イベントレポート

日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開

「占領下の日本のカメラ」「二眼レフA~Zの時代」など約200点を展示

日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開

東京・半蔵門の日本カメラ博物館は、特別展「世界を制した日本のカメラ ~もうひとつの日本カメラ史~」を2017年10月24日から2018年2月18日まで開催する。

日本カメラ博物館の所在地は、東京都千代田区一番町25番地 JCII一番町ビル地下1階。入場料は一般300円(中学生以下無料)。開館時間は10時〜17時。休館日は毎週月曜(12月25日は開館)、年末年始(12月28日〜2018年1月4日)。

日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開

カメラ技術の発展に寄与したカメラ、時代や流行を反映したカメラ、一時代を築いた知られざるカメラの数々を展示紹介する趣旨。戦中のカメラ作りを起点に、輸出産業の花形として日本の戦後復興を支えた時代を経て、現在までに登場した約200点を展示する。同館ならではの多角的な分類整理により、日本のカメラの歴史に新たな一面を発見できるとしている。ここでは盛りだくさんの展示のうち、ごく一部を紹介する。

日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開 国産最初の35mm小型精密カメラ「ハンザキヤノン」。レンズと距離計を日本光学工業が製造しており、品川のニコンミュージアムにも新たに収蔵されている。
国産最初の35mm小型精密カメラ「ハンザキヤノン」。レンズと距離計を日本光学工業が製造しており、品川のニコンミュージアムにも新たに収蔵されている。
日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開 今回の特別展は来場者の写真撮影が許されており、嬉しいところ。
今回の特別展は来場者の写真撮影が許されており、嬉しいところ。

占領下の日本では1947年から1949年まで、輸出品に「Made in Occupied Japan」(占領下の日本製)と表示するよう管理されていた。また、米軍基地などに出荷されたカメラなど、物品税の免税を意味する刻印にもバリエーションが見られる。

日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開 コニカI(1948年)の軍艦部には、大きくMade in Occupied Japanの刻印がある
コニカI(1948年)の軍艦部には、大きくMade in Occupied Japanの刻印がある
日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開 このレオタックスDIII(1947年)は、巻き上げノブに刻印がある。中央購買局(CPO)からの発注である旨が、なんとカタカナで刻印されている。
このレオタックスDIII(1947年)は、巻き上げノブに刻印がある。中央購買局(CPO)からの発注である旨が、なんとカタカナで刻印されている。
日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開 沖縄が米軍に占領されていたことを示す「Product of Ryukyu Island」の刻印(1960年製のペトリコンパクトE)。栗林写真工業は1959年に沖縄に工場を開設したとされている。
沖縄が米軍に占領されていたことを示す「Product of Ryukyu Island」の刻印(1960年製のペトリコンパクトE)。栗林写真工業は1959年に沖縄に工場を開設したとされている。
日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開 さまざまな「Made in Occupied Japan」
さまざまな「Made in Occupied Japan」
日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開 ペタル光学の「ペタル」(1948年)
ペタル光学の「ペタル」(1948年)
日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開 ノリタケが戦争により品質を維持できないと判断し、1945年から1948年まで使用した「ローズチャイナ」ブランドの表記
ノリタケが戦争により品質を維持できないと判断し、1945年から1948年まで使用した「ローズチャイナ」ブランドの表記
日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開 製造台数が50台ともいわれる希少な二眼レフ「ヤルー」と、タレント萩本欽一氏の父である萩本団次氏が経営していた萩本商会が販売した「ダン35 II」。
製造台数が50台ともいわれる希少な二眼レフ「ヤルー」と、タレント萩本欽一氏の父である萩本団次氏が経営していた萩本商会が販売した「ダン35 II」。

日本カメラ博物館を運営する日本カメラ財団(JCII)は、国産カメラの品質向上を目指して輸出検査を行う日本写真機検査協会として1954年に設立。1989年に日本カメラ博物館を開き、1999年に財団法人 日本カメラ財団、2012年に一般財団法人 日本カメラ財団となった。輸出された国産のカメラや交換レンズを里帰りさせると「PASSED」と書かれた金色の楕円シール(輸出検査合格証票)が貼られていることがあるが、その検査を行っていたのがJCIIである。

日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開 輸出検査に使われた機材。
輸出検査に使われた機材。
日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開 JCIIの刻印やダイモテープが残っている。
JCIIの刻印やダイモテープが残っている。
日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開 PASSEDシールを貼られたカメラ達。
PASSEDシールを貼られたカメラ達。

