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ハンザ・キヤノン、アサヒフレックスI型、ニコンFが国立科学博物館の「未来技術遺産」に登録

ハンザ・キヤノン。日本カメラ博物館にて編集部撮影

独立行政法人 国立科学博物館は9月3日、「重要科学技術史資料」(愛称:未来技術遺産)として新たに26件を登録したと発表。本稿ではそのうち小型精密カメラ3件についてお届けする。

重要科学技術史資料は、科学技術を担ってきた先人たちの経験を次世代に継承していくことを目的とする登録制度。2008年から実施している。

なお、9月10日(火)から9月23日(月・祝)にかけ、国立科学博物館 日本館1階の中央ホールにてパネル展示(一部実物資料を展示)を行うという。

カメラ3機種の選定理由などは次の通り(登録番号順)。

ハンザ・キヤノン(製作・初出1935年)

製作社:精機光学研究所(現:キヤノン株式会社)
所在地:一般財団法人 日本カメラ財団 日本カメラ博物館

選定理由(引用):
国産初の35mmフォーカルプレーンシャッター搭載レンジファインダーカメラである。単なるライカの模倣に終わることなく、独自のレンズマウントを採用し、また、フィルムカウンターを前面に配置、独創的な飛び出し式ファインダーを備えるなど、国産小型精密カメラ開発の嚆矢となった記念碑的な製品として重要である。

アサヒフレックスI型(製作年不明。初出1952年)

製作社:旭光学工業株式会社(現:リコーイメージング株式会社)
所在地:一般財団法人 日本カメラ財団 日本カメラ博物館

アサヒフレックスI型。日本カメラ博物館にて編集部撮影

選定理由(引用):
国産初の35mm一眼レフカメラである。独自のねじマウントによりレンズ交換が可能である。一眼レフの大きな欠点の一つは露出後のファインダー像消失(ブラックアウト)であるが、シャッターボタンを押すとミラーが上昇して露出を行い、シャッターボタンを離すとミラーが戻りブラックアウトが解消されるエバーリターンミラー機能を搭載した。この機構はその後シャッターボタンを押すだけでミラー上昇、露出、ミラー復帰という一連の動作を行い、ブラックアウトを解決する本格的なクイックリターンミラーの開発につながり、一眼レフをカメラの主流に導く原動力となった。 日本が世界を席巻した一眼レフカメラを独自技術で製品化した最初の機種として重要である。

ニコンF(製作・初出1959年)

製作社:日本光学工業株式会社(現:株式会社ニコン)
所在地:株式会社ニコン ニコンミュージアム

ニコンF。ニコンミュージアムにて編集部撮影

選定理由(引用):
機能、品質面及びシステム性により、国産カメラの評価を世界的に高めた一眼レフカメラである。先進的なレンズマウント、クイックリターンミラー、完全自動絞りを搭載、ファインダー交換などを実現し、15年以上にわたり、プロ、ハイアマチュア用機材としてカメラ業界に君臨する製品となった。日本のカメラ産業を世界一に導く契機となった機種として重要である。

世界初のCDプレーヤーなども登録

このほか、令和元年度は全26点が新たに登録。一例には、耐衝撃腕時計として知られるG-SHOCKの初代「カシオ ヘビーデューティースポーツ DW-5000C」(1983年)、世界初のCDプレーヤー「ソニーCDP-101」(1982年)および世界初のポータブルCDプレーヤー「ソニーD-50」(1984年)、ローランドのプログラマブル・リズムマシン「TR-808」(1980年)、ヤマハのデジタルシンセサイザー「DX7」(1983年)がある。今回の26件を加え、重要科学技術史資料は合計285点となった。

本誌:鈴木誠