交換レンズレビュー

M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO

絞り開放から群を抜く高画質

 オリンパスの「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」は、マイクロフォーサーズシステム規格に準拠した望遠ズームレンズだ。35mm判換算で80-300mm相当となり、中望遠域から超望遠域までをこのレンズ1本でカバーすることができる。

今回はOLYMPUS OM-D E-M1で試用した。発売は11月29日。価格は税込19万9,800円

 開放F値は全焦点距離域においてF2.8。これまでオリンパスのマイクロフォーサーズ用レンズには「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0-5.6 R」という、同じ焦点距離域を持つ望遠ズームレンズがラインナップされてきたが、そちらは開放F値がF4-5.6のコンパクトなサイズを重視したモデルであることからM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROはF2.8の大口径を備えた、より高いグレードのラインナップとして登場することとなる。

 レンズ構成は非球面EDレンズ1枚,非球面レンズ2枚、スーパーEDレンズ1枚、EDレンズ3枚、HDレンズ1枚を使用した10群16枚。高性能レンズを贅沢にかつ巧みに組み合わせたものだ。AF駆動にはリニアモーターを採用。フローティング方式の「DUAL VCMフォーカスシステム」によって、高速かつ静粛なフォーカス駆動が可能だ。またインナーフォーカスとなるためピント位置によるレンズ全長の変化はない。ズーミングによって全長も変化しないので、撮影時にカメラ全体の重心の変化も最少となる。

デザインと操作性

 本レンズは、オリンパスが現在推し進めている「PROクオリティ」を基準とするラインナップのひとつとして位置づけされているレンズだ。その外観はすでに発売されている、おなじく「M.ZUIKO PRO」ラインの「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」と共通するデザインとなっており、高級感かつ凝縮感が非常に高い。

 金属外装のズームリングに直接刻まれたローレットパターンは細かく、指でつかみ回す際には遊び無くダイレクトな操作感が得られる。またゴム製パターンとは違い、指の腹との適度な摩擦で操作できる感触は質の良い道具を操る満足感にもつながる。

 レンズ鏡筒の最大径は79.4mm(フィルター径72mm)、長さは160mm、質量760g(三脚座含めると880g)と、マイクロフォーサーズ用のレンズとしてはこれまでになく大きい。しかし同様の焦点距離域を持つ35mmフルサイズ対応F2.8クラスの他メーカー製品と比べるとサイズはひと回り以上小さく、質量もかなり軽い。

 オリンパスOM-Dシリーズのフラグシップ機「OM-D E-M1」との組み合わせでは、サイズ的にも重量的にも程よい。実際にカメラを手にしてファインダーを覗くと、全体の重量バランスが非常によく、E-M1ボディのグリップをしっかりと持つことで、自ずとレンズのズームリング下部に左手掌が収まる。実に馴染みよいサイズ感と重さと感じる。

レンズ鏡筒には各種設定をワンプッシュで切り替えられるファンクションボタン(L-Fn)が用意されている。プッシュ時に一時的にAFを停止する機能や、ワンタッチWBの機能などを当てることが可能だ
三脚台座は比較的小さく感じるが、剛性は高くバランスも良い。ロックを緩めての回転も非常にスムースでロックのつまみも適度な力で止まる

 防塵防滴にも対応している。各リングの回転部には密封シーリングが施されているので、おなじく防塵防滴に対応したカメラボディのE-M1やE-M5に装着すれば、経験上、本格的な雨や滝などの水しぶきのなかでも問題なく使用することができると思われる。これはアウトドアでの撮影時には大きな安心感へとつながる。

マウントは剛性の高い金属製。防塵防滴対応のためゴム状のシーリングが施されている

 M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROはフォーカスリングを手前にスライドさせることで瞬時にAFからMFへ切り替えることができる「MFクラッチ機構」を搭載している。これはカメラ側のフォーカス設定に関わらず、AFとMFを手動で切り替えることができる便利な機構だ。

