新製品レビュー
SONY FE 400mm F2.8 GM OSS(その2)
α9との組み合わせでAF性能を見る
2018年8月9日 07:00
航空機と風景での画質を紹介したその1に続き、今回はスポーツ編としてAFの動きを中心にお送りする。サーキットでのモーターサイクルと夏場のスキー場で行われたマウンテンバイク・ダウンヒル競技に、「FE 400mm F2.8 GM OSS」と「α9」を持ち込んでみた。
サーキットでは路面温度が58度を超えるなど、まずはまずは厳しい暑さの中での撮影だったことをお伝えしておく。サーキット、スキーゲレンデとも立っているだけでクラクラとする灼熱下、体力が奪われていくことがハッキリとわかる環境の中ではあったが、このレンズの「軽さ」は、間違いなく撮影者にとっての助力となっていたことを、あらためて思い返す。
AF動作
モーターサイクルレースの写真は、茨城県下妻市の筑波サーキットで行われたアマチュアが集うロードレース「筑波ツーリスト・トロフィー」でのシーンだ。
アマチュアとはいえ各々自慢のレースマシンをキッチリ整備し、この日を迎える選手達は見事な走行シーンを見せてくれる。市販のBMW・S 1000 RRを駆り、ノーマルビッグバイククラスで優勝した神田広海選手が最終コーナーを立ち上がる。100km/h以上のスピードからストレートに向け加速し、最近接では10mほどの横をかすめて行く。
二輪車レースの場合、例えばヘルメットにフォーカシングし、選手を主題として表わすという作法があるのだが、このカットではカメラ本体のAFエリア「ロックオンAF:拡張フレキシブルスポット」モードを使い、まずは大雑把にマシンを捉え、カメラ任せでシャッターを切った。カーボン模様がハッキリと見えているように、フロントカウルにフォーカシングしている。最至近となる部分にフォーカシングするという、おそらくはこのモードのアルゴリズム通りの結果となった。
ヘアピンコーナーをターンするのは、ターミネーター1クラスにKTM 690 DUKEで参戦の村田哲也選手。この日はコーナーイン側への立ち入りができたため、円の中心から弧を描くマシンを捉えてみた。
イン側に車体を倒して、レンズとの距離移動の動きも少ないため、ややシャッター速度を落として背景を流す。このような流し撮りの際は、いかに画面の同一地点に被写体を留めるかが重要となるが、α9のブラックアウトフリーは強力な利点であることを再認識できた。
1.4倍のテレコンバーターを使う
1.4倍のテレコンバーター(SEL14TC)を装着し、過ぎ去るマシンへとフォーカシング。
レンズ方向に近づく→最近接→過ぎ行く、この一連のフォーカシングにおいて最近接までの追随はまずまずの成績。しかし、過ぎ行く方向に変わった直後の数カットは予測に反するためか、さらにはフレーミングが安定しないこともあって、合焦を見るカットは少ない。自身のフレーミングも安定し、マシンがこの位置まで遠ざかってからシャッターを切った。
NT2クラスで勝利した内山智彦選手と、2位入賞の小室直久選手によるテイルトゥノーズの接戦。1.4倍のテレコンバーターを装着して、ヘアピンコーナーから撮影した。
「ロックオンAF:拡張フレキシブルスポット」のAFエリアを選び、コーナー奥から内山選手の緑ヘルメットにフォーカシング。AF速度の低下は感じさせなかったが、マシンが近づきカウルの緑の面積が徐々にひろがると、ロックオンはそちらへのリアクションを見せ始めた。
2倍のテレコンバーターを使う
2倍のテレコンバーター(SEL20TC)を装着して800mmとし、へアピンコーナー外側からNS2クラスで激しいデッドヒートを繰り広げていた28番の桜澤宏太選手と、手前40番の野村勝選手を捉えた。後方から虎視眈々とトップを狙う28番のマシンに「ロックオンAF:拡張フレキシブルスポット」を使いフォーカシング。この後、40番のマシンが前を横切る瞬間が訪れるが、AF被写体追随感度を「粘る」に設定していても、40番マシンへの合焦とはいかなかったが、そこに釣られてしまうことがあった。
作例
