特別企画

8名のGANREFメンバーが挑む!Nikon Z 7II/Z 6II「注目製品レビュー」スタートしました

まずは助川康史さんのレクチャー&次回の課題発表

GANREFで公開中の「注目製品レビュー ニコンZ 7 II & Z 6 II」。このページに参加者のレビューが集積されていくので更新をお楽しみに!

弊社インプレスが運営する写真SNS「GANREF」における「注目製品レビュー ニコンZ 7II/Z 6II」の一環として、オンラインセミナーが1月30日に開催された。本セミナーはGANREFメンバー8名がレビュワーとなり、実際の撮影を通してNikon Z 7II/Z 6IIの魅力を発信する企画だ。

当初、実地での撮影イベントを予定していたが、新型コロナウィルス感染症の影響もあり、オンラインセミナーというかたちに切り替えての開催となった。

講師はGANREFの鉄道写真セミナーでおなじみの鉄道写真家・助川康史さん。2019年におこなわれたNikon Z 7/Z 6の撮影セミナーでも講師を務めていただいている。

鉄道写真家の助川康史さん
セミナーはオンラインでおこなわれた。このセミナーをもとに提出する作品を各自が撮影する

この企画は以下の3回に分けての開催となる。

1)キックオフセミナー(1月30日)
・Nikon Z 7II/Z 6IIについて
・講評会に向けての撮影テーマの発表と参考情報

2)講評会1(2月11日)
・メンバーが撮影した作品を講評

3)講評会2(3月6日)
・同上

この期間、8名のメンバーは自分のGANREFページにおいて、Nikon Z 7II/Z 6IIについてのレビューを綴りつつ、最後の講評会2に向けて撮影を続けるという趣向だ。メンバーによるレビューは下記のページにまとめられている。

初回となる今回のキックオフセミナーでは、鉄道写真の基本的なセオリーからNikon Z 7II/Z 6IIを使いこなしての応用撮影編まで幅広いテクニックが伝授された。

超広角や大口径望遠ズームレンズが人気

本企画に先立ち、参加者にはNikon Z 7II/Z 6IIをはじめ、希望するレンズ、テレコンバーターやパワーバッテリーパックなどのアクセサリーが事前に貸し出された。

使用ボディはNikon Z 7II、Nikon Z 6IIそれぞれ4名ずつ。

Nikon Z 7II

貸し出し希望の多かったNIKKOR Zレンズは、NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S、NIKKOR Z 70-200mm f/2.8 VR Sなど。NIKKOR Z 50mm f/1.2 SやNIKKOR Z 85mm f/1.8 Sといった単焦点レンズの希望も複数あった。

NIKKOR Zレンズは全9種類が貸し出されたが、一方で、参加者からはマウントアダプターを介して使えるNIKKOR Fレンズも注目されており、焦点距離のレンジでいえばAF-S Fisheye NIKKOR 8-15mm f/3.5-4.5E EDからAF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VRまで14種類が渡された。

また参加者はSlackの専用ワークスペースで助川さんやニコンイメージングジャパンの担当者に質問でき、より製品への理解を深められるようになっている。またSlackではフリートークによって参加者同士の交流も行われる。

参加者の多くは一眼レフユーザーで、ミラーレスカメラに興味はあるが使うのは初めてという人も。鉄道撮影などの動体撮影は従来、ミラーレスカメラよりも一眼レフカメラのほうが得意とされていた分野。そのため、Nikon Z 7II/Z 6IIがどれほど鉄道写真で通用するのかを確かめたいということだった。

Nikon Z 7II/Z 6IIの進化点

キックオフセミナーの冒頭、助川さんからNikon Z 7II/Z 6IIの進化点について説明があった。

「見た目もほとんど同じなので、あまり従来機と変わっていないように思われるかもしれないが、激変しているのを実感している。スペック表に現れない部分の性能アップを紹介したい」と挨拶。

「画素数や基本的な画づくりは変わっていないが、ダイナミックレンジの広さは業界でもトップクラスで、14bit RAWの優れた階調が発揮されています。特にシャドウ部がしっかり出るのがニコンの良さで、それが両機種のベースにみられます」(助川さん)

