理関連

約2,430万画素のX-Trans CMOS IIIセンサーと画像処理エンジンX-Processor Proにより高画質化を図った。イメージセンサーのサイズはAPS-Cサイズだ。

また、フィルムシミュレーションではX-E2になかったクラシッククロームとACROSが加わり、定評ある色再現に表現の幅をもたせている。なお、クラシッククロームはファームアップでX-E2でも使えるようになっている。

さらに最高1/32,000秒の電子シャッターを搭載している点にも注目だ。

常用最高感度はISO12800、拡張最高感度はISO51200

ファインダー

EVFは0.39型。引き続き約236万ドット有機ELとなっている。

AF

AFシステムを刷新して苦手だった動体撮影能力を強化しているのもトピックだ。

AF追従(AFリフレッシュ)が、約3回/秒→約30回/秒になった。AFが速く合うというより、被写体を認識して食いつくのが速くなるという感覚だろう。

これはX-T2とX-Pro2にもファームアップで搭載が予定されている。

連写

メカシャッターでの最高連写速度は約8コマ/秒。ファームウェアを適用したX-E2の約7コマ/秒から1コマアップした。なお、電子シャッター時は最高約14コマ/秒での撮影もできる。

液晶モニター

X-E2と同じ3型(約104万ドット)を採用。X-E2は非対応だったタッチパネルになった。チルト機構などは無く固定式だ。

動画機能

4K動画も見逃せない。これらはFUJIFILM Xシリーズの標準スペックとして、正常進化である。兄弟機と言っていいX-T20も同様だ。

通信機能

もう1つの新機軸となるのがBluetooth通信機能の搭載だ。

カメラとスマートフォンなどの外部機器の接続は、これまでWi-Fiが標準的だった。Wi-Fiは回線が速く大量の画像を転送するのに適しているが、消費電力が大きく不自由な点もあった。

現在のXシリーズは、Camera Remoteというアプリを使って画像転送やリモート撮影を行う仕様になっているが、機能を切り替えるたびに接続し直す必要があり煩わしい。

それがBluetoothなら消費電力が小さく、いったんペアリングすれば常時接続しておけるため、転送を行うときいちいち接続し直す必要がない。

今後は、カメラ自体が機能として持っていないもの(たとえばGPS)をスマホなどの外部機器に依存することができるため、撮影ログの記録など新しい可能性を開拓してくれるかもしれない。

記録メディア

SDXC/SDHC/SDメモリーカードで、UHS-Iに対応。

端子

側面の端子は上からマイク/リモートレリーズ端子、Micro HDMI端子、Micro USB端子となる。

電源

バッテリーは新型のNP-W126Sとなった。従来のNP-W126から温度上昇への耐性を高めたものだが、従来品と互換性がある。撮影可能枚数はX-E2と同じ約350枚だ。

まとめ

このクラスの標準装備と言っていいチルト液晶と内蔵ストロボが省かれ、シンプルさを追求した。

「機能は多いほどいい。使うか使わないかはユーザー次第」という考えが、デジタルデバイスには蔓延しているように思う。X-T20という万人受けするカメラがあるのに、X-E3がそれに追従しても意味がない。

X-E3の特長を一言で表すなら“ミニマル”に尽きる。サイズや重量だけでなく、とにかく軽快に扱えるのがいい。

※次回は「実写編」をお届けします

内田ユキオ

1966年新潟県両津市(現在の佐渡市)生まれ。公務員を経て独学で写真を学びフリーに。ライカによるモノクロのスナップから始まり、音楽や文学、映画などからの影響を強く受け、人と街の写真を撮り続けている。執筆も手がけ、カメラ雑誌や新聞などにも寄稿。著書「ライカとモノクロの日々」「いつもカメラが」など。