イベントレポート
助川康史さんが直伝!Nikon Z 7・Z 6で撮る「冬の鉄道撮影セミナー」
設定から現場テクニックまで 北陸本線・氷見線に挑む
2019年3月4日 07:00
インプレスが運営する写真SNS「GANREF」が主催するニコンZ 7/Z 6の鉄道撮影セミナーが2月16日と17日に開催された。このセミナーは、選ばれたGANREFメンバー8名が機材のレビューを投稿する「注目製品レビュー ニコンZ 7&Z 6」のハイライトといえるイベントだ。
今回のセミナーは鉄道写真家の助川康史さんを講師に迎え、福井県と富山県で鉄道写真を学ぶ1泊2日のツアーとなっている。撮影についてのアドバイスはもちろん、自分の作品の講評も受けられ、最新のカメラを使って写真の腕を磨ける趣旨だ。
Z 7とZ 6ボディと超望遠レンズが貸し出される
本セミナーに合わせて、メンバーにはZ 7およびZ 6、希望する交換レンズが無償で貸し出されている。応募資格はGANREFのメンバーランクがGOLD以上で、審査の上で採用メンバーが決定した。メンバーの試用カメラはZ 7とZ 6が4名づつ。全員に標準ズームレンズのNIKKOR Z 24-70mm f/4 SとマウントアダプターFTZが用意された。
他にメンバーが選んだレンズはZマウントがNIKKOR Z 35mm f/1.8 S、NIKKOR Z 50mm f/1.8 S。Fマウントレンズは超広角のAF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G EDなどのほか、鉄道撮影とあって望遠ズームレンズのAF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VRやAF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VRが選ばれていた。また撮影地では希望者にAF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VRも貸し出された。
レビューの期間は2月9日~3月15日。この間、GANREFには参加メンバーからのレポートが続々と投稿されている。ぜひそちらで最新機種の使用感や作品をご覧いただきたい。
※GANREFページリンク
・参加者の作品、レビュー、撮影記はこちら
・参加者によるZ 7/Z 6のオリジナルレビューはこちら
プロの設定方法を伝授
初日は福井県あわら市の中央公民館に13時集合。ここからスタートとなった。まずは座学として助川さんから鉄道写真の撮り方やカメラの設定方法の説明があった。
Z 7とZ 6はいずれもニコンZマウントを採用する35mmフルサイズのミラーレスカメラだ。2機種の大きな違いは画素数で、Z 7が有効4,575万画素、Z 6が2,450万画素となっている。特にZ 6は最大約12コマ/秒の高速連写が可能で、鉄道撮影にうってつけの機種といえる。
助川さんからのアドバイスとしては列車の編成写真では、「コンティニュアスAFサーボ」(AF-C)による連写が推奨された。これは動体を捉え続けるAF機能で昔からあるものだが、新たなアルゴリズムの投入などもあり、Z 7/Z 6では飛躍的に性能が向上しているそうだ。
鉄道写真ではしばしば「置きピンが」使われるが、超望遠レンズなどで被写界深度が浅い場合にはコンティニュアスAFサーボのほうが正確なピントを得やすいそうだ。その上で、Zシリーズに搭載されたオートエリアAFのなかの「追尾AF」を使うと列車を自動的に追い続けてくれる。
助川さんは普段の仕事でもZシリーズを使っており、こうしたAF機能を活用しているそうだ。プロが実際に現場で使っている方法なのだから試さない手は無い。助川さんも「特筆すべき便利な機能」と絶賛していた。
また、いわゆる「親指AF」もぜひ使って欲しいとのことだった。親指AFとはシャッターボタンの半押しによるAFを無効とし、背面にある「AF-ON」ボタンを押すことでAFが起動する方法だ。流し撮りなどのピント位置を固定した撮影で、シャッターボタンを押したときにAFが毎回動いて結果的にピンボケになってしまうことなどが防げる。
その他にも「助川オリジナル設定」としてカスタムボタンの割り当て例や「iメニュー」の設定例を披露した。
また鉄道写真の構図として、画面を4分割したた各四角の中心に列車を配置するとバランスが良くなるといった作画上のアドバイスもあった。