 MFクラッチ機構を使ってMFでフォーカスを合わせたピント位置は、フォーカスリングを元の位置に戻しAFに切り替えたあとでも記憶される。したがって、再度フォーカスリングを手前に引きMFに切り替えれば、以前MFで合わせたピント位置に瞬時に切り替わるのだ。

 この機能を活かせば、近距離から無限遠、無限遠から近距離へといったAFが迷いやすい大きな動作も、いったんリセットをかけるようにして強制的にピント位置を近距離などへ移動させ、そのうえでAFで細かくフォーカスを合わせるといった方法をとれる。

フォーカスリングを手前にスライドしてMFに切り替えると距離目盛りが表れる。ここで合わせたピント位置はリングをスライドしてAFに戻しても記憶される。例えばMFで最短撮影距離に合わせた後にAFに切り替え無限遠にピントを合わせても、再度フォーカスリングを手前にスライドすれば瞬時に最短撮影距離にピント位置を戻すことができる
専用フードは大きめ。深さもあり有害な光をしっかりとカットしてくれる。レンズに取付けた状態のまま伸縮させることが出来るので、不要な場合やカメラバッグへの収納時などには簡単に縮めることができる。スライドロックは回転式でフードの中程に位置する

 M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROは、同時に発表されたテレコンバーター「M.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14」を併用することで、焦点距離が1.4倍となる56-210mmのズームレンズとしての使用が可能だ。MC-14は3群6枚(HRレンズ1枚)の構成で、一般的に起こるテレコンバーター使用時における画質の劣化を最小限に抑えた画質を得ることができるという。

M.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14はM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROと2015年以降に発売予定のM.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4 PROに使用できる。大きさは最大径58.8mm、厚み14.7mm、質量105gと薄くて小さい
パワーバッテリーホルダーHLD-7を装着したOM-D E-M1に、M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROとMC-14を装着。ひと目ではテレコンバーターが付いているとは気が付かないほどレンズ全長もあまり変わらない。レンズの長さに大きな変化が無いということは、カメラを構えたときのバランスも大きく変わる事が無いということだ

遠景の描写は?

 まず広角端40mmの画像をみて最初に気が付くことは、非常に解像力が高いということだ。画面中心部および周辺部の描写はF2.8の開放絞りの状態からすでに驚く程きっちりと解像している。

 F5.6まで絞り込むことで解像力はピークとなり、さらにF11〜16まで絞り込むとわずかながらディテールに緩みを認めることができるようになる。だが、それはこのレンズの各絞り値においての比較であり、実際には他の同等レンズと比べると十分以上の解像力を持ち合わせている。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
広角端―中央部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。共通設定:E-M1 / 0EV / ISO200 / マニュアル / 40mm
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
広角端―周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。共通設定:E-M1 / 0EV / ISO200 / マニュアル / 40mm
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

 望遠端においても解像力は驚くほどに高い。これまで私が見て来た多くの望遠レンズのなかでも群を抜く高画質といっても過言ではないだろう。画面中心部、周辺部共にF2.8の開放絞りから、コントラストも高く工事中のビルの足場の鉄パイプ1本1本まで実にクリアに分解されている。

 周辺部も同様で、建物のトタン屋根の細かい波打ちや電柱の電線までしっかりと解像している。F5.6付近がいちばん解像力が高まるが、その前後においても十分な解像力をもっている。

望遠端―中央部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。共通設定:E-M1 / 0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 150mm
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
望遠端―周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。共通設定:E-M1 / 0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 150mm
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

 同様にテレコンバーターMC-14を装着した状態での画質も見てみよう。

 広角端(56mm相当)だが、テレコンバーターを着けた状態と着けていない状態の画質を見比べても、画質の劣化を認めることはできなかった。1.4倍された焦点距離に伴い開放絞値も1段暗くなるため、F4からとなるが、テレコンバーターを使用していないものと比べて遜色なく画面全域において非常に解像力が高い。絞り込みによる回折の影響もごく僅かだ。

