新製品レビュー

SONY FE 400mm F2.8 GM OSS(その1)

G MASTERらしい高い解像性能と軽さを両立

「FE 400mm F2.8 GM OSS」(SEL400F28GM)はソニーのフルサイズミラーレスカメラ、αシリーズ(Eマウント)の超望遠レンズだ。

スポーツ撮影の標準レンズともいわれる400mm F2.8はキヤノンやニコンがラインナップする最新モデルでも3,800gほどの重さがあるが、この「FE 400mm F2.8 GM OSS」は構成レンズを中央から後方に重点配置したことで2,895gを達成し、ミラーレスカメラαのサイズ感に合う軽さを実現していることも、大きな特徴だ。

α99 IIなどのAマウントαに用意された大口径の「300mm F2.8 G SSM II」(SAL300F28G2)や「500mm F4 G SSM」(SAL500F40G)はマウントアダプターを用いることで、Eマウントαでも使用することができるが、ミラーレスカメラのα9が持つ約20コマ/秒連写に対応しないなどの機能制限があった。そして、待望のこのレンズの登場でミラーレスカメラαの各種機能にネイティブで対応する大口径超望遠がまず1本、ラインナップに加わることになる。

デザイン

ミノルタα時代にあった大口径望遠レンズ「AFアポテレ」の流れを汲む白塗装を引き継がれながら、各社が採用するここ数年のデザイントレンドとなっている平面的な外観を持つ。先述のAマウント用2本の望遠に比べ、先端に向かって徐々に径が拡大していく過程にも段差が少なく、円錐に近い形を採っている。

長さ20cm弱のかぶせ式フード本体にシナバーカラーであるメタリックオレンジの帯が入り、その後ろ、本体先端部にGマスターレンズを表すシナバーのGバッジが埋め込まれる。

凹凸加工のラバーが巻かれる3つのリング形状は順に、ファンクションボタン(フォーカスホールドボタン)、ファンクションリング、そしてフォーカスリングと配置され、ホールディング時におよそ左手の親指と中指が添えられる位置にある。

操作性

付属のトランクケースに入った状態で始めて手にしたとき、本当に中にレンズが入っているのかと疑うほどの軽さに感心した。カメラ本体との装着では、300mm F2.8級のレンズを組み合わせた場合と同等の重量感で、構成レンズの一部にフレネルレンズを採用したDO(キヤノン)やPF(ニコン)といった短縮型と並んで、「超望遠レンズ新時代」の到来を感じさせる。

ファンクションボタンは1周する筒状の中に4つあり、縦位置での構えでも親指による操作が可能だ。後ろに続くファンクションリングは、デフォルトでは径方向へ動かすと動画記録時に適するような滑らかでゆっくりフォーカシングする、パワーフォーカスの設定になっている。カメラ本体からのカスタムメニューで、例えば撮像領域をAPS-Cに変更するなどにも割り当てられる。さらにその後ろは、広々と幅の取られたフォーカスリング。滑らかに回転し、後述するDMFスイッチと組み合わせることでAF中でもダイレクトにマニュアルフォーカスに移せるようになっている。

三脚座を備える環には商品名とシリアル番号(この写真では消除加工している)が刻まれるシルバープレートがビス止めされ、三脚座を支える支柱にはカバーで覆われる中に三脚座環の回転を水平、垂直とその反対の90°で区切るクリックのON/OFFスイッチ、それに盗難防止用のソケットが付く。三脚座には光軸方向に1/4インチのネジ穴が2つ、それらに挟まれるように3/8インチのネジ穴が1つ埋め込まれる。

本体左に各種スイッチ類と、マウント側にスライド挿入式のフィルターフォルダーが配置される。

スイッチ類は上左から、AF/MF切り替えスイッチ、フルタイムマニュアルのON/OFFスイッチ、1段下がってフォーカス範囲を制限するリミッター、中段は本体の先にあるファンクションリングに機能を割り当てるスイッチと、フォーカスプリセットでフォーカス位置を覚えさせるボタン。下から2段目は光学式手振れ補正のON/OFFスイッチに、その右が手振れ補正のモード切替スイッチ。最下段はファンクションボタンを押して機能が働いたことを表わすビープ音のON/OFFスイッチだ。

◇   ◇   ◇

今回のレビューでは航空機や風景といった被写体に対しての所感を述べよう。

使用カメラは主にこのレンズに対応するファームウエアが入るα9。設定は特に表記のないもので、フォーカスエリアの選択は拡張フレキシブルスポットやロックオンAF拡張フレキシブルスポットなどを多用。色味設定のクリエイティブスタイルはスタンダード、レンズ補正はすべての項目でオートに。また、AEを用いるとデフォルトではやや明るめの傾向となっていたため、白飛びを抑える意味と私の好みで、AEでマイナス露出補正を各カットで掛けている。光学手振れ補正は、スポーツなど動きが不規則で激しい動体撮影時に安定したフレーミングが可能とされる新搭載のモード3を多用し、手持ちで撮影した。

ボケ

これまでにない中央から後方に重点的に配置されたレンズ構成とあって、どんなボケ味を出すかが気になっていたが、さすがは140万円の単焦点のG MASTER。開放から1段ずつ絞りF8までのこれら4カットにおいて、いずれも素直な描写といっていい。風もある状況の手持ち撮影であったため、完全な同一アングルとなっていないことはご容赦頂く…。

α9 / FE 400mm F2.8 GM OSS / 絞り優先AE(1/500秒・F2.8・-7/10EV)/ ISO 100 / 400mm
α9 / FE 400mm F2.8 GM OSS / 絞り優先AE(1/250秒・F4.0・-7/10EV)/ ISO 100 / 400mm