夏場のスキー場をマウンテンバイクなどに開放してレクリエーションの幅を広げている、長野県富士見町の富士見パノラマスキー場。日本のマウンテンバイク・ナショナルチャンピオンを決する、全日本マウンテンバイク選手権大会のダウンヒル競技を撮影した。
下りのオフロードのみの走路1.4kmで争うダウンヒル競技。2分強の間に時速は最高で60〜70kmほど。プロとして活動する選手も含まれる国内トップとなるエリートクラスの予選セッションで走る、永田隼也選手。バランスを取るためにイン側の足を外に出した。「ロックオンAF:拡張フレキシブルスポット」はコントラストのある面にも引っ張られるようで、このカットでは4番のビブプレートに合焦した。
着順が決まる本戦レースながら大きなジャンプで観客を魅了させる阿藤寛選手。山状になったコースの法面を使ってジャンプを行うが、ジャンプする前の選手は山状の向こう側からやってくるため、その姿は撮影地からは見ることが出来ない。観客の声援を頼りに向かい来る選手を予想し、ポンっとジャンプして現れる選手にすかさずロックオン。はじめの数カットこそ甘いフォーカシングだったが、3カット目からレンズ手前7〜8mまでの連写は8割ほどの合焦結果を残した。
このカットも「AFロックオン:拡張フレキシブルスポット」を使ったが、主要被写体の最至近となる前輪とフロントフォークに合焦している。
このレンズとAFエリア設定「ロックオンAF:拡張フレキシブルスポット」モードの組み合わせた場合の傾向が見えてきたので、AFエリアの設定項目を「拡張フレキシブルスポット」に変更し、選手の頭が右上に来ることを想定してフォーカスエリアを固定した。
左カーブながら右へとハンドルを切る「逆ハン」で下りを攻めるのは青木卓也選手。この青木選手の通過直前は薄い雲が覆い、辺りがやや暗く露出補正を±0.0EV位置にしていたため、ややオーバー気味の濃度に。おかげでゴーグルの内側に見える瞳をキッチリと捉えることができた。一連のカットを3秒弱で50コマほど撮影したが、合焦率は8〜9割ほどだった。
最後はおまけで、娘の水泳大会でのひとこま。水面から離れること10〜15mほど。2階の観客席から2倍のテレコンバーターを装着し、表情のみを狙った。右の手が水をかき終えて頭を覆う格好を狙ったが、顔が良く見えるこのカットを選んだ。プール中央の照明が集まるエリアの輝度を基準としていたため、サイド側のコースを泳ぐ娘はやや暗くなってしまったが、2倍のテレコンバーター装着でも著しいAF速度の低下はみられなかった。
まとめ
バレーボール、フィギュアスケートなどの室内競技を撮るカメラマンは、400mm F2.8レンズのことを標準レンズと呼ぶことがある。サッカーなど夜間に行われる屋外競技でもそうだ。離れた選手を追うための望遠画角、ファインダーに届く光量、ナイトゲームでの高感度撮影に耐えられる明るさ、そしてテレコンバーターを入れても少ない画質の損失、そんな理由からくる汎用性の高さからだ。
屋外の日中撮影が多い私は、所持こそはしてはいたが、ズームレンズの利便性を選び200-400mmばかりを手持ち撮影で使っていた。
しかし、やはり単焦点レンズのキレ、AFの素早さ、そして何といってもその明るさについては並ぶものはなく、絶対的な存在がこの400mm F2.8と考えている。
そして今回の「FE 400mm F2.8 GM OSS」。3kgを切る軽さからくる取り回しの良さと、単焦点レンズゆえの緻密な描写。いずれも動き物を撮るカメラマンを魅了するレンズに間違いないなく、α9との組み合わせての試写は、あらたな領域へ踏み込んだものと楽しめた。
しかしα9のAFモードをいろいろと試す中で、約20コマ/秒に対応するAF追随がいずれのモードに完璧にあるとは言い難い面もあり、私の要領が悪いだけかもしれないが、各種AFエリア設定や被写体追随設定を見極めるぐらいに、αの、それも「9」を使いこなしていないと宝の持ち腐れになるとも感じた。
テーマは約20コマ/秒でのAF完全追随。どのメーカーもやり遂げていない世界だが、ソニーの挑戦に期待したい。