その後は、今回のセミナーで訪れる撮影ポイントでお手本となる作品が登場。参加者の撮影意欲も高まっていったのではないかと思う。
鉄道写真のセミナーといえば普段から鉄道を撮影してる人が集まると思うが、今回の参加者の多くは鉄道写真を撮るのはほとんど初めてという顔ぶれ。それだけに、普段はAF-Cやターゲット追尾、高速連写などを使わないという人も少なくない。しかし、セミナーが進んでいくにつれてこれらの機能が非常に有用であることを実感していったようである。
撮影1日目:北陸本線沿いを撮影
まず向かったのは、北陸本線の細呂木駅付近。この場所は見通しの良いゆるいカーブがあり、いわゆる編成写真が撮りやすい。助川さんによると望遠レンズで、AF-Cの動体追尾AFで連写するのがおすすめとのこと。
ZシリーズはAFの食い付きも良いため、必要以上に絞り込んで被写界深度を稼ぐ必要は無く、その分シャッター速度は1/1,000秒以上を確保した方が良いそうだ。
筆者も参加者に交じってZ 6による撮影を体験することにした。筆者は本格的な鉄道写真をほとんど撮影したことがないが、助川さんの指導のもと、最終的にはいくつか良さそうな写真を残すことができた。
細呂木駅付近での撮影では、画面に対する列車の大きさを予測できずフレームからはみ出してしまったが、超望遠での撮影にもかかわらずAF-Cの連写でぴたりと車体に合焦。ZシリーズのAF性能の高さをまざまざと見せつけられた。
続いては同じ路線の芦原温泉駅と丸岡駅間の歩道で流し撮りとなった。この付近は田畑が広がっているため線路に対して遮るものがほとんど無く、列車に並行して流し撮りできるポイントだ。
ここではAF-Sに設定して、置きピンでの撮影となる。流し撮りは三脚を使うと撮影しやすいとのことで参加者は三脚を使用。その際三脚の水平がきちんととれていることが大切だそうだ。というのは、3ウェイ雲台でパンをフリーにした状態でカメラを振った際に水平が取れていないと斜めにカメラが動いてしまうためだ。
筆者の用意した三脚は自由雲台だったためカメラを振るのに苦労したが、何枚かは車体を止めて写すことができた。これは連写で「数打てば当たる」ということなのだろう。まさに高速連写の恩恵にあずかった1枚となった。
ここで助川さんは、ニコンのドットサイトDF-M1をカメラに装着していた。ドットサイトというと野鳥撮影などのイメージがあるが、超望遠レンズで列車を追いかける場合はファインダーで見るよりも良い結果が得られるそうだ。鉄道に限らず動きモノの撮影で利用したくなるアイテムである。
初日の最後となったのは同じエリア。既にあたりは暗くなっており、列車の明かりを活かした流し撮りができるタイミングだ。
ここでは先程よりも線路まで距離があるため、助川さんからは広角レンズで周りの景色や空を広く入れた構図の提案があった。この時色温度を4,000~4,500K程度に設定すると青みがかった雰囲気で撮れるのでおすすめとのこと。24-70mmのレンズで撮る場合はシャッター速度1/8〜1/15秒程度が適するそうだ。
筆者はZ 6の約12コマ/秒の連写で流し撮りをした。ここでも多くは列車がブレていたが、やはり数枚はきちんと止まっている写真があった。筆者のように鉄道写真のビギナーでもこの連写速度には大いに助けられるでのはないかと感じた。
初日の撮影はこれで終了。レストランでの夕食となった。助川さんを囲んでメンバーから質問も多く飛び交ったほか、メンバー同士での情報交換も活発だった。こうしたところでざっくばらんにカメラや写真の話を楽しめるのもこのセミナーの魅力といえそうだ。
夕食後はバスに乗り、富山県の高岡市まで移動。市内のホテルに1泊した。
撮影2日目:氷見線→金屋町
日の出を絡めた鉄道風景を狙うため5時にホテルを出発。バスで雨晴海岸に向かい氷見線の列車の撮影に挑んだ。
この場所からは晴れていれば立山連峰をバックに撮ることができたのだが、当日はあいにくの雪で遠景は望めなかった。その代わり雪を取り入れた作品を撮ることができた。また海上にある女岩という岩も効果的に取り入れることができるスポットである。
助川さんからは長時間露光をすると列車の光跡と滑らかな海面が撮れるといったアドバイスがあった。また暗いときは列車のヘッドライトの明かりを撮るだけでも立派な鉄道写真になるとのことだった。
セミナーもこの頃になると、最初に助川さんがレクチャーした追尾AFと高速連写の合わせ技で成果を挙げる参加者も増えてきた。編成写真での追尾AFはカメラを動かさないのがポイント。多くの参加者(筆者も)は最初はカメラで列車を追ってしまったが、これだと列車の先頭が画面の中心あたりに来て構図が良くない。自動的に追尾してくれるわけだから、カメラは三脚に固定しておけば良いのである。
