ミニレポート
カメラを繋いでRAW現像する「FUJIFILM X RAW STUDIO」の使い方
何ができるのか、X-E4で解説
2022年5月11日 07:00
フィルムシミュレーションが魅力の富士フイルムXシリーズ。富士フイルムがこだわった各フィルムシミュレーションは、JPEGで威力を発揮するように開発されている。その思想はポジフィルム(カラーリバーサルフィルム)と同じだ。ポジフィルムは撮影後にラボで現像し、仕上がったフィルム自体が出来上がりとなる。撮影者はそこから気に入ったカットを切り出す。そこに後処理という考えはない。
富士フイルムはデジタルでも同じようなワークフローを想定している。撮影者はフィルムを選ぶようにフィルムシミュレーションを選択し、撮影したらSDカードに記録されたJPEGデータが出来上がりとなる。RAWで撮って後で編集、ではない。以前、富士フイルムの発表会でも壇上で「カメラマンには後処理させない」と語っていた。富士フイルムはそれだけJPEGに力を入れているのである。
とはいえ、撮影後に調整したいときもある。明るさを微調整したい、ホワイトバランスやフィルムシミュレーションを変更したい、などなど。もちろんXシリーズにもRAWはあり、撮影後に編集が可能だ。Adobe Lightroomをはじめ、いくつかのRAW現像ソフトでフィルムシミュレーションの変更もできる。
ところが、その仕上がりはJPEGと100%同じにはならない。その理由は富士フイルムの色や階調を作っているカメラ内の画像処理エンジン「X-Processor」(最新はX-Processor 4)を通していないからだ。似た仕上がりはできても全く同じではない。
RAWから富士フイルムのフィルムシミュレーションを100%再現する方法、そのひとつが「カメラ内RAW現像」だ。しかしカメラの小さな液晶モニターを見ながらの操作は快適とはいえない。特に調整する枚数が多ければ、なおさら面倒。
そこで注目なのが、カメラの画像処理エンジンを通してパソコンでRAW現像する、富士フイルム純正ソフト「FUJIFILM X RAW STUDIO」だ。
FUJIFILM X RAW STUDIOの使い方
使い方は、パソコンにFUJIFILM X RAW STUDIOをインストールし、USBケーブルでカメラとパソコンを接続。カメラの電源をオンにしたら、メニューから接続モードを「USB RAW現像/設定保存読込」に設定。FUJIFILM X RAW STUDIOを起動し、接続している機種で撮影したRAWデータが保存してあるフォルダを選択すれば、いよいよRAWからの調整が行える。
ソフトウェアの画面レイアウトは、下にサムネイル、左にソース画像フォルダとヒストグラム、そして画像情報。右に操作パネルが配置されている。拡大や調整前、調整後の2画面表示も可能。やはり、カメラの背面モニターよりパソコンの大きな画面での作業が快適だ。色調や階調の再現性もよくわかる。
調整できる内容
調整できる項目はカメラ内RAW現像と同じ。明るさも1/3EVステップで、汎用RAW現像ソフトのような細かな調整やコントラスト調整はできない。“パソコンを使ってカメラ内RAW現像を行っている”、といえるだろう。ノイズリダクションもカメラ内と同じ仕上がりが得られる。操作はシンプルなので、RAW現像に慣れていない人でも扱いやすように感じた。
しかし各調整項目を選択すると、手元の環境(Core i7 9700F 3.00GHz、メモリ32GB、Windows 10)では画面に反映されるまで3秒近くかかり、好みの仕上がりに追い込んでいくのはやや時間がかかるのが気になった。また現像後の書き出しフォーマットはJPEGのみ。画質に有利なTIFFに書き出すことはできない。保存先もRAWデータと同じフォルダになる。せめて保存先を指定できると、より使いやすくなるように感じた。
ただ現像時間は速く、こちらは同じ環境で1枚あたり約1.5秒だった。調整の内容さえ決まってしまえば、現像作業はスピーディーだ。調整内容はユーザープロファイルとして登録ができ、カメラプロファイルとしてカメラ側にカスタム登録も可能。特に、カメラにカスタム登録できるのは、パソコンとカメラを接続した状態で使用するメリットだ。
富士フイルムユーザーにはありがたいソフトだが、ひとつ注意することがある。それは現像するRAWデータを撮影したのと同じ機種を接続する必要がある、ということだ。例えばX-Pro3で撮影したRAWデータなら、X-Pro3をパソコンに接続しなくてはならない。同じ撮像素子、同じ画像処理エンジンを搭載したX-E4を接続しても現像できない。複数台を使い分けるなど、場合によっては不便に感じるシーンもあるかもしれないが、仕方のないところだろう。
使用時には毎回カメラをパソコンに接続することや、編集中の表示速度も速くはないなど、やや面倒に感じる部分もあったが、RAWデータから富士フイルム純正の仕上がりが得られるのは、フィルムシミュレーションの画作りをフルに味わいたいユーザーにとっては大きな魅力だ。個人的には、カメラでJPEGとRAWを同時記録しておき、メインはJPEGを使用。撮影時に追い込めなかった設定をRAWからFUJIFILM X RAW STUDIOで調整する、という使い方が最もスマートだと感じた。