交換レンズレビュー

SIGMA 60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sports

ミラーレス専用設計の10倍ズーム 一眼レフ用との違いは? 鉄道写真でチェック

2月にシグマから発売される「SIGMA 60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sports」は、フルサイズミラーレスカメラ専用に設計された高倍率超望遠ズームレンズ。シグマには同じ60-600mm F4.5-6.3のスペックを持つ一眼レフ用レンズがあるが、こちらは最新の光学設計、新しい手ブレ補正機構やAFモーターを搭載し、軽量化も実現。現時点ではLマウントとEマウントがラインナップされている。

手持ち撮影ができるサイズ感

最大径×長さは119.4×279.2mm。重量は2,495g。フィルター径は105mm。このレンズを手にしたとき重たさを感じたが、従来の一眼レフ用と比較すると約200g軽量化されている。カメラを取り付けたら重量バランスが良くなり、手持ちでも撮影可能だと感じた。

付属品には105mmのキャップ、リアキャップ、フード、フードのかぶせ式キャップ、レンズソフトケース、ショルダーストラップ、アルカスイスタイプの三脚座が取り付けられている。

アルカスイスタイプの三脚座
鏡筒側面にはズームロックスイッチとAFLボタン。AFLボタンは周囲3か所に搭載されており、好きな機能を割り当てられる

私はスポーツの他に鉄道、飛行機などの乗り物も撮影する。沿線や空港では高倍率ズームレンズを使って撮影している方をよく見かけていたので、最近気になっていたところだった。

私にとって未知の10倍ズームレンズであり、さっそくソニー α1に取り付けて鉄道を撮影してきた。

強力な手ブレ補正

はじめに狙った早朝の新幹線で手ブレ補正のすごさに感動。

焦点距離600mmよりもう少し望遠が欲しかったのでカメラ設定をAPS-C画角の960mm相当に変更。

手持ちでファインダーをのぞいた瞬間、960mmの画角ではフレーミングが安定しなかったが、手ブレ補正モード1を入れてシャッターを半押しすると三脚に装着したかのようにファインダー内のブレがピタリと止まり構図が決まった。

新設計の手ブレ補正機構のアルゴリズム「OS2」では、テレ端で6段分の手ブレ補正が効くので超望遠でも安定したフレーミングを可能にする。

日の出前の暗い状況下でライトをつけて向かってくる新幹線にAFフレームを合わせトラッキングを使いシャッターを押した。シャッタースピード1/125秒でもブレを抑えて狙い通りの写真が撮れた。

ソニー α1 SIGMA 60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sports(F6.3・1/125秒・600mm「APS-C:960mm」)ISO 3200 WB:日陰 OSモード1(東北新幹線・上野〜大宮 6:30)

これで手持ちでも問題ないことを確信し、以降すべて手持ちで撮影した。

ワイド端では7段分の手ブレ補正が効くので三脚などが使えない場所でも手持ち撮影に挑める。

日没直後に撮影した夜景はシャッタースピード1/2秒に設定。焦点距離はワイド端の60mm。単写で44枚撮影した結果、33枚はブレなしで撮れていて手ブレ補正効果を実感した。

ソニー α1 SIGMA 60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sports(F6.3・1/2秒・60mm)ISO 1600 WB:日陰 OSモード1(東急東横線・武蔵小杉〜新丸子 17:37)

手ブレ補正モード2は流し撮り用に開発され、あらゆる角度からレンズを振ったときでも流し撮り効果を損なうことなく安定した撮影が可能となる。

しかし、このモードを使用したからといって誰でも簡単に流し撮りが撮れるということではない。あくまでファインダーを覗いて安定して被写体を追うことができるので、ここからは撮影者の腕の見せ所になるだろう。

ソニー α1/SIGMA 60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sports(F8・1/100秒・258mm) ISO 200 WB:オート OSモード2(東北新幹線・上野〜大宮 10:55)

ズーム全域で高画質

60-600mmの10倍ズームだが、描写力は全ズーム域で均一な高画質が得られた。ソニー α1の高画素とも相まって鉄道車両のディテールから背景まではっきりと写し出されていた。

600mm
ソニー α1 SIGMA 60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sports(F6.3・1/1,250秒・600mm) ISO 250 WB:オート(東海道新幹線・新横浜〜品川 9:53)
60mm
ソニー α1 SIGMA 60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sports(F4.5・1/2,000秒・60mm) ISO 160 WB:太陽光(中央線・立川〜日野 10:04)

