交換レンズレビュー

SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary

富士フイルムX用が新登場 純正レンズより小型軽量なF2.8標準ズーム

2022年12月にシグマから発売された「SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary(富士フイルムXマウント)」は、APS-Cサイズのミラーレスカメラ用として開発された大口径標準ズーム。2021年10月に、シグマ、ライカ、パナソニックが採用するLマウント用と、ソニーEマウント用として発売された製品に、新たに富士フイルムXマウントが追加されました。

大きな特徴は、F2.8通しの大口径ズームながら、驚くほど小型軽量であること。純正レンズにはない、この「小さな大口径ズーム」のXマウント化を待ち望んでいたユーザーは多いのではないかと思います。

外観デザインと操作性

本レンズの最大径×長さ・質量は、61.6×76.8mm・約285gとなっています。「大口径だけど小型軽量なレンズ」は、フルサイズミラーレスカメラの世界でもトレンドとなっていますが、それにしても小さく軽い。さすがはAPS-Cサイズ専用設計です。

APS-Cサイズ対応としても軽く小さいことは、純正レンズとして愛用者の多い「XF18-55mmF2.8-4 R LM OIS」が、65×70.4mm(最大径×長さ)・約310gであることからも理解できると思います。

レンズ構成は1枚のSLDガラスと3枚の非球面レンズを含んだ10群13枚。フィルター径は55mmとなっています。フィルター径が小さいとフィルターをそろえるのも経済的なのでイイですね。

外装は同クラスのシグマ製レンズ同様に樹脂製となっています。高価なレンズがもつような高級感こそありませんが、安っぽさを感じることもありません。ズームリングの操作感触は上々で、適度な力でスムーズに伸縮させることができます。

ボタンやスイッチの類は一切装備されていません。潔くスマートです

インナーズームではありませんのでテレ側にすると鏡筒が伸長しますが、ズームリングの操作感がなかなか宜しいので快適にズーミングできます。軽い力で動き出し途中からトルクが加わってくるため、目的の位置にセットしやすい。この小さな鏡筒によくぞ精密な機構を仕込んでくれたものだと感心します。

「アルミニウムに近い熱収縮率を持つポリカーボネートを適所に採用し、温度変化のある環境に対しても安定した性能と良好な操作感、軽量化を実現」しているそうですが、実際に試写していても、単なる樹脂製鏡筒のレンズ以上のシッカリ感を感じることができました。

花形フード(LH582-02)が付属します。これも造りがよく、正位置にセットするときも、収納のために逆付けするときも、簡単に正規のポジションを探り当てることができます。斜めに噛んでしまうようなことはありませんでした。

解像性能を確認してみる

ここから描写性能になりますが、まずは解像性能から見ていきたいと思います。

ワイド端18mm(35mm判換算:27mm相当)で撮影したのが下の写真。素晴らしくシャープとはいきませんが、中央付近は本レンズほど小型軽量化に徹底したレンズの開放性能としてはまずまずではないかと思います。周辺部に目を移すとさすがに結像の甘さが見られますが、これもF2.8通しの大口径ズームのワイド端としては普通と言ったところでしょう。絞り込むほどに改善し、F8で最高の解像感が得られるという、セオリー通りの分かりやすい特性でした。

それよりも気になるのが、窓枠のエッジに見られるフリンジ。拡大しないと分からない程度ではありますが、輝度差の大きなシーンでは目についてしまうかも知れません。

FUJIFILM X-H2 SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary(F2.8・1/180秒・18mm)ISO 200

テレ端50mm(35mm判換算:76mm相当)で撮影したのが下の写真。こちらも大口径ズームの開放性能としてはまずまず良好ですが、ワイド端よりも周辺の解像感が高く、画面の均質性という意味では上回っています。ワイド端と同じく絞り込むほどに画質は向上し、F8で素晴らしい解像感を楽しむことができます。

FUJIFILM X-H2 SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary(F2.8・1/200秒・50mm)ISO 125

優れた近接撮影性能

小さい! 以外の、本レンズのもうひとつの特徴が近接撮影性能に優れているところ。

特にワイド端は非常に高く、最短撮影距離は12.1cm、撮影倍率0.35倍を実現しています。最短撮影距離12.1cmというのは、被写体からイメージセンサーまでの距離ですので、レンズ先端はほとんど被写体に衝突しそうなくらい、というよりレンズフードを付けているとリアルに接触してしまう距離になります。撮影しているとついつい知らない間に被写体に寄ってしまうものですので、ワイド端で撮影するときは素直にレンズフードを外すようにしましょう。

FUJIFILM X-H2 SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary(F8・1/40秒・19mm)ISO 400

一方で、テレ端の最短撮影距離は30cm。最大撮影倍率は0.2倍です。あまり大したことがないように感じてしまうかも知れませんが、0.2倍まで寄れれば十分に近接に強いレンズです。圧縮効果や適度なワーキングディスタンスを得られることから、実用的にはこちらを使う機会が多くなるかもしれません。