α9 / FE 400mm F2.8 GM OSS / 絞り優先AE(1/125秒・F5.6・-7/10EV)/ ISO 100 / 400mm
α9 / FE 400mm F2.8 GM OSS / 絞り優先AE(1/60秒・F8.0・-7/10EV)/ ISO 100 / 400mm

作例

新石垣空港から離陸するANA・ボーイング777-200型機を撮影した。とにかく同類レンズと比較して軽く、肩から下げていても苦にならない。本体の大きさだけはどうにもならないが、フードを外せば取り回しも悪くなく、廉価ズームにない解像が必要なときは積極的に欲しくなる1本だ。一定方向に定まらず、長時間に及ばない撮影であれば、光学手振れ補正の効果もあって一脚の必要はないだろう。

α9 / FE 400mm F2.8 GM OSS / 400mm / シャッター速度AE(1/1,600秒・F6.3・-1.0EV)/ ISO 100

着陸のために降ろしたフラップ端からベイパーを出すJTA・ボーイング737-800型機。画面に向かって左から右へと過ぎ去り、最近接では40~50mほどの頭上を通過していったが、「ロックオンAF/拡張フレキシブルスポット」を用いてフレーミングだけに気をつけ、天を仰ぎながらレンズを振り抜いた。モード3の手振れ補正は、補正のために動くレンズのセンターリング(光軸中央への戻し)が行われないようで、安定したファインダー像が常に得られた。

α9 / FE 400mm F2.8 GM OSS / 400mm / シャッター速度優先AE(1/1,600秒・F5.0・-0.7EV)/ ISO 100

同じく着陸進入のために横方向への動きを見せるJTA・ボーイング737-400型機。進入路から300~400mほど離れ水平方向へ振り抜くように撮影したが、ここでも手振れ補正はモード3を用いた。補正の強弱はあるものの、風景などの静止物でなければこのモード3のままに設定していてもさして問題はないように思える。一連の石垣島での撮影はところどころで陽炎が出ていたが、その向こうにある機体ディテールの再現はさすがに単焦点と思わせてくれた。

α9 / FE 400mm F2.8 GM OSS / シャッター速度優先AE(1/1,250秒・F5.6・-0.7EV)/ ISO 100 / 400mm

離陸のために極々ゆっくりと滑走路へ前進するソラシドエアのボーイング737-800型機。画面内で伸びる右翼にフォーカスを持っていきたかったのだが、「ロックオンAF/拡張フレキシブルスポット」は比較的コントラストのある機体前部を拾ってフォーカシング。ここでも、ゆっくり動く機体に対して、モード3の手振れ補正が素直なファインダー像と撮影画像を残した。

α9 / FE 400mm F2.8 GM OSS / 400mm / シャッター速度優先AE(1/640秒・F5.0・-1.0EV)/ ISO 100

陽が沈み、残照を受けて紅く染まった夏の雲を背景に、着陸進入するハワイアンのエアバスA330-200型機。場所は変わって羽田空港だが感度をそれほど上げずに1/60秒での手持ち撮影を行った。ノーズ部に合わせての流し撮りとなり、垂直尾翼に向かっての機体後部にかけてはブレが生じたものの、ノーズ付近の機体前部は止められた。このカットでもモード3の手振れ補正を使っている。

α9 / FE 400mm F2.8 GM OSS / 400mm / シャッター速度優先AE(1/60秒・F2.8・-0.3EV)/ ISO 320

横方向への流し撮りのモード2での補正具合を見ようと、マンフロットのフルード式雲台に載せて、電子シャッターでの最遅スピードとなる1/8秒でパンさせるようにシャッターを切った。このカットも機体前部に合わせて流したため機体後部はブレたが、点光源の流れ方でその補正の仕方が判るだろう。

α9 / FE 400mm F2.8 GM OSS / 400mm / シャッター速度優先AE(1/8秒・F2.8・±0.0EV)/ ISO 1250

静止物への手持ち撮影での結果を見るために手振れ補正をモード1とし1/40秒で切った。これ以下のシャッタースピードも試したのだが、結像の確立は悪くなる一方。撮影者のスキルもあるが、安定して結果の出る静物への効果としては約3段分を確保、といえる。

α9 / FE 400mm F2.8 GM OSS / 400mm / シャッター速度優先AE(1/40秒・F2.8・-0.7EV)/ ISO 200

2倍のテレコンバーターを装着し800mm相当として、1/100秒で手持ち撮影した上弦の月だ。薄くかかる雲が残照を反射し淡く紫色に染まっていたが、月のクレーターが表わす細部とともに、その淡みも再現できている。

α9 / FE 400mm F2.8 GM OSS + 2X テレコンバーター / 800mm / 絞り優先AE(1/100秒・F5.6・±0.0EV)/ ISO 200

以上、今回は外観仕様と基本的な画質を中心にお伝えしたが、次回はオートバイレースとMTBレースに持ち込んだ際のAF達成度などを見ていただく。

撮影協力:石垣空港

井上六郎

(いのうえろくろう)1971年東京生まれ。写真家アシスタントを経て、出版社のカメラマンとして自転車、モーターサイクルシーンなどに接する。後、出版社を退社しフリーランスに。マラソンなどスポーツイベント公式カメラマンも務める。自転車レース、ツール・ド・フランスの写真集「マイヨ・ジョーヌ」を講談社から、航空機・ボーイング747型機の写真集「747 ジャンボジェット 最後の日々」を文林堂から上梓。日本写真家協会、日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員。