また、カメラの周辺光量補正をオートにしていたが開放F値で若干の周辺光量低下がみられた。青空や夕暮れを背景にした撮影などで気になる場合は絞りをF8以上にするとクリアになる。

F4.5
ソニー α1 SIGMA 60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sports(F4.5・1/320秒・60mm)ISO 100 WB:日陰
F8
ソニー α1 SIGMA 60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sports(F8・1/100秒・60mm)ISO 100 WB:日陰

10倍ズームの活用

600mmで撮影すると圧縮効果で列車を大きく引き立たせることができ、60mmではスピード感や列車の長さなどを表現できる。

600mmから60mmまで向かってくる列車にあわせて徐々にズームアウトしながらソニー α1の電子シャッター30コマ/秒で連続撮影した。撮影画像を確認すると、焦点距離が大きく変わった瞬間にピントが甘くなるカットが出たが、1本の列車で多くのバリエーションが撮れるのはこの10倍ズームの利点だろう。

600mm
ソニー α1 SIGMA 60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sports(F6.3・1/1,600秒)ISO 400 WB:オート(東急東横線・田園調布〜多摩川 11:12)以下同
535mm
437mm
328mm
191mm
100mm

ズームの方法にはシグマならではのデュアルアクションズームがある。

基本設計は回転式ズームだが、レンズ先端部(鏡筒部)をつかんで前後に動かすことで直進ズームとしても使える。

60mm
600mm

以前、回転式ズームを使っていて、鏡筒部分をぶつけてしまい、軸がずれてピントの片ボケを起こしてしまうことがあったので、鏡筒部分をつかんでズームするなんて大丈夫なのかと不安があった。しかし、シグマは堅牢性のあるレンズ設計で、このデュアルアクションズームを可能にしたという。

おかげで直感的に列車のすれ違いや並走シーンにも素早くズーム対応ができて使い勝手が良かった。

また動画撮影でも静止画同様に10倍ズーム、高画質、手ブレ補正の効果が十分に発揮される。

ソニー α1 SIGMA 60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sports(F6.3・1/1,000秒・229mm)ISO 500 WB:オート(東北新幹線・大宮〜上野 9:31)

そのほか

そのほか、フレアやゴーストを低減するスーパーマルチレイヤーコートの採用、レンズ表面には水滴が容易に拭き取れる撥水防汚コートの採用、レンズ各部は防塵防滴構造となっている。

ソニー α1 SIGMA 60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sports(F8・1/500秒・197mm)ISO 160 WB:日陰(東急東横線・多摩川〜新丸子 17:43)

AFのモーターは新開発のリニアモーター「HLA(High-response Linear Actuator)」が搭載されている。AFはとても高速で小さな被写体でも正確な追尾を続けてくれた。今回は使用できなかったが、Lマウント用テレコンバーター1.4倍と2倍に対応しているので、2倍をつけると最大1200mmでのAF撮影が可能になるようだ。

ソニー α1 SIGMA 60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sports(F6.3・1/2,000秒・600mm)ISO 320 WB:太陽光

私は鉄道を撮る時はほとんど手持ちなので今回もすべて手持ちで撮影したが、スポーツ撮影などで長時間構える時やズーミングの安定性を重視する時には一脚などを使用したほうが良さそうだ。

撮影を終えて

レンズを数本準備するよりこのレンズ1本で幅広くカバーできるので、超望遠を多用する方には欠かせないレンズだと感じた。高画質、手ブレ補正、デュアルアクションズームなど、鉄道はもちろん、飛行機、スポーツ、動物などの撮影にマッチした機能が充実していて、納得の1本だった。

高橋学

1975年、福島県福島市生まれ。父が新聞社のカメラマンをしていた影響で物心付いたころからカメラが好きになり、父と鉄道などを撮り始めた。高校卒業後は専門学校東京ビジュアルアーツ写真学科でスポーツフォトを専攻。1996年より有限会社ジャパンスポーツでスポーツカメラマンの仕事に就き、実績を重ねてフリーランスへ。現在はフィギュアスケート、フットサル、サッカー、陸上などの様々なスポーツ取材をしている。また、小さいころから好きな鉄道や飛行機なども撮影を続けている。日本スポーツプレス協会、国際スポーツプレス協会会員