筆者も長時間露光にチャレンジし、向かってくる列車のヘッドライトを光跡として写してみた。露光時間は20秒で、光が反射する滑らかな海面も捉えることができた。
その後朝食をとり、再び雨晴海岸の高台部分に戻ってきた。この場所からは氷見線の列車を見下ろす形で海や女岩と一緒に撮影できる。この頃には雪も止み青空が広がっていた。
ここでの助川さんのアドバイスはピクチャーコントロールを「ビビッド」にするというもの。ピクチャーコントロールの「風景」に対してコントラストを上げることなく彩度のみが上がって好ましいということだ。また、アクティブ-Dライティングを「弱め」か「標準」にしておくと斜体の影になる部分も明るく描写できるそうだ。
筆者もそれに従って撮影してみた。露出が少々オーバーだったのと編成のうち最初の車両しかフレームに収まらなかったのが心残りだが、車両の細かい文字、敷石のひとつひとつ、奥に見える女岩の木の枝などがくっきりと写っておりレンズの描写力も申し分ないと思った。
ここで助川さんは、手持ちのハイアングルで液晶モニターを見ながら撮影していた。人が多い場所ではチルト式液晶モニターの活用が便利なようだ。この場合は、電子水準器を表示させた状態で水平が傾かないようにするのがコツだそうだ。
続いては古い街並みで知られる高岡市の金屋町を訪れた。本来は北陸新幹線を狙える場所が予定されていたが、また天候が悪くなってしまい視程が確保できないことからスナップ撮影に変更となった。
ここは自由行動ということで、メンバーは一時鉄道写真から離れて思い思いに町屋の風景をカメラに収めていた。
古い街並みの通りから少し歩いたところには路面電車が走っており、一部のメンバーは路面電車の撮影を行った。
かなり離れた場所から400mm、500mmといった超望遠域で圧縮効果を活用して撮影するのがおすすめとのこと。天候としては曇りだが、助川さんは色温度を「晴天日陰」に設定することで落ち着いた雰囲気の写真にできることを教えてくれた。
筆者も400mmでチャレンジし、手前の横断歩道を渡る人を絡めた写真を撮ることができた。
また、同じ交差点のところでは助川さんが露光間ズームのやり方を説明。これを実践したメンバーも。
一方筆者は追尾AFの連写による撮影にリベンジすべく、近距離から向かってくる路面電車を狙った。今度はパンタグラフも含めて車両が切れること無くフレームに収まった。カーブという動きだがしっかりピントは合焦していた。
今回の撮影はここまでで終了。昼食後は講評会に移った。
もっとカメラを使いこなそう
高岡文化ホールで行われた講評会では各自2点を選び、エプソンのインクジェットプリンターEP-10VAでA3サイズにプリント。1人ずつ作品の狙いを説明し、助川さんが講評した。
参加者の作品は独自の視点で捉えたものも多く、助川さんが「今まで見たことの無い構図」と評す作品もあった。また流し撮りでピタッと止まっている写真など助川さんが「これは完璧」と感心した作品もいくつかあった。
一方、こうした方がもっとよくなるという的確なアドバイスも受けることができ、「フレームに余計なスペースがあるのでもっと踏み込んで切り取った方が良い」というアドバイスを受ける作品が少なくなかった。また、画面内の列車の位置については、列車の頭がフレームの端ギリギリに来ている作品が多かったので、もう少し余裕を持たせることも大切だと話した。
総じて参加者はZシリーズの機能を大いに活用して良い作品に仕上げているのが印象に残った。昨今のカメラは非常に多機能になっているが、十分使いこなせていない人も多いのではないだろうか。
折角の最新機種も単に高画素の恩恵だけではもったいない面もある。自分が気に留めていなかった機能をもう一度見直して活用してみると、カメラもさらに活き、ひいては良い作品に繋がると思う。実際に参加者も、普段使っていない多くの機能を学ぶ良い機会になったようだ。鉄道写真以外でもこのセミナーで初めて知ったカメラの使い方を大いに活用できることと思う。筆者自身、機材の使いこなしの重要性を痛感した2日間だった。
イベントに参加したGANREFメンバーのレビューはこちらです
ニコン Z 7&Z 6 | 注目製品レビュー | GANREF
https://ganref.jp/common/monitor/nikon/z7_z6/
制作協力:株式会社ニコンイメージングジャパン