FUJIFILM X-H2 SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary(F8・1/30秒・50mm)ISO 400

いずれにしても、近接撮影能力の高さは、被写体との距離を気にしなくて済むことが大切だと思います。どこまでも寄れるということは、自分の必要とする撮影距離を自由に選択することができるということになります。

動画撮影への対応

小さく軽い大口径標準ズームですので、Vlogなどの動画撮影に使いたいという場合もあると思います。実際、F2.8通しの大口径標準ズームとは思えない、小型軽量ボディを達成していますので、対応できるジンバルも幅が広くなると思います。

その場合、よく気になるのがズームレンズゆえの、ブリージング(ピント位置の違いによる画角変動)と、AFモーターの駆動音になると思いますが、そこらへん、試してみました。

少なくとも、筆者が試した限りではブリージングにかんしてはほとんど気にならず、AF駆動音に至ってはまったくと言っていいほど気になりませんでした。

いまどきの標準ズームレンズであれば、動画での使用は当然のように考慮しなければならないところですので、ブリージングに関しては設計段階で必須項目とされているようで、本レンズも非常によく補正されています。

AFモーターは、小型レンズでは今や常識となったステッピングモーターを採用していることもあって、これまた非常に静寂で記録したい本来の音を邪魔することなく、なおかつ高速・高精度になっています。

こうしたところは、最新レンズならではの強みと言えますね。

その他、作例より

絞り開放付近では比較的優しい描写が特徴の本レンズだけに、背景ボケは柔らかく美しいです。個人的には、純正レンズは解像性能重視でボケは硬めな傾向と思っていますので、本レンズのボケ味の良さは対照的だと感じました。

FUJIFILM X-H2 SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary(F4・1/150秒・50mm)ISO 125

焦点距離約27mm(35mm判換算:約41mm相当)での撮影。テレ端よりもズーム中間域の方がシャープネス、コントラストとも安定する印象でした。実際のスナップ撮影などでは頻繁に使用する焦点距離ですので、実用性は高いレンズだと思います。

FUJIFILM X-H2 SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary(F4・1/250秒・27mm)ISO 125

輝度差の大きな条件でテレ端最短撮影距離での撮影をしてみました。上述の最短撮影条件では気づきませんでしたが、ピントが合った部分の周辺がわずかにフレアをまとっており、それが柔らかなボケ味と相まって何とも言えない優しさを演出しています。近接撮影によって残存した球面収差が現れたのかもしれませんが、筆者のようにむしろ好ましさを感じる人も多いと思います。

FUJIFILM X-H2 SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary(F2.8・1/220秒・50mm)ISO 125

逆光で、なおかつ、かなり意地悪しての撮影です。この条件では相応にゴーストやフレアが発生しているものの、発生の仕方が素直なので作画に対するコントロールは活かしやすいと思います。無理なく素直な発生がよいです。意地悪しすぎるとゴーストが出現しますが、標準的に見れば、シグマ独自のスーパーマルチレイヤーコートを施しているだけに、現代的に優れた逆光耐性を持ったレンズです。

FUJIFILM X-H2 SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary(F5.6・1/55秒・25mm)ISO 125

バランスの良い優良標準レンズですが、レンズ内の光学式手ブレ補正機構を搭載していないことが、あるいはマイナス要因になるかもしれません。ここら辺は、使用しているカメラが、ボディ内手ブレ補正に対応しているかどうかのせめぎあいになるでしょう。ただ、富士フイルムの最新ラインナップのカメラは、ほとんどがボディ内手ブレ補正を搭載しています。今回使用した「X-H2」の場合、ワイド端18mmでシャッター速度1秒程度なら、それほど苦労せず、ブレのないシャープな画像を撮ることができました。

FUJIFILM X-H2 SIGMA 18-50mm F2.8 DC DN | Contemporary(F4・1秒・18mm)ISO 125

まとめ

本文では、画質について多少ネガティブに受け取られかねないことを述べていますが、それは約4,020万画素の「X-H2」との組み合わせで使用したことで、画像を拡大しての確認が勢い厳しくなったこともあります。本レンズの特徴を考慮するなら、「X-S10」などの小型ボディとの組み合わせが、本来あるべき姿なのかもしれません。

サイズと価格を考えれば十分に優秀な描写性能があるレンズだといえます。画像レタッチソフトで簡単に除去できる程度のわずかなフリンジの発生などもありますが、些細な画質の瑕疵などは、本レンズのもつ優れた特性(小型軽量・大口径・近接撮影性能)から得られる表現力を前にすると、まったくもって許容の範囲内になると思います。

サードパーティー製であることの強みを良く活かしたレンズだな、というのが使ってみて感じた印象です。標準ズームという使用頻度の多いレンズですので、ズーム域や厳密な高画質を賄う意味で、純正レンズと併用するといった活用方法もありだと思います。もちろん、本レンズをメインとして使っても、多くの場合で高い満足感を得ることができるはずです。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。