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キヤノンEOS 5Ds/5Ds Rの技術説明会レポート

高画素の天敵「振動」をどう抑えるか 米美知子さんも登場

EOS 5Ds(左)、EOS 5Ds R(右)

キヤノンは6月19日、メディア向けにデジタル一眼レフカメラ「EOS 5Ds」および「EOS 5Ds R」の技術説明会を都内で開催した。

いずれの機種も6月18日に発売されたデジタル一眼レフカメラの新モデル。ともに有効約5,060万画素の35mmフルサイズCMOSセンサーを採用する。両機種とも光学ローパスフィルターを搭載するが、EOS 5Ds Rは同フィルターの効果をキャンセルし、より鮮鋭な画像を得られる。

社内で賛否両論があった初代EOS 5D

冒頭、キヤノン イメージコミュニケーション事業本部 副事業部長の大原経昌氏がEOSの思想やカメラへの技術的な取り組みについて説明した。

EOSの基本コンセプトは「快速、快適、高画質」。思った通りに使えて、よりよい写真が撮れることを目指しているとのこと。開発の現場でもこれをキーワードにしているという。また、当初から撮影領域の拡大を開発の方向性として定め、そのために独自技術にこだわっているとした。

「EOS 5Ds/5Ds Rは、EOS 5Dシリーズの一製品。2005年のEOS 5Dから好評で、進化していくことができた。2005年時点では、ミドルクラスで35mmフルサイズのカメラを作ることは技術的に難しいのではないかと社内では賛否両論あった。フルサイズ機は2002年にEOS-1Dsができたばかり。挑戦だったが、製品化できた。EOS 5Dシリーズは、今ではこうしてEOSの中核になった」

大原氏はEOSの品質にも触れ、防滴試験やロボットによるスイッチの耐久試験の様子も披露した。スイッチはフィルム時代よりも耐久回数が増えているため、熟練した評価者の動きをロボットで再現し、すべてのボタンで操作感が損なわれないかをテストしている。

様々な振動対策で高画素を活かす

続いて、キヤノン株式会社 イメージコミュニケーション事業本部 ICP第二開発センター 上席担当部長の松本俊郎氏が技術的な説明を行った。

キヤノンの考える高画質とは、解像力、低ノイズ、色再現、階調性、ダイナミックレンジなどがバランスしていることだが、解像力を重視するユーザーの声も有り、EOS 5Ds/5Ds Rを開発したとのこと。

ベースモデルはEOS 5D Mark IIIだが、高画素センサーの性能を活かすために“天敵”とされる振動を抑えるために新ミラー制御システムを採用するなどメカも一新している。

EOS 5Ds/5Ds Rの画素ピッチは4.14μ。EOS 5D Mark IIIが6.25μのため、ブレによる影響をEOS 5D Mark IIIと同等にするためには、振動を2/3にしなければならない。

そのためミラーの動作をこれまでのバネ式からモーター駆動式に変更。モーターはミラーの跳ね上がり近くでブレーキをかけることができるため、カメラ内で最も大きな振動とされるミラーアップの振動を抑制した。

シャッター幕も新たに超ジュラルミンと炭素繊維とし、走行時の振動に配慮した。これらの対策で、画面のブレはEOS 5D Mark IIIの半分というイメージになったという。

今回、ミラーアップしてから時間をおいてシャッターが切れる「レリーズタイムラグ任意設定」も新設した。さらに、従来からの電子先幕シャッターを併用すれば、より高画質に撮影できるとのこと。

ローパスフィルターについては、EOS 5Dsも画素が増えたため従来品より効果を若干弱めているとのこと。また、EOS 5Ds Rについては、偽色やモアレの発生確率が高まるため、自力で対策できるか、偽色・モアレよりも解像力を優先するユーザーに向けるとのこと。

キヤノンでは、偽色やモアレによる画質劣化は回避するという観点から、従来からの「光学ローパスフィルターは必要」との考えに変わりは無いという。

新ピクチャースタイルの「ディテール重視」のコンセプトは、「そのまま作品にできる」こと。彩度はスタンダードと同等だが、コントラストはスタンダードより低くして階調性を重視した。シャープネスの強度は風景と同様。「細かさ」は細かいほどエッジが細くなり、細部の解像感が高くなる。また「しきい値」は、低いと微小なエッジ成分にもシャープネスがかかりやすくなる。

「中身はモンスター」と米美知子さん

最後に写真家の米美知子さんが登場し、EOS 5Ds/5Ds Rで撮影した作品を披露しながらカメラの魅力を語った。

米美知子さん(BS朝日のドキュメンタリー番組「The Photographers 2―心揺さぶる光景を求めて― 空の色編」より)

「このカメラについては、ブレについて皆さんからよく質問を受けました。普段から、風がやむのを待つとか、足場を気にするといった丁寧に撮影している人なら特に気にする必要はありません。EOS 5D Mark IIIと同じ今までの撮影スタイルで行けます」

米さんは、中判カメラでも使っているというジッツオの3型にハスキーの雲台を載せ、ミラーアップした上でレリーズタイムラグ任意設定を1秒にし、ケーブルレリーズを使っているとのこと。

画質については、「絞って撮った際に画面の奥が曖昧にならず奥行き感があります。絞り込んだなりの解像力が出ます」とした。ただ、撮影データは重いため、現像環境は整えないとストレスになるだろうとのこと。

デジタルレンジオプティマイザーも「凄く良い」という。「大伸ばしにするなど、ここぞというときにつかいます」。

また、新設のクロップ機能も活用。APS-H相当で3,050万画素、APS-C相当で1,960万画素あるため、望遠の弱いフルサイズ機でも望遠に強くなってたまに使うには良い機能だとした。

「三脚に載せて真価を発揮する。よく、細い三脚の人、接続部がぐらぐらの三脚を使っている人、ケーブルレリーズを使わない人がいるが、きちんと使うべきものを使って欲しい。丁寧に撮ることで5,000万画素の良さが出る。ボディはEOS 5D Mark IIIと同じと感じるが、中身はモンスターと思う。早く大伸ばしにしてプリントを見てみたいし、見せたいです」

なお、米さんの作品はEOS 5Ds/5Ds Rのカタログでも見ることができる。

(本誌:武石修)