広角端―中央部(テレコンバーター使用)
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。共通設定:E-M1 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / 56mm
F4
F5.6
F8
F11
F16
広角端―周辺部(テレコンバーター使用)
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。共通設定:E-M1 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / 56mm
F4
F5.6
F8
F11
F16

 続いてテレコンバーターMC-14を装着した状態にて、望遠端(210mm相当)での画質を確認する。広角端同様、テレコンバーターを装着した状態であっても解像力は十分に高い。色収差もほぼ皆無と言っていいだろう。

 開放絞りでの撮影においても中心部は見事に解像している。F16に至っても回折の影響はほぼ無く十分に解像力を保持していることがわかる。ただし周辺部はF4-5.6だと少し緩く、F8-11辺りが一番解像しているようだ。

望遠端―中央部(テレコンバーター使用)
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。共通設定:E-M1 / 0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 210mm
F4
F5.6
F8
F11
F16
望遠端―周辺部(テレコンバーター使用)
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。共通設定:E-M1 / 0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 210mm
F4
F5.6
F8
F11
F16

ボケ味は?

 35mm判換算にして80-300mm相当となる、本レンズは、その焦点距離域からとても扱いやすい画角のズームレンズだ。加えてズーム全域において70cmとなる最短撮影距離は、このクラスの望遠ズームレンズのなかでは特筆するほどに短い。

 これによって300mm相当の画角でのテレマクロ撮影も可能となる。そこでここでは開放絞りF2.8での最短撮影距離撮影も含め、絞り値の違いによるボケ具合を見てみよう。

 背景ボケはフルサイズデジタルカメラでのボケのように、すべてがとろけるというほどにはならないが、十分に柔らかで印象的なボケになっている。またレンズ前にある葉による前ボケも柔らかだ。

望遠端・絞り開放・最短撮影距離(約70cm)で撮影。最も近づける距離まで近づき花の中心部にピントを合わせた。300mm相当だが実焦点距離は150mmなので、ボケすぎることもなくほどよい加減となる。手前の花弁から奥の花弁に向かう「アウトフォーカス-インフォーカス-アウトフォーカス」という流れも自然だ。E-M1 / 1/400秒 / F2.8 / +0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 150mm
絞り開放・距離数mで撮影。廃バスの車内でのポートレート。人物から3mほど離れた位置から撮影。バスの手前から奥へかけての圧縮された窓枠のボケと人物の向こう側の窓抜けのボケが立体感を生む。ピントの合った箇所はビシッとクリアに解像し、その前後は柔らかにボケる。ポートレート撮影においても強力な魅力を発揮してくれる武器となるだろう。E-M1 / 1/50秒 / F2.8 / +1.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 150mm
絞りF4・距離数mで撮影。野に咲くコスモス。ズームレンズの中間焦点距離である125mmで撮影。近距離での撮影だが、F4まで絞り込むことで主被写体である奥の花の、ほぼ全体にピントを合わせ明確にすることができた。被写界深度が深めとなるマイクロフォーサーズ機はこのような撮影時にはアドバンテージが高い。手前の花もボケていながらも輪郭がわかる。E-M1 / 1/1250秒 / F4 / +1EV / ISO200 / 絞り優先AE / 125mm
絞りF5.6・距離数mで撮影。2mほど離れた位置からワイド端の40mmで撮影。F5.6まで絞ったことで全面が均一な描写となる。手前から奥への緩やかなフォーカスの遷移とサボテンの鋭利な棘の鮮明な描写がリアル感へとつながる。そこにあるものをしっかりと確実に写し出してくれるレンズだ。E-M1 / 1/60秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / マニュアル / 40mm

テレコンによる撮影倍率の違い

 先にも述べたが、このレンズには新開発のテレコンバーターMC-14を使用することができる。テレコンバーターMC-14を使用することで焦点距離が1.4倍となり、より望遠効果を得ることができる。

 また同時に、被写体との距離を同じままに被写体をより大きく撮影することもできる。最短撮影距離も70cmと変わらずに撮影できるので、よりクローズアップ撮影を行いたいときには非常に便利だ。