また、様々な事情で名称が変更されたカメラについても知ることができる。

日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開 ミノルタαの海外名「MAXXUM」(マクサム)について、Xが重なるロゴにエクソンモービルからクレームがついたという。
ミノルタαの海外名「MAXXUM」(マクサム)について、Xが重なるロゴにエクソンモービルからクレームがついたという。
日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開 オリンパスOM-1とニコンFは、それぞれ「M-1」と「Nikon」に他社からクレームがつき、名称変更した経緯がある。背後に並ぶカメラは……
オリンパスOM-1とニコンFは、それぞれ「M-1」と「Nikon」に他社からクレームがつき、名称変更した経緯がある。背後に並ぶカメラは……
日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開 海外販社の名前が付いたカメラ達。モノによっては中古市場での価値が高まる。
海外販社の名前が付いたカメラ達。モノによっては中古市場での価値が高まる。
日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開 こちらはクレームというレベルではなく、法的にアウトな不正商標。
こちらはクレームというレベルではなく、法的にアウトな不正商標。
日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開 キヤノンEOSと誤認されることを期待したであろうカメラ。誇らしげな「FOCUS FREE」(おそらく固定焦点のパンフォーカス)の文字が、「EOS=キヤノンが満を持して投入したAF一眼レフ」という個性をガン無視していてなんとも言えない。
キヤノンEOSと誤認されることを期待したであろうカメラ。誇らしげな「FOCUS FREE」(おそらく固定焦点のパンフォーカス)の文字が、「EOS=キヤノンが満を持して投入したAF一眼レフ」という個性をガン無視していてなんとも言えない。
日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開 一歩先回り(?)して、JCIIの検査合格シールを模倣したカメラまで。
一歩先回り(?)して、JCIIの検査合格シールを模倣したカメラまで。
日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開 カラー印画を簡単に得ることを目指した「フォトクローム」。登場の経緯から置き時計のようなボディ形状まで不可思議な点が多く、謎が謎(と一部のマニア)を呼んでいる。
カラー印画を簡単に得ることを目指した「フォトクローム」。登場の経緯から置き時計のようなボディ形状まで不可思議な点が多く、謎が謎(と一部のマニア)を呼んでいる。
日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開 色とりどりのカメラが並ぶコーナーより、ゴールドのカメラ達。
色とりどりのカメラが並ぶコーナーより、ゴールドのカメラ達。
日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開 電気機関車をイメージしたカラーリングの「ペンタックス67 II 61 Limited」。
電気機関車をイメージしたカラーリングの「ペンタックス67 II 61 Limited」。
日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開 ディスクカメラ「クレージュAC101」(1983年)。取扱説明書とともに「撮られ方のテクニック」という冊子が付属している。
ディスクカメラ「クレージュAC101」(1983年)。取扱説明書とともに「撮られ方のテクニック」という冊子が付属している。
日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開 「カメラのジンクス」コーナーに
「カメラのジンクス」コーナーに"複合商品は売れない"の例として並ぶ、興和のラメラと松下電器産業の"ラジカメ"ことC-R1。のちに静止画&動画のハイブリッドでパナソニックLUMIXが地位を築いたことを鑑みると、感慨深いものがあるかもしれない。
日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開 A〜Zまで全ての頭文字が揃うと言われた、戦後の二眼レフカメラ。本特別展の図録解説によると、実際のところは国産だとJ、U、Xが足りなかったとのこと。
A〜Zまで全ての頭文字が揃うと言われた、戦後の二眼レフカメラ。本特別展の図録解説によると、実際のところは国産だとJ、U、Xが足りなかったとのこと。
日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開 神保町の老舗店「カメラ太陽堂」(2013年休業)と縁のある、太陽堂光機のビューティフレックスIII。
神保町の老舗店「カメラ太陽堂」(2013年休業)と縁のある、太陽堂光機のビューティフレックスIII。

今回の特別展に合わせ、元月刊「写真工業」(休刊中)編集長である日本カメラ博物館運営員の市川泰憲さんが、2017年11月18日(土)と2018年1月21日(日)に講演会を行う。

日本カメラ博物館、特別展「世界を制した日本のカメラ」を報道公開 日本カメラ博物館運営員の市川泰憲さん
日本カメラ博物館運営員の市川泰憲さん

報道公開で挨拶した市川さんは、「講演会に向けて膨大な資料があり、面白い話を提供できるのではないかと思う。1970年以降については、自分が業界で見聞きしたことを主体に話したい。時が経った今だから話せることもあるかもしれない」と予告した。

本誌:鈴木誠