撮影性能の面では、両機種で新AFアルゴリズムの採用によるAF精度の向上を実感しているとのことだ。また、瞳AFがワイドエリアAFにも対応し、よりピンポイントで被写体に合焦できるようになった。動物の瞳AFに対応したことで、生き物にも強くなっている。

そして、Nikon Z 6IIについてはフォーカルプレーンシャターによる業界最速の連写(条件により最大約14コマ/秒)が可能になった。電子シャッターで生じやすいローリング歪みがフォーカルプレーンシャッターでは現れないため、この特徴は今回の企画のテーマである鉄道写真にも適している。JPEG FINE、ロスレス圧縮RAW/12bitともに200コマという連続撮影コマ数の多さも連写におけるポイントだろう。

「細かい部分がかなり改善されて、ストレスが少なくなった。快適さの新境地といって良い。まさにストレスフリーのカメラです」(助川さん)

両機種を評価。実際、助川さんは普段の仕事の撮影で、Nikon Z 7II/Z 6IIを常用しているそうだ。

Nikon Z 7II/Z 6IIを鉄道写真撮影に活かす

助川さんはまず、Nikon Z 7IIで撮影した作品を示し、その高精細な写りを披露した。

「基本的にはNikon Z 7と同じ画質だが、等倍で見ても高い画質を持っています。それはニコンのレンズを活かせるボディだということ。NIKKOR ZレンズとNikon Z 7II、どちらも解像力は大変なもの。レンズが良くないとだめで、総合力があるということです」(助川さん)

そのNIKKOR Zレンズについて助川さんは……、

「大三元レンズは大口径なので収差が発生しやすいが、解像力に優れ、葉っぱまでしっかり写る。広角レンズや標準レンズが、特にミラーレス用になって画質が大幅に上がっている。周辺画質も改善されているので、列車を画面の端に置くことが多い私としては助かっている」(助川さん)

作品を見ると、列車はもとより周りの情景まで鮮明に写っていることがわかる。たとえば宗谷本線を引きで捉えた作品は、葉っぱの雪の付き具合まで確認できるほどだ。

助川さんが特に気に入っているレンズがNIKKOR Z 14-24mm f/2.8 Sだそう。列車の撮影では高速シャッターを切るため、絞り込まなくても周辺部まで優れた画質が得られるのが良いとのことだ。

続いてはNikon Z 6IIのメリットについて。

「Nikon Z 6IIは連写が速いので、編成写真がしっかり撮れます。2倍のテレコンバーターをつけても、画質やAF速度に問題はありませんでした。機材を少なくしたいときは、70-200mmにテレコンバーターをつけるというのも手でしょう。テレコンバーターの性能は高く、雨中の新幹線といった悪条件でもしっかり合焦してくれますよ」(助川さん)

次に、Nikon Z 7II/Z 6IIにおけるAFについてより詳しい説明があった。

AFに関しては、先代では少し不安定な部分があったとのことだが、それが改善されて安定性が高まったという。

フォーカスモードを「AF-C」、AFエリアを「オートエリアAF」にする。そのうえで、マルチセレクトダイヤルの「OK」ボタンを押すとターゲット追尾AFの枠が出る。近づいてくる列車を確実に追従する上、大量の連写によってベストな1枚を確保できる。

下に埋め込んだ動画は、助川さんが撮影中の様子を録画したものだ。

「その際、列車が遠い位置から追尾を開始できるようにAF枠を設定することで、レリーズ前にAFが十分食いつく時間を確保します。これによって、より追従性が増すのです。像面AFは横線の模様に弱いので、縦線や連結器を狙うと良いでしょう」(助川さん)

以上は主に斜めに動いている列車に有効で、直線的にこちらに向かってくる列車の場合は、オートエリアAFによる自動選択がよいという。

一方、風景の中に列車が小さく入るような鉄道風景写真や、真横から狙う流し撮りはAF-Sで置きピンが推奨された。その時は最高速の連写に設定して、後から良いものを選ぶほうが現在では楽なのではないかとのことだ。