テレコンバーター無し。E-M1 / 1/400秒 / F5.6 / +1EV / ISO200 / 絞り優先AE / 150mm
テレコンバーター使用。E-M1 / 1/500秒 / F5.6 / +1EV / ISO200 / 絞り優先AE / 210mm

作品集

港に架かる橋上より眼下を航行する船をワイド端40mmで撮影。鉄の塊のような船体の質感を高い解像力で重厚に描写。金属の手すりやワイヤー、甲板のロープまで鮮明に描写している。E-M1 / 1/640秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / 40mm
窓際の人物の横顔を48mmでスナップ。ピントを合わせた目元や髪の毛の1本1本の精細さが際立つ。光の少ない室内での撮影なので開放絞りF2.8でも1/20秒のスローシャッターに。このレンズには手ブレ補正機構は搭載されていないが撮影に使用したOM-D E-M1の強力な5軸手ブレ補正のおかげでギリギリ手ブレを起こさずに撮影できた。E-M1 / 1/20秒 / F2.8 / -0.7EV / ISO400 / 絞り優先AE / 48mm
焦点距離120mmにて人物のバストアップ撮影。望遠効果により人物の前後をぼかすことで表情のみを際立たせる。適度なコントラストで人物撮影にも扱いやすい描写だ。E-M1 / 1/25秒 / F2.8 / +0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 120mm
止り木のインコを離れた場所から150mmで大きく狙う。300mm相当でありながらF2.8と明るい開放絞りのおかげで速いシャッタースピードでの撮影が可能だ。インコの羽毛の細かな造形が圧倒的な解像感で見るものに迫り来る。E-M1 / 1/800秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / 150mm

まとめ

 本レンズは、その驚く程に優れた解像力と最大300mm相当 F2.8という明るい超望遠レンズの攻撃力を兼ね備えたレンズだ。

 今回ここで発表する作品以外にも、筆者はこのM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROとE-M1の組み合わせで、世界トップレベルの選手が出場する自転車ロードレースを撮影する機会に恵まれた。

 同じくレースを撮影しているプロカメラマン達はみな、各メーカーのプロ向けハイエンドデジタル一眼レフカメラを使用していたが、おそらく筆者だけがミラーレスカメラで撮影をしていたと思う。

 その結果は、DUAL VCMフォーカスシステムによる速いAFスピードと80-300mm相当の範囲での自在なズームレンズのおかげで、高速で疾走するレーサーを望む構図で的確に捉えることができたのだ。

 さらにマイクロフォーサーズシステムの最大の利点である軽量かつコンパクトなシステムは、撮影者の負担を大きく軽減してくれると同時に、よりアクティブに撮影に集中することができる。さらに防塵防滴に対応したシステムは雨天など悪天候での撮影において非常に心強く、ダイナミックなシーンを捉えるためにはときには雨天さえも味方に付けることさえ可能だ。

 今回の撮影で使用したオリンパスのフラグシップ機E-M1とM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROの組み合わせであれば、プロカメラマンの高い要求にもしっかりと応えてくれ、ミラーレスカメラであっても第一線でバリバリ活躍できるという実感に至ることができた。

 このM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROこそまさしく「PRO」の名に恥じないレンズとして迎え入れたい。

(モデル:稲葉マリ

礒村浩一

(いそむらこういち)1967年福岡県生まれ。東京写真専門学校(現 東京ビジュアルアーツ)卒。女性ポートレートから風景、建築、舞台、商品など幅広く撮影。全国で作品展を開催するとともに撮影に関するセミナーおよび撮影ツアーの講師を担当。デジタルカメラに関する書籍やWeb誌にも数多く寄稿している。近著「オリンパスOM-Dの撮り方教室 OM-Dで写真表現と仲良くなる」(朝日新聞出版社)、「マイクロフォーサーズレンズ完全ガイド」(玄光社)など。 2015年9月よりデジタルハリウッド「カメラの学校」講師。Webサイトはisopy.jp Twitter ID:k_isopy