下の新幹線はNikon Z 6IIを置きピンの約14コマ/秒で撮影。ほぼ最高速で走っている区間だが、フォーカルプレーンシャッターで歪みなく捉えられている。

次の浜名湖の新幹線も同様の設定で撮影された。この部分も最高速区間だそうだが、ベストなタイミングで撮影ができたとのこと。

なお、Nikon Z 7II/Z 6IIで最速となる高速連続撮影(拡張)にするためには、JPEGはそのままでよいが、RAWは12bitにする必要がある。その際AF-S、AF-Cともシングルポイントになるので、先に触れたとおり置きピンを併用するがテクニックの1つだ。より多くの枚数を記録したほうが、例えば支柱にかかっていない列車のカットを選べる。

そして助川さんは、EVFの性能向上にも触れた。

「先代はEVFのタイムラグのせいで、オプションのドットサイトが必要でした。今回、フレームレートが増えたので、光学ファインダーの感覚で撮れるようになって驚きました。これもスペック表に現れない1つの例。かなり一眼レフに近づいてきたという印象です」(助川さん)

下の作品はズーム流し撮りと呼ばれるテクニックで撮影したもの。これもEVFの性能が良くなったため、撮りやすくなったそうだ。EVFの視認性向上が表現力を広げた例だと紹介していた。

なお、助川さんはメニューのショートカット機能であるiメニューを下のようにカスタマイズして、鉄道撮影で使いやすくしている。

撮影の設定と流し撮り

引き続いての第2部では、より実践的な鉄道写真の撮り方がレクチャーされた。

まずは鉄道写真でも基本となる編成写真からだ。一見すると鉄道写真は、通り過ぎる列車をそのまま写しているように思える。が、助川さんはさまざまなセオリーが存在することを紹介。背景の処理や列車の左右の間隔など気をつける部分を説明した。

このような編成写真では、望遠レンズで列車の正面を長い間捉えられる場合はAF-Cを、標準レンズを使っていてAFエリアをすぐ列車が通過してしまうようなケースではAF-Sで置きピンがおすすめとのことだ。いずれの場合も、高速シャッターを切るのが重要だそうだ。

そして、昨今人気がある鉄道風景写真をより印象的にする画面構成についてもアドバイスがあった。

1つは「日の丸4連構図」と名付けられたもので、画面を4等分したそれぞれのいずれかの中央部に列車を配置するというもの。列車以外はすべて風景にするのがポイントだ。

もう1つは「対角線構図」で、主題と副題を対角線に配置する方法。下の作品では釣り人と列車を対角線に配置している。主題となる釣り人にAF-Sでピントを合わせ、絞り込むことで列車も被写界深度に入れてある。

次は難易度が高いとされる流し撮りのレクチャーとなった。

「列車をしっかり止めて写すことが必要で、練習が必要。まずは1/60秒で試すのがおすすめです。適度な流れ方を自分の感覚として持てるようになるとよいです」(助川さん)

注意点としては、列車の顔が画面の中央に来ないようにすること。列車の顔は画面の端にすることでバランスが良くなる。連写する際は、被写体の動きがほぼリアルタイムでわかる「高速連続撮影モード」(約5.5コマ/秒)が使いやすいとのこと。

そして撮影レクチャーの最後では、鉄道イメージ写真の紹介があった。これは、編成写真のように列車をすべて写したり決まった構図があるものではなく、自由に鉄道のイメージを表現した作品のことだ。

「ルールはなく、表現したいように撮ると良い。鉄道を匂わせるものがあれば良いので、列車が写っていなくてもよいのです」

たとえば下の新幹線の作品は1/8秒というスローシャッターで撮影されているが、大きなブレが疾走感をもたらす1枚になっていた。

メンバーに告げられたお題とは……

セミナーの最後には、各参加者への撮影課題が助川さんから伝えられた。お題は「AF-Cを活用した編成写真」。参加者の地元で撮影できるよう、助川さんが予め撮影ポイントを選定し、その場所で撮影した作品や地図とともに紹介した。

また、その場所で撮影する際のカメラの設定、列車種別、適した時間帯、安全上の注意点なども併せて伝えられた。「今回の撮影では、Z 7II/Z 6IIのAF-Cの性能の高さをぜひ実感してほしい」と助川さん。参加者からはどんなレンズが適しているのかといった質問もあり、助川さんが丁寧に回答していた。

参加者はこのお題に沿って撮影をおこない、その作品を講評会に提出する。その模様は別の記事でお伝えしたい。

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。